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ER
しおりを挟む「可変長符号、前へ」
「答えは用意できたのか」
紫髪は宙を仰ぐ。
「現段階で確定する答えは何もない。貴方は判断を回避した。よって我々から追加で与えられる真実もない」
「じゃあ何だ、暇つぶしか。興が削がれるな」
「そうではない」
室内の空気が薄まっていく。
酸素も炭素も縮み、黒の焦点が現れる。
「これは、貴方の心」
「随分真っ黒だな」
「個人意思とも言う」
「それがどしたよ」
「貴方の中に意思が現れた」
「わかりやすく話せ」
「貴方は今、中立とはかけ離れた」
「もう少し頼む」
「我々は、興味を失った」
教室の隅の埃。
壁に貼られた習字。
日直ノートの4ページ目。
1256分割されたテスト用紙。
「クビか」
「第一線から退くだけのこと。貴方の監視は続くだろう。しかし以前のように助言をすることもなければ、我々が干渉することもない」
「普通に用はないってな」
「特に質問がなければ、これで会話を終了する」
紫髪は目を閉じると、空間から消失した。
可変長符号は紙コップに残った水を喉に流し込む。
冷たい液は潤いと儚さを伝えた。
天井が遠い。
可変長符号は複雑だった。
彼の望みの世界はそこにはない。
彼が作った世界は求められてない。
世界は彼を見放した。
「でも、えりなは見てるのだ」
「神出鬼没だな」
「神様じゃないのだ。えりなのだ」
「なが一つ少ない」
「名もない可変に言われたくないのだ」
「えりな。俺は間違っていたようだ」
「間違うのが人間の仕事でしょう」
「俺は人間になった」
「そうだよ」
「オフ会も中止。立食パーティーだ」
「そうだね」
「平和」
「みんなが求めた事なのだ」
つまらないな、言葉は出なかった。
まだ弱かったから。
「本当につまらない」
可変長符号は、泣いた。
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