らしく

綾瀬徹

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第25話

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 「どうだい、クソガキ。もう逃げ場所は無いぞ」

   健二は高い壁を何とかして登ろうとした。

 「みろよ、あいつ。猿みたいだぜ、滑稽だ」

 茶ロン毛は必死に壁を登る健二の姿を見て腹を抱えて両脇にいるダチとゲラゲラ笑った。

 健二は壁をよじ登ろおとしてる際に"大人は判ってくれない"のラストカットを思い出し自分を客観的に見て壁の隙間に掛けていた手を離して地面に着地した。

 「お、諦めたか猿ガキ」

  茶ロン毛は壁から降りた健二を見て鼻で笑って言った。

 「お前は、人生楽しいか?」

 健二は壁の一点を見つめて腹に力を入れて大きな声で訊ねる。

 「頭大丈夫か、お前。まぁ、お前を弄んでるこの瞬間は最高さ」

  健二は後ろを振り返って真っ直ぐな目で茶ロン毛の顔を見た。

        *     *      *

 「お前が何処のどいつか知らないが数で俺達を打ち負かそうって考えが甘いな」

 「余裕こいていられるのは今だけだぞ。お前らのお仲間は俺の後輩達のサンドバッグになってるだろうよ」

 「そりゃ、恐ろしいぜ先輩」

 隼人は芝居がかった演技で男を小馬鹿にした。

 「てめぇ、馬鹿にするのもいい加減にしろよ。お前みたいなガキに舐められたままじゃメンツがたたねぇんだよ」

 男はスカジャンのポケットから果物ナイフを取り出して隼人に襲いかかる。

 「ナイフごときでイキってんじゃねぇぞ」

  隼人は向かってくる果物ナイフを持ってる男の手首を素早く右手で掴んで左手で手首に手刀打を喰らわして地面に落ちた果物ナイフを足で遠くへ蹴る。

  男は少し隼人が自分から視線を逸らした瞬間、隼人の目に人差し指と中指で目潰しをした。隼人は目を開けると痛みが感じるので足がふらついてバランスを崩して地面に尻餅をつく。

 「どうした、さっきの威勢は何処いったのかな。山形さん、すみませんでしたって言え。自分が間違ってました、逆らってごめんなさいってな」

 スカジャンは果物ナイフを拾い周囲の目を危惧して裏路地に隼人を引きずってここぞとばかりに殴り、蹴りを入れ地面に倒れてる隼人を罵倒して謝罪を要求した。
  
  地面にうつ伏せで倒れてる隼人はなけなしの力を振り絞って地面から立ち上がった。
 
 「お前は、とんだドMだな。そんなに痛みが好きか」

   隼人はおぼつかない脚のまま両腕でファインディングポーズを作る。

               *        *       *

 健二は余裕をこいた笑みを浮かべて茶ロン毛に手招きのサインをする。

 茶ロン毛は両隣の奴にやれと指示を出して2人は健二の方に向かってゆく。健二との距離が縮まって2人は勢いよく突進する。

 健二は2人分の衝撃が足腰にきて右脚を少し曲げて踏ん張るがどんどんと後ろに引きづられる。

 茶ロン毛は助走をつけて走り2人を踏み台にして健二の顔に飛び蹴りを喰らわす。

 健二は吹っ飛び横に倒れて気を失う。

 「終わりだ、帰るぞ」
 
 茶ロン毛は2人に声を掛けて健二の後を去る。

         *      *      *

 隼人は男に殴りかかったが足腰にうまく力が入らないためのろのろの右ストレートはあっけなくかわされて腹部に右パンチを喰らう。

 「ぐわっ」

 隼人は膝から崩れて腹を抱える。

 「おい、お前ら何やってんだ!」

  大通りの車道の縁石に沿ってチャリで巡回してた警察官が隼人と男をみて通り過ぎてから迂回して隼人達の方へ細い道を通ってやってくる。

 「やべぇ、」

 男は警察官と目が合ってあたふたして後ろ見ながら走って逃げていく。

 「待ちなさい!君は、ここから動いちゃだめだよ」

   警察官は地面に倒れている隼人を見て言った。

   「洋太郎、隆一…健二」

   隼人は力無い声でボソッと呟く。
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