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第2話 新世界
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何かがおかしい。俺は口を半開きにしたまま数日間を過ごした。
「おい、スピノ。大丈夫か?」
「あ、うん。大丈夫」
「まぁ、魔権放送はへっぽこだったけどさ、実際はしっかりしてるかもよ? 元は神様な訳だしさ」
「いや俺魔権放送見てなくてさ。どんな感じかも知らないし...」
「はい。じゃあ一人ずつこのゲートの中に入っていってくれ」
クラーケン先生がみんなの前に佇む巨大なゲートを、それよりも巨大な腕で叩いた。
街の巨大な広場に集められた魔物学校の全校生徒は、これから各々の配属先へと送られる。このゲートの向こうが自分達の次の世界なのだ。
あぁ...憂鬱だ。俺の望んでいた魔に満ちた新ライフ。うまく行きそうにない....
「じゃあ、俺いくぜ? またな」
「おう、また会おうな」
モサは親指をこちらに立て、ゆっくりとゲートの中に入っていった。
次は俺の番だ。
魔王、と言うからには魔王城のような場所に送られるのだろうか。一人一つの魔王城を保持している、と聞いたことがある。
だが、あまり期待できない。噂によると魔王の大きさは、その魔王の強さに比例しているそうだ。
どうしよう、ボロボロな城だったら...もし人使い荒い人だったら掃除させられるのかなぁ...
まぁ、どんなに貧相でも俺が磨けばいいだけの話だ。取り敢えず、今は魔王様に対して無礼のない様に、全力で働くしかない!
「次、スピノ。入りなさい」
「はい!」
俺は先生と広場にいる他の皆んなにお辞儀をし、ゆっくりとゲートへと向かった。
俺の新しい世界、どうか充実したものであってくれ!
「あ、言い忘れてたんだがスピノ。魔王シルク様は反平和主義者だから結構荒い旅になるぞ?」
「へ?」
俺がゲートに入った途端、変な声が聞こえてきた。反平和主義者だ? 魔王アルファが頑張って勇者との調和を進めているのに!?
え、詰んだ? 魔王アルファと対立すんの?
俺の意識はだんだんと薄れていった。
チョンチョン
キュッキュッ
妙な鳴き声が聞こえて来る。なんの鳴き声だろうか。バジリスクはもっと気持ち悪い鳴き声だし、ゴブリンだったりトロールはもっと口が臭そうな鳴き声だ。じゃあ小さい魔物かな?
チョンチョン
ん? 目の前で聞こえる?
俺が目を開けると、そこには真っ青で小さな綺麗な生き物が俺の胸の上に乗っていた。
ケツァルコアトルみたいに羽が生えてる。可愛い。触ってみようかな。
チョンチョン
いった。突かれた。
その小さな生き物はパタパタと空へ飛び上がってしまった。
どうやら俺は気を失ったらしい。
ここは、平原? くるぶしほどの高さの草が辺りに生えている。少し視線を高くすると、ここは盆地であることに気がつく。頭に白い雪を被った背の高い山が、俺のことを囲んでいる。
ここが、俺の配属先? 辺りに魔物は居ない。ちょっとした孤独感と同時に、先ほどからあった緊張感が緑によって少し緩和された。
まって、魔王城は? 禍々しいオーラが全然ないんだが。いや、多分テレポート先間違えたろこれ。
俺は少し歩き回ることにしてみた。
魔物は居ないが、みたことのない生物がたくさん居た。モフモフしていたり、小さな体で空を飛んでいたり、緑色の小さな甲殻類もいた。
これが動物なんだ。魔物と違って穏やかな印象だ。
「こら、待つんじゃ! そっち行ったら網が届かないじゃろう!」
どこからか声が聞こえて来る。小さな子供? 何かに怒っているようである。
「あーもう! なんで大人しく捕まらないんじゃ...折角新しい仲間が増えるというのに...」
そこには小さな女の子がいた。麦わら帽子をかぶり、小さな箱を首からかけ、身長ほどの丈の虫網をもっている。
「あー、えっと。お嬢ちゃん。ちょっと聞きたいことがあってさ」
彼女は目をまん丸にし、こちらをぼーっと凝視している。
「ここら辺で、魔王のお城ってないかな?」
彼女の姿勢は変わらない。
ヤベッ、この子人間だよな...俺のツノと尻尾に驚いてるのかな...俺結構人間に近い見た目だと思ってたんだけどなぁ。
「お主名は何という」
「え? えっとぉ、スピノです」
「本当に? 本当にスピノなんじゃな?」
「え!? ちょ!」
いきなり満面の笑みになり、虫網を放り投げてこちらに寄ってきたかと思えば、俺の服の中に顔を埋めてきた。
何だこの少女、変わってんな。迷子なのかな?
「ふふ、スピノじゃ、スピノじゃ」
「あの、お嬢ちゃん。お父さんとお母さんはどこにいるのかな?」
「ん?」
「いや、迷子なんでしょ? 一緒に探そうよ。多分心配しているよ?」
「お主さっきから何を言ってるんじゃ?」
少女は俺に抱きついたまま、急に神妙な顔になった。
「妾が魔王シルクであるぞ?」
「へ?」
「ん? どうかしたか?」
麦わら帽子の横から何か尖ったものが見える。
あれ? これ、ツノ...? ってことは
「はぁぁぁぁ???」
「おい、スピノ。大丈夫か?」
「あ、うん。大丈夫」
「まぁ、魔権放送はへっぽこだったけどさ、実際はしっかりしてるかもよ? 元は神様な訳だしさ」
「いや俺魔権放送見てなくてさ。どんな感じかも知らないし...」
「はい。じゃあ一人ずつこのゲートの中に入っていってくれ」
クラーケン先生がみんなの前に佇む巨大なゲートを、それよりも巨大な腕で叩いた。
街の巨大な広場に集められた魔物学校の全校生徒は、これから各々の配属先へと送られる。このゲートの向こうが自分達の次の世界なのだ。
あぁ...憂鬱だ。俺の望んでいた魔に満ちた新ライフ。うまく行きそうにない....
「じゃあ、俺いくぜ? またな」
「おう、また会おうな」
モサは親指をこちらに立て、ゆっくりとゲートの中に入っていった。
次は俺の番だ。
魔王、と言うからには魔王城のような場所に送られるのだろうか。一人一つの魔王城を保持している、と聞いたことがある。
だが、あまり期待できない。噂によると魔王の大きさは、その魔王の強さに比例しているそうだ。
どうしよう、ボロボロな城だったら...もし人使い荒い人だったら掃除させられるのかなぁ...
まぁ、どんなに貧相でも俺が磨けばいいだけの話だ。取り敢えず、今は魔王様に対して無礼のない様に、全力で働くしかない!
「次、スピノ。入りなさい」
「はい!」
俺は先生と広場にいる他の皆んなにお辞儀をし、ゆっくりとゲートへと向かった。
俺の新しい世界、どうか充実したものであってくれ!
「あ、言い忘れてたんだがスピノ。魔王シルク様は反平和主義者だから結構荒い旅になるぞ?」
「へ?」
俺がゲートに入った途端、変な声が聞こえてきた。反平和主義者だ? 魔王アルファが頑張って勇者との調和を進めているのに!?
え、詰んだ? 魔王アルファと対立すんの?
俺の意識はだんだんと薄れていった。
チョンチョン
キュッキュッ
妙な鳴き声が聞こえて来る。なんの鳴き声だろうか。バジリスクはもっと気持ち悪い鳴き声だし、ゴブリンだったりトロールはもっと口が臭そうな鳴き声だ。じゃあ小さい魔物かな?
チョンチョン
ん? 目の前で聞こえる?
俺が目を開けると、そこには真っ青で小さな綺麗な生き物が俺の胸の上に乗っていた。
ケツァルコアトルみたいに羽が生えてる。可愛い。触ってみようかな。
チョンチョン
いった。突かれた。
その小さな生き物はパタパタと空へ飛び上がってしまった。
どうやら俺は気を失ったらしい。
ここは、平原? くるぶしほどの高さの草が辺りに生えている。少し視線を高くすると、ここは盆地であることに気がつく。頭に白い雪を被った背の高い山が、俺のことを囲んでいる。
ここが、俺の配属先? 辺りに魔物は居ない。ちょっとした孤独感と同時に、先ほどからあった緊張感が緑によって少し緩和された。
まって、魔王城は? 禍々しいオーラが全然ないんだが。いや、多分テレポート先間違えたろこれ。
俺は少し歩き回ることにしてみた。
魔物は居ないが、みたことのない生物がたくさん居た。モフモフしていたり、小さな体で空を飛んでいたり、緑色の小さな甲殻類もいた。
これが動物なんだ。魔物と違って穏やかな印象だ。
「こら、待つんじゃ! そっち行ったら網が届かないじゃろう!」
どこからか声が聞こえて来る。小さな子供? 何かに怒っているようである。
「あーもう! なんで大人しく捕まらないんじゃ...折角新しい仲間が増えるというのに...」
そこには小さな女の子がいた。麦わら帽子をかぶり、小さな箱を首からかけ、身長ほどの丈の虫網をもっている。
「あー、えっと。お嬢ちゃん。ちょっと聞きたいことがあってさ」
彼女は目をまん丸にし、こちらをぼーっと凝視している。
「ここら辺で、魔王のお城ってないかな?」
彼女の姿勢は変わらない。
ヤベッ、この子人間だよな...俺のツノと尻尾に驚いてるのかな...俺結構人間に近い見た目だと思ってたんだけどなぁ。
「お主名は何という」
「え? えっとぉ、スピノです」
「本当に? 本当にスピノなんじゃな?」
「え!? ちょ!」
いきなり満面の笑みになり、虫網を放り投げてこちらに寄ってきたかと思えば、俺の服の中に顔を埋めてきた。
何だこの少女、変わってんな。迷子なのかな?
「ふふ、スピノじゃ、スピノじゃ」
「あの、お嬢ちゃん。お父さんとお母さんはどこにいるのかな?」
「ん?」
「いや、迷子なんでしょ? 一緒に探そうよ。多分心配しているよ?」
「お主さっきから何を言ってるんじゃ?」
少女は俺に抱きついたまま、急に神妙な顔になった。
「妾が魔王シルクであるぞ?」
「へ?」
「ん? どうかしたか?」
麦わら帽子の横から何か尖ったものが見える。
あれ? これ、ツノ...? ってことは
「はぁぁぁぁ???」
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