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死にゆく恋と蘇る声 Episode-5
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次の朝、僕はいつもより少し遅く起きた。いつもより疲れがとれた気がする。
「おはよう、お兄ちゃん」
「おはよう」
「今日は顔色いいね、ぐっすり眠れた?」
「うん、ぐっすり寝れた、いつぶりだろうな」
あれ以来、頭の片隅で癌のことを考えていた気がする。
「感謝しないとね」
「え?誰に?」
「そんなの決まってるじゃん、昭二先輩だよ」
なぜ、妹の口から昭二さんの名前が出てくるのだろう。
「なんで、昭二さんのことと、費用を肩代わりしてくれたこと知ってるんだ?」
「昭二先輩は私が通ってる将棋教室の先輩だよー、昨日、お兄ちゃんが夜出かけるの知って連絡したんだよ」
「連絡って何の?」
「お兄ちゃんが散歩行ったので妹さん連れて会わせてくださいって、これまで生活出来ていけたのは昭二先輩のおかげなんだからね?」
「これまでって、いつから?」
「お父さんとお母さんが家を出て行ってからだよ、お兄ちゃんは知らないかもだけど、もう、あの二人は離婚してるの、そのことを先輩に相談したら、お金は俺が何とかしてあげるから、って」
「全然知らなかった、薄々、離婚してるんじゃないかとは思ったがそこまでしてもらってるだなんて」
「それで、一か月前ぐらいにお兄ちゃんの癌のお金の相談をしたんだー、そしたら本人がお願いしてきたら考えてあげるって言われたから昨日連絡してわざわざ夜外出てきてもらったんだからね、私も夜起きてるの辛かったんだから、感謝してほしいよ」
そんな裏事情があったとは知らなかった、これまで食事やお金の管理などは全部妹にお任せ状態だったので改めて僕はダメ兄貴だったと思う。
「ありがとう、ほんとありがとう」
感謝の言葉を伝えると少し泣きそうになってしまった、だが、ここで泣いては兄貴として情けなーーー
「泣いてもいいんだよ?お兄ちゃん、辛かったね、これまで」
そう言うと妹は僕を優しく抱きしめてくれた。
僕はボロボロと大きな雫を優しさの中で最後の一滴までこぼした。
それから数日後、手術の日になった。そこには妹、水蓮さん、昭二さんが一緒に病院に来てくれた。
「緊張するな、手術ってのは」
「大丈夫だよ、お兄ちゃん、成功しなかったらその医者ぶっ〇ばしとく!」
「縁起でもないことを言うな!それと、人をぶっ〇ばすなんて言葉使っちゃ」
「そうですよ、そんな言葉使っちゃいけませんよ、こういう時は、ご愁傷さまですだっけ?こういう言葉を使わないと!」
「いや違うぞ?それじゃあ僕死んじゃうぞ?」
「君たちは一回言葉の勉強と使い方を学ばないとな」
まったく言ってその通りです、昭二さん。
「まあ、お兄ちゃんなら大丈夫だよ」
「そうです、大丈夫ですよ、山森君」
「あぁ、じゃあ、頑張ってくる」
それから手術は無事に終わり今は病室のベッドに横になっている。今は水蓮さんと二人だけだ、妹と昭二さんは今カフェでお喋りでもしてるだろう。二人にしてくれと僕が頼んだのだ。
「なんだろうな、今すごく複雑な気持ちだ、憎いとしか思っていなかったあの癌も最後には僕と水蓮さんを近づけるキューピット的な存在に変わったんだからな」
「そうですね、ほんの少し感謝しとかないとですね、ところで、なんであの時寝てた私に喋りかけてくれたんですか?」
「あの時の僕は何にも興味がなかった、まぁ、本は好きだったが、そんな時僕と似た存在の水蓮さんを見つけてつい話しかけてしまったんだ。何にも興味なさそうにぐっすり寝ている君が」
「は、恥ずかしいです//、でも、そうだったんですね、二人ともあの時から止まっていた時間が動き出したんですね」
「なんか、その言葉かっこいいな!」
「もう、場の雰囲気考えてください!バカ、」
「す、すんません」
こんなに話すのは久しぶりでもう少し会話を続けたいと、そう思った。
「おはよう、お兄ちゃん」
「おはよう」
「今日は顔色いいね、ぐっすり眠れた?」
「うん、ぐっすり寝れた、いつぶりだろうな」
あれ以来、頭の片隅で癌のことを考えていた気がする。
「感謝しないとね」
「え?誰に?」
「そんなの決まってるじゃん、昭二先輩だよ」
なぜ、妹の口から昭二さんの名前が出てくるのだろう。
「なんで、昭二さんのことと、費用を肩代わりしてくれたこと知ってるんだ?」
「昭二先輩は私が通ってる将棋教室の先輩だよー、昨日、お兄ちゃんが夜出かけるの知って連絡したんだよ」
「連絡って何の?」
「お兄ちゃんが散歩行ったので妹さん連れて会わせてくださいって、これまで生活出来ていけたのは昭二先輩のおかげなんだからね?」
「これまでって、いつから?」
「お父さんとお母さんが家を出て行ってからだよ、お兄ちゃんは知らないかもだけど、もう、あの二人は離婚してるの、そのことを先輩に相談したら、お金は俺が何とかしてあげるから、って」
「全然知らなかった、薄々、離婚してるんじゃないかとは思ったがそこまでしてもらってるだなんて」
「それで、一か月前ぐらいにお兄ちゃんの癌のお金の相談をしたんだー、そしたら本人がお願いしてきたら考えてあげるって言われたから昨日連絡してわざわざ夜外出てきてもらったんだからね、私も夜起きてるの辛かったんだから、感謝してほしいよ」
そんな裏事情があったとは知らなかった、これまで食事やお金の管理などは全部妹にお任せ状態だったので改めて僕はダメ兄貴だったと思う。
「ありがとう、ほんとありがとう」
感謝の言葉を伝えると少し泣きそうになってしまった、だが、ここで泣いては兄貴として情けなーーー
「泣いてもいいんだよ?お兄ちゃん、辛かったね、これまで」
そう言うと妹は僕を優しく抱きしめてくれた。
僕はボロボロと大きな雫を優しさの中で最後の一滴までこぼした。
それから数日後、手術の日になった。そこには妹、水蓮さん、昭二さんが一緒に病院に来てくれた。
「緊張するな、手術ってのは」
「大丈夫だよ、お兄ちゃん、成功しなかったらその医者ぶっ〇ばしとく!」
「縁起でもないことを言うな!それと、人をぶっ〇ばすなんて言葉使っちゃ」
「そうですよ、そんな言葉使っちゃいけませんよ、こういう時は、ご愁傷さまですだっけ?こういう言葉を使わないと!」
「いや違うぞ?それじゃあ僕死んじゃうぞ?」
「君たちは一回言葉の勉強と使い方を学ばないとな」
まったく言ってその通りです、昭二さん。
「まあ、お兄ちゃんなら大丈夫だよ」
「そうです、大丈夫ですよ、山森君」
「あぁ、じゃあ、頑張ってくる」
それから手術は無事に終わり今は病室のベッドに横になっている。今は水蓮さんと二人だけだ、妹と昭二さんは今カフェでお喋りでもしてるだろう。二人にしてくれと僕が頼んだのだ。
「なんだろうな、今すごく複雑な気持ちだ、憎いとしか思っていなかったあの癌も最後には僕と水蓮さんを近づけるキューピット的な存在に変わったんだからな」
「そうですね、ほんの少し感謝しとかないとですね、ところで、なんであの時寝てた私に喋りかけてくれたんですか?」
「あの時の僕は何にも興味がなかった、まぁ、本は好きだったが、そんな時僕と似た存在の水蓮さんを見つけてつい話しかけてしまったんだ。何にも興味なさそうにぐっすり寝ている君が」
「は、恥ずかしいです//、でも、そうだったんですね、二人ともあの時から止まっていた時間が動き出したんですね」
「なんか、その言葉かっこいいな!」
「もう、場の雰囲気考えてください!バカ、」
「す、すんません」
こんなに話すのは久しぶりでもう少し会話を続けたいと、そう思った。
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