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第一章
笑え、これこそ騎士団長
しおりを挟む「フハハハハハハッ!あ~!久しぶりだから腕がなるなぁ!ほらほら雑魚共!さっさと俺にかかって来いよ!ゴミムシ以下がよぉ!貴様らなど束になっても雑魚以外の何者でもない!俺一人で充分、いや?十二分だなぁ!クフフッ、アーッハッハッハ!」
こんなにも、
胸が張り裂けそうな程辛い事を、
皆にやらせたくない。
全ての傷を負うのは僕だけで良い。
自責に狩られなくて良い、
人を傷つけなくて良い、
無理なんかしなくて良い・・・
いつもみたいに僕が全部悪いから、
僕のせいにして良いから、
皆、見ててくれ。
決して、何もしないで。
「アハハハハハハ!『 眠りの水 』!『 眠り蜂 』!アハハ!」
「クッ!小賢しい奴め!」
敵達はバタバタ次から次へと倒れて行く。
「自然を守りし、森のつる草達よ!我の意志のままに動け!『 捕らえろ 』!アーハッハッハッハ!アハハ!」
「なんだよこれぇ~・・・」
辛い、辛いよ。敵は苦しんでる。
でも、辞められない、止められない。
辛いなんて、そんな事を考える僕なんて、
いっそ笑い飛ばしてしまえ──────
「アハハ・・・ハハハハハッ!アーハッハッハッハー!」
「クッソ!これでも喰らえ・・・弓となり射抜きたまえ!『 炎の弓 』『 火の粉 』!」
「ハッ!『 水 』!」
熱い熱い熱い熱い!本当に熱い!
辛い、辛い・・・けど・・・!
「アハハハハ!──馬鹿め・・・!」
間合いを詰めて手刀を食らわせる。うっ・・・と言って気絶してくれた。とても嬉しいが、これで終わりじゃない。辛いのはあっちも一緒だ。僕が行けば終わるから、行かないといけない。
「──裏か・・・」
「ライト!これ以上はもう・・・!」
「何を騒いでる?ハルトイル、貴様らは残党共の処理でもしてろ。俺は貴様らとは違い貧弱じゃないのでな、こんな傷などなんて事ない!アハハ!またな!」
「っ・・・後で絶対会おう、ライト・・・絶対だぞ・・・」
浮遊魔法で飛んで行ってしまったライトにハルトイルの声は聞こえなかった。
―――
・・・痛い。身体中火傷だらけだ・・・
痛感耐性魔法も掛けたし、回復魔法も掛けたのに、まだ痛い。
でも、まだ動ける。笑える。
「みーつけた・・・『 眠りの粉 』!」
──────ドッガァァァン
皆から悲鳴が上がる。
でもそんな物、僕がやるべき事には関係無い。
「アハハハハハハ!『 眠りの雨 』!」
「っ団長・・・!」
「馬鹿なっ・・・!どうして騎士団長がここに居る?!正門部隊はどうしたんだ!今すぐ確認を・・・」
「クックック・・・アッーハッハッ!全員俺が倒して来たんだよ!ゴミムシがいくら集まったとて、ゴミムシだ!こっちの奴らも潰してやるよぉ!」
僕、上手。副団長のストラードも、同僚のロビンも新人のクアンタール君も居るのに、ちゃんと笑えてる。
これこそ、皆が思っている・・・
いや、これこそ皆の
理想の、求めている、本当の、
騎士団長。
笑え
「アハハ!『 凍結 』!」
止まるな
「フッ・・・偉大なる命よ!我、レリスライト・ユルティムの名の元に芽吹きたまえ!『 眠りの花 』」
笑い続けろ
「『 麻痺の花 』アーハッハッハッハ!」
「おぅんっと~、危なぃなぁ~!駄っ目じゃないかあ。騎士団長がぁ~そんなに怖くっちゃぁ・・・。ううぅ~・・・俺ぇ、今っ、死んじゃうかと思ぉったぁ!もうぅ!ホ・ン・ト・に、やだわぁあ~ん!」
「は?」
え、何コイツ、キモ。
今、僕の顔スンッ(˙꒳˙ )ってなった!
皆も唖然としている。コイツキモ過ぎるでしょって。ゴリゴリマッチョが人差し指を顎なんかに当てちゃってキモイ。
じゃなくて、
笑え、笑え、笑え。
僕は、皆の騎士団長。
皆はなんでも出来る、なんて言って、
僕を崇めれば良いんだ。
深呼吸をして・・・!
「改めましてぇ、こんにちぃわぁぁ~騎士団っ長ぉ様ぁ~」
「っう・・・」
・・・胃の中身がせり上がって来た。
駄目だ、こんな事しちゃ、駄目なのに・・・!
「ふうっ~ん・・・す・き・あ・りぃ~」
顔を上げるとキモイ奴が至近距離にいてミシッと腹に拳が当たる。ふっと飛ばされそうになる。が、僕は口を三日月型にしてニタァッと笑い、魔法を唱えた。
「っ団長───」
「『 拘束 』」
「なぁっ、何ぃ!そ、そんな無茶苦茶なぁ!俺もそれには抗えないぃぃい!いやぁ~ぁんやめてぇ~!」
「貴様も道ずれだ・・・!『 軽減 』」
──────ドゴォーン!
城の壁にぶつかり、派手な音と共に土煙が立った。
騎士団の人々は、
ただただ、
団長の無事を祈る事しか出来なかった。
けど、土煙が消えた所を見れば、
団長が居て。
あ~、結構腹パンされたのが痛い。けど、余裕そうに笑って見せる。わざと、皆に見えるように。
「『 重力 』・・・これで貴様は動けない。隙ありなのは貴様だ。もう、諦めろ。」
「んもぅ!なんでこんな事にぃぃぃい!」
ムキィィィィィイイイ!なんて騒いでる奴をストラードに任せ、見回りに行こうとする。
「駄目だライト!馬鹿か!もう限界が来ているだろう?これ以上やったらお前が壊れてしまう!」
「ロビンめ・・・、お前は黙っとけ!」
「団長、駄目です!これ以上は・・・!」
「チッ・・・!陛下への報告に行くだけだ!」
既に限界を超えてるよ。どうして立てているのかも分からないし、火傷は痛むし、さっき殴られたせいでアバラの骨が折れて辛い。回復魔法を使って表面上は怪我して居ないように見える。けど、治しきれなくなってきた。・・・皆が見てるよりも、もっと痛い。
ごめんね、ロビン。ストラード。
僕、もうちょっとだけ、頑張るね。
「ライト・・・!」
「団長・・・」
「『 瞬間移動 』」
「ライトォーーーー!」
ロビンの悲痛な叫び声も、
ストラードの呼び掛けも、
ライトの心には届かなかった──────
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