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2話 夏江 涼香
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スズちゃんだぁ....めちゃくちゃかわいい~!
普段は髪下ろしてるんだぁ。なんか新鮮でいいなぁ。そんな感じで彼女をまた見れたとこに喜んでいた。
だがすぐにあることに気がついた。
どう考えてもおかしい事に。スズ本人がいるというのに周りの人は見向きもしないのだ。
たまたまだと思ったがチケットを買いに来た人たちもおそらくここを通るはずだ。
それなのに誰も彼女に声をかけないし騒ぎもしない。
そう思って見ていると顔にサングラスをかけ耳にピアスをしているいかにもチンピラっぽいやつが彼女に近づき話しかけるのが見えた。
誰だ?知り合いか?物陰に隠れながら僕は様子を見る。
すぐに知り合いじゃないとわかった。だって彼女は凄く警戒していたし怖がっているのか
顔も引き攣っていたのだから。
それにしても何で周りの奴らは助けないんだなぁ。みんな見て見ぬふりをする。
そりゃいざこざに巻き込まれるのは僕のごめんだけど.....。
よし!僕は覚悟を決め彼女のもとに走った。
だってそのチンピラは彼女の腕を掴み無理やり連れて行こうとしていたのだから。
僕は彼女とチンピラの間に割って入り彼女の腕を掴んでるチンピラの手を振り払った。
「何すんだお前」
「それはこっちのセリフだ。どう考えても嫌がってただろ彼女」
「てめぇには関係ねぇだろ。さっさとどけよ」
チンピラはサングラス越しでも分かるほどに強い眼光で僕を睨みつけてきた。
「どくわけねぇだろ。てかお前が消えろよ」
うわぁ~言っちゃった。てか何こいつめちゃくちゃ怖いじゃん。
僕は今すぐにでもここを離れたいと思うほどに内心ビビっていたが、見てわかるほどに怯えて震えてる彼女を放っておくことなんて出来なかった。
僕はこの際殴られても引かない。それくらいの覚悟をしていたが運良くそうはならなかった。
「何してるんだ君たち」
この近くの駅から誰かが駅員を呼んで来てくれたのだ。
するとチンピラはチッと舌打ちをしてその場を離れた。
「待ちなさい!!」
駅員はそのチンピラを追い掛けて行った。捕まったかどうかは知らない。
「ご.....ごめんなさい。巻き込んじゃって....」
震えた声でそう言うスズ。やはり相当怖かったんだろう。
「良いよですよ。そんなこと気にしないでください」
僕はそう言った後
「やっぱり人気アイドルはああいうのに絡まれやすいのかなぁ」と一人呟いていた。
「えっ....」
どうやらその独り言が聞こえていたらしく
スズは顔をポカンとさせた。。
「あ、えっとSTKのスズちゃんだと思いまして....人違いでしたか?」
人違いだったら恥ずかしいやつ。僕は心の中で間違いじゃありませんようにと願った。
「いえ...人違いじゃないですけど....あなた、私の事分かるんですか?」
良かった人違いじゃなかった。僕は安堵の息を吐いたあと口を開けた。
「分かるも何も僕は君のファン───いや大ファンですから」
僕は誇らしげにそう言った。
「大ファンってありがとうございます」
そう言って笑うスズ。
良かった笑ってくれて。
そうして僕はさっきから頭に引っかかる疑問を質問を彼女に質問しようと思った。
「あのスズちゃん.....」
「夏江 涼香 ....」
「えっ?」
「私の本名です」
「えっ....それ教えて良いんですか?」
「どうでしょう。でも今はスズちゃんって言われるの何か恥ずかしくてそれにあなたになら教えても大丈夫かなって思ったんです」
そう言う彼女はどこか懐かしむかのように遠い目をしていた。
すずかの上をとってスズちゃんかなるほど....。僕はスズの由来が知れて何だか嬉しかった。
彼女が名乗ったんだ僕も名乗っておこう。
「僕は島崎 涼太と言います」
「島崎 涼太.....もしかして私たちが結成してそんなに経ってない頃にファンクラブ入ってくれてた人じゃないですか?」
「えっそんなの分かるんですか?」
「はい!私そういうのは忘れないんです」
笑顔でそう言う涼香。
確かに僕はだいぶん前からファンクラブに入ってるけどまさか認知されてるとは.....しかも推しに.....めちゃくちゃ嬉しい。
おっと話を戻さないと....。
「それでスズ....夏江さん」
「涼香でいいですよ」
「.....それで涼香さん一つ聞きたいことがあるんですけど僕の勘違いだったそれでいいんです。でも気になったから。どうしてこんなに人が多いところにいて誰にも声掛けられないんですか?」
そうやっぱり気になるのだ今年に入ってから彼女がテレビに出る回数は明らかに増えていたし、ドラマ出演までしていた。当然顔を知ってる人はたくさんいるはずだ。
それに....
チケット売り場で見かけた人がチラホラと。
STKを知っていて彼女を知らない奴なんているはずが無い。
「やっぱり....気づいてたんですか」
彼女は少し寂しそうな顔をした。
「嫌なら話さなくても良いですよ」
「いえ、大丈夫です。そりゃ気になっちゃいますよね有名人がこんな人通りの多いい場所にいても話しかけられないの.....。良いいですよ教えてあげます」
すると涼香から笑顔が消えた。
そうして彼女はそのわけを話し始めた。
「私、アイドル辞めてからだんだん皆から忘れられてるんです。簡単に言えばアイドルのスズという存在が消え始めているみたいなんです。だから今の私は普通の一般人と変わりません」
その衝撃的な発言に僕は言葉が出なかった。
その後も彼女は話しを続けた。
まずその事を気づいたきっかけだ。
引退した数日後、道を歩いてた時ダンスレッスンの先生にあったらしく挨拶をしておこうと話しかけたらしい。そしたらその先生は「どちら様ですか?」と問いかけてきたらしい。彼女は冗談か何かと思いその後も話しをしようとしたが先生はずっと首を傾げていおり「急いでるのですみません」とまともに取り合って貰えないまま先生は行ってしまったという。
そこからだんだん道を歩いていても声をかけられる回数は減り始め今では全くと言っていいほど誰からもかけられなくなったらしい。
僕はそれを聞いた後、胸が強く締め付けられて苦しかった。その辛さが顔に出ていたのだろう。彼女はこう言った。
「ごめんなさい急にこんな話しちゃって。私自身はあんまり気にしてないので、そんなに暗い顔しないでください....多分もうアイドルするなってことなんでしょうね」
引きつった笑顔でそう言う涼香...。
やめてくれ....気にしてないわけない。
ほんとに気にしてないやつは
───そんな苦しそうな笑顔をしない。
「それじゃあ失礼します。えっと.....島崎さん」
そう言いこの場を後にしようとする静香。
くっ.....!
「涼太くん来てくれありがとう」
僕は声を上げそう言った。すると彼女は振り返った。
「えっ急にどうし....」
「抽選に当たってサイン会に行けた時、スズちゃんにそう言ってもらったんです。すごく嬉しかったです。あなたにサインを貰うために並んでた時スタッフの人が名前を聞いてきたんです、入場者の確認って。帰りに気づいたんた名前を聞いてたのスズちゃんの列だけだってことを。あれをしてたのはどうしてですか?」
しばらくの沈黙が続いた後彼女は口を開いた。
「....それは私を推してくれてる人.....一人一人に感謝したくて.....」
「やっぱりそうですよね。スズちゃんはファンへの感謝を忘れないそんなアイドルでしたから。初めてライブを見た時僕はあなたに心を奪われた、圧倒的歌唱力にダンスどれをとってもほかのメンバー
───いやどんなアイドルとも比べ物にならないほどに上手いとそう思ったんです。ここまでになるのにあなたはすごい努力したんじゃないんですか?それをあなたはあっさり諦められるんですか?」
「.......」
彼女は俯いたまま喋らないくなった。
「それなのにあなたは今気にしてないと言った。絶対そんなわけないのに....」
「それなら....」
涼香は顔を上げた。
「それならどうすれば良いんですか!!みんな私を忘れていく....戻りたくても...もうみんな私を見てくれないんです」
声を張り上げそう言う涼香、彼女の瞳からポロポロと涙が落ちる。彼女はもう相当苦しめられている。諦めてしまいたくなるくらいに
「涼香さん一つだけ教えてください。本当はスズだけが消えてるんじゃないくて夏江 涼香ごとその人の記憶から消えてるんじゃないんですか....?」
ずっと引っかかっていたダンスレッスンの先生がスズという存在を忘れるだけで彼女ごと全部忘れるわけが無いと。
「......どうしてあなたはそれも気づいちゃうんですか....。あなたの言う通りです。スズだけが忘れられてるんじゃない、私ごとみんな忘れるいます。そして一度忘れた人は、もう一度私を覚えることが出来なくなるんです....。このままだと私は.....私は....ひとりぼっちになります....」
弱々しい声で答える涼香。
「涼香さんはこのままで良いんですか?」
「.....ひとりぼっちになるのは嫌です。
それにみんなから忘れられるって考えるとこの先がすごく怖い....です」
思わず本音を漏らす涼香。
「それなら一緒に探しませんか?解決策を」
「───えっ」
彼女の引きつった顔が少しマシになったように見えた。
「この現象が起きた原因さえ無くせばまたみんな思い出すかもしれない。一度かけるのも悪くないと僕は思います」
「でもそんなのもし無かったら私はどうすれば....」
「やる前から諦めちゃダメです。後で絶対後悔しますから。僕も全力で探しますから」
「でも.....そんな事言ってあなたもすぐに私を忘れちゃうんじゃないんですか?」
悲しそうな顔をする涼香。
「忘れません。なんてったって僕はスズちゃんの大ファン、それに僕の永遠の推しなんですから」
僕は手を胸に当てドヤ顔をしながらそう言った。
忘れないなんて確信は当然ない。
でも僕のスズちゃんへの愛は誰にも負けるつもりは無い。僕はみんなみたいに飲まれてなんかやらないぞ。
「プフゥッ.....何ですかそれ....ほんとにあなたって面白い人ですね」
満面の笑みで笑う涼香。その瞳からはもう涙は零れておらず、彼女の笑みに嘘はなかった。
あぁやっぱりスズちゃんの笑顔は最高だ。
自然と僕の口角も上がった。
「それじゃあお願いしてもいいですか」
少し気持ちがラクになったのかさっきより明るい声になっている涼香。
「もちろんですよ。これからよろしくお願いします。涼香さん」
「はい、よろしくお願いします.....涼太くん」
満面の笑みでそう言う涼香。
涼太くん.....早速下の名前か。何だか恥ずかしな。顔が熱くなるのを感じた。
それから僕は涼香とメアドを交換しその日は別れた。連絡先が分からないと会うの難しいからだ。
この時の僕は推しとメアドを交換出来たというのに飛ぶ跳ねて喜ぶことは無かった。むしろそんなこと頭にもなかった。
涼香の事で頭がいっぱいだった。みんなから忘れられる、それはどれだけ怖い事なのかどれだけ苦しい事なのか多分計り知れないだろう。僕はどうにかして彼女を助けたいと心からそう思う。
普段は髪下ろしてるんだぁ。なんか新鮮でいいなぁ。そんな感じで彼女をまた見れたとこに喜んでいた。
だがすぐにあることに気がついた。
どう考えてもおかしい事に。スズ本人がいるというのに周りの人は見向きもしないのだ。
たまたまだと思ったがチケットを買いに来た人たちもおそらくここを通るはずだ。
それなのに誰も彼女に声をかけないし騒ぎもしない。
そう思って見ていると顔にサングラスをかけ耳にピアスをしているいかにもチンピラっぽいやつが彼女に近づき話しかけるのが見えた。
誰だ?知り合いか?物陰に隠れながら僕は様子を見る。
すぐに知り合いじゃないとわかった。だって彼女は凄く警戒していたし怖がっているのか
顔も引き攣っていたのだから。
それにしても何で周りの奴らは助けないんだなぁ。みんな見て見ぬふりをする。
そりゃいざこざに巻き込まれるのは僕のごめんだけど.....。
よし!僕は覚悟を決め彼女のもとに走った。
だってそのチンピラは彼女の腕を掴み無理やり連れて行こうとしていたのだから。
僕は彼女とチンピラの間に割って入り彼女の腕を掴んでるチンピラの手を振り払った。
「何すんだお前」
「それはこっちのセリフだ。どう考えても嫌がってただろ彼女」
「てめぇには関係ねぇだろ。さっさとどけよ」
チンピラはサングラス越しでも分かるほどに強い眼光で僕を睨みつけてきた。
「どくわけねぇだろ。てかお前が消えろよ」
うわぁ~言っちゃった。てか何こいつめちゃくちゃ怖いじゃん。
僕は今すぐにでもここを離れたいと思うほどに内心ビビっていたが、見てわかるほどに怯えて震えてる彼女を放っておくことなんて出来なかった。
僕はこの際殴られても引かない。それくらいの覚悟をしていたが運良くそうはならなかった。
「何してるんだ君たち」
この近くの駅から誰かが駅員を呼んで来てくれたのだ。
するとチンピラはチッと舌打ちをしてその場を離れた。
「待ちなさい!!」
駅員はそのチンピラを追い掛けて行った。捕まったかどうかは知らない。
「ご.....ごめんなさい。巻き込んじゃって....」
震えた声でそう言うスズ。やはり相当怖かったんだろう。
「良いよですよ。そんなこと気にしないでください」
僕はそう言った後
「やっぱり人気アイドルはああいうのに絡まれやすいのかなぁ」と一人呟いていた。
「えっ....」
どうやらその独り言が聞こえていたらしく
スズは顔をポカンとさせた。。
「あ、えっとSTKのスズちゃんだと思いまして....人違いでしたか?」
人違いだったら恥ずかしいやつ。僕は心の中で間違いじゃありませんようにと願った。
「いえ...人違いじゃないですけど....あなた、私の事分かるんですか?」
良かった人違いじゃなかった。僕は安堵の息を吐いたあと口を開けた。
「分かるも何も僕は君のファン───いや大ファンですから」
僕は誇らしげにそう言った。
「大ファンってありがとうございます」
そう言って笑うスズ。
良かった笑ってくれて。
そうして僕はさっきから頭に引っかかる疑問を質問を彼女に質問しようと思った。
「あのスズちゃん.....」
「夏江 涼香 ....」
「えっ?」
「私の本名です」
「えっ....それ教えて良いんですか?」
「どうでしょう。でも今はスズちゃんって言われるの何か恥ずかしくてそれにあなたになら教えても大丈夫かなって思ったんです」
そう言う彼女はどこか懐かしむかのように遠い目をしていた。
すずかの上をとってスズちゃんかなるほど....。僕はスズの由来が知れて何だか嬉しかった。
彼女が名乗ったんだ僕も名乗っておこう。
「僕は島崎 涼太と言います」
「島崎 涼太.....もしかして私たちが結成してそんなに経ってない頃にファンクラブ入ってくれてた人じゃないですか?」
「えっそんなの分かるんですか?」
「はい!私そういうのは忘れないんです」
笑顔でそう言う涼香。
確かに僕はだいぶん前からファンクラブに入ってるけどまさか認知されてるとは.....しかも推しに.....めちゃくちゃ嬉しい。
おっと話を戻さないと....。
「それでスズ....夏江さん」
「涼香でいいですよ」
「.....それで涼香さん一つ聞きたいことがあるんですけど僕の勘違いだったそれでいいんです。でも気になったから。どうしてこんなに人が多いところにいて誰にも声掛けられないんですか?」
そうやっぱり気になるのだ今年に入ってから彼女がテレビに出る回数は明らかに増えていたし、ドラマ出演までしていた。当然顔を知ってる人はたくさんいるはずだ。
それに....
チケット売り場で見かけた人がチラホラと。
STKを知っていて彼女を知らない奴なんているはずが無い。
「やっぱり....気づいてたんですか」
彼女は少し寂しそうな顔をした。
「嫌なら話さなくても良いですよ」
「いえ、大丈夫です。そりゃ気になっちゃいますよね有名人がこんな人通りの多いい場所にいても話しかけられないの.....。良いいですよ教えてあげます」
すると涼香から笑顔が消えた。
そうして彼女はそのわけを話し始めた。
「私、アイドル辞めてからだんだん皆から忘れられてるんです。簡単に言えばアイドルのスズという存在が消え始めているみたいなんです。だから今の私は普通の一般人と変わりません」
その衝撃的な発言に僕は言葉が出なかった。
その後も彼女は話しを続けた。
まずその事を気づいたきっかけだ。
引退した数日後、道を歩いてた時ダンスレッスンの先生にあったらしく挨拶をしておこうと話しかけたらしい。そしたらその先生は「どちら様ですか?」と問いかけてきたらしい。彼女は冗談か何かと思いその後も話しをしようとしたが先生はずっと首を傾げていおり「急いでるのですみません」とまともに取り合って貰えないまま先生は行ってしまったという。
そこからだんだん道を歩いていても声をかけられる回数は減り始め今では全くと言っていいほど誰からもかけられなくなったらしい。
僕はそれを聞いた後、胸が強く締め付けられて苦しかった。その辛さが顔に出ていたのだろう。彼女はこう言った。
「ごめんなさい急にこんな話しちゃって。私自身はあんまり気にしてないので、そんなに暗い顔しないでください....多分もうアイドルするなってことなんでしょうね」
引きつった笑顔でそう言う涼香...。
やめてくれ....気にしてないわけない。
ほんとに気にしてないやつは
───そんな苦しそうな笑顔をしない。
「それじゃあ失礼します。えっと.....島崎さん」
そう言いこの場を後にしようとする静香。
くっ.....!
「涼太くん来てくれありがとう」
僕は声を上げそう言った。すると彼女は振り返った。
「えっ急にどうし....」
「抽選に当たってサイン会に行けた時、スズちゃんにそう言ってもらったんです。すごく嬉しかったです。あなたにサインを貰うために並んでた時スタッフの人が名前を聞いてきたんです、入場者の確認って。帰りに気づいたんた名前を聞いてたのスズちゃんの列だけだってことを。あれをしてたのはどうしてですか?」
しばらくの沈黙が続いた後彼女は口を開いた。
「....それは私を推してくれてる人.....一人一人に感謝したくて.....」
「やっぱりそうですよね。スズちゃんはファンへの感謝を忘れないそんなアイドルでしたから。初めてライブを見た時僕はあなたに心を奪われた、圧倒的歌唱力にダンスどれをとってもほかのメンバー
───いやどんなアイドルとも比べ物にならないほどに上手いとそう思ったんです。ここまでになるのにあなたはすごい努力したんじゃないんですか?それをあなたはあっさり諦められるんですか?」
「.......」
彼女は俯いたまま喋らないくなった。
「それなのにあなたは今気にしてないと言った。絶対そんなわけないのに....」
「それなら....」
涼香は顔を上げた。
「それならどうすれば良いんですか!!みんな私を忘れていく....戻りたくても...もうみんな私を見てくれないんです」
声を張り上げそう言う涼香、彼女の瞳からポロポロと涙が落ちる。彼女はもう相当苦しめられている。諦めてしまいたくなるくらいに
「涼香さん一つだけ教えてください。本当はスズだけが消えてるんじゃないくて夏江 涼香ごとその人の記憶から消えてるんじゃないんですか....?」
ずっと引っかかっていたダンスレッスンの先生がスズという存在を忘れるだけで彼女ごと全部忘れるわけが無いと。
「......どうしてあなたはそれも気づいちゃうんですか....。あなたの言う通りです。スズだけが忘れられてるんじゃない、私ごとみんな忘れるいます。そして一度忘れた人は、もう一度私を覚えることが出来なくなるんです....。このままだと私は.....私は....ひとりぼっちになります....」
弱々しい声で答える涼香。
「涼香さんはこのままで良いんですか?」
「.....ひとりぼっちになるのは嫌です。
それにみんなから忘れられるって考えるとこの先がすごく怖い....です」
思わず本音を漏らす涼香。
「それなら一緒に探しませんか?解決策を」
「───えっ」
彼女の引きつった顔が少しマシになったように見えた。
「この現象が起きた原因さえ無くせばまたみんな思い出すかもしれない。一度かけるのも悪くないと僕は思います」
「でもそんなのもし無かったら私はどうすれば....」
「やる前から諦めちゃダメです。後で絶対後悔しますから。僕も全力で探しますから」
「でも.....そんな事言ってあなたもすぐに私を忘れちゃうんじゃないんですか?」
悲しそうな顔をする涼香。
「忘れません。なんてったって僕はスズちゃんの大ファン、それに僕の永遠の推しなんですから」
僕は手を胸に当てドヤ顔をしながらそう言った。
忘れないなんて確信は当然ない。
でも僕のスズちゃんへの愛は誰にも負けるつもりは無い。僕はみんなみたいに飲まれてなんかやらないぞ。
「プフゥッ.....何ですかそれ....ほんとにあなたって面白い人ですね」
満面の笑みで笑う涼香。その瞳からはもう涙は零れておらず、彼女の笑みに嘘はなかった。
あぁやっぱりスズちゃんの笑顔は最高だ。
自然と僕の口角も上がった。
「それじゃあお願いしてもいいですか」
少し気持ちがラクになったのかさっきより明るい声になっている涼香。
「もちろんですよ。これからよろしくお願いします。涼香さん」
「はい、よろしくお願いします.....涼太くん」
満面の笑みでそう言う涼香。
涼太くん.....早速下の名前か。何だか恥ずかしな。顔が熱くなるのを感じた。
それから僕は涼香とメアドを交換しその日は別れた。連絡先が分からないと会うの難しいからだ。
この時の僕は推しとメアドを交換出来たというのに飛ぶ跳ねて喜ぶことは無かった。むしろそんなこと頭にもなかった。
涼香の事で頭がいっぱいだった。みんなから忘れられる、それはどれだけ怖い事なのかどれだけ苦しい事なのか多分計り知れないだろう。僕はどうにかして彼女を助けたいと心からそう思う。
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