【本編完結】本当の私は無くなった

誰かのおとしもの

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第一章

幸せと絶望と幸せ




 自分の部屋から出て応接間まで行く。準備で忙しいから警備が薄いらしく楽々。あっという間に応接間の前。ノックもせずズカズカと部屋に入ると思った通り罵声が飛ぶ。


「お前はノックも出来ないのか!殴り殺されたいようだな。こっちに来い!」

「アハハ!馬鹿だな、自分から殴られに来るなんて。いつもの様に許しを乞うたらいいんじゃない?」

「お父様~お兄様~、お姉様にそんな事言わないであげて?言わなくてもやるんだからさ!私とお話して欲しいな~♡」

 アハハハハハ


 あ~ウザイ。私って本当に今まで何をやっていたのだろう。殴って貰える=触れて貰える、とかって考えていた時期もあったなぁ。ヤバいよね。

 そんな事を考えながら背後に回る。ローズの話に夢中で気付いていない。まずはお父様とお兄様。抵抗されたら面倒くさいからね。後ろから大動脈をグサリと。

 グサッ

「え゛?」

「グハッ!」


 いい声。もっと聞かせて欲しい。フリーズしているローズには脚にナイフを刺し、動けないようにしておく。


「痛っ!ぅ、ぁ・・・」

「ローズ!大丈夫か?!」

「ローズ、ローズ!」


 見事な茶番劇ね。でもローズの心配なんてしてる暇は無いわ。前に回り首のナイフを取る。


「貴様ァァァ!何をやっておる!」


 いつもの罵声は要らないの。断末魔を聞かせて頂戴。思いっきりナイフを振りかざす。

 グサッ

「ぐわァァァ!」

「指がァ!指がァァァ!」


 お父様とお兄様の指を切断する。もう一度・・・

 グサッ パシっ


「うわァ、指が全部!」

「ハッ!取ったぞ!」


 お父様の指を全て切断する事に成功したけど、お兄様に切ってない方の手で腕を掴まれた。勝ち確みたいな顔してるけど手はもう一つ有るの。お父様に指した方のナイフをお兄様に刺す。


「ぐわあああ!よくもよくもォ!」


 それからは滅多刺しにした。最高の断末魔を聞きながら刺しまくった。


「アハハ!アッハッハッハッハッ!」


 気付いたら静かだった。あれ、もう死んでる。つまらないな。まあ良いや。次はローズの番。

 声にならない声を出して怯えているローズの手足を縛る。服をビリビリに破いて綺麗な髪の毛も切ってやった。お父様とお兄様の指を無理やり食べさせたりした。泣きながら許しを乞う所を見ると本当に最高だった。綺麗な体を傷だらけにし続けた。

 応接間だから断末魔が外に聞こえないの。だから誰もきてない。アハハ!最っ高!!!

 気付いた時にはローズも死んでいた。

 見渡す部屋には死体が三つ。カーペットは血まみれになっていた。あれ?

 目的を達成しちゃった。こんなにも壊すのが簡単だったなんて。私は何をしよう?

 私は返り血でビショビショ。そうか、私は罪に問われてしまうのか。たったこれだけの事で。ちょっとやり返しただけなのに、また誰かに殺されるのか。じゃあ自分で死のう。私もナイフで死のうかな?皆とお揃いにしようかな。やっぱ派手に首を一突きにしよう。


 3・・・

 2・・・

 1──────



 パシっ

「───ねぇ、何してるの?」



 首の前で止められたナイフが取られる。



 その瞬間悟った。終わりを感じた。


「お嬢さん、綺麗だね。」


 思っていた言葉とは違った。また罵られると、殺されると思ったのに。今まで言われた事のない言葉。純粋の綺麗。顔だけは綺麗なのに・・・流石娼婦の子ね、ではない事がこんなにも嬉しいだなんて。


「楽しそうだったね。どうしてこんなに事していたのか教えてくれる?」


 勝手に口が動く。


「この人達が私を何度も嘲笑い、罵り、殺してきたの。自分達の私利私欲の為だけに。今まで一回も刃向かった事は無かった。だからやってみたの。でもね、思ってたよりすぐ死んじゃったし、簡単だった。言われるがままやってきたから、自分からやるなんて無かったの。だから何をすればいいか分からなくて考えたの。一番最初に分かった事は罪に問われてまた殺されるんだって事。また誰かに殺される位なら自分から死んでやろうと思って。でも貴方が来てしまった。」


 考えていた事を全て口に出していた。


「そっかそっか。大変だったね。辛かったんだね。君は僕にどうして欲しい?」


「幸せを教えて。」


 ローズの様に一度だけでも良いから本気で愛して欲しい。幸せと言うものを教えて欲しい。


「分かった。まずは名前を教えてくれる?」

「シャーロット。貴方は?」

「シャーロット、俺の名前はファリンス。ファリンス・ブラーシュアック、覚えておくれ。」


 名前で聞かれるなんて、呼ばれるなんて何時ぶりだろう。心が満たされる気がした。


「ねぇ、ファリンスって呼んでいい?」

「勿論。俺もシャーロットって呼ぶね。」


 それからは今までの事を全て話した。死に戻りも、痛みも、死に方も、全部全部全部話した。決して否定する事無く、一つ一つ聞いてくれた。


「ねぇ、なんで私の事信じるの?」

「・・・。・・・俺も同じ経験をしたからだよ。」


 そう言うファリンスの目に悲しみが見えた。思い出すのも辛いと思い深く聞くことはしなかった。

「そっか、同じだね。・・・もしまた私が死に戻りしたとしたら結婚して欲しい。結婚は女の一番の幸福って言うじゃん。最後のお願いよ。」

「良いよ。じゃあその時の俺に愛して貰える様に合言葉を教えてあげる。」


 合言葉・・・。いい響きね。幸せ、楽しみ。


「もし俺に会ったらこう言って。

『私達だけ酷いよね。お話をしましょう。でも約束して。貴方を愛すから、貴方も愛して。』

 って。覚えた?」

「うん、絶対忘れない。今の私は穢れているから一度死ぬわ。また次の人生で会いましょう。そうよ、ファリンス。私を殺して。この人生で本当の最後のお願い。」

「我儘で素晴らしく美しい奴だな。良いよ、俺がシャーロットを殺してあげる。」


 あぁ、幸せだ。


「楽に殺してあげる。いくよ─────」


 グサッ


 あぁ、幸せだ。



 そこで私の意識は途切れた──────


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