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第1章 守護龍の謎
第2話 ドラゴンと契約しました
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「えっと……大丈夫だけど……」
俺がそう答えると、彼女は困ったような表情をした。
「私は今まで何をしていたのでしょうか……身体がとても痛くて……マリオンはどこでしょう? 彼の魔力を感じられませんがまさか……」
どうやら彼女は酷く混乱しているらしい。でも、俺もいまいち彼女が置かれている状況を理解できていないし、マリオンというやつが誰なのかもわからないから答えようがない。
「悪いけど、俺もお前がどうしてここにいるのか分からない。でも、どうやらここに封印されていたみたいだな」
「そんな……どのくらいでしょうか?」
俺が「わからない」と首を振ると少女は頭を垂れ、目に見えて落胆した。
「じゃあマリオンはもう……」
きっと、想像を絶する辛い過去があったのだろうと俺が言葉を失っていると、彼女は俺の方に視線を向けた。
「あなたが私の封印を解いてくれたんですね? ありがとうございます」
「まぁ、そうなるかな。それより、その『マリオン』って人はお前の知り合いか何かか?」
「いえ、私にとって彼は唯一無二の存在です。彼がいないのなら、私が生きている意味なんてありません……いっそこのまま……」
彼女の悲壮感漂う様子から察すると、よほど大事な存在のようだ。でも、その人がどこにいるかも分からない以上、今俺にできることは何も無い。
「混乱してるのは分かるが、今はとにかくここから出たい。お前もこんなところにいたくないだろ? 手伝ってくれないか?」
「はい、でも出口がわかりません……」
「なら、一緒に探すしかないな。俺はロイ。ロイ・クノールっていうんだ。よろしく」
「私は……そう、フラウと呼ばれてました」
俺が差し出した手を、フラウは不思議そうな顔をして眺めていた。まるで、握るか躊躇しているようだった。もしかしたら、ドラゴンにとって握手はなにか別の意味があるのかもしれない。
「……ロイ、一つ聞いてもいいでしょうか?」
「なんだ?」
自己紹介を済ませて警戒心が解けたのか、フラウは僅かに微笑のようなものを浮かべる。
「『ドラゴンライダー』というものを知ってますか?」
「ドラゴン……ライダー? いや、初耳だな……」
「そうですか……」
フラウは再び落胆してしまった。どうやら彼女は喜怒哀楽の表現が豊からしい。
「マリオンを知らなかったのでもしやと思いましたが、この時代ではもうドラゴンライダーのことを覚えている人はほとんどいないのですね」
「ああ、俺も今初めて聞いたよ。どんな奴だったんだ?」
「守護龍と共に戦う選ばれた人間のことです」
「ドラゴンと……共に戦う?」
俺にはその意味がよくわからなかった。
「はい。マリオンは私と共に魔王を討伐し、私たちの世界を救ったのです。それからマリオンは英雄として王族に召し抱えられる存在になりました。そんな彼を後世の人間が知らないことはないはずなんですが……」
「……ごめん。本当に知らないんだ」
「これはなにか理由がありそうですね。私が封印されていた理由も、封印されていた間の記憶が無いことも気になります」
「それは、なんとも言えないな。でも、この洞窟の外に出れば何か分かるかもしれないぞ? 王都には歴史書も沢山あるしな」
フラウは少し悩むような仕草をした。彼女が先程までなぜここで痛めつけられながら封印されていたのか、そして何故邪龍の姿をしていたのか、俺も気になっていた。
彼女が俺を騙している可能性もあるが、目の前の彼女の反応は純粋そのもので、どうにも疑うことができなかった。
「ロイ!」
突然フラウが大声を上げたので、俺はびっくりしてその場で飛び跳ねてしまった。
「な、なんだよ……」
「……ロイ」
「なんですか……?」
「私と契約しませんか?」
「えっ?」
「マリオンがいない今、私が力を発揮するためにはドラゴンライダーの存在が不可欠です。封印を解いてくれたあなたなら信用できますし、私と契約してドラゴンライダーになりませんか?」
フラウの申し出は願ってもないことだった。しかし、ドラゴンとの契約というのがよくわからない。
「契約って、具体的には何をすればいいんだ?」
「私の身体に触れてください。そしたら私がロイに魔力を譲渡しますので、それで契約は完了します」
「身体に触れるって……それはどこだ?」
「どこでも構いません。私の背中でも、頭でも良いですよ」
「わかった。じゃあ……」
俺はフラウの小さな身体を抱きかかえた。
「ひゃっ!? ど、どうしてお姫様抱っこするんですか! 普通に手を繋ぐとかそういうものでしょう!?」
「えっと、どこ触ればいいかわからなかったからさ……」
「だとしても他にやりようがあるでしょう!?」
「いやー……」
俺は苦笑いしながら頬を掻いた。正直、どこでもと言われて余計な考えが浮かんでしまい、恥ずかしくて他の選択肢を考える余裕が無かったのだ。
「全く……変なところで不器用な人ですね」
「悪かったって。じゃあ、これで良いか?」
「はい……」
フラウの顔を見ると真っ赤に染まっていた。やっぱり嫌だったかな。
「よし、じゃあやるか」
「お願いします……」
俺が右手を差し出すとフラウが紋章のようなものが刻まれた右手を伸ばしてきたので、それを優しく握った。すると、フラウの手から暖かいものが流れ込んでくる感覚があった。
「ん? なんだこれ……」
俺がそう呟くとフラウが説明してくれた。
「それが私の魔力です。その感じだと、ちゃんと契約できたみたいですね」
「これが……契約?」
「はい。これで私たちは一心同体、つまり運命共同体ということになりました」
「なんか、ちょっと怖いな……」
「ロイはあまり深く考えなくても大丈夫です。一緒に戦うパートナーとでも考えてください」
俺は彼女の言葉を聞いて、改めて自分の右手の甲を見た。そこには、フラウの手に刻まれていたものと同じ紋章が刻まれていた。
「あれ……いつの間に……」
「ふふっ、不思議そうな顔をしてますね。これも私と契約した証なんですよ」
「そうなのか。それにしても、ドラゴンと契約なんて本当にできるんだな」
「はい。ドラゴンライダーになるということは、すなわち守護龍に認められたということなのです。守護龍に認められるのはとても名誉なことなのですよ?」
フラウはそう言って胸を張った。可愛いのでここは喜んでおくか。
「ありがとよ。こんなひよっこ冒険者の俺を認めてくれて」
「いえ、こちらこそありがとうございます。ロイが封印を解いてくれなかったらこのままこの狭い洞窟で死んでいたかもしれません」
「それなら良かったよ。それより、出口探さないとな」
「あっ、はい」
俺達は出口を探すために歩き出した。
俺がそう答えると、彼女は困ったような表情をした。
「私は今まで何をしていたのでしょうか……身体がとても痛くて……マリオンはどこでしょう? 彼の魔力を感じられませんがまさか……」
どうやら彼女は酷く混乱しているらしい。でも、俺もいまいち彼女が置かれている状況を理解できていないし、マリオンというやつが誰なのかもわからないから答えようがない。
「悪いけど、俺もお前がどうしてここにいるのか分からない。でも、どうやらここに封印されていたみたいだな」
「そんな……どのくらいでしょうか?」
俺が「わからない」と首を振ると少女は頭を垂れ、目に見えて落胆した。
「じゃあマリオンはもう……」
きっと、想像を絶する辛い過去があったのだろうと俺が言葉を失っていると、彼女は俺の方に視線を向けた。
「あなたが私の封印を解いてくれたんですね? ありがとうございます」
「まぁ、そうなるかな。それより、その『マリオン』って人はお前の知り合いか何かか?」
「いえ、私にとって彼は唯一無二の存在です。彼がいないのなら、私が生きている意味なんてありません……いっそこのまま……」
彼女の悲壮感漂う様子から察すると、よほど大事な存在のようだ。でも、その人がどこにいるかも分からない以上、今俺にできることは何も無い。
「混乱してるのは分かるが、今はとにかくここから出たい。お前もこんなところにいたくないだろ? 手伝ってくれないか?」
「はい、でも出口がわかりません……」
「なら、一緒に探すしかないな。俺はロイ。ロイ・クノールっていうんだ。よろしく」
「私は……そう、フラウと呼ばれてました」
俺が差し出した手を、フラウは不思議そうな顔をして眺めていた。まるで、握るか躊躇しているようだった。もしかしたら、ドラゴンにとって握手はなにか別の意味があるのかもしれない。
「……ロイ、一つ聞いてもいいでしょうか?」
「なんだ?」
自己紹介を済ませて警戒心が解けたのか、フラウは僅かに微笑のようなものを浮かべる。
「『ドラゴンライダー』というものを知ってますか?」
「ドラゴン……ライダー? いや、初耳だな……」
「そうですか……」
フラウは再び落胆してしまった。どうやら彼女は喜怒哀楽の表現が豊からしい。
「マリオンを知らなかったのでもしやと思いましたが、この時代ではもうドラゴンライダーのことを覚えている人はほとんどいないのですね」
「ああ、俺も今初めて聞いたよ。どんな奴だったんだ?」
「守護龍と共に戦う選ばれた人間のことです」
「ドラゴンと……共に戦う?」
俺にはその意味がよくわからなかった。
「はい。マリオンは私と共に魔王を討伐し、私たちの世界を救ったのです。それからマリオンは英雄として王族に召し抱えられる存在になりました。そんな彼を後世の人間が知らないことはないはずなんですが……」
「……ごめん。本当に知らないんだ」
「これはなにか理由がありそうですね。私が封印されていた理由も、封印されていた間の記憶が無いことも気になります」
「それは、なんとも言えないな。でも、この洞窟の外に出れば何か分かるかもしれないぞ? 王都には歴史書も沢山あるしな」
フラウは少し悩むような仕草をした。彼女が先程までなぜここで痛めつけられながら封印されていたのか、そして何故邪龍の姿をしていたのか、俺も気になっていた。
彼女が俺を騙している可能性もあるが、目の前の彼女の反応は純粋そのもので、どうにも疑うことができなかった。
「ロイ!」
突然フラウが大声を上げたので、俺はびっくりしてその場で飛び跳ねてしまった。
「な、なんだよ……」
「……ロイ」
「なんですか……?」
「私と契約しませんか?」
「えっ?」
「マリオンがいない今、私が力を発揮するためにはドラゴンライダーの存在が不可欠です。封印を解いてくれたあなたなら信用できますし、私と契約してドラゴンライダーになりませんか?」
フラウの申し出は願ってもないことだった。しかし、ドラゴンとの契約というのがよくわからない。
「契約って、具体的には何をすればいいんだ?」
「私の身体に触れてください。そしたら私がロイに魔力を譲渡しますので、それで契約は完了します」
「身体に触れるって……それはどこだ?」
「どこでも構いません。私の背中でも、頭でも良いですよ」
「わかった。じゃあ……」
俺はフラウの小さな身体を抱きかかえた。
「ひゃっ!? ど、どうしてお姫様抱っこするんですか! 普通に手を繋ぐとかそういうものでしょう!?」
「えっと、どこ触ればいいかわからなかったからさ……」
「だとしても他にやりようがあるでしょう!?」
「いやー……」
俺は苦笑いしながら頬を掻いた。正直、どこでもと言われて余計な考えが浮かんでしまい、恥ずかしくて他の選択肢を考える余裕が無かったのだ。
「全く……変なところで不器用な人ですね」
「悪かったって。じゃあ、これで良いか?」
「はい……」
フラウの顔を見ると真っ赤に染まっていた。やっぱり嫌だったかな。
「よし、じゃあやるか」
「お願いします……」
俺が右手を差し出すとフラウが紋章のようなものが刻まれた右手を伸ばしてきたので、それを優しく握った。すると、フラウの手から暖かいものが流れ込んでくる感覚があった。
「ん? なんだこれ……」
俺がそう呟くとフラウが説明してくれた。
「それが私の魔力です。その感じだと、ちゃんと契約できたみたいですね」
「これが……契約?」
「はい。これで私たちは一心同体、つまり運命共同体ということになりました」
「なんか、ちょっと怖いな……」
「ロイはあまり深く考えなくても大丈夫です。一緒に戦うパートナーとでも考えてください」
俺は彼女の言葉を聞いて、改めて自分の右手の甲を見た。そこには、フラウの手に刻まれていたものと同じ紋章が刻まれていた。
「あれ……いつの間に……」
「ふふっ、不思議そうな顔をしてますね。これも私と契約した証なんですよ」
「そうなのか。それにしても、ドラゴンと契約なんて本当にできるんだな」
「はい。ドラゴンライダーになるということは、すなわち守護龍に認められたということなのです。守護龍に認められるのはとても名誉なことなのですよ?」
フラウはそう言って胸を張った。可愛いのでここは喜んでおくか。
「ありがとよ。こんなひよっこ冒険者の俺を認めてくれて」
「いえ、こちらこそありがとうございます。ロイが封印を解いてくれなかったらこのままこの狭い洞窟で死んでいたかもしれません」
「それなら良かったよ。それより、出口探さないとな」
「あっ、はい」
俺達は出口を探すために歩き出した。
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