俺もクズだが悪いのはお前らだ!

レオナール D

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第4章 砂漠陰謀編

44.堕ちたる英雄

 俺は上段から振り下ろされた曲刀の一撃を剣で受け止める。

「ぐっ・・・!?」

 その一撃は俺が想定した以上に重く、思わず膝が折れそうになってしまう。

「く、はははっ! どうだ! 生まれ変わった我が剣は!」

 バロンがミイラの顔でニンマリと笑い、体勢を崩した俺に追撃をかけてくる。

ダン、ダン、ダン、ダンッ!

 次々と振り下ろされる斬撃を、俺は必死に剣で受け続ける。
 その剣の重さ、攻撃力は俺が知っているバロンの剣とは、明らかに一線を画していた。

「ぐっ・・・舐めるなっ!」

 俺は奥歯を噛みしめて重量感のある攻撃に耐え、一瞬の隙をついて足払いを繰り出した。

「ははっ! 遅い遅い!」

 バロンが軽々とジャンプして足払いをかわし、少し離れた場所に着地する。余裕の表情を浮かべて、挑発でもするかのように両手を広げて見せた。

「くくくっ、恐れ入ったか。ディンギル・マクスウェル。ずいぶんと焦った顔をしているぞ?」

「・・・そちらも、えらく楽しそうだな。そんなに干物の身体が気に入ったのかよ」

「ふんっ、憎まれ口を叩いていられるのも今のうちだけだぞ? なあ、ディンギル・マクスウェル。かつて私はお前に敗北した。その理由を覚えているか?」

「・・・スタミナ切れ、だろ?」

 2年間、俺とバロンは王都武術大会の決勝戦で剣を交えた。
 烈火のごとく攻める俺の剣。
 巨石のごとく守るバロンの剣。
 最終的に両者の勝敗を分けたのは、体力の差であった。
 俺達は十数分にもかけて斬り結び、バロンの方が先に体力の限界を迎え、俺の剣を防ぎきれなくなったのだ。

(今考えてみれば、俺のスタミナは母親譲りの底無しだからな。先輩が不利なのもしょうがない)

「そうだ! あの時は私が先に体力を切らしたせいでお前に破れた。だが、今日は違う! 今の私は死人・・・体力切れを起こすことはなく、力も見ての通りだ!」

「っ・・・!」

 バロンが正面から剣を叩きつけてくる。
 不意をついた攻撃を剣で受け止めるが、衝撃をこらえきれずに後方へ飛ばされてしまう。

「今の私のパワーは人間の限界をゆうに超えている! どうだ、ディンギル・マクスウェル! パワーにスタミナ、スピードもだ、もはや貴様が私に優るものはなにもない!」

「・・・・・・」

「さあ、恐れよ! そして、嘆くがいい! 私は貴様を殺して最強になる! そして、もはや二度と敗北すまい!」

「・・・なあ、先輩。アンタの婚約者、ミスト・カイロは喪服を着ていたよ」

「む?」

 俺はぽつりと言った。脈絡のない言葉にバロンが眉根を寄せる。

「アンタがいなくなったスフィンクス家のために、わざわざ南方まで来て援軍を頼んでいた。婚約者を失って、なにも考えずに泣いていたいだろうに、アンタの代わりにこの西方の地を守ろうとしていた」

「・・・なんの話だ?」

「ナームちゃんはお前の死を嘆いてはいなかった。でも、それはお前を愛していなかったというわけではなく、お前が死んだいうことを信じきれなかったからだ。今のアンタの変わり果てた姿を見たら、きっと声を上げて泣いちまうだろうな」

「・・・・・・」

「それを聞いた上で、お前はまだ『恐怖の軍勢』に組みするのかよ。あの二人のことを殺せるのか?」

「笑止・・・! 情に訴えるとは、情けないことを!」

 バロンは怒りに表情を歪めて、噛みつくように吠えた。

「家族への愛だ、故郷への愛だ、そんな惰弱なものはとうに捨てた! 全ては女王陛下のためだ! 女王があの二人を贄としてご所望ならば、喜んで切り刻んで差しだそうぞ!」

「そうかよ・・・だったら、二人は俺がもらうことにするよ」

「なっ・・・!?」

 俺は牙を剥いて笑い、驚愕の表情を浮かべるバロンへと中指を立てる。

「お前みたいな干物顔には可愛い妹も、美人の婚約者ももったいないぜ。二人とも俺がもらってやるから、有り難く思えよ」

「貴様・・・なにをっ!」

「別にいいだろう? どうせ捨てた女だ。カイロ嬢・・・ミストは細身だけど出るところはキッチリ出ているし、抱き心地はさぞいいだろうな。ナームちゃんも確実に将来有望。素敵なレディになるだろうし、二人並べて美味しくいただいてやる。塩をかけられたナメクジみたいに乾いたお前のイチモツじゃあ、とてもそんなことはできないだろ? ざまあみやがれ」

「愚弄を・・・! この私を侮辱するな! 私は死を乗り越えて、生者を超越した存在ぞ!」

「たき火の薪くらいにしか使い道のない枯れ木が、偉そうにほざくなよ。生者を舐めてると、そっちのほうが痛い目を見るぜ?」

「だったら・・・やってみせるがいい、ディンギル・マクスウェル!!」

 バロンが憤怒の表情で床を蹴った。曲刀を振りかざし、俺の脳天めがけて叩きつけようとする。
 頭蓋を真っ二つにするであろう渾身の一撃を、俺は鋼の剣で受け流す。

「むっ!?」

「やってみせてやろうじゃないか・・・これが最後の決闘だ、バロン先輩!」

 俺は右手の剣でバロンの曲刀を押さえ込み、乾いたミイラの顔面に左手の拳を叩きつけた。

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