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2章 少年期 1部シーバムの大森林編
17話 サビオの願い。
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ベルナルドの倒したオーガでポーチを作りそれをマジックポーチにしてベルナルドにプレゼントしたタケル、マジックポーチを貰ったベルナルドはまるで子供のように喜び一人で森へ狩りへと向かったが、魔力と殺気を垂れ流すベルナルドは獲物に遭遇する事は無かった。
同日、それを知ってはいたが放置する事にしたタケルとサビオはリビングで邪竜となったサビオと友である元聖獣の事について話をしていた。
「サビオさん、例の件ですが大体考えが纏まりました。」
「そうなのかの。一体どうやるのかの。」
「先日作った宝玉をまた作ります。それと今回は蘇生の魔法と、サビオさんが掛けた魔法の無効化と、瘴気の浄化、あと瘴気を閉じ込め浄化する結界の、魔法を作ります。」
「随分と手間が掛かるんだの。」
タケルが考えたのはまず宝玉を作り、サビオの掛けた命を奪う魔法を無効化し、同時に封印された魂を解放し、すぐに蘇生魔法を掛け、次に瘴気の浄化魔法をかけ、同時に障が漏れ出さないように結界を張る、そして全ての作業の補助と強化の為に宝玉を使うという方法だ。
「万全を期す為にこれくらい必要なんです。試しに以前に単純に邪竜を聖獣に戻す魔法を作ろうとしたんですけど、それは出来なかったんです。だから1つ1つ解決して行かなければならないんです。」
「タケル殿、大変かも知れんが宜しく頼むんだの。」
そう言ってサビオは頭を下げた、その姿を見てタケルはサビオの思いの深さを感じ、絶対に成功させると心に強く誓っていた。そんな二人をアルミスは静かに見つめていた。
「サビオさん、先に宝玉を作りますね。」
そう言ってタケルはアイテムボックスから魔石を幾つか取り出して【メイクアイテム】の魔法で1つに纏めた、そして出来上がった魔石に入るだけありったけの魔力を込める。すると前回作った時と色が違い、半透明で白く光輝く宝玉が出来上がった。
「た、タケル殿。これは・・・」
「聖なる宝玉ってなってますね。」
タケルは出来上がった宝玉を鑑定したらしい。結果は聖なる宝玉となっており、大変な力を持っている宝玉とだけ表示されていた。
「なんか浄化と蘇生を上手く行くように意識して魔力を込めたらこうなりました。」
「ほっほっほっ。タケル殿は本当に規格外なんだの。」
「流石タケル様ですね。」
サビオはタケルがした事がどんなに凄い事かを理解していたが、アルミスはタケルの事をを誉めてはいるものの、サビオの言動を見て凄い事をしたんだな、と思って発言しただけであった。
「あとは魔法を作らないとですね。」
タケルは【マジッククリエイション】を使用して魔法を作り始めた
マジッククリエイション 開始
魔法名
【リサスケイション(蘇生)】
[効果]
死亡してから24時間以内であれば蘇生させられる。(死亡してから時間停止を掛ければ蘇生可能時間を伸ばせる。)
寿命の場合は効果が無い。
肉体が残っていることが条件。
蘇生後HPやMPは1%だけ戻る。
マジッククリエイション 完了
「よし、いけた!条件が付いたけど今回の件では問題無いな。じゃあ次だ!」
魔法名
【ピュリフィケーション超級(浄化)】
[効果]
通常の浄化よりも範囲、効果ともに強力な浄化効果が得られる。
アンデッドモンスターに大きなダメージを与える。
マジッククリエイション 完了
「よし、次は結界かな。」
マジッククリエイション 開始
魔法名
【特殊結界】
[効果]
通常の結界と異なる、瘴気を通さない上に浄化の作用も有る。
この結界の中で浄化を使うと効果が上昇する。
マジッククリエイション 完了
「あともう少し。」
マジッククリエイション 開始
魔法名
【ディサブルマジック(魔法無効化)】
[効果]
発動された魔法の効果を無効にする。
マジッククリエイション 完了
「よし、完成かな。」
「タケル殿、これで聖獣に戻せるのかの。」
マジッククリエイションを使い一通りの魔法を完成させたタケルに対し、サビオは期待を込て問いかけた。しかしタケルはどこか不安げな顔をしており、タケルの顔を見たサビオは再びタケルに問いかけた。
「タケル殿、どうかしたのかの?」
「いや、何も無いですが。万全を期して複数の魔法を作りましたが、何かが足りない気がしまして・・・」
「そ、そうなんかの。一体何が足りないのかの。」
タケルは顎に手を当て首を傾げて考えていた。
「ちょっと、もう1つ魔法を作ります。万が一の時の為にサポート出来る魔法を作ります。」
タケルはそう言って再びマジッククリエイションを使い魔法を作り始めた。
マジッククリエイション 開始
魔法名
【マジックサポート】
[効果]
複雑な作業を行う際にサポートする。
実行したい事を登録し、全てを任せる事も出来る。
あくまでサポートであり、この魔法単体では何も出来ない。
マジッククリエイション 完了
「ん、少し条件が付いたけど問題無いな。」
「タケル殿、これで安心して出来そうなのかの。」
先程と違い、満足そうなタケルの顔を見て今度こそ大丈夫そうだと感じタケルに問いかけた。
「そうですね。何か有ってもどうすれば良いのかサポートしてくれる筈です。」
「そうか、それなら安心なんだの。」
タケルは宝玉をアイテムボックスに仕舞い、聖獣に戻す作業に入る前にリラックスしようと紅茶を飲んで一休みする事にした。
「ふう。少し緊張するな。」
「タケル様が緊張されるなんて珍しいですね。」
「ほっほっほっ。そうだの、確かに珍しいの。」
タケルはリラックスする為に紅茶を飲んでいたがまだ緊張が取れずにいた、こちらの世界に来てからずっと傍で自分を支えてくれたサビオ、そのサビオの長年の願いを叶える為の作業をしようとしているのだ、もし失敗したらどれだけサビオを悲しませてしまうか判らない、それ故にどうしても緊張してしまうのであった。
「そうだね、こんなに緊張したのは始めてかもしれないね。」
そう言って紅茶を飲むタケルの隣にアルミスが座り、そっと手を握りタケルの目を見つめて話始めた。
「タケル様、タケル様なら絶対に大丈夫です、今までも沢山私達を驚かせて来たじゃないですか、剣も極めてこれ以上強くなるのは難しいと思っていた私が更に強くなる事も出来ました。全てタケル様が居たから出来た事です、大丈夫ですいつものように軽々と成功させられますよ、それにタケル様は私の将来の旦那様になるんですから、その緊張は私も半分受け持ちますよ、だから今回も絶対に上手く行きます。」
そう言ってアルミスはタケルの頬にキスをした。
「どうですか?タケル様、まだ緊張取れませんか?」
アルミスにそう尋ねられたタケルの顔は先程までと違い、緊張も取れて決意のこもった凛々しい顔付きになっていた。
「ありがとう、アルミス。お陰で余計な緊張が取れたよ。」
「ほっほっほっ。それではタケル殿、アルミス殿、宜しく頼むんだの。」
サビオはそう言ってにこやかに笑い頭を下げた。
「はい!任せて下さい!サビオさん。」
「そうよ、私達に任せておいて、サビオ爺。」
タケルは爽やかに、しかし決意溢れる目でサビオに応えた。
「ではサビオさん、俺の異空間に行きますか。」
タケルは扉を出現させて異空間へと入っていった。
「最初に結界を張りますから、そうしたらドラゴンを出して下さい。」
タケルは【特殊結界】を発動させ、広範囲に瘴気を漏らさない為の結界を張った。
「よし、【サポート】実行。」
タケルは次に【サポート】の魔法を実行し、不測の事態に備えた。
「サビオさん、ドラゴンと魂を封印した魔石を出して下さい。」
タケルに言われサビオがドラゴンを取り出した、タケルが以前見たドラゴンである、シルヴァと比べてもやはり大きく、そして狂暴そうな見た目である。
タケルがドラゴンを見ているとサポートの魔法がタケルに話しかけてきた。
『ドラゴンの魂を解放して下さい。』
「喋った!!」
タケルは魔法の【サポート】が喋ったので驚いた、自分で作った魔法であったが、サポートの方法は指定していなかった、なのでタケルは勝手にステータス画面にメッセージでも出ると思い込んでいた。
『ドラゴンの魂を解放して下さい。』
「あ、ああ・・・」
タケルはドラゴンの魂が封印されている魔石に向かい封印解除の魔法を掛けると、魔石が光り始めた。
『光が強くなり魂が出てきたら【ディサブルマジック】をドラゴンに掛け、すぐに【リサスケイション】を掛けて下さい。』
サポートがそう言うと魔石が強く光り出し、封印された魂と思われる光球が魔石から出てきた、タケルは光球を確認すると、すぐに【ディサブルマジック】を掛けると、ドラゴンの体から魔力が霧散して行くのが確認出来た、そしてすぐにタケルは【リサスケイション】をドラゴンに掛けた、すらとドラゴンの体が淡く光ったと思うと光球がドラゴンの体に吸い込まれて行った。
『ドラゴンが鼓動を始めたら【ピュリフィケーション】をドラゴンと宝玉に掛けて下さい。』
言われた通りタケルはドラゴンと宝玉に【ピュリフィケーション】を掛けると、ドラゴンの体から瘴気が溢れだしてきた、そして溢れだした瘴気は宝玉により吸い込まれていき同時に浄化され消えていった。
『このまま暫く時間が掛かります。』
タケルはサポートの声に頷き、サビオに声を掛けた。
「サビオさん、順調ですが、少し時間が掛かるようです。」
サビオは黙って頷き、じっとドラゴンを見つめていた。
すると、ドラゴンがバタバタと動き始めた、どうやら瘴気の侵食と浄化の作用に苦しんでいるようだ。
『警告、このままではドラゴンの体力が持ちません。』
「えっ?じゃあヒールを!」
タケルがドラゴンにヒールを掛けようとすると、サポートがタケルに警告を発して来た。
『警告。今ヒールを掛けると高確率で浄化が失敗します。予想以上の瘴気の量です。』
「じゃあ、どうすれば良いんだ!」
タケルは思わず叫んだ、サポートの声はタケルにしか聞こえていないので、バタバタと動いているドラゴンを心配そうに見つめていたサビオとアルミスは、驚いてタケルに視線を移した。
『現魔法行使者の魔法でドラゴンの体をスキャンした結果、瘴気を取り込みすぎて、ドラゴンの魔石が魔瘴石に覆われてしまっているのが原因と判明しました。宝玉を圧縮し、ドラゴンの体内に撃ち込み魔石ごと魔瘴石を破壊し、宝玉と魔石を入れ替える必要が有ります。』
「そんな事をして大丈夫なのか?・・・」
『現魔法行使者がドラゴンと従魔の契約を交わし、魔力の譲渡をした際に宝玉とドラゴンの体を融合させれば高確率で成功致します。』
タケルはサポートにそう言われ咄嗟にサビオに向かい叫んだ。
「サビオさん!このままでは失敗します、なので俺が従魔の契約を交わしますが良いですね!」
サビオは驚いた顔をしていたが、タケルの問いに答えた。
「構わないんだの!成功するなら何でも良いんだの!」
サビオの返事を聞き、タケルは急いでメイクアイテムと錬成を使い魔力を込めて宝玉を圧縮した。バレーボール程の大きさであった宝玉は圧縮され、野球ボール程の大きさになり、そして強く光り輝き、まるで光球のようであった。タケルは圧縮された宝玉を更にバレット状にし、魔力探知をフルに使い魔瘴石に覆われた魔石の位置を確認すると、魔法を撃ち込む要領で宝玉を撃ち込んだ。
「タケル殿ーーー!!」
いきなり宝玉を圧縮し、圧縮した宝玉をドラゴンに向かい撃ち込んだタケルを見てサビオが驚いて思わず叫んだ。
宝玉を撃ち込まれたドラゴンは動かなくなり、僅かに体がピクピクと動くだけであった。
「信じて下さい!」
そう言ってタケルはサビオの方を一瞬見ると、ドラゴンに駆け寄り、ドラゴンの頭に手を当てた。するとドラゴンの体が大きく痙攣したかと思うとピクリとも動かなくなった。
「まさか・・・」
サビオは失敗したのかと両手を頭に乗せ、今にも泣き出しそうな顔をした。
「まだです!」
ドラゴンの頭に手を当てていたタケルが目を瞑ったまま声をあげた。するとドラゴンの体から瘴気が漏れ出し霧散していく、霧散した瘴気は結界により浄化され消えていった。
「よし、良い子だ、もう少し頑張れ。」
タケルがそう言うとドラゴンが初めて目をうっすらと開けてタケルの方を見ると、再び目を閉じた。
するとタケルが手を当てている部分が光り出し、その光りは徐々に広がって行きドラゴンの体を覆っていく。光がドラゴンの体を全て覆うと光は強く輝き出し、辺りをキラキラと照らし、辺り一面が光に包まれた。
「この感じは・・・」
サビオが懐かしい感覚を感じたかと思うと、光が収っていった。
「終りましたよ。」
タケルがサビオの方を向いて微笑んでおり、その傍らには白銀に輝き、心地よい光を放つドラゴンが座ってサビオを見ていた。サビオは今にも泣き出しそうな顔をして、ヨロヨロとドラゴンに歩み寄って行き、ドラゴンに抱きつくと声を殺して泣き始めた。
タケルはアルミスを手招きして呼び寄せ肩を抱き、体を寄せ合い二人で静かにサビオを見守っていた。
同日、それを知ってはいたが放置する事にしたタケルとサビオはリビングで邪竜となったサビオと友である元聖獣の事について話をしていた。
「サビオさん、例の件ですが大体考えが纏まりました。」
「そうなのかの。一体どうやるのかの。」
「先日作った宝玉をまた作ります。それと今回は蘇生の魔法と、サビオさんが掛けた魔法の無効化と、瘴気の浄化、あと瘴気を閉じ込め浄化する結界の、魔法を作ります。」
「随分と手間が掛かるんだの。」
タケルが考えたのはまず宝玉を作り、サビオの掛けた命を奪う魔法を無効化し、同時に封印された魂を解放し、すぐに蘇生魔法を掛け、次に瘴気の浄化魔法をかけ、同時に障が漏れ出さないように結界を張る、そして全ての作業の補助と強化の為に宝玉を使うという方法だ。
「万全を期す為にこれくらい必要なんです。試しに以前に単純に邪竜を聖獣に戻す魔法を作ろうとしたんですけど、それは出来なかったんです。だから1つ1つ解決して行かなければならないんです。」
「タケル殿、大変かも知れんが宜しく頼むんだの。」
そう言ってサビオは頭を下げた、その姿を見てタケルはサビオの思いの深さを感じ、絶対に成功させると心に強く誓っていた。そんな二人をアルミスは静かに見つめていた。
「サビオさん、先に宝玉を作りますね。」
そう言ってタケルはアイテムボックスから魔石を幾つか取り出して【メイクアイテム】の魔法で1つに纏めた、そして出来上がった魔石に入るだけありったけの魔力を込める。すると前回作った時と色が違い、半透明で白く光輝く宝玉が出来上がった。
「た、タケル殿。これは・・・」
「聖なる宝玉ってなってますね。」
タケルは出来上がった宝玉を鑑定したらしい。結果は聖なる宝玉となっており、大変な力を持っている宝玉とだけ表示されていた。
「なんか浄化と蘇生を上手く行くように意識して魔力を込めたらこうなりました。」
「ほっほっほっ。タケル殿は本当に規格外なんだの。」
「流石タケル様ですね。」
サビオはタケルがした事がどんなに凄い事かを理解していたが、アルミスはタケルの事をを誉めてはいるものの、サビオの言動を見て凄い事をしたんだな、と思って発言しただけであった。
「あとは魔法を作らないとですね。」
タケルは【マジッククリエイション】を使用して魔法を作り始めた
マジッククリエイション 開始
魔法名
【リサスケイション(蘇生)】
[効果]
死亡してから24時間以内であれば蘇生させられる。(死亡してから時間停止を掛ければ蘇生可能時間を伸ばせる。)
寿命の場合は効果が無い。
肉体が残っていることが条件。
蘇生後HPやMPは1%だけ戻る。
マジッククリエイション 完了
「よし、いけた!条件が付いたけど今回の件では問題無いな。じゃあ次だ!」
魔法名
【ピュリフィケーション超級(浄化)】
[効果]
通常の浄化よりも範囲、効果ともに強力な浄化効果が得られる。
アンデッドモンスターに大きなダメージを与える。
マジッククリエイション 完了
「よし、次は結界かな。」
マジッククリエイション 開始
魔法名
【特殊結界】
[効果]
通常の結界と異なる、瘴気を通さない上に浄化の作用も有る。
この結界の中で浄化を使うと効果が上昇する。
マジッククリエイション 完了
「あともう少し。」
マジッククリエイション 開始
魔法名
【ディサブルマジック(魔法無効化)】
[効果]
発動された魔法の効果を無効にする。
マジッククリエイション 完了
「よし、完成かな。」
「タケル殿、これで聖獣に戻せるのかの。」
マジッククリエイションを使い一通りの魔法を完成させたタケルに対し、サビオは期待を込て問いかけた。しかしタケルはどこか不安げな顔をしており、タケルの顔を見たサビオは再びタケルに問いかけた。
「タケル殿、どうかしたのかの?」
「いや、何も無いですが。万全を期して複数の魔法を作りましたが、何かが足りない気がしまして・・・」
「そ、そうなんかの。一体何が足りないのかの。」
タケルは顎に手を当て首を傾げて考えていた。
「ちょっと、もう1つ魔法を作ります。万が一の時の為にサポート出来る魔法を作ります。」
タケルはそう言って再びマジッククリエイションを使い魔法を作り始めた。
マジッククリエイション 開始
魔法名
【マジックサポート】
[効果]
複雑な作業を行う際にサポートする。
実行したい事を登録し、全てを任せる事も出来る。
あくまでサポートであり、この魔法単体では何も出来ない。
マジッククリエイション 完了
「ん、少し条件が付いたけど問題無いな。」
「タケル殿、これで安心して出来そうなのかの。」
先程と違い、満足そうなタケルの顔を見て今度こそ大丈夫そうだと感じタケルに問いかけた。
「そうですね。何か有ってもどうすれば良いのかサポートしてくれる筈です。」
「そうか、それなら安心なんだの。」
タケルは宝玉をアイテムボックスに仕舞い、聖獣に戻す作業に入る前にリラックスしようと紅茶を飲んで一休みする事にした。
「ふう。少し緊張するな。」
「タケル様が緊張されるなんて珍しいですね。」
「ほっほっほっ。そうだの、確かに珍しいの。」
タケルはリラックスする為に紅茶を飲んでいたがまだ緊張が取れずにいた、こちらの世界に来てからずっと傍で自分を支えてくれたサビオ、そのサビオの長年の願いを叶える為の作業をしようとしているのだ、もし失敗したらどれだけサビオを悲しませてしまうか判らない、それ故にどうしても緊張してしまうのであった。
「そうだね、こんなに緊張したのは始めてかもしれないね。」
そう言って紅茶を飲むタケルの隣にアルミスが座り、そっと手を握りタケルの目を見つめて話始めた。
「タケル様、タケル様なら絶対に大丈夫です、今までも沢山私達を驚かせて来たじゃないですか、剣も極めてこれ以上強くなるのは難しいと思っていた私が更に強くなる事も出来ました。全てタケル様が居たから出来た事です、大丈夫ですいつものように軽々と成功させられますよ、それにタケル様は私の将来の旦那様になるんですから、その緊張は私も半分受け持ちますよ、だから今回も絶対に上手く行きます。」
そう言ってアルミスはタケルの頬にキスをした。
「どうですか?タケル様、まだ緊張取れませんか?」
アルミスにそう尋ねられたタケルの顔は先程までと違い、緊張も取れて決意のこもった凛々しい顔付きになっていた。
「ありがとう、アルミス。お陰で余計な緊張が取れたよ。」
「ほっほっほっ。それではタケル殿、アルミス殿、宜しく頼むんだの。」
サビオはそう言ってにこやかに笑い頭を下げた。
「はい!任せて下さい!サビオさん。」
「そうよ、私達に任せておいて、サビオ爺。」
タケルは爽やかに、しかし決意溢れる目でサビオに応えた。
「ではサビオさん、俺の異空間に行きますか。」
タケルは扉を出現させて異空間へと入っていった。
「最初に結界を張りますから、そうしたらドラゴンを出して下さい。」
タケルは【特殊結界】を発動させ、広範囲に瘴気を漏らさない為の結界を張った。
「よし、【サポート】実行。」
タケルは次に【サポート】の魔法を実行し、不測の事態に備えた。
「サビオさん、ドラゴンと魂を封印した魔石を出して下さい。」
タケルに言われサビオがドラゴンを取り出した、タケルが以前見たドラゴンである、シルヴァと比べてもやはり大きく、そして狂暴そうな見た目である。
タケルがドラゴンを見ているとサポートの魔法がタケルに話しかけてきた。
『ドラゴンの魂を解放して下さい。』
「喋った!!」
タケルは魔法の【サポート】が喋ったので驚いた、自分で作った魔法であったが、サポートの方法は指定していなかった、なのでタケルは勝手にステータス画面にメッセージでも出ると思い込んでいた。
『ドラゴンの魂を解放して下さい。』
「あ、ああ・・・」
タケルはドラゴンの魂が封印されている魔石に向かい封印解除の魔法を掛けると、魔石が光り始めた。
『光が強くなり魂が出てきたら【ディサブルマジック】をドラゴンに掛け、すぐに【リサスケイション】を掛けて下さい。』
サポートがそう言うと魔石が強く光り出し、封印された魂と思われる光球が魔石から出てきた、タケルは光球を確認すると、すぐに【ディサブルマジック】を掛けると、ドラゴンの体から魔力が霧散して行くのが確認出来た、そしてすぐにタケルは【リサスケイション】をドラゴンに掛けた、すらとドラゴンの体が淡く光ったと思うと光球がドラゴンの体に吸い込まれて行った。
『ドラゴンが鼓動を始めたら【ピュリフィケーション】をドラゴンと宝玉に掛けて下さい。』
言われた通りタケルはドラゴンと宝玉に【ピュリフィケーション】を掛けると、ドラゴンの体から瘴気が溢れだしてきた、そして溢れだした瘴気は宝玉により吸い込まれていき同時に浄化され消えていった。
『このまま暫く時間が掛かります。』
タケルはサポートの声に頷き、サビオに声を掛けた。
「サビオさん、順調ですが、少し時間が掛かるようです。」
サビオは黙って頷き、じっとドラゴンを見つめていた。
すると、ドラゴンがバタバタと動き始めた、どうやら瘴気の侵食と浄化の作用に苦しんでいるようだ。
『警告、このままではドラゴンの体力が持ちません。』
「えっ?じゃあヒールを!」
タケルがドラゴンにヒールを掛けようとすると、サポートがタケルに警告を発して来た。
『警告。今ヒールを掛けると高確率で浄化が失敗します。予想以上の瘴気の量です。』
「じゃあ、どうすれば良いんだ!」
タケルは思わず叫んだ、サポートの声はタケルにしか聞こえていないので、バタバタと動いているドラゴンを心配そうに見つめていたサビオとアルミスは、驚いてタケルに視線を移した。
『現魔法行使者の魔法でドラゴンの体をスキャンした結果、瘴気を取り込みすぎて、ドラゴンの魔石が魔瘴石に覆われてしまっているのが原因と判明しました。宝玉を圧縮し、ドラゴンの体内に撃ち込み魔石ごと魔瘴石を破壊し、宝玉と魔石を入れ替える必要が有ります。』
「そんな事をして大丈夫なのか?・・・」
『現魔法行使者がドラゴンと従魔の契約を交わし、魔力の譲渡をした際に宝玉とドラゴンの体を融合させれば高確率で成功致します。』
タケルはサポートにそう言われ咄嗟にサビオに向かい叫んだ。
「サビオさん!このままでは失敗します、なので俺が従魔の契約を交わしますが良いですね!」
サビオは驚いた顔をしていたが、タケルの問いに答えた。
「構わないんだの!成功するなら何でも良いんだの!」
サビオの返事を聞き、タケルは急いでメイクアイテムと錬成を使い魔力を込めて宝玉を圧縮した。バレーボール程の大きさであった宝玉は圧縮され、野球ボール程の大きさになり、そして強く光り輝き、まるで光球のようであった。タケルは圧縮された宝玉を更にバレット状にし、魔力探知をフルに使い魔瘴石に覆われた魔石の位置を確認すると、魔法を撃ち込む要領で宝玉を撃ち込んだ。
「タケル殿ーーー!!」
いきなり宝玉を圧縮し、圧縮した宝玉をドラゴンに向かい撃ち込んだタケルを見てサビオが驚いて思わず叫んだ。
宝玉を撃ち込まれたドラゴンは動かなくなり、僅かに体がピクピクと動くだけであった。
「信じて下さい!」
そう言ってタケルはサビオの方を一瞬見ると、ドラゴンに駆け寄り、ドラゴンの頭に手を当てた。するとドラゴンの体が大きく痙攣したかと思うとピクリとも動かなくなった。
「まさか・・・」
サビオは失敗したのかと両手を頭に乗せ、今にも泣き出しそうな顔をした。
「まだです!」
ドラゴンの頭に手を当てていたタケルが目を瞑ったまま声をあげた。するとドラゴンの体から瘴気が漏れ出し霧散していく、霧散した瘴気は結界により浄化され消えていった。
「よし、良い子だ、もう少し頑張れ。」
タケルがそう言うとドラゴンが初めて目をうっすらと開けてタケルの方を見ると、再び目を閉じた。
するとタケルが手を当てている部分が光り出し、その光りは徐々に広がって行きドラゴンの体を覆っていく。光がドラゴンの体を全て覆うと光は強く輝き出し、辺りをキラキラと照らし、辺り一面が光に包まれた。
「この感じは・・・」
サビオが懐かしい感覚を感じたかと思うと、光が収っていった。
「終りましたよ。」
タケルがサビオの方を向いて微笑んでおり、その傍らには白銀に輝き、心地よい光を放つドラゴンが座ってサビオを見ていた。サビオは今にも泣き出しそうな顔をして、ヨロヨロとドラゴンに歩み寄って行き、ドラゴンに抱きつくと声を殺して泣き始めた。
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