二とっぺの日記

行旅遊人

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横須賀教育隊

ベッドと台風

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ふとんがふっとんだ!

自衛隊では布団が吹っ飛ぶのだ。

ベッドメイクというと、一般的にはホテルのベッドを思い出す人が多いと思う。
綺麗なシーツに折目正しい布団、統一された置き方の枕といったところか。

自衛隊では特にシーツは折目はもちろん小銭を落とすと跳ねるくらいにピシッと張る。
そしてその上にバウムクーヘンと呼ばれる折り方のパターンをそろえた毛布を面一に置き、
更にカバーを被せた毛布、枕(これもピシッと張る)、枕元のベッドの柵にタオルを張る。
言葉だけでの説明しきれないくらい面倒な、細かく決まった畳み方があるのだ。

しかし教育隊の学生は多忙だし、人間なので畳み方を常に正しく行うことが難しい場合がある。
これが班長の目に留まると隊舎に台風が発生する。
文字通りの台風である。
布団は飛び、ベッドは崩壊し、ロッカーは破壊され、中身は風に任せて飛んでいく。
だいたい訓練で隊舎に誰もいない時間に発生し、訓練で疲れ切って隊舎に戻ってきた学生に精神的激甚災害を起こすのだ。
当然以降の教務や訓練に間に合うように迅速な復旧が望まれるので、休憩時間は総員災害派遣である。

ベッドやロッカー、私物、官品など、隊舎内ならまだいい。
広いグラウンドの真ん中にポツンとベッドが置かれていた時などは、どうやって運んだのか?
短艇訓練所の岸壁にまるで絵画か、芸術作品のように佇む椅子をヒーコラいいながら復旧したのも良い(?)思い出なのであった。

ちなみにこの台風はベッドメイクに限らず、ロッカーの施錠忘れ、自習室にペンの忘れ物、洗濯機の中の取込み忘れなどなど様々な理由で発生する。
そして復旧後も即日再度発生したり、疲れ切ったところに"前支え"が待っているのだ。



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