俺もクズだが悪いのはお前らだ!

レオナール D

文字の大きさ
276 / 317
幕間 花咲く乙女

南洋の紫蘭①


side とある国の宰相

 私の名前はサミュエル・ラウロス。南洋諸島の東部にあるガーネット王国で宰相をしている。
 私が仕えているガーネット王国は数ヵ月前、獅子王国という海賊国家によって占領され支配下に置かれていた。
 獅子王国を植民地にしたのはキャプテン・ドレークを名乗る海賊である。
 ドレークはガーネット王国を支配して、国王の身柄を人質に取られた私もあの男の悪事に加担させられていた。
 ドレークは表立って圧政を敷くことこそなかったものの、なにが面白いのか他者を必要以上に苦しめる趣味を持っていた。自分に逆らう者を拷問にかけて殺したり、修道院を焼き払ってシスターを戯れにはりつけにかけたり暴虐を繰り返した。
 どうしてそのようなことをするのかと尋ねてみたところ「神が自分に罰を与えに来るのか試してみたかった」などというふざけた答えが返ってきたときには、頭が沸騰しそうになってしまったものである。

 獅子身中の虫となることでドレークをこの国から追い出すことに成功したものの、荒れ果てたガーネット王国の再建は至難を極めた。
 有能な家臣の多くが獅子王国との戦いで、その後の圧政で命を落としていたのだ。人材不足は避けることができなかった。

(もっとも、そのおかげで私は宰相で居続けることができたのだが・・・)

 本来であれば、仮初とはいえドレークの下についていた私も地位を追われてもおかしくなかった。処分を免れて宰相の地位を維持できたのは、紛れもなくこの国の人材不足が要因である。
 かくして、私は再び宰相となってガーネット王国の復興に従事することになり、罪滅ぼしのために身を粉にして働くことになった。
 復興を始めてから数ヵ月経つと徐々にその奮闘も実になってきて、王国の人々の顔にも徐々に明かりが差すようになってきた。

 しかし、ガーネット王国がかつての繁栄を取り戻す中、私には一つ、どうしても心配なことがあった。それは私の娘――スーレイア・ラウロスのことである。



「キー!」

「キー、キー!」

 私の目の前で、身の丈二メートルほどの大猿が石材を抱えて運んでいる。

 私がいる場所はガーネット王国の沿岸部にある港町ヴェニラ。かつて獅子王国が攻め込んできたときには、主戦場となった町の一つである。
 戦いが終わってから半年近くが経過しているが、火薬を用いた兵器によって攻撃を受けた町には、いまだ色濃い破壊の跡が残っている。

 そんな町の中で、十数匹の大猿が甲斐甲斐しく復興作業を行っている。石材や木材を両手で抱えて走り回っているもの。折り重なったガレキを取り除いているもの。なんの冗談なのか、屋根の上に登って金槌で釘を打ち付けているものまでいた。
 文字通りに人間の猿真似をしているような光景は、この町のあちこちで連日にわたって見られており、今や町の風物詩となりつつあった。
 行き交う町の住民達も大猿を怯えることなく、笑顔で猿達の働きをねぎらい、パンや干し肉を与えていたりする始末である。

「相変わらず・・・ふざけた力だな」

 私はそんな町を眺めながら、ガックリと肩を落とした。
 本格的にヴェニラの町を復興するため、陣頭指揮としてヴェニラへ滞在を始めてから2週間。このジョークのような光景がすでに日常の一部となりつつあった。
 本来であれば、宰相という政治のトップの地位に立つ私が現場に直接やって来ることなどあるはずがない。しかし、とある事情から私は自分からヴェニラに来ることを志願して、こうしてはるばる趣いてきた。

「はいはい、そっちの石は向こうに運んで。ガレキはとりあえず港のそばに積んでくださーい」

「キー!」

「・・・・・・」

 華やかな女性の声が港町に響きわたる。声の咆哮に目を向けると、青みがかった髪を首の後ろで結んだ女が両手に持った図案に目を落としながら、大猿に指示を出していた。

 その女こそが、私の娘であるスーレイア・ラウロス。
 動物や魔物と会話をして、心を通じるという不可思議な力を有する魔性の娘であった。
感想 1,043

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした

アルト
ファンタジー
今から七年前。 婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。 そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。 そして現在。 『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。 彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい

夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。 彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。 そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。 しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!