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♡方言女子と過ごす第3夜♡

私のお兄ちゃんはとっても頼りになるんですよ!

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 ◇  ◆  ◇


 セレナちゃんの手前、なんともないように振る舞っていた私だけれど、あの男たちから受けた精神的なダメージは相当なものだったらしい。

 それは、セレナちゃんと別れてすぐにやってきた。とてつもない目眩と頭痛と吐き気が一度に襲いかかってきて、私はたまらずに強制ログアウトした。

「うぅぅっ……」

 自室のベッドの上で目覚めた私は、嗚咽を漏らしながら時計を確認した。夜中の0時半。家族はみんな寝ている時間だ。誰かに慰めてもらおうにも、皆多分『トロイメア・オンライン』をプレイしているのだろう。邪魔はしたくない。

「うっぷ……」

 猛烈な吐き気を覚えた私は、這うようにお手洗いに行き、便座にしがみつくようにして、胃の中のものをぶちまけた。

「うぉぇっ……ぐすっ……やだ……こわい……こわいよ……おにいちゃん」

 気づいたら泣いていた。
 私の身体には鮮明に、胸やお尻を触られた感触が残っている。あと少し、あと少しで私はほんとに……。
 敵わない相手に好きなようにされるという恐怖は、簡単には消えてくれなかった。――もう、ゲームには戻れない。戻りたくない。

「ごめん……ごめんなさい……私のせいで……うぇっ」

 私は身体を震わせながら胃液を吐き出しきると、静かに自室に戻ってベッドに横になる。とてもじゃないけど『トロイメギア』をつける気にはならなかった。

 そのまま寝ようとして目をつぶってみる。

 ……。

 …………。


「寝れない」

 目を開けた私は、再び恐怖に襲われた。暗い部屋の隅から……扉から……クローゼットの中から……いつ男たちが飛び出してくるか分からないというなんとも言えない不安が私の胸を覆っていた。

「寝れないよぉぉぉぉぉ!!!!」


 ――時刻は午前2時過ぎ。

 そろそろ寝ないと翌日の学校で大変なことになってしまう。しかし、もともと不眠症の私は『トロイメギア』なしではなかなか寝れないらしい。そこに先程の出来事が追い打ちをかけている。寝れるはずがない。

 私は部屋の電気をつけた。ベッドに座って腕を組み、じっと考えてみる。もしやと思ってスマートフォンを手に取り、『トロイメア・オンライン』の掲示板を覗いてみた。レーヴくんが教えてくれた、件の『見抜きスレ』とやら。そこを片っ端から漁っていくと……

「あった……」

 1時間前くらいの投稿に、新しい私――ココアちゃんの画像があって……それは以前にも増してショッキングな画像の数々だった。

「きーっ! 許せない! くそぉぉぉぉ!!」

 私は布団に顔を押し付けて絶叫した。


 顔を上げた私は、心配そうな顔でこちらを見つめるお兄ちゃん――惶世(こうせい)と目が合った。

「……お兄ちゃん」

「声がしたんで来てみたら、心凪(ここな)……大丈夫……じゃないよな」

「放っといてよ」

 嘘、本当はお兄ちゃんが来てくれてめちゃくちゃ嬉しかったし、慰めてほしかったけれど、素直になれない私は咄嗟にそんなことを言った。大人しくレイプされかけましたなんて言えない。画像出回ってるし!
 が、お兄ちゃんもお兄ちゃんで妹の言うことをはいはいと聞くようなお兄ちゃんではなく……

「放っとけねえよ。そんな顔して……何があったんだ? 言ってみろ」

「いや……」

「『トロイメア・オンライン』のことだな?」

「……」

 図星です。なんでもお見通しなんですね。

「まったく……心凪は」


 お兄ちゃんはベッドの私の隣に座ると、私の頭を抱き寄せてくれた。お兄ちゃんの感触と匂いに包まれていると、不思議と私の身体の奥から熱いものが溢れてきた。

「う、うわぁぁぁぁぁんっ……お兄ちゃん……私……私もっと強くなりたい!」

「うん……」

「強くなって、必ず仕返ししてやるんだから!」

「うん……」

「絶対に許さない! 絶対!」

「うん……よしよし」

 お兄ちゃんはいつもこうやって、ひたすら私が泣きながら吐き出す愚痴を聞きながら頭を撫でてくれる。そして、必ず最後に一言、何かためになるようなことを言ってくれるのだ。

「……そうだな。強くなるには……強いやつに弟子入りするんだな」

「……うん。頑張ってみるよ」

「あぁ、――じゃあオレはもう一眠りするから」

「うん、ごめんね起こしちゃって……」

「気にすんな。頑張れよ、

「ありがとうお兄ちゃん!」


 部屋から出ていくお兄ちゃん。私はその背中を見送ると、部屋の電気を消してベッドに横になった。横になってベッドギアを被り、スイッチを入れる。

 逃げてばかりはいられない! 私が強くなってアイツらに仕返ししてやらないと!
 あと、ミルクちゃんも放っておけないし、セレナちゃんに助けを求めたという『アサシン』の女の子のことも気になる。――やることはいっぱいあるぞっ!


 ――私は前を向く!

 ――そして強くなる!

 ――ついでに快眠になる!

 ――いざ


「ゲームスタート!」

 お兄ちゃんのためにも頑張るもん! ん? ちょっと待てよ? お兄ちゃんの最後のセリフ……「頑張れよ、」って言ってなかった!?

 ……。

 …………。

 ………………。

 ……………………。

 …………………………。

 ――う


 うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!


 私は心の中で絶叫しながら、眠りの世界へと誘われて行ったのだった。
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