解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流

文字の大きさ
19 / 40
第1章 守護龍の謎

第19話 龍のすみかにやってきました

しおりを挟む
 二人で寄り添いながら休んでいると、しばらくして、宿屋に村の長老が訪れた。

「ロイ殿! フラウ殿! 無事でなによりじゃった!」
「長老こそ、生きてたのか!」
「ああ、また死に損なってしまったわい」

 そういう長老の腕は布で首から吊るされ、怪我をしているらしいことが分かる。

「村の被害はどんな感じなんだ? 女神信徒たちはどうなった?」
「それなんじゃが、村全体に被害が及ぶ前に、なにやらフードを被った女魔導師が暴徒をまとめて眠らせてしまって、被害は限られているようじゃ」
「なんだって?」

 その特徴はフリーダで間違いないだろう。俺とやり合う前に、あらかじめ信徒たちを無力化していたのだ。やはりあいつは女神の手先ではなかったのだ。

「ロイ殿を探していたようじゃが……知り合いかの?」
「……まあそんな感じだ」
「そうか……しかし、奴らは諦めていない様子じゃ。これからも警戒しておいた方が良いぞ」
「分かってる。奴らの狙いは俺たちだ。これ以上村に迷惑をかけたくない。……フラウの怪我が治ったら、俺たちは出ていくよ」

「……そうか。寂しくなるのう」
「世話になったな、長老」
「気にするでない。また困ったことがあったらいつでも立ち寄るがよい」
「ああ、ありがとう」

 俺は長老と握手を交わすと、部屋へと戻った。


 数日後、フラウがドラゴン特有の回復力で怪我を治癒していき、村から出ても大丈夫だと判断すると、俺達は荷物をまとめ、宿を引き払った。

「長い間、お世話になりました」
「本当に助かったぜ。感謝してもしきれねえ」
「うむ、こちらこそ。ロイ殿たちのおかげで村は救われた。それに、この村には昔を思い出す良い思い出ができた。ドラゴンライダーの伝説はずっとこの村で語り継がれるじゃろう。……もし、また何かあった時は遠慮なく頼ってくれ」
「はい、その時には是非……」

 フラウはぺこりと頭を下げる。

「ロイ、行きましょうか」
「そうだな」

 長老たちに見送られて村から出ると、フラウはドラゴンの姿に変化して翼を広げる。
 俺はフラウの背中に飛び乗り、フラウは力強く羽ばたいた。……こうして俺たちは新たな新天地へと旅立ったのだった。


 しばらく飛んだフラウは、国境付近の険しい山岳地帯に降り立つと、俺を降ろして人間の姿になった。鬱蒼うっそうと茂る木々の向こう側には、洞窟のようなものが口を開けているのが見える。ここならば人目につくことも少ないだろう。

「ここでいいのか? もっと開けた場所の方が、人里を探すにも都合が良いと思うんだが……」
「実はずっと昔、私はこの山岳地帯で生まれ育ったんです」

 フラウは懐かしそうに目を細めると、話を続けた。

「だいぶ変わっちゃいましたけど、一度来てみたくて……」
「確かに、ここら辺にわざわざやってくる旅人なんていないし、一旦身を隠すには最適だな」
「えへへ……」

 フラウは照れたように笑うと、俺の頬に手を添えてきた。

「私とロイだけの、秘密の場所ですね……」
「そうだな……」

 俺はフラウの手を握り返すと、唇を重ねた。それからしばらくのあいだ、俺達は抱き合ってお互いの存在を確かめ合った。


「……さっきの話ですけど、私の故郷はここから西の方角にある山の奥深くにあります。そこにはまだ、私が暮らしていた頃の面影が残っているはずなので、行ってみませんか?」
「ああ、行こう。もしかしたら、ドラゴンライダーについて何かわかるかもしれないしな」
「私も正直、ドラゴンライダーについては分からないことも多いです。……でも、確か私の先祖も代々人間を守護していて、ドラゴンライダーと契約を結んでいたらしいですよ?」
「そうなのか……」

 ということは、フラウの両親のどちらかが、人間と契約を結んでいたということか。

「そんな昔から人間を守っている守護龍が、人間に恵を与える女神ソフィアと対立することになるなんて……皮肉な話だな」
「本当ですね……。私も本当は女神と争いたくない。でも、彼女は変わってしまった。──多くの人間から信仰され、捧げ物をされることに快楽を覚えてしまったのかもしれません」
「それで、同じく信仰対象になり得る守護龍が邪魔になったんだな……」
「はい……」

 フラウは悲しげに顔を伏せた。

「大丈夫だ、なんとかなる! フラウの人間を守りたい気持ちは本当なんだろ?」
「それはそうです! でも、私は過去に一度、女神に呪いをかけられて人間をたくさん殺しました。……またそんなことにならないとも限りません。それが怖いんです」
「そんな心配するなって。俺は絶対にお前を見捨てたりしない。どんなことがあろうと、お前を信じて最後まで一緒にいてやるよ」
「ロイ……!」

 フラウは感激した様子で、俺の首の後ろに腕を回してきた。そしてそのまま押し倒される。

「……フラウさん?ちょっと待とうぜ」
「ごめんなさい……ちょっと我慢できなくて」

 俺の胸に顔を埋めたフラウの身体は少し震えているように見えた。

「泣いてるのか……?」
「いえ……なんでもないんですよ。ただ、色々思い出して……なんで私は守護龍なのにこんなに無力なんだろうって……」
「そんなことない。フラウは強いよ。俺を守ってくれたじゃないか」

 俺はフラウの頭を撫でると、優しく抱きしめ返した。

「いいえ、ロイに私が守られただけです」
「……じゃあそういうことにしておくか?」

 フラウは涙を拭うと微笑んで見せた。

「ロイ……愛しています」
「ああ、俺もだよ」

 再び唇を重ねると、フラウの手は自然と下腹部へと伸びていった。

「あの、ロイ……」
「どうした?……やっぱりまだ辛いか?」
「ううん、違うんです。その……お願いがあるのですが……」
「言ってみてくれ」
「私を──ううん、やっぱりこれは全てが終わった後にしましょう」

 フラウは何事かを言おうとして思い留まったようだった。気にはなったものの、俺はあえて追及しなかった。多分、俺も同じようなことを考えていたから。

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

神眼のカードマスター 〜パーティーを追放されてから人生の大逆転が始まった件。今さら戻って来いと言われてももう遅い〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「いいかい? 君と僕じゃ最初から住む世界が違うんだよ。これからは惨めな人生を送って一生後悔しながら過ごすんだね」 Fランク冒険者のアルディンは領主の息子であるザネリにそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 父親から譲り受けた大切なカードも奪われ、アルディンは失意のどん底に。 しばらくは冒険者稼業をやめて田舎でのんびり暮らそうと街を離れることにしたアルディンは、その道中、メイド姉妹が賊に襲われている光景を目撃する。 彼女たちを救い出す最中、突如として【神眼】が覚醒してしまう。 それはこのカード世界における掟すらもぶち壊してしまうほどの才能だった。 無事にメイド姉妹を助けたアルディンは、大きな屋敷で彼女たちと一緒に楽しく暮らすようになる。 【神眼】を使って楽々とカードを集めてまわり、召喚獣の万能スライムとも仲良くなって、やがて天災級ドラゴンを討伐するまでに成長し、アルディンはどんどん強くなっていく。 一方その頃、ザネリのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 ダンジョン攻略も思うようにいかなくなり、ザネリはそこでようやくアルディンの重要さに気づく。 なんとか引き戻したいザネリは、アルディンにパーティーへ戻って来るように頼み込むのだったが……。 これは、かつてFランク冒険者だった青年が、チート能力を駆使してカード無双で成り上がり、やがて神話級改変者〈ルールブレイカー〉と呼ばれるようになるまでの人生逆転譚である。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

防御力ゼロと追放された盾使い、実は受けたダメージを100倍で反射する最強スキルを持ってました

黒崎隼人
ファンタジー
どんな攻撃も防げない【盾使い】のアッシュは、仲間から「歩く的」と罵られ、理不尽の限りを尽くされてパーティーを追放される。長年想いを寄せた少女にも裏切られ、全てを失った彼が死の淵で目覚めたのは、受けたダメージを百倍にして反射する攻防一体の最強スキルだった! これは、無能と蔑まれた心優しき盾使いが、真の力に目覚め、最高の仲間と出会い、自分を虐げた者たちに鮮やかな鉄槌を下す、痛快な成り上がり英雄譚! 「もうお前たちの壁にはならない」――絶望の底から這い上がった男の、爽快な逆転劇が今、始まる。

【第2章完結】王位を捨てた元王子、冒険者として新たな人生を歩む

凪木桜
ファンタジー
かつて王国の次期国王候補と期待されながらも、自ら王位を捨てた元王子レオン。彼は自由を求め、名もなき冒険者として歩み始める。しかし、貴族社会で培った知識と騎士団で鍛えた剣技は、新たな世界で否応なく彼を際立たせる。ギルドでの成長、仲間との出会い、そして迫り来る王国の影——。過去と向き合いながらも、自らの道を切り開くレオンの冒険譚が今、幕を開ける!

処理中です...