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第20話 依頼主との遭遇
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「射てえええええええええええっ!」
「ッ……!?」
男性の声が響いて、何本もの矢が降りそそぐ。
攻撃された……エベリアが身構えるが、矢が射抜いたのは彼女達に襲いかかってきたモンスターである。
「皆さん! 今のうちにこっちへ逃げてください!」
木々の陰から若い男性が顔を出す。
男性の傍には複数人の兵士がいて、弓を構えている。
「彼女達の逃走を援護しなさい! 射て、射て!」
「「「「「ハッ!」」」」」
男性の指示を受けて、兵士達がどんどん矢を射かけてきた。
彼らが何者であるかはわからない。しかし、この状況で選択肢はなかった。
「みんな、アッチに逃げるわよ!」
「うん」
「わかったわ!」
レーナとローナが先に逃げて、エベリアが続く。
「グギャアアアアアアアアッ!」
「うん、ごめんね?」
鱗を纏った大熊が追いかけてくるが、アイシスがその腕を掴んで投げ飛ばす。
背中を地面に打ちつけた大熊の頭部を踏みつけて頭蓋骨を粉砕させる。
「お、おお……」
「それじゃ、行こっか」
兵士達が慄いている中、アイシスがスタスタと仲間の後を追う。
援護射撃のおかげでモンスターの巣から脱して、『戦乙女の歌』は窮地から逃げることができた。
「ハア、ハア……」
「こ、ここまで来れば大丈夫ね……」
「レーナ、ローナ、大丈夫? お水飲める?」
モンスターは追ってきていない。レーナとローナが地面に倒れこんだ。
二人ともかなり疲労しているが、目立った怪我はない。アイシスが渡した水筒に口を付けて水を飲んでいる。
エベリアは安堵に胸を撫で下ろした。危機を脱したようである。
「フウ……助かったか」
「大丈夫ですか、お怪我はないですか?」
兵士達を率いていた若い男性が気づかわしげに訊ねてくる。
物腰からそれなりに身分の人間だろうとエベリアが居住まいを正した。
「はい、私達は大丈夫です。ところで、貴方は……?」
「ああ、申し遅れました。ローテス伯爵家の当主をしております、キンベル・ローテスと申します」
「ああ、貴方が……!」
ローテス伯爵というと、今回の仕事の依頼主である。
「どうやら……私共の不手際によって、転移門の移動先がずれてしまったようです。転移門を使って冒険者を迎えるのが初めてのため、座標を誤ってしまったみたいでして。皆様には大変、ご迷惑をおかけしました」
「誤って……ですか」
「はい。町に転移していただく予定だったのですが、座標を誤って近くの平原を指定してしまったようです。こちらに転移門による光の柱が上がっているのを見て、慌てて迎えに来たのです」
「…………」
エベリアが疑わしそうな顔をした。
転移門は特定の座標を指定して、そのポイントに対象者を送り出す魔道具である。
座標を間違えれば、もちろん別の場所に転送されてしまう。
(本当に事故だったのか? もしかすると、故意にモンスターの巣の中に送り込んだんじゃ……)
普通はそんなことはしないだろうが……エイルーン帝国の評判を考慮するとそんな疑念が生じてしまう。
「ねえねえ。そっちのお兄さん、怪我しているみたいだけど大丈夫?」
すると、仲間の介抱をしていたアイシスが横から声をかけてくる。
「肩の怪我、早く止血しないと死んじゃうよ?」
「あ……」
エベリアも遅れて気がついた。
依頼主である青年……キンベルは肩に怪我をしていた。かなり深そうな怪我である。
他の兵士達も大小の負傷があって、モンスターに襲われたものと思われた。
転移門を使用した際に生じる光の柱が町の外から上がっているのを見て、モンスターに襲われながらも駆けつけた証拠である。
「わかりました……事故では仕方がありませんね」
故意にやったのであれば、彼らがこんなに負傷することもなかったはず。
エベリアは目の前の男に悪意はないのだろうと判断した。
「とりあえず、話は後にしましょう。まずは怪我人の手当てを」
「そうですね……後日、改めて謝罪と賠償の話をさせていただきます」
「私、怪我に効く薬草を持ってるよ。使う?」
空気の読めないアイシスが腰に付けた道具袋から薬草を取り出した。
「これ、怪我したところに塗っておくと楽になるから、お兄さんにあげるね」
「ああ。どうも、ありがとうござ…………は?」
薬草を渡されたキンベルが大きく目を見開く。
彼の視線の先には「ニコッ!」と子供っぽい笑顔のアイシスがいる。
「…………可憐だ」
「ああ……またなのね」
キンベルが顔を赤くして溜息をこぼすのを見て、エベリアが眉間にシワを寄せる。
アイシスは顔が良い。
貴族の令嬢のような整った顔立ちをしていながら、表情は無邪気であどけなく、性格は天真爛漫そのもの。
王都のギルドでもアイシスに惚れるものが後を絶たず、非公認のファンクラブまであった。
それに加えて……今のアイシスはモンスターの返り血を浴びている。
アイシスは血が似合うのだ。白い肌を返り血が赤く染めている姿は凄艶なメイクのようであり、一目見れば夢にまで出るような妖しい美しさがあるのだ。
「……私だってようやく慣れてきたところ。始めて見た人には無理もないわね」
「どうしたの、大丈夫?」
「だ、だだだだ、大丈夫です。失礼いたしました……!」
アイシスに顔を覗き込まれ、キンベルが慌てた様子でそっぽを向く。
「へ、兵士の応急手当が終わったら町に案内しますので、少々お待ちを……!」
「……変な人だね。あのお兄さん」
逃げるように去っていくキンベルに、アイシスが首を傾げる。
「放っておいてあげなさい……純情なんでしょ」
きっと、キンベルはしばらくアイシスの美貌が目に焼き付いて離れないだろう。
エベリアは同情した様子でゆっくりと首を振った。
「ッ……!?」
男性の声が響いて、何本もの矢が降りそそぐ。
攻撃された……エベリアが身構えるが、矢が射抜いたのは彼女達に襲いかかってきたモンスターである。
「皆さん! 今のうちにこっちへ逃げてください!」
木々の陰から若い男性が顔を出す。
男性の傍には複数人の兵士がいて、弓を構えている。
「彼女達の逃走を援護しなさい! 射て、射て!」
「「「「「ハッ!」」」」」
男性の指示を受けて、兵士達がどんどん矢を射かけてきた。
彼らが何者であるかはわからない。しかし、この状況で選択肢はなかった。
「みんな、アッチに逃げるわよ!」
「うん」
「わかったわ!」
レーナとローナが先に逃げて、エベリアが続く。
「グギャアアアアアアアアッ!」
「うん、ごめんね?」
鱗を纏った大熊が追いかけてくるが、アイシスがその腕を掴んで投げ飛ばす。
背中を地面に打ちつけた大熊の頭部を踏みつけて頭蓋骨を粉砕させる。
「お、おお……」
「それじゃ、行こっか」
兵士達が慄いている中、アイシスがスタスタと仲間の後を追う。
援護射撃のおかげでモンスターの巣から脱して、『戦乙女の歌』は窮地から逃げることができた。
「ハア、ハア……」
「こ、ここまで来れば大丈夫ね……」
「レーナ、ローナ、大丈夫? お水飲める?」
モンスターは追ってきていない。レーナとローナが地面に倒れこんだ。
二人ともかなり疲労しているが、目立った怪我はない。アイシスが渡した水筒に口を付けて水を飲んでいる。
エベリアは安堵に胸を撫で下ろした。危機を脱したようである。
「フウ……助かったか」
「大丈夫ですか、お怪我はないですか?」
兵士達を率いていた若い男性が気づかわしげに訊ねてくる。
物腰からそれなりに身分の人間だろうとエベリアが居住まいを正した。
「はい、私達は大丈夫です。ところで、貴方は……?」
「ああ、申し遅れました。ローテス伯爵家の当主をしております、キンベル・ローテスと申します」
「ああ、貴方が……!」
ローテス伯爵というと、今回の仕事の依頼主である。
「どうやら……私共の不手際によって、転移門の移動先がずれてしまったようです。転移門を使って冒険者を迎えるのが初めてのため、座標を誤ってしまったみたいでして。皆様には大変、ご迷惑をおかけしました」
「誤って……ですか」
「はい。町に転移していただく予定だったのですが、座標を誤って近くの平原を指定してしまったようです。こちらに転移門による光の柱が上がっているのを見て、慌てて迎えに来たのです」
「…………」
エベリアが疑わしそうな顔をした。
転移門は特定の座標を指定して、そのポイントに対象者を送り出す魔道具である。
座標を間違えれば、もちろん別の場所に転送されてしまう。
(本当に事故だったのか? もしかすると、故意にモンスターの巣の中に送り込んだんじゃ……)
普通はそんなことはしないだろうが……エイルーン帝国の評判を考慮するとそんな疑念が生じてしまう。
「ねえねえ。そっちのお兄さん、怪我しているみたいだけど大丈夫?」
すると、仲間の介抱をしていたアイシスが横から声をかけてくる。
「肩の怪我、早く止血しないと死んじゃうよ?」
「あ……」
エベリアも遅れて気がついた。
依頼主である青年……キンベルは肩に怪我をしていた。かなり深そうな怪我である。
他の兵士達も大小の負傷があって、モンスターに襲われたものと思われた。
転移門を使用した際に生じる光の柱が町の外から上がっているのを見て、モンスターに襲われながらも駆けつけた証拠である。
「わかりました……事故では仕方がありませんね」
故意にやったのであれば、彼らがこんなに負傷することもなかったはず。
エベリアは目の前の男に悪意はないのだろうと判断した。
「とりあえず、話は後にしましょう。まずは怪我人の手当てを」
「そうですね……後日、改めて謝罪と賠償の話をさせていただきます」
「私、怪我に効く薬草を持ってるよ。使う?」
空気の読めないアイシスが腰に付けた道具袋から薬草を取り出した。
「これ、怪我したところに塗っておくと楽になるから、お兄さんにあげるね」
「ああ。どうも、ありがとうござ…………は?」
薬草を渡されたキンベルが大きく目を見開く。
彼の視線の先には「ニコッ!」と子供っぽい笑顔のアイシスがいる。
「…………可憐だ」
「ああ……またなのね」
キンベルが顔を赤くして溜息をこぼすのを見て、エベリアが眉間にシワを寄せる。
アイシスは顔が良い。
貴族の令嬢のような整った顔立ちをしていながら、表情は無邪気であどけなく、性格は天真爛漫そのもの。
王都のギルドでもアイシスに惚れるものが後を絶たず、非公認のファンクラブまであった。
それに加えて……今のアイシスはモンスターの返り血を浴びている。
アイシスは血が似合うのだ。白い肌を返り血が赤く染めている姿は凄艶なメイクのようであり、一目見れば夢にまで出るような妖しい美しさがあるのだ。
「……私だってようやく慣れてきたところ。始めて見た人には無理もないわね」
「どうしたの、大丈夫?」
「だ、だだだだ、大丈夫です。失礼いたしました……!」
アイシスに顔を覗き込まれ、キンベルが慌てた様子でそっぽを向く。
「へ、兵士の応急手当が終わったら町に案内しますので、少々お待ちを……!」
「……変な人だね。あのお兄さん」
逃げるように去っていくキンベルに、アイシスが首を傾げる。
「放っておいてあげなさい……純情なんでしょ」
きっと、キンベルはしばらくアイシスの美貌が目に焼き付いて離れないだろう。
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