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とあるパティシエたち 2
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数日後。
店の営業時間が過ぎたので後片付けをする従業員と竜太達。
従業員が全員帰り、全ての作業を終え店を閉めると、竜太が寅助に話しかけた。
「今日はどうする?」
「勿論、行くに決まっているだろうっ。何せ明日は定休日だからなっ」
寅助は行くのは同然だろうと言わんばかりに声をあげた。
客商売をする都合上、口臭の原因でもあるニンニクや酒といった物を避ける必要があった。
その為、日頃から出来るだけ避ける食生活をしていた。
「今日は飲むぞ!」
寅助は久しぶりに酒が沢山飲めると思い浮き浮きしていた。
「店はどうする?」
「いつもの店で良いんじゃないか」
「分かった」
行く店を決めた二人は手早く着替えると、店を施錠し目的の店へと向かった。
店を出た二人は暫く歩くと、目的の店の前に来た。
竜太が引き戸に手を掛けて開けるて、店の中に入って来た。
「こんばんわっ」
「ども」
竜太は笑顔で手を振り、寅助は少しビクビクしながら声を掛けて来た。
「ん・・・・・・いらっしゃい」
カウンターの向こうの厨房でグラスを拭いている店長が頷いた。
そして、二人は適当な席に座ると、店長が水と氷が入ったガラスのコップを二人の側に優しく置き、側に水が入ったピッチャーも置くと同時に二人は注文した。
「「肉の大サイズ二つで焼き方はミディアムレアで、ニンニクたっぷりで後、とりあえず生二つ」」
竜太達の注文を聞いて店長は頷くと奥へ引っ込んで行った。
「・・・・・・ふぅ~」
店長が奥に引っ込むのを見て寅助は息を吐いた。
「何だ。まだ、慣れないのか?」
竜太がそう訊ねると、寅助は頬を掻きながら気まずそうな顔をしていた。
「いや、どうもな。店長の視線が怖くて」
「慣れたら別に気にしないと思うが。それに店長は見た目に反して良い人だぞ」
「俺はまだこの店にそんなに来てないから慣れないんだ」
寅助は店に入って注文しているというに、申し訳なさそうに呟く。
元々、この店には前の店長の森田が良く通う店であった。
竜太も何度か一緒に入った事があった。
最初こそ、蜥蜴人間の見た目と視線に吃驚したが、何度も通っている内に慣れてしまった。
「異世界の人が、こっちの世界で店を出す事があるのは知っているけど、この店もそういう感じかな?」
「かもな。向こうの世界と行き来した頃に、この店が出来たって、森田店長が言っていたし」
「へぇ、じゃあ、森田さんはこの店が出来た時から来ているのか?」
「らしいな。それに、この店を建てる際、色々と尽力したそうだぜ」
「ふ~ん。そうなんだ」
寅助は店に勤める際に、何度か森田には会った事があるので顔は知っていた。
気のいい人という雰囲気を出している人であった。
そんな人なので、この店を建てる際に手を貸したのだろうと思う寅助。
「お待ち」
店長がそう言って、お盆にガラスのジョッキ二つと小鉢二つを乗せて奥から戻って来た。
竜太達の前にそれらを置いた。
「おっ、来た」
「今日の突き出しは・・・何だ。これ?」
竜太は割り箸を割りつつ、小鉢に盛られた料理を見た。
黄金色の汁の中に、黄色の麺が入っており、その上に小口切りされた緑色の葱が乗っていた。
「ラーメン? ミニサイズだな」
小鉢を持ちつつ突き出しでラーメンというのは、今まで行った事がある居酒屋では無かったなと思う寅助。
「この店って、突き出しは色々と出るからな。まずは、食べてみるか」
竜太がそう言ってビールを飲む前にラーメンをすする。
ちゅるちゅると音を立てて汁に絡んでいる麺が口の中に入って行く。
咀嚼し飲み込むと、竜太はご満悦な顔をしていた。
「美味いな! こんなラーメン始めた食べたぞっ」
竜太が絶賛するので、寅助も箸で麺を掴み啜った。
「・・・・・・うまっ」
一口食べるなり声を上げて驚く寅助。
濃醇な味わいだが、しつこくないコクを持っていた。
細い麺に良く絡んでおり、飲み込むのも躊躇う程であった。
寅助はもう一口味わおうと思ったが、小鉢の中には麺は無くスープだけであった。
「・・・・・・もうちょっと、一口でいいから食べたかった」
小鉢なので、それほど量が入らないと分かっているのだが、寅助は残念そうな顔で呟いた。
「・・・確かに美味しかったな。店長、これお代わり出来る?」
小鉢の中に入っているスープも一滴も残さないとばかいりに飲み干した竜太は店長に訊ねた。
「ん・・・・・・お代わりだけじゃなくて、もっと盛を多く出来るぞ」
「じゃあ、小鉢じゃなくて大鉢で!」
店長がお代わりだけでは無く、盛を多く出来ると言うと、寅助が大鉢で注文した。
「お前さ・・・・・・まぁ良いか。俺はお変わりで」
「ん・・・・・・」
寅助の反応を見て苦笑いしつつ、お代わりを注文する竜太。
突き出しがくるまでの間、二人はジョッキを持って軽くぶつけると喉に流し込んだ。
少しすると、突き出しが来て勢いよく食べる寅助。
竜太は先程あまりに美味しかったので直ぐに食べ終わったので、今度は味わいながら少しずつ食べていった。
やがて、二人の突き出しが無くなると、香ばしく焼かれた肉の匂いが店内に漂った。
店長が皿に盛られたマンガ肉を持って、二人の前に置いた。
「お待ち。肉の大サイズ。ニンニクたっぷりの焼き方はミディアムレア。味付けはお好みで」
皿の上に盛られたマンガ肉の香りが竜太達の鼻腔をくすぐる。
「やばいな。この匂いだけでご飯が食べられそうだ」
「分かる。それにこのニンニクの匂いが良い」
竜太は骨の両側の部分を両手で掴むと、匂いを嗅いだ。
以前、竜太は明日休日なので、肉にニンニクを掛けて欲しいと頼んだ事があった。
注文を受けた店長は焼いている肉にニンニクのペーストを塗り焼いてくれた。
ニンニクの香ばしい香りと肉の味が良くマッチして、この店に来る時は頼むようになった。
寅助も竜太がそう注文したので、頼んでみるとその味が気に入り頼むようになった。
「じゃあ」
「頂きます」
二人は骨の両側の部分を両手で掴むと、肉に齧り付いた。
少し咀嚼し飲み込むと、また肉に齧り付いた。
無言で食べ進める二人。
時折、喉を潤す為か、ジョッキを掴み喉に流し込み肉を齧りついた。
二人が食べている傍で店長はグラス拭きを再開していた。
「はぁ~、食べた」
「相変わらず美味いな。この店は」
肉片など一欠けらも無いと言う程綺麗な骨を皿に置いて、笑顔で息を吐く二人。
ニンニクの匂いがしていたが、二人は気にしなかった。
「もう一本行くか?」
「そうだな。ついでに、酒も何か」
竜太がまた注文しようと言うと、寅助も同意しついでに酒を頼もうかと思っていると所で、引き戸が開いた。
「此処だよね?」
「凛子の話だと、この店だって・・・ああ、いた」
開かれた引き戸には女性が二人いた。
一人は平均的な身長で清楚で可愛らしい雰囲気を出していた。
もう一人は長身でさっぱりとした爽やかそうな雰囲気を出していた。
「・・・・・・いらっしゃい」
「こんばんわ。でも、本当に蜥蜴人間が店長なんだ」
「凛子から聞いていたけど、驚いたわね」
二人の女性は驚きつつも席に座ると、店長は水が入ったコップとピッチャーとメニューを置いた。
女性達はメニューを見ながら、どれを頼むか話していた。
そんな女性達を見て寅助は言葉を失っていた。
「どうした? ・・・・・・ああ」
竜太は寅助が黙っているので、何を見ているのだろうと思い視線を辿っていくと先程店に入った女性を見ている事が分かり納得した。
女性の一人が寅助の好みであったからだ。
竜太からしたら、もう一人の女性の方が好みであった。
『声を掛けたらどうだ?』
『馬鹿言え、いきなり声を掛けられるか』
竜太が小声でナンパしたらどうだと言うと、寅助は尻込みしていた。
そんな親友に溜め息を吐きつつ、女性達に話すきっかけになりそうな事はないかと、女性達の話に耳を傾ける竜太。
店長はグラス拭きの作業をしていると、竜太達が女性達を見ている事に気付いた。
そして、奥に引っ込んでいった。
戻ってくると、カクテルグラス二つに瓶を手に持っていた。
瓶のコルクを開けると、ポンという音が立った。そして、グラスに注いだ。
グラスには黄緑色の液体が七割ほど注がれると、其処で注ぐのを止めた。
店長はそのグラス二つを持って、女性達の前に置いた。
「え、まだ頼んでないんだけど」
「ウエルカムドリンク? 何かしゃれてるわね」
女性達は置かれたので、飲んで良いと思いグラスを手に取りグラスに口付けた。
「・・・・・・なに、この酒、美味しい!」
「甘いんだけど、くどく無くて、でもキレがある。それで口の中でパチパチと弾ける」
女性達は自分達が飲んだ酒に味に驚きつつ飲んでいた。
「向こうの世界で作られている発泡酒です」
「へぇ、そうなんだ」
「でも、どうしてわたし達に」
店長がどんな酒なのか教えると、女性の一人はは感心していた。
もう一人の爽やかそうな雰囲気を出している女性がどうして出したのか気になり訊ねた。
すると、店長が身体をずらして、竜太達を指差した。
「あちらの方々から」
店長にそう言うのを聞いて竜太達は驚いた。
驚きはしたが、同時に。
((店長、あんた良い人だっ))
竜太達は親指を立てると、店長も親指を立てた。
「あ、どうも」
「ごちそうさまです」
「いやいや」
「わたし達は『パティスリーアンナン』のパティシエでこっちが南郷寅助。わたしは安藤竜太と言います」
「『パティスリーアンナン』 あっ、知ってる」
「良くテレビや雑誌で紹介される店じゃない」
話のきっかけが出来た事で四人は気軽に話し合うようになった。
数日後。
店で知り合った縁により寅助は女性の一人と付き合うようになった。
「今日な、彼女がお店に来てくれるって、SNSで連絡来たんだ⁉」
「へぇ、そうか」
店に出勤してきた寅助が着替えながら、竜太に笑顔でそう報告して来た。
「ああ~、早く来ないかな~」
寅助は嬉しそうに顔を緩ませながら、身体をくるくると回転させていた。
そんな寅助を内心でキモいと思いつつ、笑顔で言う。
「良かったな。じゃあ、店を頑張ってくれ」
「おおっ、任せろっ」
一足先に着替えを終えた寅助はスキップしながら着替え室を出て行った。
「・・・・・・少し前までは恋がしたいとウザイかったが、今は普通にウザイな」
どちらにしても五月蠅いなと思いつつ竜太は着替えを済ませて着替え室を出て行った。
店の営業時間が過ぎたので後片付けをする従業員と竜太達。
従業員が全員帰り、全ての作業を終え店を閉めると、竜太が寅助に話しかけた。
「今日はどうする?」
「勿論、行くに決まっているだろうっ。何せ明日は定休日だからなっ」
寅助は行くのは同然だろうと言わんばかりに声をあげた。
客商売をする都合上、口臭の原因でもあるニンニクや酒といった物を避ける必要があった。
その為、日頃から出来るだけ避ける食生活をしていた。
「今日は飲むぞ!」
寅助は久しぶりに酒が沢山飲めると思い浮き浮きしていた。
「店はどうする?」
「いつもの店で良いんじゃないか」
「分かった」
行く店を決めた二人は手早く着替えると、店を施錠し目的の店へと向かった。
店を出た二人は暫く歩くと、目的の店の前に来た。
竜太が引き戸に手を掛けて開けるて、店の中に入って来た。
「こんばんわっ」
「ども」
竜太は笑顔で手を振り、寅助は少しビクビクしながら声を掛けて来た。
「ん・・・・・・いらっしゃい」
カウンターの向こうの厨房でグラスを拭いている店長が頷いた。
そして、二人は適当な席に座ると、店長が水と氷が入ったガラスのコップを二人の側に優しく置き、側に水が入ったピッチャーも置くと同時に二人は注文した。
「「肉の大サイズ二つで焼き方はミディアムレアで、ニンニクたっぷりで後、とりあえず生二つ」」
竜太達の注文を聞いて店長は頷くと奥へ引っ込んで行った。
「・・・・・・ふぅ~」
店長が奥に引っ込むのを見て寅助は息を吐いた。
「何だ。まだ、慣れないのか?」
竜太がそう訊ねると、寅助は頬を掻きながら気まずそうな顔をしていた。
「いや、どうもな。店長の視線が怖くて」
「慣れたら別に気にしないと思うが。それに店長は見た目に反して良い人だぞ」
「俺はまだこの店にそんなに来てないから慣れないんだ」
寅助は店に入って注文しているというに、申し訳なさそうに呟く。
元々、この店には前の店長の森田が良く通う店であった。
竜太も何度か一緒に入った事があった。
最初こそ、蜥蜴人間の見た目と視線に吃驚したが、何度も通っている内に慣れてしまった。
「異世界の人が、こっちの世界で店を出す事があるのは知っているけど、この店もそういう感じかな?」
「かもな。向こうの世界と行き来した頃に、この店が出来たって、森田店長が言っていたし」
「へぇ、じゃあ、森田さんはこの店が出来た時から来ているのか?」
「らしいな。それに、この店を建てる際、色々と尽力したそうだぜ」
「ふ~ん。そうなんだ」
寅助は店に勤める際に、何度か森田には会った事があるので顔は知っていた。
気のいい人という雰囲気を出している人であった。
そんな人なので、この店を建てる際に手を貸したのだろうと思う寅助。
「お待ち」
店長がそう言って、お盆にガラスのジョッキ二つと小鉢二つを乗せて奥から戻って来た。
竜太達の前にそれらを置いた。
「おっ、来た」
「今日の突き出しは・・・何だ。これ?」
竜太は割り箸を割りつつ、小鉢に盛られた料理を見た。
黄金色の汁の中に、黄色の麺が入っており、その上に小口切りされた緑色の葱が乗っていた。
「ラーメン? ミニサイズだな」
小鉢を持ちつつ突き出しでラーメンというのは、今まで行った事がある居酒屋では無かったなと思う寅助。
「この店って、突き出しは色々と出るからな。まずは、食べてみるか」
竜太がそう言ってビールを飲む前にラーメンをすする。
ちゅるちゅると音を立てて汁に絡んでいる麺が口の中に入って行く。
咀嚼し飲み込むと、竜太はご満悦な顔をしていた。
「美味いな! こんなラーメン始めた食べたぞっ」
竜太が絶賛するので、寅助も箸で麺を掴み啜った。
「・・・・・・うまっ」
一口食べるなり声を上げて驚く寅助。
濃醇な味わいだが、しつこくないコクを持っていた。
細い麺に良く絡んでおり、飲み込むのも躊躇う程であった。
寅助はもう一口味わおうと思ったが、小鉢の中には麺は無くスープだけであった。
「・・・・・・もうちょっと、一口でいいから食べたかった」
小鉢なので、それほど量が入らないと分かっているのだが、寅助は残念そうな顔で呟いた。
「・・・確かに美味しかったな。店長、これお代わり出来る?」
小鉢の中に入っているスープも一滴も残さないとばかいりに飲み干した竜太は店長に訊ねた。
「ん・・・・・・お代わりだけじゃなくて、もっと盛を多く出来るぞ」
「じゃあ、小鉢じゃなくて大鉢で!」
店長がお代わりだけでは無く、盛を多く出来ると言うと、寅助が大鉢で注文した。
「お前さ・・・・・・まぁ良いか。俺はお変わりで」
「ん・・・・・・」
寅助の反応を見て苦笑いしつつ、お代わりを注文する竜太。
突き出しがくるまでの間、二人はジョッキを持って軽くぶつけると喉に流し込んだ。
少しすると、突き出しが来て勢いよく食べる寅助。
竜太は先程あまりに美味しかったので直ぐに食べ終わったので、今度は味わいながら少しずつ食べていった。
やがて、二人の突き出しが無くなると、香ばしく焼かれた肉の匂いが店内に漂った。
店長が皿に盛られたマンガ肉を持って、二人の前に置いた。
「お待ち。肉の大サイズ。ニンニクたっぷりの焼き方はミディアムレア。味付けはお好みで」
皿の上に盛られたマンガ肉の香りが竜太達の鼻腔をくすぐる。
「やばいな。この匂いだけでご飯が食べられそうだ」
「分かる。それにこのニンニクの匂いが良い」
竜太は骨の両側の部分を両手で掴むと、匂いを嗅いだ。
以前、竜太は明日休日なので、肉にニンニクを掛けて欲しいと頼んだ事があった。
注文を受けた店長は焼いている肉にニンニクのペーストを塗り焼いてくれた。
ニンニクの香ばしい香りと肉の味が良くマッチして、この店に来る時は頼むようになった。
寅助も竜太がそう注文したので、頼んでみるとその味が気に入り頼むようになった。
「じゃあ」
「頂きます」
二人は骨の両側の部分を両手で掴むと、肉に齧り付いた。
少し咀嚼し飲み込むと、また肉に齧り付いた。
無言で食べ進める二人。
時折、喉を潤す為か、ジョッキを掴み喉に流し込み肉を齧りついた。
二人が食べている傍で店長はグラス拭きを再開していた。
「はぁ~、食べた」
「相変わらず美味いな。この店は」
肉片など一欠けらも無いと言う程綺麗な骨を皿に置いて、笑顔で息を吐く二人。
ニンニクの匂いがしていたが、二人は気にしなかった。
「もう一本行くか?」
「そうだな。ついでに、酒も何か」
竜太がまた注文しようと言うと、寅助も同意しついでに酒を頼もうかと思っていると所で、引き戸が開いた。
「此処だよね?」
「凛子の話だと、この店だって・・・ああ、いた」
開かれた引き戸には女性が二人いた。
一人は平均的な身長で清楚で可愛らしい雰囲気を出していた。
もう一人は長身でさっぱりとした爽やかそうな雰囲気を出していた。
「・・・・・・いらっしゃい」
「こんばんわ。でも、本当に蜥蜴人間が店長なんだ」
「凛子から聞いていたけど、驚いたわね」
二人の女性は驚きつつも席に座ると、店長は水が入ったコップとピッチャーとメニューを置いた。
女性達はメニューを見ながら、どれを頼むか話していた。
そんな女性達を見て寅助は言葉を失っていた。
「どうした? ・・・・・・ああ」
竜太は寅助が黙っているので、何を見ているのだろうと思い視線を辿っていくと先程店に入った女性を見ている事が分かり納得した。
女性の一人が寅助の好みであったからだ。
竜太からしたら、もう一人の女性の方が好みであった。
『声を掛けたらどうだ?』
『馬鹿言え、いきなり声を掛けられるか』
竜太が小声でナンパしたらどうだと言うと、寅助は尻込みしていた。
そんな親友に溜め息を吐きつつ、女性達に話すきっかけになりそうな事はないかと、女性達の話に耳を傾ける竜太。
店長はグラス拭きの作業をしていると、竜太達が女性達を見ている事に気付いた。
そして、奥に引っ込んでいった。
戻ってくると、カクテルグラス二つに瓶を手に持っていた。
瓶のコルクを開けると、ポンという音が立った。そして、グラスに注いだ。
グラスには黄緑色の液体が七割ほど注がれると、其処で注ぐのを止めた。
店長はそのグラス二つを持って、女性達の前に置いた。
「え、まだ頼んでないんだけど」
「ウエルカムドリンク? 何かしゃれてるわね」
女性達は置かれたので、飲んで良いと思いグラスを手に取りグラスに口付けた。
「・・・・・・なに、この酒、美味しい!」
「甘いんだけど、くどく無くて、でもキレがある。それで口の中でパチパチと弾ける」
女性達は自分達が飲んだ酒に味に驚きつつ飲んでいた。
「向こうの世界で作られている発泡酒です」
「へぇ、そうなんだ」
「でも、どうしてわたし達に」
店長がどんな酒なのか教えると、女性の一人はは感心していた。
もう一人の爽やかそうな雰囲気を出している女性がどうして出したのか気になり訊ねた。
すると、店長が身体をずらして、竜太達を指差した。
「あちらの方々から」
店長にそう言うのを聞いて竜太達は驚いた。
驚きはしたが、同時に。
((店長、あんた良い人だっ))
竜太達は親指を立てると、店長も親指を立てた。
「あ、どうも」
「ごちそうさまです」
「いやいや」
「わたし達は『パティスリーアンナン』のパティシエでこっちが南郷寅助。わたしは安藤竜太と言います」
「『パティスリーアンナン』 あっ、知ってる」
「良くテレビや雑誌で紹介される店じゃない」
話のきっかけが出来た事で四人は気軽に話し合うようになった。
数日後。
店で知り合った縁により寅助は女性の一人と付き合うようになった。
「今日な、彼女がお店に来てくれるって、SNSで連絡来たんだ⁉」
「へぇ、そうか」
店に出勤してきた寅助が着替えながら、竜太に笑顔でそう報告して来た。
「ああ~、早く来ないかな~」
寅助は嬉しそうに顔を緩ませながら、身体をくるくると回転させていた。
そんな寅助を内心でキモいと思いつつ、笑顔で言う。
「良かったな。じゃあ、店を頑張ってくれ」
「おおっ、任せろっ」
一足先に着替えを終えた寅助はスキップしながら着替え室を出て行った。
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