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端末
しおりを挟む「ただいまー」
「遅かったなー、鍵閉めろよ」
「はいはい」
施錠。
居間でくつろぐ親父。
飽きもせずよくこの時代の番組を観れるものだ。
「面白い?」
「これは仕事だよカンタ。面白さじゃねぇ」
「ふーん」
都内の洋菓子店の番組が【令和】の取材か。
甘党隠しも末期だな。
今も甘納豆摘んでるし。
「どうだぁ、学校の方は」
「聞かなくても分かるでしょ」
「息子の行動なんか気にはせんよ」
「今日は恵比寿とカラオケに行った。友達も何人かいたけど」
親父の眉毛がピクった。
「で、いたのか。やっこさんは」
「いたよ」
テレビが消えた。
マジな空気出すなよ。
「...」
「...」
「え?」
「何だよ」
「親父、それだけ?」
「何言ってんだお前」
親父は綿棒を取り出す。
綿棒は合言葉だ。
そして俺は自分のミスに気づいた。
急いで端末の電源を落とす。
「ごめん、親父」
「油断すんな。端末は怖いって何度も言ってるだろ。その小さい機械に耳と目が張り付いてんだよ。忘れんな」
「うん。悪かった」
「興が削がれた。今日はもう寝ろ」
「...おやすみ」
「ったくこれだから明治生まれは。なぁにが『俺がやるからプックププー』だ」
ぶつくさ言う親父の背中から逃げるように、静かに階段を上がる。
やっぱ浮かれてんのか、俺は。
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