俺もクズだが悪いのはお前らだ!

レオナール D

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第4章 砂漠陰謀編

39.地底の進軍

 ベルト・スフィンクスからギザ要塞の奪還を依頼された俺は、スフィンクス家の兵士と冒険者部隊を率いて要塞へと向かって行った。
 サンダーバード家の援軍は後詰めの鎮護兵として後方に残っている。スフィンクス辺境伯領に入り込んだ『恐怖の軍勢』の大部分は討伐されているが、完全にいなくなったわけではない。各地の村を回りながら残党狩りを任せていた。

「部隊を二つに分ける。本隊は無理のない範囲で外から要塞を攻撃して、要塞内部にいるミイラどもを引き付けてくれ。別働隊は隠し通路を通って要塞内部へと侵入してロード級とやらを討ち取るぞ」

 ギザ要塞から少し離れた場所に作った陣地の中、天幕に将を集めて俺は命じた。
 この作戦の総指揮は俺が執ることになっていたが、俺自身は本隊ではなく別動隊に参加するつもりだった。
 ロード級とやらがどれくらいの強さかは知らないが、聞いたところによるギザ要塞が落とされたときに現れた奴はバロン先輩と互角に戦うほどの力を持っていたらしい。
 この要塞にいるロード級がそれと互角だと仮定すると、俺以外に討ち取れる者はいないだろう。

「本隊の指揮はメンフィス殿に執ってもらっても構わないだろうか?」

 俺が尋ねると、ジャール・メンフィスは首を横に振った。

「いえ・・・私もマクスウェル殿にお供をさせてください」

「ふむ? 理由を聞いても構わないか?」

「はい、要塞内部を案内する役が必要ですし、いかに当主様が貴方に指揮を任せたとはいえ、これはスフィンクス家の問題です。貴方にばかり危険な役を押し付けるわけにはまいりません」

 ジャールはまっすぐ俺を見据えて、真剣な顔つきで主張してくる。
 スフィンクス家の諸将らももっともだとばかりに頷いて、ジャールの考えに同意を示してくる。

「そうか、それじゃあ本隊の指揮官はそちらで決めてくれ。無理に攻め落とす必要はない。注意を引き付けてくれれば、内部の俺達が動きやすくなる」

「承知いたしました」

 結局、本隊はスフィンクス家の兵士の中から古株の者が務めることになった。それなりに実績がある者のようで、特に問題はなさそうだった。

 俺はジャールと、兵士の中から武術に優れた者を二十人ほど選抜して隠し通路へと向かった。

「隠し通路ってのは、どうして古井戸からつながってるんだろうな。帝国にもこんなのがあった気がするぜ」

「井戸や坑道のような地下通路であれば、間者や密偵に気づかれることなく建築することができますので。狭いところで申し訳ないのですが・・・」

「いや、それは構わないがな」

 俺はジャールの案内で要塞の近くにあった村へと案内されて、その片隅にあった古井戸へと足を踏み入れた。
 水をくむためのロープをつたって下に降りると、井戸の底に横穴が口を開けていた。

「こちらがギザ要塞への隠し通路になります。先導いたしますので、後を続いてください」

 ジャールがランプをもって隠し通路を先導していく。その後ろを俺が続き、さらに別働隊の兵士達が順番に穴に潜っていく。
 最初は這って進むのがやっとという大きさの横穴であったが、奥に進むにつれて徐々に穴が広がっていき、やがて立って歩けるくらいの大きさの坑道にまで拡大した。

「まさか、この通路をこんなふうに使うことになろうとは・・・」

 先頭に立つジャールが、ランプの明かりを揺らしながら雑談を始める。

「この隠し通路はもともと、要塞が取り囲まれた際に外に脱出するためになのですよ。進入路として使うのは本来の用途とは反対なのですが・・・」

「戦なんだから予想外の事態くらい、いくらでも起こるさ。最終的に勝てばなんでも構わない」

 俺達が口を開くたび、坑道の中に声が反響してこだましていく。
 子供の頃、海賊の母親に連れられて海底洞窟に行ったことがあったが、あの時も声が壁に跳ね返ってきていたのを思い出した。
 あの後、入口から大量の海水と肉食魚の群れが流れ込んできて、全力疾走で洞窟の最奥まで走って逃げることになったのだが・・・できれば思い出したくない過去である。

(ロクな人生送ってないな、俺は。ひょっとして、生まれたときからこんな目に遭ってたのか?)

 しみじみと過去を思い出して口をひきつらせていると、隠し通路の奥から光が漏れ出してきた。

「この上に出ると、もう要塞の内部です。おそらくは死者の大群が待ち構えていると思いますので、どうぞお気をつけて・・・」

 言って、ジャールが天井にある木の板を外した。
 眩いばかりの光が坑道の内部に差し込んできて、俺は思わず手で顔を覆った。
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