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しおりを挟む俺は、それにどこまでも協力してやる。お前の思い描いてるカリスマ的な存在を、俺が守ってやる。その始まりが若気の至りでも、お前が本気でそれを続ける限り、味方でいる。
だから、俺の前では、安心して須藤くんに戻ればいい。それでお前のカリスマ性が保たれるなら、俺は受け止めるよ。
なぁ、お互い、いい相方に巡り会えたんじゃねぇか?
俺は信じたものを貫く、迷いのないリーダーに会えたんだし、お前はとにかくこの俺に会えたんだから。
これも、運命ってヤツか。
プレイヤーって人種は、場がないと立ち行かない。お互い、その場を与え合えるわけだからさ。
長い付き合いになりそうだ。きっと、俺の相方として認められるのは、この先も宵闇だけって気がする。
バンドだけじゃねぇんだよ。一緒にいて、同じことで笑えるってのが安心出来るし、信用出来る。長く付き合うには、そんなオフのことも大事だって気がする。
早く、俺のレベルまでこいつの演奏力が上がんねぇかな。俺は俺で実力上げてくから、簡単には追いつかせねぇけどよ。
こいつならやってくれる。センスはあるんだ。大丈夫。
宵闇の手が、もぞもぞと動く。何かを探してるみたいに、のそのそとあちこちを触る。
その指先に触れてみると、動きが止まった。唇の端がほんの少し上がる。
「……あ」
小さい声が、俺の口から漏れる。
何か、ふわっとした気持ちが心の中に広がったのがわかった。
触れたままの指先が、やけにあったかい。
気持ちが穏やかになる。
ずっとあれこれ考えてたのが、急にすっとおさまって、頭の中がクリアになる。
ああ俺、こいつのこと、好きだわ。
それだけが、頭の中に残った。それにビックリしてる自分と、安心してる自分がいる。めちゃめちゃ単純な言葉だけど、これは重大だ。
だけど、納得しちまった。ここまでの出来事と、これからのベルノワールの行方。そんな頭の中を占めてたあらゆることの隙間に、その言葉が流れ込んで綺麗に収まった。こんなの、納得するしかねぇじゃん。
ガタついてたうるさい気持ちが、すっかり安定した。
今、こいつの手が探してたのは俺なんだ。その手に触れたってことは、俺もその手を取ってやりたいって思ったってことだ。
起こさないように、そっと手を握ってやる。そうあるべきだったみたいに、しっくり来る。
ああ、しゃあないな。これも、同時に来ちまった俺の運命ってことだな。出会っちまったもんは出会っちまった。
いいよ、これで。なるようになれ。
とりあえず、もう一回寝よう。
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