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第4章 砂漠陰謀編
55.女王就任と赤い箱
「では・・・これより女王就任の儀式を執り行う!」
大神官様が厳かに宣言をして、手に持った錫杖をシャリンと鳴らす。
神殿の最奥にある『女王の間』。上級神官以外は立ち入ることを許されない部屋に、私は足を踏み入れた。
部屋にはすでに上級神官のうちでも特に古株の者達が集まっており、部屋の中央を縦断する赤い絨毯を挟んで跪いている。
「・・・・・・」
最高級の絹で編まれた貫頭衣を身に着けた私は、もはやうつむくことなく絨毯を踏みしめて、部屋の中央に置かれた玉座に向かって進んでいく。金で作られ、宝石があしらわれた椅子に腰かけて、私は静かに部屋の中を見渡した。
女王が君臨する部屋には古今東西のありとあらゆる財宝が並べられている。その一つ一つが平民が一生を遊んで暮らせるほどの価値がある財宝であった。
(でも・・・そんなものに意味はない・・・)
本当に価値のあるものがなんなのか。それを私はもう知っている。大切な人が教えてくれた。
(だから、もう下を見たりしない。前を向いて、大切な人を守るために女王になるんだから・・・!)
私はすでに女王となる覚悟を決めていた。
女王となって『神兵』を呼び出し、この国を・・・大好きな姉や友達、愛する人を守るために戦おう。
「それでは・・・神の秘宝をここに」
「それは・・・?」
上級神官の一人が、丁寧に角に包んだ「なにか」を持ってきた。大神官様が布を解くと、中から金細工の首飾りが出てきた。
「これははるか昔、異界へと旅立っていった神が残していった秘宝ですじゃ。その名を【黄泉鍵杖】」
「はーです?」
「これこそが女王だけが身に着けることを許された神の加護。冥府より神兵を呼び起こす魔具じゃよ」
「・・・よくわからないけれど、それを首にかければいいのかしら?」
私が尋ねると、大神官様が「うむ」と頷いて首飾りをもって近づいてくる。
「力の使い方はこれが教えてくれる。なにも心配はいりませんぞ」
「そう、ですか・・・」
大神官様の言葉になぜか不安に駆られてしまったが、いまさら後戻りなどできようはずがない。
私はされるがままに大神官様の手によって首飾りを付けられた。
「新たな女王の誕生である! 皆の者、祝福を――!」
『おおおおおおおおおっ!!』
部屋に集まった神官達がそろって喝采の声を上げる。
私は首にかけられた神の至宝を指で撫でながら、神官達の祝福の声を全身に浴びる。
(アム、姉さん・・・私は立派な女王になって見せるから。この国を、みんなのことを絶対に守って見せるから)
私は改めて胸に決意を抱いた。そして、女王としてなにかを言わなければと口を開く。
しかし、私が言葉を発するよりも先に、大神官様が手に持った錫杖で床を叩いた。
「さてさて・・・女王就任の儀が終わったことじゃし、貢ぎ物を持ってまいれ! 女王様へと捧げるのじゃ!」
「貢ぎ物・・・ですか?」
ここまでの流れは事前に説明をされていた通りだったのだが、『貢ぎ物』のくだりについては聞かされていない。予想外のサプライズに首を傾げる私をよそに、『女王の間』の扉が開いて大きな箱を抱えた男性が部屋に入ってきた。
箱の数は二つ。金銀で作られたいかにも高級そうな箱を、一つの箱につき三人がかりで運んでくる。
箱が私の目の前へと並んで置かれた。大神官様が膝をつき、鍵を差し込んで箱を開ける。
「え・・・?」
そして――箱の中身を目の当たりにして、私は凍りついた。
金属製の箱の中。真っ赤な液体が滴るそれには、ぎゅうぎゅうに肉塊が詰め込まれていたのだ。
まるで解体されたばかりの家畜のような肉塊は生々しい血で濡れていて、つい先ほどまでそれが生きていたことを鉄サビのような香りとともに匂わせている。
それは・・・バラバラにされた人間の死骸であった。
「い、いや・・・うそ、嘘よっ! なんで・・・どうしてよっ!!」
そして、血と肉の坩堝と化した箱の中央・・・手足や内臓に囲まれて、その人間の生首が収められている。
箱の中に詰め込まれていた人物は、姉ネフェルミリアと幼馴染のアムストラホテプであった。
大神官様が厳かに宣言をして、手に持った錫杖をシャリンと鳴らす。
神殿の最奥にある『女王の間』。上級神官以外は立ち入ることを許されない部屋に、私は足を踏み入れた。
部屋にはすでに上級神官のうちでも特に古株の者達が集まっており、部屋の中央を縦断する赤い絨毯を挟んで跪いている。
「・・・・・・」
最高級の絹で編まれた貫頭衣を身に着けた私は、もはやうつむくことなく絨毯を踏みしめて、部屋の中央に置かれた玉座に向かって進んでいく。金で作られ、宝石があしらわれた椅子に腰かけて、私は静かに部屋の中を見渡した。
女王が君臨する部屋には古今東西のありとあらゆる財宝が並べられている。その一つ一つが平民が一生を遊んで暮らせるほどの価値がある財宝であった。
(でも・・・そんなものに意味はない・・・)
本当に価値のあるものがなんなのか。それを私はもう知っている。大切な人が教えてくれた。
(だから、もう下を見たりしない。前を向いて、大切な人を守るために女王になるんだから・・・!)
私はすでに女王となる覚悟を決めていた。
女王となって『神兵』を呼び出し、この国を・・・大好きな姉や友達、愛する人を守るために戦おう。
「それでは・・・神の秘宝をここに」
「それは・・・?」
上級神官の一人が、丁寧に角に包んだ「なにか」を持ってきた。大神官様が布を解くと、中から金細工の首飾りが出てきた。
「これははるか昔、異界へと旅立っていった神が残していった秘宝ですじゃ。その名を【黄泉鍵杖】」
「はーです?」
「これこそが女王だけが身に着けることを許された神の加護。冥府より神兵を呼び起こす魔具じゃよ」
「・・・よくわからないけれど、それを首にかければいいのかしら?」
私が尋ねると、大神官様が「うむ」と頷いて首飾りをもって近づいてくる。
「力の使い方はこれが教えてくれる。なにも心配はいりませんぞ」
「そう、ですか・・・」
大神官様の言葉になぜか不安に駆られてしまったが、いまさら後戻りなどできようはずがない。
私はされるがままに大神官様の手によって首飾りを付けられた。
「新たな女王の誕生である! 皆の者、祝福を――!」
『おおおおおおおおおっ!!』
部屋に集まった神官達がそろって喝采の声を上げる。
私は首にかけられた神の至宝を指で撫でながら、神官達の祝福の声を全身に浴びる。
(アム、姉さん・・・私は立派な女王になって見せるから。この国を、みんなのことを絶対に守って見せるから)
私は改めて胸に決意を抱いた。そして、女王としてなにかを言わなければと口を開く。
しかし、私が言葉を発するよりも先に、大神官様が手に持った錫杖で床を叩いた。
「さてさて・・・女王就任の儀が終わったことじゃし、貢ぎ物を持ってまいれ! 女王様へと捧げるのじゃ!」
「貢ぎ物・・・ですか?」
ここまでの流れは事前に説明をされていた通りだったのだが、『貢ぎ物』のくだりについては聞かされていない。予想外のサプライズに首を傾げる私をよそに、『女王の間』の扉が開いて大きな箱を抱えた男性が部屋に入ってきた。
箱の数は二つ。金銀で作られたいかにも高級そうな箱を、一つの箱につき三人がかりで運んでくる。
箱が私の目の前へと並んで置かれた。大神官様が膝をつき、鍵を差し込んで箱を開ける。
「え・・・?」
そして――箱の中身を目の当たりにして、私は凍りついた。
金属製の箱の中。真っ赤な液体が滴るそれには、ぎゅうぎゅうに肉塊が詰め込まれていたのだ。
まるで解体されたばかりの家畜のような肉塊は生々しい血で濡れていて、つい先ほどまでそれが生きていたことを鉄サビのような香りとともに匂わせている。
それは・・・バラバラにされた人間の死骸であった。
「い、いや・・・うそ、嘘よっ! なんで・・・どうしてよっ!!」
そして、血と肉の坩堝と化した箱の中央・・・手足や内臓に囲まれて、その人間の生首が収められている。
箱の中に詰め込まれていた人物は、姉ネフェルミリアと幼馴染のアムストラホテプであった。
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