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人の記憶が奏斗をつなぐ
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「ありがとうございました。」
また来なさいね、と言われて、家を出た。
「あの人、例の小説を見る事が嫌なんだって、悲しい記憶を呼び覚ましたくないって。」
源気はそう言って、足を早めた。
「よし、その居場所を聞き出せたし、行こう。何か分かるかも。
あと、あの人の小説も読みたいし。」
せいまは張り切って、先陣を切って走り出した。
「もう、夕方だぜ。明日にしないか?」
そうだった。もう遅い時間になっていた。
「だな。明日は、学校休もう。どうしても、早く奏斗を見つけなければ。」
よし、と三人は、それぞれの家へと走った。
…奏斗。無事で居てくれよ。
せいまは帰り際、じいちゃんの言葉が気になった。
次の日、天気は晴れでとても暑い。ムシムシとした空気が、三人を襲う。
「イライラするな。」
「だな。」
予定よりも三人は、早く着いた。時計台の下で、待ち合わせをした三人は、すぐに集まった。
「よし、行くぞ。」
せいまは、昨日のような元気はなかったが、やる気はあった。
蓮斗は無言のままだった。
源気は、考え事をしていた。
「漠って、やっぱりあの小説の主人公だよね。
で、おじいちゃんが言ってた嫌な物って、もしかしたらあの転校生なのかもしれない。」
源気は、みんなにそう言った。
「多分…な。」
蓮斗は、一言しか言わなかった。
「なんで、奏斗を連れ去ったんだ?彼女は、何をしたいんだろう。」
せいまは、考えていた。
「小説を見ないことには…な」
蓮斗の、“な”が印象的だった。
「てか、なんて言って学校休んだの?」
せいまは、気分を変えるべくそんな質問をした。
「僕は、体調不良で。」
「俺は、先生の顔が嫌いだって。」
蓮斗は、せいまの想いを感じて、ふざけた。
「怒られるぞ。笑」
気持ちがガラッと代わり、雰囲気も明るくなった。暑さでバテた身体も、スゥと通った湿った風で多少楽になった。
そんなこんなして、目的地の家へと着いた。
「すみません。あの、昔の小説があるって聞いたんですけど。」
家の主人である人に、そう伝えた。
「ああ、あの小説だね。よく知ってるね。誰に教えてもらったのかな。」
と言って、家の中へと通してくれた。
だが、源気の“本人です”という答えに、納得はいかない様子だった。
「これだよ。」
と言って、桐の箱から出てきたのは、赤いペンで書かれた、原稿用紙。青い正方形の中に、多少読めない文字が書いてある。
せいまは隅々まで読んだ。確かに主人公は、小山 漠だ。
意外に、しっかりしている小説だった。
「これ見てよ。」
せいまは、二人の目線をある文に移させた。
「あいつは、雪渓山に居たのか。」
小説の中では、彼女。山に住んでいて、登山客に人気の店の主人として、生活を送っている。
しかし雪渓山は、ここから近くの山だ。実際にある。
「その山が関係あるのか。」
「この小説はなぜここに?」
源気は、聞いた。
「俺のじいさんが戦時中、ある若い女の人に、託されたと言っていたな。
彼女は、“かなとさんに。この作者に、渡してください”とだけ、言い残して、亡くなったらしい。渡すことは出来なかったが。」
男性は、そのように三人に伝えた。
小説のうらには、“会いたい”と。真っ黒い墨で、大きく、乱暴に書かれていた。
その文字に、不安を覚えた。すると三人の頭の中で、
“助けて”
と、どこからか奏斗のような声が響いてきた。
背筋がゾクゾクなるような、凍りついた声だった。
ここから大変だった。
急いでその家を飛び出し、蓮斗の家へと駆け込んだ。どうしても、早く雪渓山に行かなければ。
「お母さん、車出して。奏斗が、危ないんだ。」
「何いってんの?学校休んで、遊びに行かないの。」
「お母さん、お願いです。本当に危ないんです。」
三人の押しの強さで、ようやく母を説得する事が、出来た。
県境にある、雪渓山。そこの地域は、昔大空襲があった場所。沢山の浮かばれない想いが漂う場所。今でも、心霊スポットとなっている。噂では、あの世とこの世のドアがあると言われているが、正しいか分からない。
「でもかなとさんは、奏斗と同じ名前だよね。そうなると、漠は奏斗を間違って連れ去ったのかも。」
車内で、そんなふうな会話をしていた。
また来なさいね、と言われて、家を出た。
「あの人、例の小説を見る事が嫌なんだって、悲しい記憶を呼び覚ましたくないって。」
源気はそう言って、足を早めた。
「よし、その居場所を聞き出せたし、行こう。何か分かるかも。
あと、あの人の小説も読みたいし。」
せいまは張り切って、先陣を切って走り出した。
「もう、夕方だぜ。明日にしないか?」
そうだった。もう遅い時間になっていた。
「だな。明日は、学校休もう。どうしても、早く奏斗を見つけなければ。」
よし、と三人は、それぞれの家へと走った。
…奏斗。無事で居てくれよ。
せいまは帰り際、じいちゃんの言葉が気になった。
次の日、天気は晴れでとても暑い。ムシムシとした空気が、三人を襲う。
「イライラするな。」
「だな。」
予定よりも三人は、早く着いた。時計台の下で、待ち合わせをした三人は、すぐに集まった。
「よし、行くぞ。」
せいまは、昨日のような元気はなかったが、やる気はあった。
蓮斗は無言のままだった。
源気は、考え事をしていた。
「漠って、やっぱりあの小説の主人公だよね。
で、おじいちゃんが言ってた嫌な物って、もしかしたらあの転校生なのかもしれない。」
源気は、みんなにそう言った。
「多分…な。」
蓮斗は、一言しか言わなかった。
「なんで、奏斗を連れ去ったんだ?彼女は、何をしたいんだろう。」
せいまは、考えていた。
「小説を見ないことには…な」
蓮斗の、“な”が印象的だった。
「てか、なんて言って学校休んだの?」
せいまは、気分を変えるべくそんな質問をした。
「僕は、体調不良で。」
「俺は、先生の顔が嫌いだって。」
蓮斗は、せいまの想いを感じて、ふざけた。
「怒られるぞ。笑」
気持ちがガラッと代わり、雰囲気も明るくなった。暑さでバテた身体も、スゥと通った湿った風で多少楽になった。
そんなこんなして、目的地の家へと着いた。
「すみません。あの、昔の小説があるって聞いたんですけど。」
家の主人である人に、そう伝えた。
「ああ、あの小説だね。よく知ってるね。誰に教えてもらったのかな。」
と言って、家の中へと通してくれた。
だが、源気の“本人です”という答えに、納得はいかない様子だった。
「これだよ。」
と言って、桐の箱から出てきたのは、赤いペンで書かれた、原稿用紙。青い正方形の中に、多少読めない文字が書いてある。
せいまは隅々まで読んだ。確かに主人公は、小山 漠だ。
意外に、しっかりしている小説だった。
「これ見てよ。」
せいまは、二人の目線をある文に移させた。
「あいつは、雪渓山に居たのか。」
小説の中では、彼女。山に住んでいて、登山客に人気の店の主人として、生活を送っている。
しかし雪渓山は、ここから近くの山だ。実際にある。
「その山が関係あるのか。」
「この小説はなぜここに?」
源気は、聞いた。
「俺のじいさんが戦時中、ある若い女の人に、託されたと言っていたな。
彼女は、“かなとさんに。この作者に、渡してください”とだけ、言い残して、亡くなったらしい。渡すことは出来なかったが。」
男性は、そのように三人に伝えた。
小説のうらには、“会いたい”と。真っ黒い墨で、大きく、乱暴に書かれていた。
その文字に、不安を覚えた。すると三人の頭の中で、
“助けて”
と、どこからか奏斗のような声が響いてきた。
背筋がゾクゾクなるような、凍りついた声だった。
ここから大変だった。
急いでその家を飛び出し、蓮斗の家へと駆け込んだ。どうしても、早く雪渓山に行かなければ。
「お母さん、車出して。奏斗が、危ないんだ。」
「何いってんの?学校休んで、遊びに行かないの。」
「お母さん、お願いです。本当に危ないんです。」
三人の押しの強さで、ようやく母を説得する事が、出来た。
県境にある、雪渓山。そこの地域は、昔大空襲があった場所。沢山の浮かばれない想いが漂う場所。今でも、心霊スポットとなっている。噂では、あの世とこの世のドアがあると言われているが、正しいか分からない。
「でもかなとさんは、奏斗と同じ名前だよね。そうなると、漠は奏斗を間違って連れ去ったのかも。」
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