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私はジオンから指定された民家で彼らの到着を待っていた。
テーブルの上には果物カゴに入れられたレモンが置かれている。帰りにはこれを持って行けということだろう。
しばらく待つと指定通りの来客があった。
一人は屈強な体格の男性。そしてもう一人は彼の背後に隠れるようにして佇んでいる。
主様は私の姿に僅かな驚きを見せていた。目を見開かれたけれど、瞬く間に元の表情を取り繕う。つまりこれはジオンの独断ということだ。
「突然申し訳ない」
本当に。前もって打ち合わせしてほしいと私は頷いていた。
「我々はリエタナを目指す途中なのですが、生憎御者が不調をきたしまして。本人は少し休めば治ると主張しておりますので、その間だけで構いません。どうか我が主を休ませてもらえないでしょうか」
言いたいことはたくさんあるけれど、とにかく私はシナリオ通りに動いた。
「それは大変でしたね。たいしたおもてなしもできませんが、どうぞ中へ」
「いえ、自分は。主だけで結構です」
「え?」
「自分は外で見張りをしています」
先導していた私は驚きに足を止める。振り返るとジオンがバチッと片目を瞑ってきた。
え、何? まさかウインクのつもり?
てっきりジオンも交えての逢瀬と思っていただけに、二人きりで扉が閉められると頭が真っ白になる。ここへ来ることに必死で、主様と会って話すことなど考えていなかった。
二人きりになると主様はいつもの調子に戻られる。外でジオンが見張りについたことを確認すると、シナリオという仮面を外した。
「久しぶりだね」
主様は穏やかに話された。あまりの懐かしさに、私はこれが現実だと信じられずにいる。
「まったく、ジオンには困ったものだ。こんなことを企んでいたなんて。君も忙しいだろ?」
「い、いえ、そのようなことは!」
「本当?」
焦りだす私を主様は疑っている。
昔なら簡単に、主様以上に優先されるべきことはありませんと言えたのに。今はどう返せばいいのかわからない。こんなに近くにいるのに、主様との距離が遠い気がした。
「なら、俺には会いたくなかった? クビにしたんだ。怒って当然だよね」
まるで私が主様を嫌っているような発言は、いくらご本人でも許せない。クビにされたことで主様を恨んだことは一度もないのに。
「どうしてそうなるんですか!」
「それならどうして会いに来てくれなかったんだ?」
困ったような眼差しで迫られる。
けれど困惑しているのは私も同じだ。
「会いに行っても、よろしいのですか?」
主様は目を丸くし、しばらく私を見つめてから大袈裟に息を吐いていた。
私などにはとても想像が及ばないけれど、主様も何か緊張されていたのかもしれない。
「いいに決まってるだろ。はは、なんだ……そういうことか。俺たちは互いに遠慮し過ぎていたんだね。これは一計を案じてくれたジオンに感謝すべきかな」
ジオンに感謝? ジオンなら外で見張りをしているはずですが……
そこで私は自分がいつまでも主様を立たせたままにしている状況に気が付いた。
「主様、とにかくお座りになって下さい! お茶! あの、私入れます!」
なんとか主様に座っていただくと、それだけで随分と心が落ち着いた。
会話というミッションも残っているが、座っていただいたからにはまず飲み物を用意しなければならない。
紅茶の入れ方ならメイドとして屋敷に潜入するために記憶している。冷静に真似ればいいだけのことだ。
ただし問題が一つ。
テーブルの上には果物カゴに入れられたレモンが置かれている。帰りにはこれを持って行けということだろう。
しばらく待つと指定通りの来客があった。
一人は屈強な体格の男性。そしてもう一人は彼の背後に隠れるようにして佇んでいる。
主様は私の姿に僅かな驚きを見せていた。目を見開かれたけれど、瞬く間に元の表情を取り繕う。つまりこれはジオンの独断ということだ。
「突然申し訳ない」
本当に。前もって打ち合わせしてほしいと私は頷いていた。
「我々はリエタナを目指す途中なのですが、生憎御者が不調をきたしまして。本人は少し休めば治ると主張しておりますので、その間だけで構いません。どうか我が主を休ませてもらえないでしょうか」
言いたいことはたくさんあるけれど、とにかく私はシナリオ通りに動いた。
「それは大変でしたね。たいしたおもてなしもできませんが、どうぞ中へ」
「いえ、自分は。主だけで結構です」
「え?」
「自分は外で見張りをしています」
先導していた私は驚きに足を止める。振り返るとジオンがバチッと片目を瞑ってきた。
え、何? まさかウインクのつもり?
てっきりジオンも交えての逢瀬と思っていただけに、二人きりで扉が閉められると頭が真っ白になる。ここへ来ることに必死で、主様と会って話すことなど考えていなかった。
二人きりになると主様はいつもの調子に戻られる。外でジオンが見張りについたことを確認すると、シナリオという仮面を外した。
「久しぶりだね」
主様は穏やかに話された。あまりの懐かしさに、私はこれが現実だと信じられずにいる。
「まったく、ジオンには困ったものだ。こんなことを企んでいたなんて。君も忙しいだろ?」
「い、いえ、そのようなことは!」
「本当?」
焦りだす私を主様は疑っている。
昔なら簡単に、主様以上に優先されるべきことはありませんと言えたのに。今はどう返せばいいのかわからない。こんなに近くにいるのに、主様との距離が遠い気がした。
「なら、俺には会いたくなかった? クビにしたんだ。怒って当然だよね」
まるで私が主様を嫌っているような発言は、いくらご本人でも許せない。クビにされたことで主様を恨んだことは一度もないのに。
「どうしてそうなるんですか!」
「それならどうして会いに来てくれなかったんだ?」
困ったような眼差しで迫られる。
けれど困惑しているのは私も同じだ。
「会いに行っても、よろしいのですか?」
主様は目を丸くし、しばらく私を見つめてから大袈裟に息を吐いていた。
私などにはとても想像が及ばないけれど、主様も何か緊張されていたのかもしれない。
「いいに決まってるだろ。はは、なんだ……そういうことか。俺たちは互いに遠慮し過ぎていたんだね。これは一計を案じてくれたジオンに感謝すべきかな」
ジオンに感謝? ジオンなら外で見張りをしているはずですが……
そこで私は自分がいつまでも主様を立たせたままにしている状況に気が付いた。
「主様、とにかくお座りになって下さい! お茶! あの、私入れます!」
なんとか主様に座っていただくと、それだけで随分と心が落ち着いた。
会話というミッションも残っているが、座っていただいたからにはまず飲み物を用意しなければならない。
紅茶の入れ方ならメイドとして屋敷に潜入するために記憶している。冷静に真似ればいいだけのことだ。
ただし問題が一つ。
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