6 / 17
腹黒生徒会長との同居生活
好きの種類 牙央side
しおりを挟む好きの種類
牙央side
───────────────
幼稚園ではほとんど関わりを持っておらず、優羽と初めて話したのは、中学校に入学した次の日だった。
────
昼休憩。
みんながグラウンドや図書室へ行ってはしゃいでいる時、俺は昨日の宿題だった『中学校で頑張りたいこと』というなんとも面倒な作文を担任に提出しに行くところだった。
中庭の横の道を選んだのは、俺のクラスからはその道を通ったほうが職員室へ近い、くらいの理由からだった。
すると、ふと、中庭にあるベンチに座って俯いている1人の女子生徒が目に入った。
ただ通りすぎるなんて、出来やしなかった。
弱っている子猫のようで、今にも消えてしまいそうだったから。
相手は本物の子猫ではないけど、怯えてしまわないように優しい足音で近づいた。
「おい、大丈夫か?」
そう言うと、ゆっくり顔を上げたその猫。
「どうして……?」
「何がだ?」
「みんな、私のことを避ける。なのになんで君は私に声をかけてくれたの?」
こいつ……小学校でいじめられてきたのか?
中学でもそうなるとは限らないのに。
……ああ、そっか。もう、諦めてんのか。
それに気づくと、もう、そいつに構わずにはいられなかった。
「名前は?あ、俺は弓波牙央。1年1組」
すると、なんとも弱々しい声で、聞いている
相手なんかいないみたいに言った。
「小戸森優羽……1年3組」
「そっか、教えてくれてありがとう」
ちゃんと、自分のこと言えたな……とも言おうと思ったけど、同い年で会ったばかりの変なやつにそんなこと言われたらキモイと思われるか、と言わなかった。
向こうからは……じゃなくて、小戸森の方からは何も話そうとしなかった。
なんか話題……。
「好きなもんとか、ある?」
考えてやっと出てきた話題がこれか、と自分で呆れる。
「………スミレ」
「スミレって、花だよな?」
そう聞くと、コクッと頷く小戸森。
「理由、聞いてもいいか?」
しばらく黙っているから、嫌なら無理しなくてもいいと言おうとした時。
「………お母さんが、好きだった花なの」
だったってことは……もう好きじゃないのか?とは聞けなかった。
聞いちゃいけない感じがしたから。
「そうか。綺麗だよな、スミレ」
話を合わせるためとかじゃなく、単にあの道端を彩る純粋無垢な紫は綺麗だと、そう思った。
俺が同意すると、小戸森は………
息を飲むほど綺麗に笑った。
目立たないけど、確かに強い意志を持って咲いている、スミレのように。
弱った子猫みたいなのにも関わらず、スミレが、母親が大好きだという気持ちから、あんなにも眩しく笑えるのかと。
そんなに嬉しかったのかと。
俺は衝撃だった。
と同時に、この子猫……小戸森を、元気いっぱいに、幸せにしてあげたいと思った。
自覚していなかったけど、最初は同情の気持ちが大きかったのだと思う。
数日後に、風の噂で小戸森は母親を病気で亡くしていると知った時は、余計に。
でも、その気持ちはいつの間にか恋に変わっていた。
自分の気持ちに気がついたのは、優羽に誕生日プレゼントをもらった時だった。
「牙央くん、13歳のお誕生日おめでとうっ!はいこれ、誕生日プレゼント!」
その頃には、お互い名前で呼び合う仲になっていた。
優羽も初めて会った時に比べたら、俺の前
ではずいぶん明るくなった。
7月10日……あ、俺今日誕生日か。
でもまさか、優羽から誕生日プレゼントを貰えるなんて思ってもいなかった。
「えっ、まじ?ありがと……やばいわ、俺、めっちゃ嬉しい」
「ふふっ、まだ中見てないのに?」
「いや、プレゼントじゃなくて。優羽に誕生日祝って貰えたのが嬉しくて」
「っ私も、牙央くんに喜んでもらえてすっごく嬉しいよっ。牙央くん、うまれてきてくれて、あの日私に声をかけてくれてありがとう!私今、牙央くんのおかげてすごく幸せなんだっ」
その幸せにしてくれた本人の前で自慢げに話す優羽。
……ああ、なんだかんだ、俺、寂しかったのか。
優羽ほどではないけど、両親はあまり家に帰らず、いつも祖父母と飼っているペットたちと過ごしていた。
じいちゃんとばあちゃん、ハムスターのうに、三毛猫のちゃちゃがいるから、寂しくないと思っていた。
けど、心の中では少し、愛を求めていたのかもしれない。
ペットを飼いたいと思ったのも、両親が家に帰る日が減り始めてからだった気がする。
そんな中、俺より愛を求めている優羽に出会い、まんまとハマったわけだ。
優羽の全てを愛した。
優羽の笑顔、声、瞳、緊張したり嘘をつく時に髪を触ってしまうクセ、足音。
優羽を愛した俺は、寂しさを忘れた。
そして積み重ねてきた日々を形にしたものが、優羽に貰ったこの誕生日プレゼントのように思えて。
『あの日声をかけてくれてありがとう』
その言葉を聞いた瞬間に自覚した。
ああ俺、優羽のことが好き。
優羽を抱きしめたい衝動に駆られたけど、それを我慢しながらプレゼントを開けると、中にはブックカバーと万年筆が。
ブックカバーには、スミレの刺繍がしてあった。
俺が中身を見たのを確認してから、優羽がプレゼントの説明をし出す。
「あっ、えっとね、私どうせならずっと使えるものがいいなって思って。私牙央くんの書く字が好きだから、万年筆を選んだの」
俺の字が好きだと言われた時、今までに感じたことのない感覚に襲われた。
落ち着け、俺……!
好きなのは、俺の字だ、字!
そう言い聞かせても、心臓は音をうるさくするばかり。
「そう、なのか………」
「うんっ。ブックカバーは、牙央くんよく本読んでるでしょ?だから……。スミレは、私からのプレゼントだって忘れて欲しくなかったから……」
照れくさそうに言う優羽。
言われなくても、絶対忘れねぇよ。
俺も恥ずかしくて、そうは言えなかった。
最高の誕生日にしてくれた優羽を抱きしめたい、けど。
2か月前くらい。
優羽から男の人が怖いということと、過去のことを聞いたのは。
聞いた時は、腹の底から湧いてくる怒りを鎮めるのに大変だったのを覚えている。
優羽を怯えさせるわけにはいかないと。
男性恐怖症なのは当然今も変わらない。
そんな優羽に突然抱きついたら、いくら誕生日プレゼントを渡す仲の俺でも、怖がられるかもしれなかった。
それで優羽が離れていくのは、俺にとって何よりも怖いことだった。
だからグッと抑えて。
「………好きだよ、優羽」
小さく呟いた。
当時の俺には、それが精一杯だった。
告白なんてしてしまえば、フラれるのは目に見えていたから。
優羽の好きと俺の好きは違うと、話せば話すほど、痛いくらいに伝わってくる。
優羽にとって俺は恋愛対象じゃない、血の繋がっていない頼れるお兄ちゃんくらいの存在なのだと。
それでも、俺は満足だった。
優羽がおじさん以外で唯一話せる異性で、友達だったから。
優羽を独占している気分だった。
なのに。
優羽が生徒会長の部屋に入っていったのを見た40分後くらいに、優羽が生徒会長と同じ部屋で住むことになったと言ってきた。
しれっと、話せる異性が増えていた。
相手は蒼穹学園の生徒会長。
聞くところによると、運動神経も良いらしい。
顔、運動神経、学力。
全てにおいて、俺より秀でていた。
そんな奴に、優羽のファーストキスを奪われた。
……たぶん、ファーストキス。
俺は中学ん時からずっと我慢してきたのに、会って初日のヤツに優羽をとられそうになる感覚は、恐怖でしかなかった。
裏の顔を持つアイツへの不満と焦りが混ざって、ついにしてしまった。
キスを、大勢の視線がある教室の中で。
「ばーか、俺が言ってんのはこの好きだよ」
気づかなすぎだろ、天然め。
「がお、く……?」
戸惑ってんの、可愛すぎ。
相手は本気で驚いているのにこんなことを考えてしまう俺は、愛という脅威に頭をヤられてしまったのか。
「優羽、大好き。俺と付き合ってほしい」
こんな無愛想な言い方しかできない。
でも、優羽への気持ちの大きさは、どんな言い方でも表せないくらい大きい。
「ご、ごめ……」
返事だって、こちとら3年前からとっくにわかってる。
「ああ、わかってる。俺のこと、“そーゆー目”で見たことなかったんだろ?でもこれからは……」
本物でない優羽の髪に触れながら言う。
「俺から目離せねぇくらい愛しまくってやる」
「っ……牙央くん、変だよ……」
「なんで?」
「だ、だって、私に……き、キスしたり、好き、
とか……言うんだもん」
優羽の方が身長が低いから自然と上目遣いになる。
っ……ほんと、この変装だけじゃ耐えれる気ぃしねぇ……。
アイツの前でも、この顔見せてんのか……?
そう思うと耐え難い嫉妬心に駆られる。
牙央くん、といつも駆け寄ってきていた猫。
俺のペット渡す気なんか全くもってねぇよ。
安心しろ生徒会長サマ。
アンタを泥棒猫にするつもりはねぇから、な?
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
地味令嬢の私が婚約破棄された結果、なぜか最強王子に溺愛されてます
白米
恋愛
侯爵家の三女・ミレイアは、控えめで目立たない“地味令嬢”。
特に取り柄もなく、華やかな社交界ではいつも壁の花。だが幼いころに交わされた約束で、彼女は王弟・レオンハルト殿下との婚約者となっていた。
だがある日、突然の婚約破棄通告――。
「やはり君とは釣り合わない」
そう言い放ったのは、表向きには完璧な王弟殿下。そしてその横には、社交界の華と呼ばれる公爵令嬢の姿が。
悲しみも怒りも感じる間もなく、あっさりと手放されたミレイア。
しかしその瞬間を見ていたのが、王家随一の武闘派にして“最強”と噂される第一王子・ユリウスだった。
「……くだらん。お前を手放すなんて、あいつは見る目がないな」
「よければ、俺が貰ってやろうか?」
冗談かと思いきや、なぜか本気のご様子!?
次の日には「俺の婚約者として紹介する」と言われ、さらには
「笑った顔が見たい」「他の男の前で泣くな」
――溺愛モードが止まらない!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
貧乏神と呼ばれて虐げられていた私でしたが、お屋敷を追い出されたあとは幼馴染のお兄様に溺愛されています
柚木ゆず
恋愛
「シャーリィっ、なにもかもお前のせいだ! この貧乏神め!!」
私には生まれつき周りの金運を下げてしまう体質があるとされ、とても裕福だったフェルティール子爵家の総資産を3分の1にしてしまった元凶と言われ続けました。
その体質にお父様達が気付いた8歳の時から――10年前から私の日常は一変し、物置部屋が自室となって社交界にも出してもらえず……。ついには今日、一切の悪影響がなく家族の縁を切れるタイミングになるや、私はお屋敷から追い出されてしまいました。
ですが、そんな私に――
「大丈夫、何も心配はいらない。俺と一緒に暮らそう」
ワズリエア子爵家の、ノラン様。大好きな幼馴染のお兄様が、手を差し伸べてくださったのでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる