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夕刻
しおりを挟むまず、婚約したことを国王に報告しに行かなければならないこと。
そして挙式をし、その後に披露宴があるらしい。
大まかな流れなこんな感じだが、龍の存在を知る貴族に婚約と挙式の旨を伝える手紙を出したり、ハルカの最低限の礼儀作法の習得など、やらなくてはいけないことは盛沢山だ。
「挙式の日は国王に報告してからでないと決められないからな…何はともあれ報告だが…先にハルカには教師をつけよう」
「礼儀作法の先生?」
「そうだ。だが、それ以外にも歴史や言語などの勉強も必要だから順次決めていこう。続けていて困ることではないからな」
ヒスイ曰く、国外に出ることはないが、賓客が来た場合などはヒスイが出向くこともあるのだという。
今までは未成年ということもあり、全てには出る必要はなかったようだが、今後はそうもいかない。
ちなみにこの国の成人は男性が18歳、女性が16歳なのだが、それは龍にも当てはまるのだろうか。
「あの、龍の成人って何歳なの?」
「純粋な龍は分からない。もう血が薄くなってきているからな…だからたぶん人間と同じで18歳じゃないか?」
「そうなんだ、じゃあ寿命とかも…」
「人間と同じくらいだよ」
「そうなんだ」
ハルカはほっとする。
自分だけしわくちゃになるのは寂しい気がした。
「あ、じゃあ結婚は成人になるまでできないの?」
「いや、龍はそうではないようだ。龍を満たすことこそが守護の力を安定させると考えられているらしい」
ヒスイも詳しいことは分からないようだ。
自分も、歴代の龍も不満に思う出来事はあまりなかったらしい。
当然だろう、機嫌を損ねれば守護の力が不安定になるのだと考えているのだから。
ヒスイがハルカに説明しているのも過去の記録からの憶測なのだった。
「なるほど…」
「だからといってこちらも変なワガママなどは言ったことはないけどな」
「…本当に?」
「………幼い頃、ワガママを言って怒られてからは言っていない」
ちょっと拗ねたような表情が可愛いと思ってしまうのは仕方のないことだろう。
「ごめんごめん!」
「いいけどさ、かっこわるいだろ…」
「いや、可愛いよ!とっても」
「とっても…」
ヒスイは項垂れる。
「絶対にかっこよくなる」と決意を新たにしたのだった。
-------------
雲が多めの夕焼けが絶妙なバランスで美しい。
思わず目を細めてしまう。
あのメイドに会いに行く時間だった。
ヒスイが部屋に迎えに来てくれるので待っていると、ノックが鳴った。
返事をし、扉の前へ行くとヒスイの声がして、扉が開いた。
「…行こうか」
「うん」
恐らく、会いに行くことにまだ納得はしていないのだろう。
そういう表情をしていた。
地下へと至る階段はハルカが足を踏み入れたことのない領域にあった。
使っている人がいるときは警備の者を配置しているらしい。
思ったよりも明るい階段を下りていくと、そこには部屋が3つほどあった。
ジメジメしているとか、汚いとか、そういう感じではないがどこか寂しげだ。
どうやら半地下のようで窓は高い位置に1つだけあり、夕日が差し込んでいた。
その3部屋のうち一番奥に彼女はいた。
扉の前へ行くと、彼女は視線だけをこちらにやり、ふいと外した。
2人だけで話したいと告げていたので、ヒスイは少し後ろに下がってくれている。
「…あの…」
「…」
「あの」
「……何しに来たんですか?」
「…話がしたくて」
「話すことなんかありましたっけ」
彼女の態度は刺々しく、硬い。
誰も寄せ付けないという感じだ。
「なんで、あんなことしたんですか?」
「…それ、あなたに言う意味あります?」
「ないかもしれないですけど…被害者だから、それくらい聞かせてください」
はあ、と大きなため息が聞こえる。
非常に面倒そうだが、こちらを向いてくれたので話してくれる気になったようだ。
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