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父
しおりを挟む父は、実家で一人暮らしをしている。
朝は6時に起きて好物の卵焼きとソーセージを焼き、軽く朝食を食べた後に弁当を作る。
弁当にはトマトが半分、卵焼きとソーセージと漬物やあり合わせが入り、ご飯の上には申し訳程度のふりかけがまぶしてある。
お粗末にも豪華とは言えないが、父はその弁当を誇らしげにSNSで母に自慢していた。
数十年働いた会社を辞め今は窓口対応をしているが、仕事のことはよくわからない。
父は仕事全般に関して私に話すことはあっても、内容や愚痴をこぼすことはなかった。以前は。
六人家族で一番はじめに家を出たのは長女だった。
実家から150km離れた看護の学校に通う為に、アパートを借りたのだ。
次女もそれを追うようにして、高校を卒業すると家を出ていった。
家を出るというほど悪いイメージではないのだが、俺と妹はいつか姉が帰ってきて、また6人で暮らすものだとばかり思っていた。
ここは実家で故郷だから、みんなが帰る場所なのだと。
そうじゃないと知ったのは、他ならぬ私が東京へ出た日だった。
二浪を経て大学へ進学した私は、それなりに都会の生活を楽しんだ。
ただ成績は芳しくなく、欠席日数が増え単位を落とし、親不幸にも四年もかけて大学を辞めた。
妹は順調に大学へ進学し、その後就職のため東京へ出て行った。
私は大学を辞めて一度実家に戻り、母と父と私の三人暮らしが数年続いた。
母は意思と夢を持つ方で、東京で保育園の勉強の為に家を出て行き、南の方に移り住む。
私と父の生活は二年ほど続いた。
始めこそ料理を張り切っていた私だが、終いには惣菜に頼るようになり、いつしか父が惣菜を買うのが習慣になる。
バジルソースのかかったチキンを一言好きと言っただけで、父は毎週のようにバジルソースのチキンを買ってきた。
「もう飽きたから買わないで」と言った時、父は「前は好きだと言っていたから」と悲しそうな顔をしていた。
程なく私は東京の母の家に移り、実家は父一人となり現在に至る。
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