僕には幸福だけれどきっと君にとっては不幸だろう。

霧雨 紫貴

文字の大きさ
1 / 4

今思えばあれは私の運命を変えた出来事の1つだったのかもしれない。

しおりを挟む
【僕には幸福だけれどきっと君にとっては不幸だろう。】


もし、奇跡というものが存在するというのなら私はそれに縋ることだろう。
だけど、そんなものはごくわずかの人間にしか訪れないことを私は知っている。
例えば、少女漫画で誰とも付き合ったことのなかった女の子が奇跡的にイケメンと付き合えるとか、1日でお金持ちになるとかそんなのただの夢物語であって他ならない。
でもまさか、そんな奇跡みたいな事件が起こることを今の私はまだ知らない。

ーーー春ーーー
この高校に入学して1年が経った今日。私は、この先生に渡されたプリントを眺めつつ2-Dの教室へと向かっていた。

「前のクラスもまぁまぁ良かったけど今回のクラスはどうなるのかな。」
と、1人そんなことを思っていた。

(((ガラララッ
ドアの小気味いい音とともに感じたことのないような視線を感じた。恐らく、みんなどんなクラスメイトか気になったのだろう。私は平然とした態度で教卓の前を通って一番後ろの端の席に着いた。

「これからどんな高校生活が待っているのだろうか。」と、私は胸を躍らせていた。

「はぁるちゃんっ。」

ふいに、聞き覚えのある声と彼女だけが使う私のニックネームがきこえた。

前のクラスで仲が良かった柊 莉雪(ひいらぎ りせつ)だ。まさか、2年連続で同じクラスになれるとは。この一年は無事に楽しく過ごせると言う確信が持てたような気がして私は少し安心した。

「莉雪!また、同じクラスだね(笑)このクラスでもよろしくね。」

「もちろんだよぉ~。来年受験だし今のうちにたくさん思い出作ろーねっ!!」

今年の春休みは私が母方の実家に帰省していて莉雪とは高1の終業式ぶりなのだが、相変わらず元気で愛嬌があった。そんな、私と正反対の莉雪だがそのふわふわとした性格からは想像もつかないぐらい鋭く私の核心をついてくる時があり少し頼りにしている部分はある。

「この度2-Dの担任を任されることになりました。山野 颯斗(やまの はやと)です。この1年間よろしくお願いしますね。」

中年の先生ばかりのこの学校では珍しく若くてちょっと頼りなさそうな顔をしているがとても優しそうな先生だった。
比較的短めの全校集会を終え、終わりの会なるさよならの挨拶を済ませ皆下校体制に入った。
朝ごはんを抜いてきてしまった私はお腹がすいて仕方なかったので近くの趣のあるこの高校の生徒が誰1人として知らないであろう隠れ家的カフェに向かった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「はーぁ。つっかれたぁ…。おっちゃん~カルボチーノ頼むよ~。」

と、このカフェ特別メニューであるカルボナーラとペペロンチーノを掛け合わせた至極の一品を頼んだ。

「はいよー。いつもあんがとねぇ」

私が月8というまぁ高校生にしては高頻度なペースで通っていることもありおっちゃんとは顔見知りになってしまった。

「へぃ。お待ち!おっちゃん特性カルボチーノだ。増量しといたよっ!」
 
そう言っておっちゃんは、不器用な笑顔を私に振りまいてくれた。

「わぁ~。美味しそ…おっちゃんありがとう!!でも、太っちゃうよぉ~。」

「大丈夫!うちのパスタは高カロリーだから。」

「ぜんっぜん大丈夫じゃないじゃん。太ったらおっちゃんのせいだからね!」

なんて、他愛のない会話をしつつ私の好物を口目一杯に放り込む。
この時間が私の些細な幸せだったりする。
だが、私が友達も誘わずに1人で足しげくこの店に通うのはもう1つの理由があった。
それは、この店のおっちゃんにも内緒なのだけれど…。

「あ…そういえば今日めっちゃ課題出されたんだった!!やっば~…やらないと。」

この店で済まして帰ろうとバッグの中に手を伸ばすとそこには携帯と財布しか入っていなかった。
しまった。学校に忘れた。

「仕方ない…取りに戻らないと新学期早々に単位を落としてしまうよ…」

残り少しの麺の塊を一気に頬張り代金を払って店を出た。

「おっちゃん!今日も美味しかったよ!
またくるねぇ。」

「おーう。気をつけて帰れよ~」

校内に入ると部活動に専念している生徒はどこへやら。人の気配が全然しなかった。
教室の前に着くと、何だか不思議な感じがした。

「人なんているわけないもんねぇ。開いてるかなぁ?」

なんて、独り言をぶつくさと言いながらドアをガララッと軽快に開けた。
しかし、眼前に映し出されたのは私が初めて目にするものだった。

"美"

そこにはそう一文字で表すにぴったりの"美"があった。
でも、不思議なのは彼の目が前髪で隠れていて見えなかったことだ。
なのに、とても美しく見えた。スラッとした高身長で、透き通るような金髪だからなのか私には何が何だかもうわからなかった。

『あ。』

2人の声が重なった。彼の声は見た目通り少年と言うにぴったりな声だった。

「わぁぁ…すいません。ちょっと忘れ物とりにきただけなんでぇ。失礼します!」

なんで、私が謝り口調なのかはわからなかったが知らない人と喋るのはあまり得意な方ではないのですぐに教科書とノートを取って出ようとした。

「あの、そんな謝らないでください。驚かせてしまってすいません…。僕昨日この街に来て…で…新学期からこの学校に通い始めるつもりだったんですけどちょっと色々あって明後日からこのクラスに入るんです。もし、良かったらおとも…いえやっぱなんでもないです…。」 

なんだ、私と一緒じゃないか。この人は私と一緒で人見知りなだけなんだ。喋りかけるのが苦手なんだ。そう思うと何だか親近感が湧いてくる。
その少年が急いで教室を出ようとした時…

「待って!!」

別に話したいことがあったわけでもないし聞きたいことがあったわけでもないけれど何だかその人と関わってみたくなったのだ。

「え…?なんですか?」

首をかしげる少年。

「あの…私と友達になってください!」

初対面の人にこんなことを言ったのは多分後にも先にもこれが最後のような気がする。告白みたいで何だかこそばゆい気持ちになった。

「本当ですか?!ありがとうございます…//明後日からよろしくお願いします。」

少年の目は相変わらず前髪で隠れて見えなかったけれど少し頬を赤く染め喜んでくれているように感じた。

「こちらこそよろしくね。あの、敬語やめない…?一応同い年なんだし。」

敬語というのは目上の人に使うものであって同じ立場の人に使うべきではないという考えの私から敬語をやめた。

「あ、分かりました…分かった。」

何だかおぼつかない言い方だけれどこれから仲良くなれそうな気がした。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あのあと、教科書とノートを取ってあの少年と友達になった私は何だか恥ずかしくなって逃げるように教室を飛び出してしまった。

「あー!そういえば、名前聞くの忘れた…友達になったのに名前知らないってどんなだよ…」

なんて、思いながら私は眠りにつこうとした。
だけど、眠れなくてしかも焼けるように目が痛かった。

「いっつつ…携帯の触りすぎかな…。」

まぁ、目を休めさせたら治るか。

なんていう楽天的な考えが甘いことをこの時の私はまだ知らなかった。









                                                         To be continue...








しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

処理中です...