俺もクズだが悪いのはお前らだ!

レオナール D

文字の大きさ
214 / 317
第4章 砂漠陰謀編

25.起死回生の一手?


 それからナームをともなって応接間まで戻った。
 応接間ではカイロ嬢が先ほどの俺と同じように紅茶が入ったカップを傾けていて、俺達が部屋に入るや悪戯っぽく微笑みを浮かべた。

「うちの子を泣かせたみたいですね。悪い人」

「申し訳ない、とか謝ったほうがいいかな?」

「いえいえ、感謝しているんですよ。泣きたいときに泣くことができない子供は不健全ですからね」

 カイロ嬢は泣きじゃくったせいで目を腫らしたナームの頭を撫でて、表情を切り替えて真剣そうな顔になった。

「さて・・・それでこれからのことですが、マクスウェル様はどうされるおつもりですか?」

 カイロ嬢の問いかけに、俺は頷いて胸を張った。

「もちろん、西方辺境から死者の軍勢を消し去るつもりだ。死人は死人らしく、一人残らず土に返してやるさ」

「・・・お気持ちは大変ありがたいのですが、どのようにしてでしょうか? こちらにマクスウェル家の兵士は連れてこられなかったのでしょう?」

「そうだな・・・その辺りのことを改めて確認したいのだが、スフィンクス家にはどれくらい兵が残っている?」

「・・・・・・」

 カイロ嬢は無言のまま椅子に腰かけ、俺もテーブルを挟んで対面に座る。なぜかナームがカイロ嬢の横ではなく俺の隣に座ってきた。

「はい、ディンギルさま。どうぞ」

「ん、悪いな」

「いいえ」

 ナームがテーブルの上に置かれていたポットを取り、俺の前に紅茶を淹れてくれる。
 少女が手ずから入れてくれた紅茶を一口飲んだところで、カイロ嬢が沈痛な面持ちで首を横に振って口を開いた。

「・・・スフィンクス家と、比較的協力的な貴族家を合わせた兵の総数はおよそ一万。その大部分はギザ要塞と一の砦、二の砦での戦いで戦死、もしくは戦闘不能のケガを負っています。残っている兵力はせいぜい一千。町の警備兵を除いて、全員がご当主様と一緒に三の砦に詰めています」

「・・・サンダーバード家から援軍が来ているよな? そいつらはどうしてる?」

「南方からの援軍一千は後方にて、三の砦をすり抜けてきた敵兵の遊撃をしています」

 スフィンクス家の当主が三の砦で『恐怖の軍勢』を押しとどめているとはいえ、敵はまともな指揮系統を持たない死者の群れである。砦をすり抜けて後方へと侵入してしまった敵が少なからずいるらしい。
 どうやらサンダーバード家からの援軍は彼らの討伐をしているようである。

「まあ、サンダーバード家の連中からしてみればそっちのほうが助かるんだろうな。やばくなったら南方へと逃げ出しやすいし、砦に詰めて籠城するよりもよっぽど生き残る確率が高い」

 サンダーバード家から送られてきたのは金で雇われた傭兵部隊である。スフィンクス家に対する忠誠心など欠片も持ってはいない。傭兵としての義理もあるかもしれないが、それでも死ぬまで踏みとどまって戦うことはないだろう。
 俺の予想では、三の砦が落とされたらサンダーバード家の援軍は早々に戦線離脱して、南方辺境へと帰っていくだろう。

「ふむ・・・そうなると本格的にやばそうだな。さすがに多勢に無勢が過ぎる」

 単独で西方辺境まで来た俺であったが、本気で独力で『恐怖の軍勢』を打ち倒せるなどとはさすがに思っていない。
 スフィンクス家から中隊の一つでも借り受け、俺が指揮をすればいいかと思っていたのだがアテが外れてしまったようである。
 俺はアゴに手を当てて考え込み、やがて一つの可能性へと思い至った。

「・・・そうだな、だったら冒険者はどうだ? ここに来る途中で何組かとすれ違ったが」

 スフィンクス家の当主がかけた募集によって、少なからぬ傭兵や冒険者が西方へと集まってきている。彼らを集めれば頭数は揃うだろう。
 起死回生のつもりで提案するが、俺の申し出にカイロ嬢の表情は曇ったままだった。

「ご当主様が大金をはたいて募ったおかげでそれなりの数の冒険者が集まってくれましたが・・・残念ながら、あまり期待はできそうにありませんね」

 カイロ嬢の話では、滅びかけの西方辺境までわざわざやって来るのは他の町で仕事にあぶれた者。十分な実力を持っていなかったり、人間性に問題があったりするような者ばかりのようだ。
 中には西方辺境を救いたいという純粋な義侠心から来た者もいるようだったが、はっきり言って烏合の衆と呼べるような集まりであった。

「一応はこの町の防衛戦力という形で雇って置いてはいるのですが・・・果たしてどれほど役に立つのか・・・」

「そうか、それを聞いて安心した」

「はい?」

 俺はグッと椅子の背もたれに体重を預けて足を組む。手持ち無沙汰になった手で隣のナームの頭を撫でながら、牙を剥いて笑った。

「つまり、この町にいる冒険者は死んでも誰も困らないような奴ばかりってことだろう? 結構なことじゃねえか。俺がそいつらを引っぱって猿山の大将になってやるよ。死んでも困らん兵士と死人の兵士、きっといい勝負になるだろうよ」

「は、はあ?」

 残酷ともいえる俺の言葉に、カイロ嬢は目を白黒させて顔をひきつらせた。
感想 1,043

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした

アルト
ファンタジー
今から七年前。 婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。 そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。 そして現在。 『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。 彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい

夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。 彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。 そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。 しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!