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彩~陸亀の物語~
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ボクの名前は陸亀のたぬき。
亀なのに、たぬきって
おかしいよね?変な名前だよね。
それは、自分でもよくわかってる。
でも、ボクはこの名前、すごく
気に入ってるんだよ。
だって、大好きな家族が
名付けてくれたんだから。
あったかくて、やさしくて
大好きなボクの家族。
ずっと、一緒にいたかった。
出会いは60年前の事。
お父さん、お母さんは
ボクの事を何度も何度も
見に来てくれた。
ぼくは迷子になった野生の陸亀。
ある夜の事。散歩をしていた、
二十代の夫婦を見つけた。
その人達の近くへ近くへと
テクテク歩いた。
凍える夜、ひとりぼっち。
お父さん「わー!こんな所に亀がいる。どうする?お母さん?」
お母さん「かわいいー。けど、うちには子どもが四人もいるし飼うのはやめておこうよ。」
その三日後…またボクを見つめるお父さん。
お父さん「ダメだよね?」
お母さん「ぜったい、ダメ!」
その次の日…またまたボクを見つめるお父さん。
お母さん「やっぱり、放っておけないね。」
お父さん「このままだと、死んでしまうかもしれないよ。」
お母さん「そうよね。連れて帰ろう。私たちの新しい家族。」
四人の子供達が、
ぼくを笑顔で
迎えいれてくれた。
透き通った冷たい風が
夕焼け色の暖かい風に変わった。
ボクには能力がある。
気持ちの色が見えるんだ。
桃色の空気。
笑顔の子供達。
とても楽しそうな家族をみて
ボクはすごく嬉しかったんだ。
毎日、たくましく働くお父さん。
忙しく家事をするお母さん。
愉快な子供達。
そうして、子供達も大人になっていった。
そうして、ボクも歳をとる。
黄緑色した楽しい毎日が
すごく幸せだったよ。
家族の悲しみ。それは灰色。
あれから50年、お母さんが亡くなった。
とても悲しかった。
辛い顔をしている家族をみるのが
ボクも辛かった。
お母さん「あなたより、長く生きたいのよ。」
お父さん「どうして?」
お母さん「だって、あなたをひとりにしておけないもの。私がいなくなったら、あなたはきっと生きていけないじゃない。私もあなたがいなくなったら、悲しくて死んでしまいたくなると思う。けど、あなたはわたしよりそう思ってしまうと思うのよ。」
お父さん「長い人生、ずっと寄り添って生きてきた。どんなに辛くてもお母さんと子供達がいてくれて、乗り越えられたと思う。もっと幸せにしてあげたかった。」
お母さん「これ以上の幸せはないわよ。一緒に生きてくれて、ありがとう。またあなたと出会いたいと思っているわ。」
お父さん「こちらこそ、幸せな人生をありがとう。」
七十才で息を引き取ったお母さん。
ボクはまだ生きてしまう。
長い人生に生かされる亀だから、
家族の一生を見届ける事になってしまう。
また大切な人が亡くなっていく。
見送るのはとても辛いけれど
ボクの事で悲しむ家族はみたくないんだ。
ボクはいくら悲しくても
寄り添っていたいと思うんだ。
長女「お父さん、お父さん。感謝してもしたりないよ。」
お父さん「当たり前の事だよ。お前達の子供達にも、同じように愛情を与えてあげてほしいんだ。」
長女「育ててくれて、ありがとう。」
次女「迷惑をかけてばかりで、親孝行なんて、なんにもしてあげれなかった。ごめんね。」
お父さん「そんなことないよ。元気に過ごしているお前達と孫をみているだけで、幸せな気持ちでいられたよ。こんなに幸せな人生はない。」
長男「ありがとう。」
次男「ごめんな。ありがとう。」
お母さんが亡くなって二年が過ぎた頃
お父さんも息を引き取った。
灰色の空気が流れ、紺色の風が吹いた。
人生は長いようで短い。
短いようで長い。
人生辛いことばかりでもないし
楽しいことばかりでもないが
家族と共に歳をとり、
やさしい気持ちで息を引き取る事が
できたのならば、それ以上の
幸せはないと思えた。
人にしてあげたことは
幸せになって返ってくる。
苦しみを与えてしまったのなら
苦しみが返ってくる。
やってあげる、ではなく
やってあげたいと思う気持ちが
とても大切でお返しなんていらない
無条件の愛が夫婦や家族にはある。
子供がいたって、いなくたって
夫婦の形は人それぞれであって
自分自身が納得いく人生にするためには
なにをするわけでもない。
ただ、やさしい気持ちを持つこと。
大切な人にどう想われたいかで
行動も変わっていく。
ボクはそう思った。
亀なのに、たぬきって
おかしいよね?変な名前だよね。
それは、自分でもよくわかってる。
でも、ボクはこの名前、すごく
気に入ってるんだよ。
だって、大好きな家族が
名付けてくれたんだから。
あったかくて、やさしくて
大好きなボクの家族。
ずっと、一緒にいたかった。
出会いは60年前の事。
お父さん、お母さんは
ボクの事を何度も何度も
見に来てくれた。
ぼくは迷子になった野生の陸亀。
ある夜の事。散歩をしていた、
二十代の夫婦を見つけた。
その人達の近くへ近くへと
テクテク歩いた。
凍える夜、ひとりぼっち。
お父さん「わー!こんな所に亀がいる。どうする?お母さん?」
お母さん「かわいいー。けど、うちには子どもが四人もいるし飼うのはやめておこうよ。」
その三日後…またボクを見つめるお父さん。
お父さん「ダメだよね?」
お母さん「ぜったい、ダメ!」
その次の日…またまたボクを見つめるお父さん。
お母さん「やっぱり、放っておけないね。」
お父さん「このままだと、死んでしまうかもしれないよ。」
お母さん「そうよね。連れて帰ろう。私たちの新しい家族。」
四人の子供達が、
ぼくを笑顔で
迎えいれてくれた。
透き通った冷たい風が
夕焼け色の暖かい風に変わった。
ボクには能力がある。
気持ちの色が見えるんだ。
桃色の空気。
笑顔の子供達。
とても楽しそうな家族をみて
ボクはすごく嬉しかったんだ。
毎日、たくましく働くお父さん。
忙しく家事をするお母さん。
愉快な子供達。
そうして、子供達も大人になっていった。
そうして、ボクも歳をとる。
黄緑色した楽しい毎日が
すごく幸せだったよ。
家族の悲しみ。それは灰色。
あれから50年、お母さんが亡くなった。
とても悲しかった。
辛い顔をしている家族をみるのが
ボクも辛かった。
お母さん「あなたより、長く生きたいのよ。」
お父さん「どうして?」
お母さん「だって、あなたをひとりにしておけないもの。私がいなくなったら、あなたはきっと生きていけないじゃない。私もあなたがいなくなったら、悲しくて死んでしまいたくなると思う。けど、あなたはわたしよりそう思ってしまうと思うのよ。」
お父さん「長い人生、ずっと寄り添って生きてきた。どんなに辛くてもお母さんと子供達がいてくれて、乗り越えられたと思う。もっと幸せにしてあげたかった。」
お母さん「これ以上の幸せはないわよ。一緒に生きてくれて、ありがとう。またあなたと出会いたいと思っているわ。」
お父さん「こちらこそ、幸せな人生をありがとう。」
七十才で息を引き取ったお母さん。
ボクはまだ生きてしまう。
長い人生に生かされる亀だから、
家族の一生を見届ける事になってしまう。
また大切な人が亡くなっていく。
見送るのはとても辛いけれど
ボクの事で悲しむ家族はみたくないんだ。
ボクはいくら悲しくても
寄り添っていたいと思うんだ。
長女「お父さん、お父さん。感謝してもしたりないよ。」
お父さん「当たり前の事だよ。お前達の子供達にも、同じように愛情を与えてあげてほしいんだ。」
長女「育ててくれて、ありがとう。」
次女「迷惑をかけてばかりで、親孝行なんて、なんにもしてあげれなかった。ごめんね。」
お父さん「そんなことないよ。元気に過ごしているお前達と孫をみているだけで、幸せな気持ちでいられたよ。こんなに幸せな人生はない。」
長男「ありがとう。」
次男「ごめんな。ありがとう。」
お母さんが亡くなって二年が過ぎた頃
お父さんも息を引き取った。
灰色の空気が流れ、紺色の風が吹いた。
人生は長いようで短い。
短いようで長い。
人生辛いことばかりでもないし
楽しいことばかりでもないが
家族と共に歳をとり、
やさしい気持ちで息を引き取る事が
できたのならば、それ以上の
幸せはないと思えた。
人にしてあげたことは
幸せになって返ってくる。
苦しみを与えてしまったのなら
苦しみが返ってくる。
やってあげる、ではなく
やってあげたいと思う気持ちが
とても大切でお返しなんていらない
無条件の愛が夫婦や家族にはある。
子供がいたって、いなくたって
夫婦の形は人それぞれであって
自分自身が納得いく人生にするためには
なにをするわけでもない。
ただ、やさしい気持ちを持つこと。
大切な人にどう想われたいかで
行動も変わっていく。
ボクはそう思った。
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