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2章 少年期 1部シーバムの大森林編
24話 クシーナ
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タケル達の料理を作る為にやって来たクシーナへのレシピの取り込みも終わり、午後は森へ出掛け、戻って来るとサビオとアルバも戻って来ており、街までおよそ1日半という事が判った。街も近いのでタケルは王妃達の復活をさせる事にしたタケルは、クシーナと共に森へ食材の採取に行ったベルナルドの帰りを待っていた。
「あ、そう言えばサビオさん、サビオさん達が街へ行った後コクシオーネさんがクシーナって言う精霊を連れて来て、その精霊が料理をしてくれる事になりました。」
「ほっ、そうか。解決して良かったの・・・な。」
「タケルさん、コクシオーネが連れて来たのはクシーナって今言ったかしら?」
「え?うん。そうだけど、どうかした?」
「いえ、ちょっとその名前に聞き覚えがね。」
アルバはどうやらクシーナの事を知っているようであった、しかも何か含みを持った言い方である。 しかしタケルは余り気にせずにベルナルドの帰りを待つ事にした。
「ふーん、そっか・・・ベルナルドさん早く帰って来ないかな。」
普段は気にならない物だが、こういう時は待つ時間が長く感じるもので、タケルはいつもよりも紅茶を飲むペースが早くなり、既に二杯も飲み終わり、三杯目を注いでいた。
「んん~、念話で呼び戻そうかな・・・」
タケルがベルナルドを念話で呼び戻すかどかと考え始めた時に扉が現れ、ベルナルドとクシーナが戻って来た。
「タケル殿。戻りましたぞ、お、サビオ殿とアルバ殿も戻られておりましたか。」
続いてクシーナが扉を通ってリビングに入って来た。
「あ、タケル様、戻りました。食材が沢山採れ・・・・サンクトスちゃ~ん!死んだって聞いてたけど生きてたんだね~。んん~相変わらずキレイだチュウさして、チュウ♪」
クシーナはアルバに飛び付き人が変わったようにアルバにじゃれついていた。そんなクシーナを両手でガードしつつアルバは冷めた感じてなだめていた。
「ハイハイ、わかったわかった、わかったけどチュウはしないわよ、それに私の今の名はアルバって言うのよ。」
タケルは少し驚いていた、アルバとクシーナが恐らく知り合いだとは思っていたが、クシーナの反応が想像と随分と違っていたからである。
「随分とアルバと仲が良さそうだね、クシーナ。」
タケルが尋ねるとクシーナはピタッと動きを止めて、その後スッと立ち上がると何事も無かったようにタケルに向かい、お辞儀をした。
「タケル様、それでは今から夕食の準備に取り掛かります。」
涼しい顔でキッチンに向かおうとするクシーナをタケルは呼び止めた。
「いやいや。クシーナ、今更すました顔しても駄目だから、全然キャラ違ったんだね、ちょっと驚いたよ。」
タケルに言われたクシーナは舌をペロッと出し首を傾げていた。
「テヘッ」
(リアルでテヘペロ来たよ!)
「さっきのが本来のクシーナですよ、タケルさん。」
アルバが笑いながらそう言うと、クシーナが反論していた。
「サンクトスちゃん!そんな事無いよ!私は精霊界一おしとやかなんだから!」
「ハイハイ!判ったから、取り敢えずそろそろ夕食の準備宜しくね。」
タケルは深夜のアニメのようなやり取りに少し疲れそうになったので話を遮り、クシーナに夕食の準備をお願いした。そしてベルナルドを見るとクシーナのキャラの変わり様に目をパチクリさせ驚いていた。
「ハーイ。じゃあ私がここで作る初の料理はチュウカ料理にしま~す。」
「あ、ああ、お願いね。」
クシーナは素のキャラのまま返事をしてキッチンへ入っていき準備を始めた。タケルはクシーナが夕食の準備を始めたのを確認すると、ベルナルドと王妃達の事について話をする事にした。
「ベルナルドさん、いよいよ森を抜けます、なので王妃様達を復活させたいと思うのですが。」
「タケル殿・・・ついにその時が来たのだな。」
「そうですね、本当は封印の解除はいつでも出来たんですが、安全な場所に近くなってからという事でしたからね、これだけ近ければ問題無いかと思います。」
「そうか、それで解除はいつやるのですかな、タケル殿。」
「明日にでもやろうかと思います。」
「明日・・・」
ベルナルドは王妃達の封印の解除がいよいよ明日行われると聞くと、下を向いて黙っていた。良く見るとベルナルドは声を殺して泣いていた、仕えていた王との約束を守る為、王妃達を守る為に千年もの間たった一人で王妃達が封印された封印石が隠された部屋を見守って来たのだ、様々な想いが有って当然であろう。
「ベルナルドさん、様々な想いがあるでしょう、しかしまだ成功した訳ではありません。泣くのは王妃様達が復活してからにしましょう。」
ベルナルドはタケルの言葉に黙って頷き、手で涙を拭うとタケルの方を見据えて話始めた。
「タケル殿。そうであったな、涙は王妃様達の姿を見てからでないとな。」
ベルナルドの顔はいつものどこか抜けてる感じが抜け、今の顔付きはまさに近衛騎士団のそれであった。
「ベルナルドさん、明日の解除の前に確認したいのですが、王妃達が復活したら三人増える訳ですが、部屋は三人共別々が良いですかね?」
タケルに聞かれたベルナルドは思い出すような感じで腕を組み、目を瞑っていた。
暫くしてベルナルドが目を開き、手繰り寄せた記憶を頼りに話始めた。
「そうですな、王子のアルセリオ様はお一人のお部屋でしたな。王妃のルシアナ様と王女のミレイア様は同じ部屋で寝ることもお有りのようでありましたが、基本的にお一人のお部屋でありましたな。」
タケルはベルナルドに感心していた、何しろベルナルドが王妃達に仕えて居たのは千年も前の事である、それを詳細に覚えていたのである、ベルナルドの想いはそれだけ強いのだとタケルは感じていた。
「流石ですねベルナルドさん。よく覚えていましたね。判りました、王妃様達の部屋は其々に用意しましょう、王妃様の部屋を少し大きくします、そうすれば王女様も一緒に寝る事も出来ますからね。」
タケルはベルナルドの話した情報を元に部屋を其々に作る事にした、クシーナの部屋も合わせると四部屋を増設する事になる、更にベルナルドとアルバの部屋も二人部屋として大きくする必要があった、リビングも今のままでは少し手狭である、タケルは小屋全体を作り直す必要があると考えていた。その時キッチンのクシーナが声を掛けて来た。
「みっなさ~ん。料理が出来ましたよ~。」
「じゃあ、皆で運んでクシーナの料理を味わいましょうか。」
タケルが言うと皆が料理を運び、テーブルが料理が盛られた皿で埋まった。
「凄いですな、クシーナ殿。これは全てクシーナ殿が作ったのですか!美味しそうですな~。」
「へへ~。凄いでしょ!タケるんの記憶のレシピ完全再現だよ!」
クシーナは腰に手を当て、胸を反らせ自慢げにしており、板のような服の脇から胸が大きくハミ出ている。しかしアルバを除いた全員は違う意味でクシーナに驚き注目のしていた。
「た、タケるんって・・・クシーナ!貴女タケル様に向かって!!!!!」
アルミスは立ち上がり顔を赤くして怒っている、耳と尻尾もピンッと立ち毛も少し逆立っているようだ。
「クシーナ殿。流石にそれは・・・」
ベルナルドが流石にその言い方はマズイと声を掛けると悪びれる様子も無くクシーナは話始めた。
「え~?アルみんもベルるんも何を怒ってるの?タケるんってカワイイでしょ?」
「アルみ・・・・」
「べ、ベルるん・・・」
アルミスとベルナルドは自分達も変な呼び名で呼ばれ唖然としていた。
「まあ、確かにカワイイ言い方かもしれんがの。」
サビオはアルバが冷静なので判断に迷っているようである。
「アハハハハハハ!!タケるんにアルみんにベルるん!!アハハハハ!クシーナ面白いね!良いよ、俺は気にしないよ。」
タケルだけは楽しそうに笑って手を叩いていた。
「アハハハハ・・・あ~。笑った。まあ良いじゃないか、変に畏まってるよりも良いんじゃないかな、クシーナなりの親しみの現れなんでしょ。さ、冷めないうちに食べちゃおう。いただきます。」
そう言ってタケルはクシーナが作ってくれた料理を食べ始めた。
「うん、美味しい!再現は完璧だね。」
タケルが食べ始めたのを見てアルミスは渋々座り料理を食べ始めた。
「そ、そうであるな、クシーナ殿の親しみの現れであるな。ベルるんか、良いかもしれんな。」
ベルナルドは最初こそ驚いたが、満更でもないようであった。
アルバは最初から判ってたようで、至って冷静であった。そしてサビオはアルバの様子を伺っているだけであった。
(ありゃ完全に尻に敷かれるな。)
タケルはサビオの様子を見てそう思っていた。
「美味しいにょ~。我ながら大したもんだにゃ~。」
クシーナは自画自賛し、料理を口に入れたまま頬を両手で押さえ、体をクネクネさせていた。
テーブルを埋めていた大量の料理が全て無くなり、クシーナが後片付けをし、タケルは紅茶を淹れていた。
「クシーナお疲れ様、美味しかったよ、紅茶淹れたから飲んで寛いでよ。」
タケルは料理を作ったクシーナを労い紅茶を飲んで寛ぐよう薦めた
「はあ~。タケるんの淹れた紅茶美味しい~。」
「ハハハ、そっか、喜んで貰えて嬉しいよ。」
タケルはクシーナが紅茶を飲んでダル~っとしているのを見て微笑んでいた。
「さて、紅茶を飲みながらで良いから皆聞いて、封印石に封印されている王妃様達の封印を明日解除する事にしたんだ、それでこの小屋だとちょっと手狭になるからね、全面的に改築する事にしたんだ。」
そこでイマイチ理解出来ないベルナルドがタケルに問い掛けた。
「タケル殿。封印の解除は明日の筈、今から改築していては間に合わないのでは・・・」
「あ、言ってませんでしたっけ?この小屋もまほうで作ったんですよ、改築も魔法でやりますから直ぐに終わりますよ。」
「魔法で・・・・そ、そうであったのですか、なら心配は無さそうですな。」
ベルナルドは多少耐性が付いたのか余り驚いていなかった。
「じゃあ、紅茶を飲み終わったら皆一旦表に出て待っててほしいんだよね。あ、飲み終わってからで良いよ。」
紅茶を一気に飲み干し、立ち上がったアルミスに対しタケルがそう言って制止すると、アルミスがタケルに問い掛けて来た。
「タケル様、早く改築してしまいましょう、それとどの様に改築するのですか?私の部屋はタケル様のとなりにしてほしいです。」
「あ、うん。」
タケルはアルミスに押し切られる形でアルミスの部屋の配置を決め、紅茶も一気に飲み干した。
全員が一旦小屋の外に出て、タケルが出した改築用の材料を眺めていた。
「じゃあ行くよー。」
そう言うとタケルは【メイクハウス】の魔法と【メイクアイテム】の魔法を同時に使い小屋の改築を開始した。置かれた材料と家が光り出し、材料が消えると小屋が光り出し光に包まれた。光は大きくなり改築され大きくなった小屋の形がボウッと現れ徐々にその姿をハッキリとさせ、完全に姿を表すと音もなくスッと設置された。
「ふう、完成!出来ました、今回は同時に家具も作ったので直ぐに使えますよ。」
タケルはそう言って、かいてもいない汗を腕で拭う仕草をした。
「おお、タケル殿。これは凄いですな!魔法でこのような事も出来るとは!」
ベルナルドは腕を組み、魔法により瞬く間に改築が完了した事に感心し一人で頷いていた。
「ほっ、いつまでも感心してないで中に入ろう、ベルナルド殿。」
サビオはいつまでもウンウン頷いているベルナルドを促し小屋の中へ入って行った。
玄関の扉を開け中に入るとそこはリビングで、かなり広く三十畳程の広さがあり、部屋の中央には大きなテーブルが設置されており、十人以上が座れる程の大きさであった。玄関を入って右側には大きめのローテーブルを囲むようにソファーが設置されている。
「おお、随分と広くなりましたな。」
「凄いですね、タケル様。あの、私の部屋は・・・」
アルミスは自分の部屋の位置が要望通りになっているか気になっているようである。
「アルミスの部屋はあの並んでいる扉の右側だよ。」
タケルがそう言って扉を指差すとアルミスは顔をパアっと明るくし、自分の部屋へと小走りで向かい部屋へと入って行った。
「今回の目玉はキッチンなんだ。」
タケルはそう言って皆をキッチンへ案内した、新しくなったキッチンは対面式になっており、カウンターも設置されている、中はかなり広く作ってあり今までの三倍程の広さがある。そのキッチンを見てクシーナのテンションが上がりはしゃいでいた。
「うみゃ~!凄い凄い!タケるん大好き~!」
クシーナは喜びの余りタケルに抱き付き、顔をグリグリタケルの胸に押し付けている、そして大きな胸が板のような服から溢れ乳首が見えそうになっていた。
(おお、凄い光景だ!しかしその服何とかならんかな、視線が行っちゃうから困るんだよな、アルミスに見られたらマズイんだよ。)
タケルがそう思っていると、後ろからアルミスの声がした。
「クシーナ、何やってるの!タケル様から離れなさい!」
いつの間にかアルミスがキッチンに来ておりまた顔を赤くしてプルプルと震えている、耳と尻尾もピンと立ち毛も逆立っていた。
「え~!だって嬉しかったんだもん、良いじゃんアルみん、タケるんは皆のタケるんでしょ!」
(なんだそれ。)
「タケル様は私の婚約者です!」
そう言ってアルミスはクシーナを引き剥がし、タケルの腕にしがみついた。
「え~。そうなの~?でも良いもん、私にはベルるんが居るもんね~。」
そう言うとクシーナはベルナルドの腕にしがみついた。ベルナルドはさっきまでタケルに抱きついたクシーナに驚き、ハミ出た胸を悔しそうに見ていたが、クシーナに抱きつかれ、とても近衛騎士団とは思えない顔付きである。
「ハハハ、あともうひとつ目玉が有るんだ、今回は同時にお風呂も増設しました。人数も増えて順番に入るのも時間が掛かるので、お風呂を二つと、露天風呂も作りました!」
タケルは皆を風呂に案内し作りを説明した。今までの風呂より少し大きめの物を二つ作り、そこから露天風呂に出られるように作った。
「じゃあ、皆の部屋を案内するよ。」
タケルは其々部屋を案内し、ベルナルドには王妃達の部屋も教えておいた。
部屋を全て案内し終わった頃にクシーナが、驚きの発言をした。
「ねえねえ、折角広いお風呂が有るんだから皆で入ろうよ。」
「え?」
男性陣は揃って声を上げた。しかし意外な事にアルミスが賛同した。
「いいですね、皆で入るのも楽しそうですよね。」
アルミスに続くようにアルバが発言した。
「私はどちらでも構わないわよ。」
女性陣に押し切られる形で全員でお風呂に入る事になったタケル達男性陣は互いに顔を見合せ、複雑な表情をしていた。
「あ、そう言えばサビオさん、サビオさん達が街へ行った後コクシオーネさんがクシーナって言う精霊を連れて来て、その精霊が料理をしてくれる事になりました。」
「ほっ、そうか。解決して良かったの・・・な。」
「タケルさん、コクシオーネが連れて来たのはクシーナって今言ったかしら?」
「え?うん。そうだけど、どうかした?」
「いえ、ちょっとその名前に聞き覚えがね。」
アルバはどうやらクシーナの事を知っているようであった、しかも何か含みを持った言い方である。 しかしタケルは余り気にせずにベルナルドの帰りを待つ事にした。
「ふーん、そっか・・・ベルナルドさん早く帰って来ないかな。」
普段は気にならない物だが、こういう時は待つ時間が長く感じるもので、タケルはいつもよりも紅茶を飲むペースが早くなり、既に二杯も飲み終わり、三杯目を注いでいた。
「んん~、念話で呼び戻そうかな・・・」
タケルがベルナルドを念話で呼び戻すかどかと考え始めた時に扉が現れ、ベルナルドとクシーナが戻って来た。
「タケル殿。戻りましたぞ、お、サビオ殿とアルバ殿も戻られておりましたか。」
続いてクシーナが扉を通ってリビングに入って来た。
「あ、タケル様、戻りました。食材が沢山採れ・・・・サンクトスちゃ~ん!死んだって聞いてたけど生きてたんだね~。んん~相変わらずキレイだチュウさして、チュウ♪」
クシーナはアルバに飛び付き人が変わったようにアルバにじゃれついていた。そんなクシーナを両手でガードしつつアルバは冷めた感じてなだめていた。
「ハイハイ、わかったわかった、わかったけどチュウはしないわよ、それに私の今の名はアルバって言うのよ。」
タケルは少し驚いていた、アルバとクシーナが恐らく知り合いだとは思っていたが、クシーナの反応が想像と随分と違っていたからである。
「随分とアルバと仲が良さそうだね、クシーナ。」
タケルが尋ねるとクシーナはピタッと動きを止めて、その後スッと立ち上がると何事も無かったようにタケルに向かい、お辞儀をした。
「タケル様、それでは今から夕食の準備に取り掛かります。」
涼しい顔でキッチンに向かおうとするクシーナをタケルは呼び止めた。
「いやいや。クシーナ、今更すました顔しても駄目だから、全然キャラ違ったんだね、ちょっと驚いたよ。」
タケルに言われたクシーナは舌をペロッと出し首を傾げていた。
「テヘッ」
(リアルでテヘペロ来たよ!)
「さっきのが本来のクシーナですよ、タケルさん。」
アルバが笑いながらそう言うと、クシーナが反論していた。
「サンクトスちゃん!そんな事無いよ!私は精霊界一おしとやかなんだから!」
「ハイハイ!判ったから、取り敢えずそろそろ夕食の準備宜しくね。」
タケルは深夜のアニメのようなやり取りに少し疲れそうになったので話を遮り、クシーナに夕食の準備をお願いした。そしてベルナルドを見るとクシーナのキャラの変わり様に目をパチクリさせ驚いていた。
「ハーイ。じゃあ私がここで作る初の料理はチュウカ料理にしま~す。」
「あ、ああ、お願いね。」
クシーナは素のキャラのまま返事をしてキッチンへ入っていき準備を始めた。タケルはクシーナが夕食の準備を始めたのを確認すると、ベルナルドと王妃達の事について話をする事にした。
「ベルナルドさん、いよいよ森を抜けます、なので王妃様達を復活させたいと思うのですが。」
「タケル殿・・・ついにその時が来たのだな。」
「そうですね、本当は封印の解除はいつでも出来たんですが、安全な場所に近くなってからという事でしたからね、これだけ近ければ問題無いかと思います。」
「そうか、それで解除はいつやるのですかな、タケル殿。」
「明日にでもやろうかと思います。」
「明日・・・」
ベルナルドは王妃達の封印の解除がいよいよ明日行われると聞くと、下を向いて黙っていた。良く見るとベルナルドは声を殺して泣いていた、仕えていた王との約束を守る為、王妃達を守る為に千年もの間たった一人で王妃達が封印された封印石が隠された部屋を見守って来たのだ、様々な想いが有って当然であろう。
「ベルナルドさん、様々な想いがあるでしょう、しかしまだ成功した訳ではありません。泣くのは王妃様達が復活してからにしましょう。」
ベルナルドはタケルの言葉に黙って頷き、手で涙を拭うとタケルの方を見据えて話始めた。
「タケル殿。そうであったな、涙は王妃様達の姿を見てからでないとな。」
ベルナルドの顔はいつものどこか抜けてる感じが抜け、今の顔付きはまさに近衛騎士団のそれであった。
「ベルナルドさん、明日の解除の前に確認したいのですが、王妃達が復活したら三人増える訳ですが、部屋は三人共別々が良いですかね?」
タケルに聞かれたベルナルドは思い出すような感じで腕を組み、目を瞑っていた。
暫くしてベルナルドが目を開き、手繰り寄せた記憶を頼りに話始めた。
「そうですな、王子のアルセリオ様はお一人のお部屋でしたな。王妃のルシアナ様と王女のミレイア様は同じ部屋で寝ることもお有りのようでありましたが、基本的にお一人のお部屋でありましたな。」
タケルはベルナルドに感心していた、何しろベルナルドが王妃達に仕えて居たのは千年も前の事である、それを詳細に覚えていたのである、ベルナルドの想いはそれだけ強いのだとタケルは感じていた。
「流石ですねベルナルドさん。よく覚えていましたね。判りました、王妃様達の部屋は其々に用意しましょう、王妃様の部屋を少し大きくします、そうすれば王女様も一緒に寝る事も出来ますからね。」
タケルはベルナルドの話した情報を元に部屋を其々に作る事にした、クシーナの部屋も合わせると四部屋を増設する事になる、更にベルナルドとアルバの部屋も二人部屋として大きくする必要があった、リビングも今のままでは少し手狭である、タケルは小屋全体を作り直す必要があると考えていた。その時キッチンのクシーナが声を掛けて来た。
「みっなさ~ん。料理が出来ましたよ~。」
「じゃあ、皆で運んでクシーナの料理を味わいましょうか。」
タケルが言うと皆が料理を運び、テーブルが料理が盛られた皿で埋まった。
「凄いですな、クシーナ殿。これは全てクシーナ殿が作ったのですか!美味しそうですな~。」
「へへ~。凄いでしょ!タケるんの記憶のレシピ完全再現だよ!」
クシーナは腰に手を当て、胸を反らせ自慢げにしており、板のような服の脇から胸が大きくハミ出ている。しかしアルバを除いた全員は違う意味でクシーナに驚き注目のしていた。
「た、タケるんって・・・クシーナ!貴女タケル様に向かって!!!!!」
アルミスは立ち上がり顔を赤くして怒っている、耳と尻尾もピンッと立ち毛も少し逆立っているようだ。
「クシーナ殿。流石にそれは・・・」
ベルナルドが流石にその言い方はマズイと声を掛けると悪びれる様子も無くクシーナは話始めた。
「え~?アルみんもベルるんも何を怒ってるの?タケるんってカワイイでしょ?」
「アルみ・・・・」
「べ、ベルるん・・・」
アルミスとベルナルドは自分達も変な呼び名で呼ばれ唖然としていた。
「まあ、確かにカワイイ言い方かもしれんがの。」
サビオはアルバが冷静なので判断に迷っているようである。
「アハハハハハハ!!タケるんにアルみんにベルるん!!アハハハハ!クシーナ面白いね!良いよ、俺は気にしないよ。」
タケルだけは楽しそうに笑って手を叩いていた。
「アハハハハ・・・あ~。笑った。まあ良いじゃないか、変に畏まってるよりも良いんじゃないかな、クシーナなりの親しみの現れなんでしょ。さ、冷めないうちに食べちゃおう。いただきます。」
そう言ってタケルはクシーナが作ってくれた料理を食べ始めた。
「うん、美味しい!再現は完璧だね。」
タケルが食べ始めたのを見てアルミスは渋々座り料理を食べ始めた。
「そ、そうであるな、クシーナ殿の親しみの現れであるな。ベルるんか、良いかもしれんな。」
ベルナルドは最初こそ驚いたが、満更でもないようであった。
アルバは最初から判ってたようで、至って冷静であった。そしてサビオはアルバの様子を伺っているだけであった。
(ありゃ完全に尻に敷かれるな。)
タケルはサビオの様子を見てそう思っていた。
「美味しいにょ~。我ながら大したもんだにゃ~。」
クシーナは自画自賛し、料理を口に入れたまま頬を両手で押さえ、体をクネクネさせていた。
テーブルを埋めていた大量の料理が全て無くなり、クシーナが後片付けをし、タケルは紅茶を淹れていた。
「クシーナお疲れ様、美味しかったよ、紅茶淹れたから飲んで寛いでよ。」
タケルは料理を作ったクシーナを労い紅茶を飲んで寛ぐよう薦めた
「はあ~。タケるんの淹れた紅茶美味しい~。」
「ハハハ、そっか、喜んで貰えて嬉しいよ。」
タケルはクシーナが紅茶を飲んでダル~っとしているのを見て微笑んでいた。
「さて、紅茶を飲みながらで良いから皆聞いて、封印石に封印されている王妃様達の封印を明日解除する事にしたんだ、それでこの小屋だとちょっと手狭になるからね、全面的に改築する事にしたんだ。」
そこでイマイチ理解出来ないベルナルドがタケルに問い掛けた。
「タケル殿。封印の解除は明日の筈、今から改築していては間に合わないのでは・・・」
「あ、言ってませんでしたっけ?この小屋もまほうで作ったんですよ、改築も魔法でやりますから直ぐに終わりますよ。」
「魔法で・・・・そ、そうであったのですか、なら心配は無さそうですな。」
ベルナルドは多少耐性が付いたのか余り驚いていなかった。
「じゃあ、紅茶を飲み終わったら皆一旦表に出て待っててほしいんだよね。あ、飲み終わってからで良いよ。」
紅茶を一気に飲み干し、立ち上がったアルミスに対しタケルがそう言って制止すると、アルミスがタケルに問い掛けて来た。
「タケル様、早く改築してしまいましょう、それとどの様に改築するのですか?私の部屋はタケル様のとなりにしてほしいです。」
「あ、うん。」
タケルはアルミスに押し切られる形でアルミスの部屋の配置を決め、紅茶も一気に飲み干した。
全員が一旦小屋の外に出て、タケルが出した改築用の材料を眺めていた。
「じゃあ行くよー。」
そう言うとタケルは【メイクハウス】の魔法と【メイクアイテム】の魔法を同時に使い小屋の改築を開始した。置かれた材料と家が光り出し、材料が消えると小屋が光り出し光に包まれた。光は大きくなり改築され大きくなった小屋の形がボウッと現れ徐々にその姿をハッキリとさせ、完全に姿を表すと音もなくスッと設置された。
「ふう、完成!出来ました、今回は同時に家具も作ったので直ぐに使えますよ。」
タケルはそう言って、かいてもいない汗を腕で拭う仕草をした。
「おお、タケル殿。これは凄いですな!魔法でこのような事も出来るとは!」
ベルナルドは腕を組み、魔法により瞬く間に改築が完了した事に感心し一人で頷いていた。
「ほっ、いつまでも感心してないで中に入ろう、ベルナルド殿。」
サビオはいつまでもウンウン頷いているベルナルドを促し小屋の中へ入って行った。
玄関の扉を開け中に入るとそこはリビングで、かなり広く三十畳程の広さがあり、部屋の中央には大きなテーブルが設置されており、十人以上が座れる程の大きさであった。玄関を入って右側には大きめのローテーブルを囲むようにソファーが設置されている。
「おお、随分と広くなりましたな。」
「凄いですね、タケル様。あの、私の部屋は・・・」
アルミスは自分の部屋の位置が要望通りになっているか気になっているようである。
「アルミスの部屋はあの並んでいる扉の右側だよ。」
タケルがそう言って扉を指差すとアルミスは顔をパアっと明るくし、自分の部屋へと小走りで向かい部屋へと入って行った。
「今回の目玉はキッチンなんだ。」
タケルはそう言って皆をキッチンへ案内した、新しくなったキッチンは対面式になっており、カウンターも設置されている、中はかなり広く作ってあり今までの三倍程の広さがある。そのキッチンを見てクシーナのテンションが上がりはしゃいでいた。
「うみゃ~!凄い凄い!タケるん大好き~!」
クシーナは喜びの余りタケルに抱き付き、顔をグリグリタケルの胸に押し付けている、そして大きな胸が板のような服から溢れ乳首が見えそうになっていた。
(おお、凄い光景だ!しかしその服何とかならんかな、視線が行っちゃうから困るんだよな、アルミスに見られたらマズイんだよ。)
タケルがそう思っていると、後ろからアルミスの声がした。
「クシーナ、何やってるの!タケル様から離れなさい!」
いつの間にかアルミスがキッチンに来ておりまた顔を赤くしてプルプルと震えている、耳と尻尾もピンと立ち毛も逆立っていた。
「え~!だって嬉しかったんだもん、良いじゃんアルみん、タケるんは皆のタケるんでしょ!」
(なんだそれ。)
「タケル様は私の婚約者です!」
そう言ってアルミスはクシーナを引き剥がし、タケルの腕にしがみついた。
「え~。そうなの~?でも良いもん、私にはベルるんが居るもんね~。」
そう言うとクシーナはベルナルドの腕にしがみついた。ベルナルドはさっきまでタケルに抱きついたクシーナに驚き、ハミ出た胸を悔しそうに見ていたが、クシーナに抱きつかれ、とても近衛騎士団とは思えない顔付きである。
「ハハハ、あともうひとつ目玉が有るんだ、今回は同時にお風呂も増設しました。人数も増えて順番に入るのも時間が掛かるので、お風呂を二つと、露天風呂も作りました!」
タケルは皆を風呂に案内し作りを説明した。今までの風呂より少し大きめの物を二つ作り、そこから露天風呂に出られるように作った。
「じゃあ、皆の部屋を案内するよ。」
タケルは其々部屋を案内し、ベルナルドには王妃達の部屋も教えておいた。
部屋を全て案内し終わった頃にクシーナが、驚きの発言をした。
「ねえねえ、折角広いお風呂が有るんだから皆で入ろうよ。」
「え?」
男性陣は揃って声を上げた。しかし意外な事にアルミスが賛同した。
「いいですね、皆で入るのも楽しそうですよね。」
アルミスに続くようにアルバが発言した。
「私はどちらでも構わないわよ。」
女性陣に押し切られる形で全員でお風呂に入る事になったタケル達男性陣は互いに顔を見合せ、複雑な表情をしていた。
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いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!
くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作)
異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」
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