無敵の【着火】マン ~出来損ないと魔導伯爵家を追放された私なんだが、しかたがないので唯一の攻撃魔法【着火】で迷宮都市で成り上がる~

川獺右端

文字の大きさ
24 / 47

第21話 【着火】マンは珍しくビビる

しおりを挟む
「まことに申し訳ございませんが、あなた様の冒険者登録は出来かねますのでお引き取りねがえますか?」
「なんで自分の国の冒険者ギルドで私が登録できないわけっ?」

 朝の冒険者ギルドは水を打ったように静まりかえり、酒場に居た人間は受付カウンターのやりとりを身動きせずに聞き入っていた。

 カウンターでレイラさんに噛みついているのは、家出娘などではなく、メルリガン王国の第二王女リネット姫であった。
 もちろん屈強な近衛騎士の護衛が五人、辺りを警戒している。

 あちゃー、ついに来てしまったか。

「法律で王族は冒険者になれないと定まっているのです、恨むなら五代前の迷宮で討ち死にしたココリトス王子を恨んでくださいね」
「きぃぃぃっ、お父様に言って法律を変えてやるーっ!」
「変えてからいらっしゃってください」

 さすがレイラさん、王族相手に一歩も怯まないな。
 と思ったらもっと怯まない人間がいた。

「ごめんよう、姫さん」

 そう言ってピカピカの赤いドレスアーマーを着込んだ御令嬢がレイラさんに書類を出した。
 チャリチャリいっているな。

「あたしは問題無いだろう?」
「……、書類に問題はございませんね、ペネロペ・アルモンド侯爵令嬢さま」
「今度は鉄拳令嬢かよ」
「何事だこれ」

 フロルたち銀のグリフォン団のメンバーが両開きドアを勢い良く開け、そのまま固まり、こそこそと端っこを通ってこっちにきた。

「何あれ」
「プリンセス」
「は?」
「は?」
「はあ?」
「え、王女さま?」

 フロルたちは固まった。
 まあ、王族が迷宮都市に足を運ぶ事はほとんど無いからね。
 しょうがないね。

「赤いのはペネロペだな、あいつは?」
「冒険者登録してるよ」

「ペネロペっ!! どうしてあなたが冒険者登録できるのっ!! 私は出来ないのにっ!!」
「あたしは王族じゃあねえですからね」
「きいいいっ!!」

 リネット王女は地団駄を踏んだ。
 ロイヤル地団駄だ。

「私は、マレンツ博士とダンジョンアタックをしたいの、なんとかしなさいよっ!!」
「王様にねじ込んでください。はい、ペネロペさん、ギルドカードです」
「E級からなのか」
「どんな豪傑も、最初はE級からです」
「あい解った」

 ペネロペは冒険者カードを受け取るとこちらに向けてずんずん歩いて来た。

「私はペネロペという駆け出し冒険者なのだが、君よパーティを組まないか」
「どうも、ペネロペさん、今日はお父さんと一緒じゃ無いんですか?」
「父上は文句ばかり言うのでペトラガルドに置いてきた。私の目的はお前だ」
「そ、そうですか」

 私に気が付いたのかリネット王女が走ってきた。
 あいかわらずお転婆だなあ。

「マレンツ先生~~!!」
「リネット王女、お久しぶりです」
「お久しぶりじゃありませんよっ、デズモンド家を舞踏会に招待したら、先生は廃嫡されているし、もう、探したんですからねっ」
「す、すいません」
「おお、さすがの無敵の【着火】マンもビビってる」
「そりゃあ、王女さまに、鉄腕令嬢だからなあ」

 フロルが私の袖を引いた。

「な、なんで王女さまと気安いんだ?」
「ああ、前に家庭教師をしていたんだよ」
「そうですよっ、あの時言ったじゃないですか、デズモンド領が嫌になったら王宮に来て下さいねって」
「いやあ、本気とは思いませんでしたよ」

 ペネロペがしれっと、私たちのテーブルに座って親父を指で呼んだ。

「朝食をくれ」
「あ、あいよ、アルモンドのお嬢さん」
「ふっ、やめてくれ、私は冒険者のペネロペだ、隣の領で、この都市を虎視眈々と狙っている父上とは関係が無い」
「へ、へい」

 王女さまもテーブルに勝手に座った。

「おじさん、私も先生と同じ物を」
「……、あの、大した料理じゃあありませんぜ、お口に合わなかったら打ち首とかは、無いですよね」
「無いわ、大丈夫っ、よく王都を抜け出して近隣の街でご飯食べてるし」
「へ、へい、わかりやした」

 オヤジは微妙な表情で奥に引っ込んでいった。

「この子供達は? マレンツと親しいようだが」
「お、俺はフロル、銀のグリフォン団の団長だっ! そしてハカセは団員だ」
「おー、小さいのに冒険者なのか、いいな、私も団に入れてくれ」

 フロルの目が泳いだ。

「だ、だめだ、敵国のお嬢さんを団に入れるのは筋が通らねえっ!」

 ペネロペは机を叩いて爆笑した。

「いいな子供、フロルか、うん、気に入った。将来アルモンド侯爵軍に入らないか」
「いやだ、俺は冒険者になって、大陸一の剣士になるんだっ」
「おー、いいねえ」

 ペネロペは愉快そうに笑ってフロルの頭をポンポンと叩いた。

「子供と一緒に冒険なさっていらっしゃるの?」
「はい、パーティに入れて貰って、主に草原で薬草採りをしてますよ」
「ああ、それで、この前草原に居たのか」
「そ、そんなマレンツ先生ともあろう人が、子供と薬草採り……」
「色々な発見があって楽しいですよ。もうすぐD級に昇格して、やっと迷宮に入れます」
「まだ、迷宮に入ってないのですか?」
「ちゃんと本式の冒険者としての手順を踏もうと思いまして」
「狙いは? マレンツ」
「最下階にあるというアセット魔法にアクセスできるというタブレットだよ」
「おお、でっかく出たな、さすがは将来の我が夫、マレンツだ」

 ペネロペは、きゅっと笑みを深くした。
 なんというか、こいつは令嬢のくせに本気の武人という感じで風格があるな。

 足を震わせながら、酒場のオヤジが、王女とペネロペへ朝食セットを持って来た。

「あっはっは、不味いなオヤジ、これは不味い、うんうん」
「ペネロペは口が奢っているのでは無くって、まあ、食べられる味よ」

 まあ、普通の味だね。
 ソーセージエッグにパンなので、それほど調理の腕が必要な物でも無いし。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

防御力ゼロと追放された盾使い、実は受けたダメージを100倍で反射する最強スキルを持ってました

黒崎隼人
ファンタジー
どんな攻撃も防げない【盾使い】のアッシュは、仲間から「歩く的」と罵られ、理不尽の限りを尽くされてパーティーを追放される。長年想いを寄せた少女にも裏切られ、全てを失った彼が死の淵で目覚めたのは、受けたダメージを百倍にして反射する攻防一体の最強スキルだった! これは、無能と蔑まれた心優しき盾使いが、真の力に目覚め、最高の仲間と出会い、自分を虐げた者たちに鮮やかな鉄槌を下す、痛快な成り上がり英雄譚! 「もうお前たちの壁にはならない」――絶望の底から這い上がった男の、爽快な逆転劇が今、始まる。

辺境追放された「植物魔導師」の領地開拓 ~枯れ果てた死の大地は、俺の魔力で聖域(楽園)へと変貌する~

リーフレット
ファンタジー
​「植物魔法? ああ、農作業にしか使えないあの地味な魔法か」 ​帝国騎士団の専属魔導師だったアルトは、無能な二世皇太子レオンによって、一方的に追放を言い渡された。 アルトがどれほど魔導植物を駆使し、帝国の食糧難を裏から支えていたかを知らぬまま、彼は「戦闘に役立たない役立たず」という烙印を押されたのだ。 ​帝国を出て行き着いた先は、魔物が跋扈し、草一本生えないと言われる最果ての荒野。 死を待つだけの地。しかし、アルトは絶望するどころか、晴れやかな顔で笑っていた。 ​「やっと、気兼ねなく『植物』を愛でられる。……よし、ここを世界一の庭(楽園)にしよう」

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!

よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。 10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。 ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。 同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。 皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。 こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。 そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。 しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。 その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。 そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした! 更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。 これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。 ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

処理中です...