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第二章 冒険者ギルド

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 アルカンタラ達がポピーの家に住み着いて数日が経ったころ、暗黒水晶の破壊に出向いた腕利きの冒険者を集めた第一陣の失敗の知らせが入った。

「なんということだ……あれほどの冒険者を集めた軍団だったのに……」
 ポピーの父親はうつむき頭を抱える。世界中のギルドの一流冒険者がパーティーを組んでも暗黒水晶の破壊には失敗したのだ。

「そうか……まあ残念だが魔法陣を持たない奴らじゃ暗黒水晶の破壊は元々厳しかったんだろ。あとは俺に任せろ」

「……違うんです。暗黒水晶を壊せなかっただけじゃない……最北端の島に向かった冒険者の大人数がやられて、命を落としたようです」
 真っ青な顔をしたポピーが父親に言う。

「やられた……!? い、一体誰に?」
 ミルリーフは驚きの声をあげる。暗黒水晶を壊しに向かったはずの冒険者たち。壊せないもいう失敗はあっても、なぜやられてしまったのか。

「島には魔族の生き残りが生息しているようです。その魔族に……」
「……チッ、奴らか」アルカンタラは舌打ちをする。

 ポピーの父親は話を続けた。
 生還した数名の冒険者の話によると、最北端の島に上陸した彼らは早速、島の最深部にたたずむ暗黒水晶を見つけ攻撃をした。
 しかし、少々の攻撃ではビクともしなかったようだ。

 そこで、彼らは今回の作戦にあたり用意した秘密兵器を使った。
 魔法使いの魔力を集め、まとめて放出することのできる大砲のような最新兵器だ。
 腕利きの冒険者10数人の魔力を集め、魔法の砲撃を放ち、戦士は武器で攻撃をした。
 それでも暗黒水晶は壊せなかったのだ。

「おそらくこの最新兵器の力は……アルカンタラ様の古代魔法より上かと思います。もちろん、10人以上の魔法使いの力を一まとめにしている訳ですが」

 ポピーの父親の話に、アルカンタラは黙り込んだ。古代魔法さえあれば、暗黒水晶も壊せるものだろうと思っていたが、そんな簡単なことでは無いようだ。

 やがて、島に潜む魔族は冒険者の存在に気づいて襲ってきた。
 魔族の圧倒的な力の前に冒険者たちは数名を残してやられてしまった。

「……腕利きの冒険者がそれだけいても敵わないなんて」ミルリーフは顔をしかめる。

「はい……魔王が死んでから、魔族は弱体化し、生き残っている魔族の数は多くはないと聞きます。私も魔族なんて見たことありません……
 おそらく暗黒水晶の力でモンスターが増えたように、魔族の力も上がっているようです」

 ポピーの父親は話を続けた。

 必死に逃げ惑う冒険者を見て、魔族の中の中心的な人物は楽しそうに笑っていた。
 その魔族の男は老人のような風貌で『かつて自分は魔王の側近だった、再び魔族の支配する世界を作る』と冒険者たちをいたぶりながら楽しそうに語ったという。
 男はマダックスと名乗り『自分が新たな魔王になる』と言っという。

「え? マダックス……!?」
 アルカンタラは驚いたようにいう。
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