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ストライカー・フォーム
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拳を握りながらこちらに向かって一直線に駆けてくるマンゴープリンちゃん。対するデストルドーは、私の身体を背後に押しやると、前方に手のひらを向ける。──すると、その手に武器のフォークがシュッと飛んできて収まった。わお、かっこいい!
マンゴープリンちゃんの突進を遮るように、フォークを横薙ぎに振るうデストルドー。ビュンッと風を切る音がして、マンゴープリンちゃんの身体が消えた。
「せいやぁっ!」
やられた……? わけではなく。マンゴープリンちゃんは身体を大きく反らせてフォークを回避しながら、その勢いを利用して右足でフォークを蹴り上げた。そしてそのまま新体操の選手のような柔らかさと運動神経で後方に一回転。パンチラしそうな──というかモロ見えそうな技だったけれど、一瞬だったので私にはよく分からなかった。……そもそも木乃葉のパンツなんて見たくない。
大きく跳ね上げられたフォークは、ゴギャァ! という耳障りな音を立てて車両の天井を切り裂く。あんなのが私の柔肌に命中したらひとたまりもない。魔法少女恐るべしである。
天井に突き刺さったフォークを引き戻そうとするデストルドーの間合いに、マンゴープリンちゃんは一瞬で侵入した。ダンッ! と思いっきり左足で踏み込み、それを軸足にしてくるっと横に一回転。
「はあっ!」
──ズバンッ!
遠心力で威力を増した回し蹴りが空を切り裂く。デストルドーはフォークを諦めてバックステップでかわすが、思ったよりリーチが長かったのか、マンゴープリンちゃんのつま先が脇腹のあたりを捉えて、体勢を崩しながらフラフラと二三歩下がった。
「……やるな」
デストルドーの顔からは余裕が消えている。一方のマンゴープリンちゃんは涼しい表情。──もしかしてマンゴープリンちゃんめちゃくちゃ強い? 木乃葉ちょっと見直したかも。
「あははっ! ウチが最強なのはベッドの上だけじゃないんだよ! 足技を鍛えておけば三回戦くらいは余裕なのです!」
……前言撤回。
「……くっ、絶望の災禍と呼ばれたこの我がそう簡単にやられると思うなよ!」
両手に禍々しいオーラを溜めていくデストルドー。すぐさまそこには黒い二本のフォークが実体化した。あれは恐らくマカロンちゃんの技、それをデストルドーがアレンジしたんだ。
マンゴープリンちゃんは間合いを測りながら、今度は敵の頭部を狙ってハイキックを放った。えっ、パン──?
見えたかどうかはデストルドーにしかわからない。しかし当のデストルドーは右手の黒いフォークでハイキックを受け止めた。すると、フォークはうねうねと形を変えてマンゴープリンちゃんの足にまとわりつく。うわぁ、いやらしい武器!
「おっと、まずいかな……」
「はっ!」
左手の黒いフォークからオーラを放って衝撃でマンゴープリンちゃんを吹き飛ばした。
「ふべっ!?」
倒れていたクレープ・シュゼットちゃんを座席に横たわらせていた私の足元に黄色い物体が飛ばされてきた。うつ伏せの状態で不貞腐れているのは、マンゴープリンちゃ──木乃葉だ。私はその物体をつま先で小突いてみた。
「こら、なにやってんの木乃葉!」
「木乃葉じゃないもーん……マンゴー・プリンだもん」
その様子は普段のぐーたらな木乃葉そのものだったので、かなりイライラした私は、わりと強く木乃葉に蹴りを入れた。今は地球の危機なのに、なぜ唐突にやる気をなくしてしまうのだろう。
「やめてよお姉。あまり蹴ると中身が出ちゃう。ウチはマンゴープリンだから」
いや、意味がわからない。
「まだ余裕そうじゃない」
「そうでもないよ。ウチのエロゲージが底をついているから全力は出せないかなー」
なんだよそのゲージ! 散々文句言いたいところだけど今は事態が事態だ。木乃葉の気分一つで地球の未来が変わってくるのだ。多分。とりあえず罵倒するのは辞めておこう。
「あんた、年中エロいこと考えてるんじゃないの?」
「まさかぁ? 男子高校生じゃあるまいし!」
男子高校生以下の頭脳のくせに。あー、イライラする!
「じゃあどうするのよ!」
「──お姉、パンツ見せて!」
「全力で断る!」
「じゃあパンツちょうだい!」
「そんなことするくらいなら地球なんか滅んでくれて構わないわ!」
ごめん。呆気なく見捨てた。ごめん地球。
謎の問答をする私たちのもとに、デストルドーがゆっくりと歩いてきた。こいつが一番気の毒かもしれない。自分の存在を忘れられてくだらない喧嘩をする姉妹を鑑賞させられているのだから。
「……その恵まれた才能……我に寄越すがいい、【マンゴー・プリン】よ」
こいつ、木乃葉を乗っ取る気だ!
「……仕方ないかぁ! ……ちょっと待っててね!」
マンゴープリンちゃんは手すりに捕まりながら立ち上がると、手でデストルドーを制した。デストルドーは何を思ったのか、律儀に動きを止めた。
それを確認すると、マンゴープリンちゃんは自らのスカートの中に手を突っ込み──んっ……と艶めかしい声を上げながら──パンツを──脱いだ。
「「は?」」
私とデストルドーはマンゴープリンちゃんの奇行の意図が理解できずに固まってしまった。だが、マンゴープリンちゃんの凶行はそれだけには留まらず……脱いだその水色と白の縞パンを自分の頭にかぶった。
「「は?」」
こんなのギャグ漫画でしか見た事ないし、いくら変態とはいえ実の妹がそれをやるとは思っていなかった。──もう、縁を切ろう。うん、そうしよう。
縞パンをかぶったマンゴープリンちゃんはこう叫ぶ。
「【マンゴー・プリン】、ストライカーフォーム!」
どの辺がストライカーなの?
という私の疑問をよそに、シュバッという音を立てながら、マンゴープリンちゃんのツインテールが縞パンの足を出す部分?(名前よくわからない!)から伸びて、光の粒子を撒き散らしながら背後にたなびいた。
かっこいい。頭に被ってるのがパンツであることを除けばね!
「──ふんっ、どういう姿になろうと所詮は魔法少女……」
我に返ったデストルドーが、オーラを放って攻撃する……が、オーラはマンゴープリンちゃんの頭の周辺で呆気なく霧散した。
「ちっちっちっ、甘いなー! マカロンよりも甘い」
頭のパンツを指さしながらドヤ顔をするマンゴープリンちゃん。何が凄いのかわからないけど、とにかくすごい?
「なんだと!?」
「魔法少女のパンツは最強なんだよ。ただでさえ魅惑のアイテムなのに、女の子の魔力がたくさん込められてる場所につけられてたんだから、もうエクスカリバーとかロンギヌスなんかよりもよっぽど神聖なアイテムなんです!」
うん、女の子の聖水っていうもんね……って違うわ! エクスカリバーとかロンギヌスに謝って……!?
「──だが、こっちは……」
デストルドーのオーラが今度はマンゴープリンちゃんの下半身に襲いかかった。が、今度も呆気なく霧散してしまう。
「ふふーん、甘い甘い。じゃーん!」
マンゴープリンちゃんはバサッとスカートを捲り上げる。あっ、ちょっ、だってほら、被ったからはいてないんじゃ──!?
しかし、マンゴープリンちゃんはしっかりと水色と白の縞パンをはいていた。──ていうか木乃葉のパンツ見ちゃった! 目が潰れる!
「……っ!?」
「魔法少女たるもの、パンツの予備くらいは身につけてくるものだよ。特にウチはストライカーフォームとかファイナルフォームにパンツを使うから最低でも三枚は──」
まだ進化を残しているのこの変態は……? 触れないでおこう。
「……おのれ!」
さすがに不利と判断したデストルドーは、割れた窓から逃げようとする。が、マンゴープリンちゃんはそれを許さなかった。
座席の上を飛ぶように駆け抜けた彼女は、デストルドーの側頭部に強烈なドロップキックを放った。
「ぐぁぁっ!?」
苦悶の声を上げたデストルドー。──これならいける。あとはトドメをさすだけだ。
「マンゴー・プリンちゃん。武器はないの? 必殺技とかは?」
「武器は必要ないよ。邪魔なだけ。──必殺技はこれから見せてあげる!」
マンゴープリンちゃんは棒立ちになったデストルドーの前で逆立ちすると、足で敵の頭を挟んで床に引き倒した。そして、そのまま太ももでぎゅうぎゅうと締め上げる。
「ぐっ……や、やめっ……!」
「あははっ! ほらほら、さっさとその身体から出ていきなよ。じゃないと……」
マンゴープリンちゃんの輝くツインテールから溢れた光がその全身を包み──デストルドーのオーラを侵食し始めた。もがくように暴れるデストルドーの……いや、緋奈子の身体は、マンゴープリンちゃんがしっかりと太ももでホールドして離さない。
『──これで勝ったと思うなよ!』
やがて、緋奈子の身体からどす黒い色の蛇のようなうねうねしたものが飛び出していって、窓から外に出ようとした。あれがデストルドーの本体だろうか? 逃がしたらめんどくさいことになりそうだ。
「はいはい、勝った勝った」
なんと、マンゴープリンちゃんはその蛇を光り輝く手で掴み、そのまま口に放り込んでむしゃむしゃと咀嚼し始めたのだ。
「……あんた、それ美味いの?」
「まずい」
「……」
でもいいか、とりあえずデストルドーは倒されたんだし?
ふと空を見ると、灰色の空は真っ赤な美しい夕焼けで染まっていた。遠くにそびえていた世界樹? もきれいさっぱり消滅しているし、それに気づいた人々が電車の外に駆け出してきてお祭り騒ぎになっている。
「……はぁ」
私は一気に力が抜けて、その場にペタンと座り込んだ。なんかすごく疲れた。私自身はあまり戦っていないけれど、多分一部始終を見ていたのは私だけだろう。木乃葉のバカみたいな戦いを……。
「……ここは?」
すぐ側で声がしたので振り向くと、座席に寝かせておいたクレープ・シュゼットちゃんが、上体を起こしてキョロキョロしている。よかった。生きてたんだ。
「……はっ、私は……!」
マンゴープリンちゃんの足元で倒れていたマカロンちゃん──緋奈子もゆっくりと目を覚ました。
マンゴープリンちゃんの綺麗な黄色い髪は夕日を受けて神秘的な輝きを放っている。地球と、たくさんの命を救った彼女の顔は、私のよく知る木乃葉の顔よりも少しだけ大人びて見えて──ちょっとだけかっこいいかなって思った。
視線を感じたのか、マンゴープリンちゃん──木乃葉が私の方を振り向いてニコッと微笑む。そして、人差し指を口の前で立てた。
「みんなには……内緒だよ?」
……。
…………。
「そりゃあそうだよ! 木乃葉がそんな姿で戦ったなんて、お父さんとかお母さんには絶対に言えない!」
マンゴープリンちゃんの突進を遮るように、フォークを横薙ぎに振るうデストルドー。ビュンッと風を切る音がして、マンゴープリンちゃんの身体が消えた。
「せいやぁっ!」
やられた……? わけではなく。マンゴープリンちゃんは身体を大きく反らせてフォークを回避しながら、その勢いを利用して右足でフォークを蹴り上げた。そしてそのまま新体操の選手のような柔らかさと運動神経で後方に一回転。パンチラしそうな──というかモロ見えそうな技だったけれど、一瞬だったので私にはよく分からなかった。……そもそも木乃葉のパンツなんて見たくない。
大きく跳ね上げられたフォークは、ゴギャァ! という耳障りな音を立てて車両の天井を切り裂く。あんなのが私の柔肌に命中したらひとたまりもない。魔法少女恐るべしである。
天井に突き刺さったフォークを引き戻そうとするデストルドーの間合いに、マンゴープリンちゃんは一瞬で侵入した。ダンッ! と思いっきり左足で踏み込み、それを軸足にしてくるっと横に一回転。
「はあっ!」
──ズバンッ!
遠心力で威力を増した回し蹴りが空を切り裂く。デストルドーはフォークを諦めてバックステップでかわすが、思ったよりリーチが長かったのか、マンゴープリンちゃんのつま先が脇腹のあたりを捉えて、体勢を崩しながらフラフラと二三歩下がった。
「……やるな」
デストルドーの顔からは余裕が消えている。一方のマンゴープリンちゃんは涼しい表情。──もしかしてマンゴープリンちゃんめちゃくちゃ強い? 木乃葉ちょっと見直したかも。
「あははっ! ウチが最強なのはベッドの上だけじゃないんだよ! 足技を鍛えておけば三回戦くらいは余裕なのです!」
……前言撤回。
「……くっ、絶望の災禍と呼ばれたこの我がそう簡単にやられると思うなよ!」
両手に禍々しいオーラを溜めていくデストルドー。すぐさまそこには黒い二本のフォークが実体化した。あれは恐らくマカロンちゃんの技、それをデストルドーがアレンジしたんだ。
マンゴープリンちゃんは間合いを測りながら、今度は敵の頭部を狙ってハイキックを放った。えっ、パン──?
見えたかどうかはデストルドーにしかわからない。しかし当のデストルドーは右手の黒いフォークでハイキックを受け止めた。すると、フォークはうねうねと形を変えてマンゴープリンちゃんの足にまとわりつく。うわぁ、いやらしい武器!
「おっと、まずいかな……」
「はっ!」
左手の黒いフォークからオーラを放って衝撃でマンゴープリンちゃんを吹き飛ばした。
「ふべっ!?」
倒れていたクレープ・シュゼットちゃんを座席に横たわらせていた私の足元に黄色い物体が飛ばされてきた。うつ伏せの状態で不貞腐れているのは、マンゴープリンちゃ──木乃葉だ。私はその物体をつま先で小突いてみた。
「こら、なにやってんの木乃葉!」
「木乃葉じゃないもーん……マンゴー・プリンだもん」
その様子は普段のぐーたらな木乃葉そのものだったので、かなりイライラした私は、わりと強く木乃葉に蹴りを入れた。今は地球の危機なのに、なぜ唐突にやる気をなくしてしまうのだろう。
「やめてよお姉。あまり蹴ると中身が出ちゃう。ウチはマンゴープリンだから」
いや、意味がわからない。
「まだ余裕そうじゃない」
「そうでもないよ。ウチのエロゲージが底をついているから全力は出せないかなー」
なんだよそのゲージ! 散々文句言いたいところだけど今は事態が事態だ。木乃葉の気分一つで地球の未来が変わってくるのだ。多分。とりあえず罵倒するのは辞めておこう。
「あんた、年中エロいこと考えてるんじゃないの?」
「まさかぁ? 男子高校生じゃあるまいし!」
男子高校生以下の頭脳のくせに。あー、イライラする!
「じゃあどうするのよ!」
「──お姉、パンツ見せて!」
「全力で断る!」
「じゃあパンツちょうだい!」
「そんなことするくらいなら地球なんか滅んでくれて構わないわ!」
ごめん。呆気なく見捨てた。ごめん地球。
謎の問答をする私たちのもとに、デストルドーがゆっくりと歩いてきた。こいつが一番気の毒かもしれない。自分の存在を忘れられてくだらない喧嘩をする姉妹を鑑賞させられているのだから。
「……その恵まれた才能……我に寄越すがいい、【マンゴー・プリン】よ」
こいつ、木乃葉を乗っ取る気だ!
「……仕方ないかぁ! ……ちょっと待っててね!」
マンゴープリンちゃんは手すりに捕まりながら立ち上がると、手でデストルドーを制した。デストルドーは何を思ったのか、律儀に動きを止めた。
それを確認すると、マンゴープリンちゃんは自らのスカートの中に手を突っ込み──んっ……と艶めかしい声を上げながら──パンツを──脱いだ。
「「は?」」
私とデストルドーはマンゴープリンちゃんの奇行の意図が理解できずに固まってしまった。だが、マンゴープリンちゃんの凶行はそれだけには留まらず……脱いだその水色と白の縞パンを自分の頭にかぶった。
「「は?」」
こんなのギャグ漫画でしか見た事ないし、いくら変態とはいえ実の妹がそれをやるとは思っていなかった。──もう、縁を切ろう。うん、そうしよう。
縞パンをかぶったマンゴープリンちゃんはこう叫ぶ。
「【マンゴー・プリン】、ストライカーフォーム!」
どの辺がストライカーなの?
という私の疑問をよそに、シュバッという音を立てながら、マンゴープリンちゃんのツインテールが縞パンの足を出す部分?(名前よくわからない!)から伸びて、光の粒子を撒き散らしながら背後にたなびいた。
かっこいい。頭に被ってるのがパンツであることを除けばね!
「──ふんっ、どういう姿になろうと所詮は魔法少女……」
我に返ったデストルドーが、オーラを放って攻撃する……が、オーラはマンゴープリンちゃんの頭の周辺で呆気なく霧散した。
「ちっちっちっ、甘いなー! マカロンよりも甘い」
頭のパンツを指さしながらドヤ顔をするマンゴープリンちゃん。何が凄いのかわからないけど、とにかくすごい?
「なんだと!?」
「魔法少女のパンツは最強なんだよ。ただでさえ魅惑のアイテムなのに、女の子の魔力がたくさん込められてる場所につけられてたんだから、もうエクスカリバーとかロンギヌスなんかよりもよっぽど神聖なアイテムなんです!」
うん、女の子の聖水っていうもんね……って違うわ! エクスカリバーとかロンギヌスに謝って……!?
「──だが、こっちは……」
デストルドーのオーラが今度はマンゴープリンちゃんの下半身に襲いかかった。が、今度も呆気なく霧散してしまう。
「ふふーん、甘い甘い。じゃーん!」
マンゴープリンちゃんはバサッとスカートを捲り上げる。あっ、ちょっ、だってほら、被ったからはいてないんじゃ──!?
しかし、マンゴープリンちゃんはしっかりと水色と白の縞パンをはいていた。──ていうか木乃葉のパンツ見ちゃった! 目が潰れる!
「……っ!?」
「魔法少女たるもの、パンツの予備くらいは身につけてくるものだよ。特にウチはストライカーフォームとかファイナルフォームにパンツを使うから最低でも三枚は──」
まだ進化を残しているのこの変態は……? 触れないでおこう。
「……おのれ!」
さすがに不利と判断したデストルドーは、割れた窓から逃げようとする。が、マンゴープリンちゃんはそれを許さなかった。
座席の上を飛ぶように駆け抜けた彼女は、デストルドーの側頭部に強烈なドロップキックを放った。
「ぐぁぁっ!?」
苦悶の声を上げたデストルドー。──これならいける。あとはトドメをさすだけだ。
「マンゴー・プリンちゃん。武器はないの? 必殺技とかは?」
「武器は必要ないよ。邪魔なだけ。──必殺技はこれから見せてあげる!」
マンゴープリンちゃんは棒立ちになったデストルドーの前で逆立ちすると、足で敵の頭を挟んで床に引き倒した。そして、そのまま太ももでぎゅうぎゅうと締め上げる。
「ぐっ……や、やめっ……!」
「あははっ! ほらほら、さっさとその身体から出ていきなよ。じゃないと……」
マンゴープリンちゃんの輝くツインテールから溢れた光がその全身を包み──デストルドーのオーラを侵食し始めた。もがくように暴れるデストルドーの……いや、緋奈子の身体は、マンゴープリンちゃんがしっかりと太ももでホールドして離さない。
『──これで勝ったと思うなよ!』
やがて、緋奈子の身体からどす黒い色の蛇のようなうねうねしたものが飛び出していって、窓から外に出ようとした。あれがデストルドーの本体だろうか? 逃がしたらめんどくさいことになりそうだ。
「はいはい、勝った勝った」
なんと、マンゴープリンちゃんはその蛇を光り輝く手で掴み、そのまま口に放り込んでむしゃむしゃと咀嚼し始めたのだ。
「……あんた、それ美味いの?」
「まずい」
「……」
でもいいか、とりあえずデストルドーは倒されたんだし?
ふと空を見ると、灰色の空は真っ赤な美しい夕焼けで染まっていた。遠くにそびえていた世界樹? もきれいさっぱり消滅しているし、それに気づいた人々が電車の外に駆け出してきてお祭り騒ぎになっている。
「……はぁ」
私は一気に力が抜けて、その場にペタンと座り込んだ。なんかすごく疲れた。私自身はあまり戦っていないけれど、多分一部始終を見ていたのは私だけだろう。木乃葉のバカみたいな戦いを……。
「……ここは?」
すぐ側で声がしたので振り向くと、座席に寝かせておいたクレープ・シュゼットちゃんが、上体を起こしてキョロキョロしている。よかった。生きてたんだ。
「……はっ、私は……!」
マンゴープリンちゃんの足元で倒れていたマカロンちゃん──緋奈子もゆっくりと目を覚ました。
マンゴープリンちゃんの綺麗な黄色い髪は夕日を受けて神秘的な輝きを放っている。地球と、たくさんの命を救った彼女の顔は、私のよく知る木乃葉の顔よりも少しだけ大人びて見えて──ちょっとだけかっこいいかなって思った。
視線を感じたのか、マンゴープリンちゃん──木乃葉が私の方を振り向いてニコッと微笑む。そして、人差し指を口の前で立てた。
「みんなには……内緒だよ?」
……。
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