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屋敷編
第3章 決行
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その後も俺達は何度も計画に穴がないかを確認し、決行の金曜日に向けて調整を行った。
元々、遠慮なく意見を述べる事ができていたレイラは最初の2日程度でみんなと打ち解ける事ができていた。
そして......
「いよいよ明日、作戦を決行に移すぞ!お前達、準備はいいな?」
ヘンリーがレイラやジョシュア達の顔を1人ずつ見ながら号令をかける。
「途中、ここまでに些細なトラブルもあったがこの作戦必ず成功させるぞ。」
「おう!」
ヘンリーの言葉に仲間達一同は自信満々な声で応える。
因みにヘンリーが言った些細なトラブルとはレイラが髪をバッサリ切った日の翌日の事であった。
※
時刻は確か昼過ぎの事であった。
作戦会議の途中休憩の時である。
「あのぉ。すみません。」
「はい?」
俺達のスラムに訪ねてきた人物がいた。
1人は初老の物腰柔らかい男性、もう一人は俺達とさほど年齢差はないであろう若い女性であった。
初老の男性が話を続ける。
「この辺りで金髪の若い女性を見ませんでしたか?名前はレイラと言うのですが......」
これを聞いたとき、俺達の背中は冷や汗がどっと出たのが分かるくらい驚いた。
その時彼らの前にいたのはヘンリー、レイラ、オリバーであった。そう、レイラ本人が彼らの目の前にいたのである。
ただ、彼らは気づいていない様子だった。
髪を切って服装も彼らが知っているレイラとは似ても似つかなかったのだろう。
「さあ?この辺では見かけてないですねぇ。」
咄嗟にヘンリーが答えた。
「そうですか、お手間をかけました。では失礼いたします。」
老人と女性は会釈をして立ち去った。
「危なかったな、レイラの所の使用人だろ?」
「ええ、家の執事とメイドよ。」
髪を切って、印象も変えていたお陰でバレずに済んだ。
そんな感じの心臓に悪いエピソードもあった。
彼らには申し訳ないが俺達ももう止まれないところまできている。
「必ず作戦を成功させる!」
ヘンリー達は心を1つにしてその日の深夜に屋敷へと向かいだした。
屋敷へ向かう道中はみんな静かであった。
各々が極限まで緊張し、集中しているからである。何せこれから行うのは陳腐な万引きではなく、人○しである。決して許される事の無い大罪だ。
ただ、唯一救いなのはまだ決行まで15時間はある。
屋敷付近にはあっという間に着いて俺達は近くの街の宿を取る。そこでオスカーが口を開く。
「全員よく聞け、まずは緊張をほぐすんだ。これから10時間ほど自由時間を取る。その間各々は心を宥める努力に充てること。」
「但し基本、誰が何をしてても構わないが2つほどルールを設けよう。1つは16時にはこの宿に全員戻ってくること。もう1つは目立った行動は控えること。特にレイラは以前の件もあるのでなるべく誰かと行動を共にしてください。」
そうしてオスカーからの言葉は締め括られた。
その場を解散後、ヘンリーが周りを見渡すがすぐに動こうと言う奴らはいなかった。全員が特に言葉を発さずただ何かを考えているようだった。
しかし、各々10分も経つとその場を離れていった。
お互いが何を考えているのかは分からない。
とりあえずヘンリーもその場を離れて街を探索しながら心を落ち着かせることにした。
街中を軽く探索するがその人混みの中に仲間達の姿はない。
「ほぼ同時に出ていったのに皆どこに向かったのか。」
「まあ、この後が後だ。みんな誰かに干渉されたくないだろうし、俺は俺で適当に時間を潰すか。」
俺はとりあえず行き先も決めずに適当に街を探索する事にした。
スラム街と違い、この辺りは建物が多く、朝から夕方にかけては多数の人々で賑わっている。
当然だが、俺はスラム街出身だ。身なりも綺麗とは言えないし、そもそも金もない。
「てか時間を潰そうにも潰す手段がそもそも無いのでは?レイラも手持ちは無いみたいだったし、他の連中今何してんだろ。」
ふと気づけばまた他の連中の事を気にしていた。
自分では自覚なかったのだが、俺はどうも仲間思いな良い奴だったらしい。
仲間が近くにいないと落ち着かない。
「......やっぱり誰か探すか。」
俺は街中を歩きながら仲間達の姿が無いか辺りを見回す。
10分位歩いたところだろうか。
「ヘンリー!」
突然俺は名前を呼ばれた。
見ると、オリバーだった。
「オリバーか、お前らどこ行ってたんだ。」
「うん?みんな別行動してるから他の奴らは知らないけど俺はそこの店の中で商品眺めてた。」
「万引きとかして変に騒ぎ起こしてねぇだろうなぁ?」
「いやいや、流石の俺も計画なしにそんな事しねぇよ。」
「まあ、そうか......そうだよな。それにしても他の奴らはどこ行ったんだろうな。」
「さあ?あ、でも外に出た時にレイラはここから南の方......レイラの家の方に向かっていったような......」
「え!?」
「いや、流石にレイラも今更心変わりはしないだろうから大丈夫......だろ?」
オリバーは喋っていて途端に不安になったのか声が小さくなった。
「......」
「......」
そして訪れた沈黙。
「一応俺は確認しに行ってくるわ。」
「うん。任せた。」
そうして俺はオリバーと別れ、レイラの屋敷の方へと向かった。
※
5分位歩くとレイラはすぐに見つかった。
ただ、レイラは一人では無かった。
遠目からレイラを見ると同年代位の女性と話しているのが分かった。
「あいつは以前俺らのスラムに訪ねてきたレイラの家のメイド......」
なんとレイラと話していた相手は自分の家の使用人だったのだ。
「まさか本当に裏切ったんじゃないだろうなぁ?」
暫く様子を遠くから覗いていると、やがて2人は別れていった。
俺はそのタイミングでレイラに声をかけた。
「よぉ、レイラ。」
俺が声をかけるとレイラはなぜか怪訝そうな顔をこちらに向けた。
「......あなたもしかして私達の様子見てた?」
レイラは鋭く言い当てた。
「いや、お前を見かけたのはたまたまだし、誰かと話してるみたいだったから遠目で見てただけだぞ。」
「そう?それより少し場所を変えましょう。まずいことになったかもしれないからあなたにだけでも伝えておいた方がいいでしょ。」
俺とレイラ人気の無いとある飲食店の裏に場所を移した。
「それで?レイラと話していた娘、以前スラムを訪ねてきたメイドだよな?何を話していたんだ?」
「単刀直入に答えるとあの娘、この姿の私が誰か分かっていたみたいなのよ。」
「は?」
レイラの言葉を聞いて俺は頭がフリーズした。
「ちょっと......ヘンリー?」
呆然とした俺に対してレイラが呼びかける。
「安心して。流石にあの娘も私達の計画を知っている訳ではないから。単に私個人に対していつ家に戻るのか聞いてきただけだし。」
「おお......悪い。それで?何であのメイドはお前が分かったんだ?」
「前にスラムに来た時、正直半信半疑だったみたいだけど私の体型や顔立ちで何となく分かったみたい。あの娘、私の専属メイドだったし......」
「ということはあの執事も気づいていたのか?」
「いいえ。気づかれたのはメイドだけみたいよ。でも安心して!あの娘今日は非番でたまたま私を見つけただけみたいだから。夜の計画に問題はないわ。」
「ああ、分かった。でも用心した方が良いかもな。くれぐれも軽率に計画に関することを話さないようにしろよ。どこで聞かれているか分からないからな。」
「ええ。またあとで。」
俺は一旦レイラと別れることにした。
その後は特に何をする訳でもなく、ぶらぶらした後、約束の16時が近づいてきたので待ち合わせの宿へと戻る。
15時45分頃にはチラホラと他のメンバーも戻り始め、最後にオリバーが15時57分とかなりギリギリに戻ってきた。
「全員戻ってきたな。」
オスカーが全員を確認した後、話し始める。
「この休憩時間で全員緊張はほぐれたか?」
「はい!」
「ああ......」
「うん。」
「おう。」
「うん。」
オスカーの質問に対し、俺達は疎らに返事をした。
「では、改めて計画の最終確認だ。作戦決行は本日の21時予定。但し、使用人達が残業する可能性を考慮して屋敷の庭に潜入後レイラには使用人の帰宅人数を確認してもらい、レイラの許可が出てから作戦を実行するものとする。」
1時間程計画を何度も全員で確認し、頭に叩き込んだところでいよいよレイラの屋敷に向かう。
俺達はそれぞれ屋敷の西側と東側に別れて屋敷の木々の上で様子を確認する。ただ西側と東側、互いの円滑な連絡手段は無いのでオリバーとレジーが屋敷の裏を通じて連絡を取る。
屋敷の西側メンバーは俺(ヘンリー)、オリバー、レイラで東側メンバーがオスカー、ジョシュア、レジーである。
細かい伝達はスキを見てオリバーとレジーが行い、レイラの確認で使用人が全員帰ったら西側がライトで合図を行い、屋敷へ潜入する。
時刻は17時半、打ち合わせ通りに俺達は屋敷の木々の上に潜入した。
「これどう登るの?ヘンリー引っ張って!」
レイラだけ木登りができなかった為、何とか引っ張って登らせた。
そこからはただ木々の上で時間が経つのを待つだけである。
木々の上ではひたすらレイラだけが屋敷の人間の様子を監視、それ以外のメンバーは基本暇してる。
「地味すぎる。やる事が無いと逆に疲れるな。」
オリバーがぼやく。一方、レイラは真剣な眼差しで屋敷を見ている。
「外に出ている使用人を見るに、あれから誰か新しく雇ったって事はなさそうね。これならいつも通りのシフトだろうし、全員おおよその帰宅時間は分かるから作戦が成功さえしてくれれば問題なさそうね。」
「そうか。ならレイラの情報を東側にも伝えて全員で見逃しが無いように監視しよう。」
レイラ一人にずっと監視させるより、その方が効率的で休憩もできるので効率的との判断である。
そして2時間ほど経過し、使用人がちらほら帰宅を始める。
「使用人が大分減ってきたな。後はあの時の執事とメイド2人か。」
夜19時半過ぎ、使用人は全部で残すところ3人である。
「この3人が帰宅して、当主達が寝ればいよいよ作戦実行に移せるな。」
「そうね。でも執事とメイドの内の一人、メイド長は残業する可能性もあるわ。」
それから約1時間、レイラの言ったことは現実味を帯びてくる。
「あの2人、帰る気配なさそうだな。」
時刻は夜8時半、執事とメイド長は未だに屋敷から出てこない。
「どうする?予定では9時決行だったけど時間を変える?」
「時間が時間だ。9時決行は無理だろう。オリバー、向こうに通達しろ。」
「分かった。行ってくるよ。」
10分後、オリバーが戻ってきた。
「オスカー達も同じ事考えてたみたい。」
どうやら様子を見て、オスカーも同じ事を考えていたらしい。
そして決行は延長になり、9時から10時に時間が変更になったが、正直10時でも難しいかもしれない。
最悪、決行中止も視野に入れなければならない。
時間が過ぎていく中、とうとう10時も難しくなってきた。
そして時間が過ぎるに過ぎて現在時刻は9時45分、ここで屋敷に動きが見えた。メイド長が帰宅したのだ。これで残るは執事のみ。
しかし、一方で執事の方は帰宅する様子が見られない。
「こりゃ10時も無理だな。オリバー、もう一度向こうに伝えてきてくれ。」
「おう!じゃ言ってくるわ。」
そう言ってオリバーはこっそりと東側へと向かった。
※※※
一方、屋敷では執事はレイラの父、アーロンに付き添っていた。
「旦那様、大丈夫ですか?」
「......レイラ......」
レイラがいなくなってというもの、アーロンは酷く憔悴しきっていた。
「旦那様、お嬢様は明日も手の空いている使用人に探してもらいますから今日はお休みになりましょう。」
「ああ、すまんな。最近はお前にはこんな遅くまで居てもらって申し訳なく思っている。」
「いえいえ、お嬢様が居なくなってお辛い思いをされているのはよく分かっておりますから。」
「本当にすまんな。これ以上はお前が家に帰れなくなるだろ。帰宅してもらって良い。」
屋敷の中でこの様なやり取りの末、遂に執事も帰宅した。この瞬間を便利達が見逃すはずが無かった。
「よし、やっと執事が帰ったみたいだぞ。オリバー、向こうに伝えろ。0時丁度に計画実行だ!」
※※※
「みんな準備はいいか?行くぞ!」
「「おう!」」
時間になり、ついにやるのだ。俺達は金を得て、そして人を今から○すのだ。
そして、西と東それぞれから俺達が同時になだれ込む。
まず屋敷に入ったら、オスカー達は事前にレイラから聞いていた情報から金目の物がある部屋へと向かう。それと同時に俺達はレイラの父親の殺害だ。
「お父様の寝室はこっちよ。」
「おう!オリバー!覚悟はできてるな?」
「だ、大丈夫!」
「よし、では開始するぞ!」
もう後には引けない!作戦通りに俺たちは動く。まずはレイラの母親の殺害である。
「母親も殺すの?」
「ええ、お母様に至っては私は生まれてから一度も優しくして貰った覚えはないもの。」
「お父様!」
「その声、レイラか!」
レイラの突然の声にアーロンの動きが止まる。
「今だ、オリバー!いくぞ!」
「おう!」
ヘンリーとオリバーがアーロンの腹部をとっさに刺した。
「ぐぅぅ、貴様ら......な、にを......」
だが、アーロンの息を止めるには至らない。
「レ......イ!ラ......」
弱々しい声でアーロンは娘の名前を呼ぶ。
「た......すけ......」
アーロンは娘に助けを請おうとした。
しかし、本人の希望は最悪の娘の一言で崩れ去る。
「2人とも何してるの!早く片をつけて!」
「おう!」
「うん!」
ヘンリーとオリバーは更に今度は胸部にナイフを振りかざす。
「そ......んな......レイラ......」
今度こそ致命傷である。最悪の娘の裏切りにこの世の終わりの様な顔を浮かべたままアーロンは息絶えた。
その後の俺たちの行動は速い!
すぐさま屋敷の入口に向かい、金品を盗む方に周ってたオスカー達と合流し、逃亡する。
※※※
無事に金品を盗み、レイラの両親を殺害するに至ったヘンリーとレイラ達。
しかし、人の殺害という禁忌を犯した者達の苦難はここから始まる。
屋敷編 ~完~
元々、遠慮なく意見を述べる事ができていたレイラは最初の2日程度でみんなと打ち解ける事ができていた。
そして......
「いよいよ明日、作戦を決行に移すぞ!お前達、準備はいいな?」
ヘンリーがレイラやジョシュア達の顔を1人ずつ見ながら号令をかける。
「途中、ここまでに些細なトラブルもあったがこの作戦必ず成功させるぞ。」
「おう!」
ヘンリーの言葉に仲間達一同は自信満々な声で応える。
因みにヘンリーが言った些細なトラブルとはレイラが髪をバッサリ切った日の翌日の事であった。
※
時刻は確か昼過ぎの事であった。
作戦会議の途中休憩の時である。
「あのぉ。すみません。」
「はい?」
俺達のスラムに訪ねてきた人物がいた。
1人は初老の物腰柔らかい男性、もう一人は俺達とさほど年齢差はないであろう若い女性であった。
初老の男性が話を続ける。
「この辺りで金髪の若い女性を見ませんでしたか?名前はレイラと言うのですが......」
これを聞いたとき、俺達の背中は冷や汗がどっと出たのが分かるくらい驚いた。
その時彼らの前にいたのはヘンリー、レイラ、オリバーであった。そう、レイラ本人が彼らの目の前にいたのである。
ただ、彼らは気づいていない様子だった。
髪を切って服装も彼らが知っているレイラとは似ても似つかなかったのだろう。
「さあ?この辺では見かけてないですねぇ。」
咄嗟にヘンリーが答えた。
「そうですか、お手間をかけました。では失礼いたします。」
老人と女性は会釈をして立ち去った。
「危なかったな、レイラの所の使用人だろ?」
「ええ、家の執事とメイドよ。」
髪を切って、印象も変えていたお陰でバレずに済んだ。
そんな感じの心臓に悪いエピソードもあった。
彼らには申し訳ないが俺達ももう止まれないところまできている。
「必ず作戦を成功させる!」
ヘンリー達は心を1つにしてその日の深夜に屋敷へと向かいだした。
屋敷へ向かう道中はみんな静かであった。
各々が極限まで緊張し、集中しているからである。何せこれから行うのは陳腐な万引きではなく、人○しである。決して許される事の無い大罪だ。
ただ、唯一救いなのはまだ決行まで15時間はある。
屋敷付近にはあっという間に着いて俺達は近くの街の宿を取る。そこでオスカーが口を開く。
「全員よく聞け、まずは緊張をほぐすんだ。これから10時間ほど自由時間を取る。その間各々は心を宥める努力に充てること。」
「但し基本、誰が何をしてても構わないが2つほどルールを設けよう。1つは16時にはこの宿に全員戻ってくること。もう1つは目立った行動は控えること。特にレイラは以前の件もあるのでなるべく誰かと行動を共にしてください。」
そうしてオスカーからの言葉は締め括られた。
その場を解散後、ヘンリーが周りを見渡すがすぐに動こうと言う奴らはいなかった。全員が特に言葉を発さずただ何かを考えているようだった。
しかし、各々10分も経つとその場を離れていった。
お互いが何を考えているのかは分からない。
とりあえずヘンリーもその場を離れて街を探索しながら心を落ち着かせることにした。
街中を軽く探索するがその人混みの中に仲間達の姿はない。
「ほぼ同時に出ていったのに皆どこに向かったのか。」
「まあ、この後が後だ。みんな誰かに干渉されたくないだろうし、俺は俺で適当に時間を潰すか。」
俺はとりあえず行き先も決めずに適当に街を探索する事にした。
スラム街と違い、この辺りは建物が多く、朝から夕方にかけては多数の人々で賑わっている。
当然だが、俺はスラム街出身だ。身なりも綺麗とは言えないし、そもそも金もない。
「てか時間を潰そうにも潰す手段がそもそも無いのでは?レイラも手持ちは無いみたいだったし、他の連中今何してんだろ。」
ふと気づけばまた他の連中の事を気にしていた。
自分では自覚なかったのだが、俺はどうも仲間思いな良い奴だったらしい。
仲間が近くにいないと落ち着かない。
「......やっぱり誰か探すか。」
俺は街中を歩きながら仲間達の姿が無いか辺りを見回す。
10分位歩いたところだろうか。
「ヘンリー!」
突然俺は名前を呼ばれた。
見ると、オリバーだった。
「オリバーか、お前らどこ行ってたんだ。」
「うん?みんな別行動してるから他の奴らは知らないけど俺はそこの店の中で商品眺めてた。」
「万引きとかして変に騒ぎ起こしてねぇだろうなぁ?」
「いやいや、流石の俺も計画なしにそんな事しねぇよ。」
「まあ、そうか......そうだよな。それにしても他の奴らはどこ行ったんだろうな。」
「さあ?あ、でも外に出た時にレイラはここから南の方......レイラの家の方に向かっていったような......」
「え!?」
「いや、流石にレイラも今更心変わりはしないだろうから大丈夫......だろ?」
オリバーは喋っていて途端に不安になったのか声が小さくなった。
「......」
「......」
そして訪れた沈黙。
「一応俺は確認しに行ってくるわ。」
「うん。任せた。」
そうして俺はオリバーと別れ、レイラの屋敷の方へと向かった。
※
5分位歩くとレイラはすぐに見つかった。
ただ、レイラは一人では無かった。
遠目からレイラを見ると同年代位の女性と話しているのが分かった。
「あいつは以前俺らのスラムに訪ねてきたレイラの家のメイド......」
なんとレイラと話していた相手は自分の家の使用人だったのだ。
「まさか本当に裏切ったんじゃないだろうなぁ?」
暫く様子を遠くから覗いていると、やがて2人は別れていった。
俺はそのタイミングでレイラに声をかけた。
「よぉ、レイラ。」
俺が声をかけるとレイラはなぜか怪訝そうな顔をこちらに向けた。
「......あなたもしかして私達の様子見てた?」
レイラは鋭く言い当てた。
「いや、お前を見かけたのはたまたまだし、誰かと話してるみたいだったから遠目で見てただけだぞ。」
「そう?それより少し場所を変えましょう。まずいことになったかもしれないからあなたにだけでも伝えておいた方がいいでしょ。」
俺とレイラ人気の無いとある飲食店の裏に場所を移した。
「それで?レイラと話していた娘、以前スラムを訪ねてきたメイドだよな?何を話していたんだ?」
「単刀直入に答えるとあの娘、この姿の私が誰か分かっていたみたいなのよ。」
「は?」
レイラの言葉を聞いて俺は頭がフリーズした。
「ちょっと......ヘンリー?」
呆然とした俺に対してレイラが呼びかける。
「安心して。流石にあの娘も私達の計画を知っている訳ではないから。単に私個人に対していつ家に戻るのか聞いてきただけだし。」
「おお......悪い。それで?何であのメイドはお前が分かったんだ?」
「前にスラムに来た時、正直半信半疑だったみたいだけど私の体型や顔立ちで何となく分かったみたい。あの娘、私の専属メイドだったし......」
「ということはあの執事も気づいていたのか?」
「いいえ。気づかれたのはメイドだけみたいよ。でも安心して!あの娘今日は非番でたまたま私を見つけただけみたいだから。夜の計画に問題はないわ。」
「ああ、分かった。でも用心した方が良いかもな。くれぐれも軽率に計画に関することを話さないようにしろよ。どこで聞かれているか分からないからな。」
「ええ。またあとで。」
俺は一旦レイラと別れることにした。
その後は特に何をする訳でもなく、ぶらぶらした後、約束の16時が近づいてきたので待ち合わせの宿へと戻る。
15時45分頃にはチラホラと他のメンバーも戻り始め、最後にオリバーが15時57分とかなりギリギリに戻ってきた。
「全員戻ってきたな。」
オスカーが全員を確認した後、話し始める。
「この休憩時間で全員緊張はほぐれたか?」
「はい!」
「ああ......」
「うん。」
「おう。」
「うん。」
オスカーの質問に対し、俺達は疎らに返事をした。
「では、改めて計画の最終確認だ。作戦決行は本日の21時予定。但し、使用人達が残業する可能性を考慮して屋敷の庭に潜入後レイラには使用人の帰宅人数を確認してもらい、レイラの許可が出てから作戦を実行するものとする。」
1時間程計画を何度も全員で確認し、頭に叩き込んだところでいよいよレイラの屋敷に向かう。
俺達はそれぞれ屋敷の西側と東側に別れて屋敷の木々の上で様子を確認する。ただ西側と東側、互いの円滑な連絡手段は無いのでオリバーとレジーが屋敷の裏を通じて連絡を取る。
屋敷の西側メンバーは俺(ヘンリー)、オリバー、レイラで東側メンバーがオスカー、ジョシュア、レジーである。
細かい伝達はスキを見てオリバーとレジーが行い、レイラの確認で使用人が全員帰ったら西側がライトで合図を行い、屋敷へ潜入する。
時刻は17時半、打ち合わせ通りに俺達は屋敷の木々の上に潜入した。
「これどう登るの?ヘンリー引っ張って!」
レイラだけ木登りができなかった為、何とか引っ張って登らせた。
そこからはただ木々の上で時間が経つのを待つだけである。
木々の上ではひたすらレイラだけが屋敷の人間の様子を監視、それ以外のメンバーは基本暇してる。
「地味すぎる。やる事が無いと逆に疲れるな。」
オリバーがぼやく。一方、レイラは真剣な眼差しで屋敷を見ている。
「外に出ている使用人を見るに、あれから誰か新しく雇ったって事はなさそうね。これならいつも通りのシフトだろうし、全員おおよその帰宅時間は分かるから作戦が成功さえしてくれれば問題なさそうね。」
「そうか。ならレイラの情報を東側にも伝えて全員で見逃しが無いように監視しよう。」
レイラ一人にずっと監視させるより、その方が効率的で休憩もできるので効率的との判断である。
そして2時間ほど経過し、使用人がちらほら帰宅を始める。
「使用人が大分減ってきたな。後はあの時の執事とメイド2人か。」
夜19時半過ぎ、使用人は全部で残すところ3人である。
「この3人が帰宅して、当主達が寝ればいよいよ作戦実行に移せるな。」
「そうね。でも執事とメイドの内の一人、メイド長は残業する可能性もあるわ。」
それから約1時間、レイラの言ったことは現実味を帯びてくる。
「あの2人、帰る気配なさそうだな。」
時刻は夜8時半、執事とメイド長は未だに屋敷から出てこない。
「どうする?予定では9時決行だったけど時間を変える?」
「時間が時間だ。9時決行は無理だろう。オリバー、向こうに通達しろ。」
「分かった。行ってくるよ。」
10分後、オリバーが戻ってきた。
「オスカー達も同じ事考えてたみたい。」
どうやら様子を見て、オスカーも同じ事を考えていたらしい。
そして決行は延長になり、9時から10時に時間が変更になったが、正直10時でも難しいかもしれない。
最悪、決行中止も視野に入れなければならない。
時間が過ぎていく中、とうとう10時も難しくなってきた。
そして時間が過ぎるに過ぎて現在時刻は9時45分、ここで屋敷に動きが見えた。メイド長が帰宅したのだ。これで残るは執事のみ。
しかし、一方で執事の方は帰宅する様子が見られない。
「こりゃ10時も無理だな。オリバー、もう一度向こうに伝えてきてくれ。」
「おう!じゃ言ってくるわ。」
そう言ってオリバーはこっそりと東側へと向かった。
※※※
一方、屋敷では執事はレイラの父、アーロンに付き添っていた。
「旦那様、大丈夫ですか?」
「......レイラ......」
レイラがいなくなってというもの、アーロンは酷く憔悴しきっていた。
「旦那様、お嬢様は明日も手の空いている使用人に探してもらいますから今日はお休みになりましょう。」
「ああ、すまんな。最近はお前にはこんな遅くまで居てもらって申し訳なく思っている。」
「いえいえ、お嬢様が居なくなってお辛い思いをされているのはよく分かっておりますから。」
「本当にすまんな。これ以上はお前が家に帰れなくなるだろ。帰宅してもらって良い。」
屋敷の中でこの様なやり取りの末、遂に執事も帰宅した。この瞬間を便利達が見逃すはずが無かった。
「よし、やっと執事が帰ったみたいだぞ。オリバー、向こうに伝えろ。0時丁度に計画実行だ!」
※※※
「みんな準備はいいか?行くぞ!」
「「おう!」」
時間になり、ついにやるのだ。俺達は金を得て、そして人を今から○すのだ。
そして、西と東それぞれから俺達が同時になだれ込む。
まず屋敷に入ったら、オスカー達は事前にレイラから聞いていた情報から金目の物がある部屋へと向かう。それと同時に俺達はレイラの父親の殺害だ。
「お父様の寝室はこっちよ。」
「おう!オリバー!覚悟はできてるな?」
「だ、大丈夫!」
「よし、では開始するぞ!」
もう後には引けない!作戦通りに俺たちは動く。まずはレイラの母親の殺害である。
「母親も殺すの?」
「ええ、お母様に至っては私は生まれてから一度も優しくして貰った覚えはないもの。」
「お父様!」
「その声、レイラか!」
レイラの突然の声にアーロンの動きが止まる。
「今だ、オリバー!いくぞ!」
「おう!」
ヘンリーとオリバーがアーロンの腹部をとっさに刺した。
「ぐぅぅ、貴様ら......な、にを......」
だが、アーロンの息を止めるには至らない。
「レ......イ!ラ......」
弱々しい声でアーロンは娘の名前を呼ぶ。
「た......すけ......」
アーロンは娘に助けを請おうとした。
しかし、本人の希望は最悪の娘の一言で崩れ去る。
「2人とも何してるの!早く片をつけて!」
「おう!」
「うん!」
ヘンリーとオリバーは更に今度は胸部にナイフを振りかざす。
「そ......んな......レイラ......」
今度こそ致命傷である。最悪の娘の裏切りにこの世の終わりの様な顔を浮かべたままアーロンは息絶えた。
その後の俺たちの行動は速い!
すぐさま屋敷の入口に向かい、金品を盗む方に周ってたオスカー達と合流し、逃亡する。
※※※
無事に金品を盗み、レイラの両親を殺害するに至ったヘンリーとレイラ達。
しかし、人の殺害という禁忌を犯した者達の苦難はここから始まる。
屋敷編 ~完~
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