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2第目、生活

5章 良さ悪さ

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 本当に、この世界はいい所だ。宿題などない、そして人一人一人優しくて、私を認めてくれる。今のところ、嫌だなと思ったことがないと思う。迷い込んだ羅針を最初から、心配してくれて、ここまで手厚く接してくれた。初めて、人の良い所を感じられたと思った。
 現代人は、自分をより良くしようと、利益を追求しすぎて、自分を守る事しか考えていない。しかも、それで法律や時間、学校や職場など、見えないものに縛られている。心苦しい。
でも、ここは一人一人が互いにより良くしようと、助け合っている。だから、優しく、積極的なんだなと思った。知らない人に少しも怖がらないで、守り抜く人として当たり前な人になりたいと羅針は思った。
「…という世界なんだよね。本当に、あっちの先生、自分を認めてくれない!!」
羅針は、羅針の世界の愚痴をこぼした。本当に、考えるだけで、気分悪くなる!羅針は、気づかないうちに、こちらの世界の方に味方していた。やっと最近になって、この世界の良さというものが分かってきたからだ。もう、ここで暮らしても悪く無いかも。
「うーん!確かに、認めてくれない事に対する羅針の気持ちは分かるね。でも、羅針の世界の事はよく分からないが、何かもっと大事な事があるからだと思うよ。妄想するのはその人にとって大事なことかもしれないけれど、その勉強ってやつは将来にとって、もっと役に立つものだから、注意してくれるんじゃないか?
 その世界の人たちももっと良くしようとしているんだと思うよ。羅針は、悪い事しか言っていないけど、そのおかげで、誰かが幸せになっているかもしれないじゃん?まぁ、より良くしようとして、より苦しいと思う人も出てくるだろうけどね。羅針みたいにね。人それぞれだよ。」
なんか説得力というものがある気がする。羅針も、自分の事しか考えていなかった。ラッシュに、もっと奥深く、先行きのある考えを持つべきだと教えてもらった。
「羅針の世界の事情は、僕には縁のない話だけどね!」
気楽だな、と思った。でも、そういう明るい所が、この世界のいい所なんだけどね。
「さ、早くさっき教えたトイレ行ってきなさい。ゴーゴー!」
だった、だった。ちょうど、ランゲルがいなくてラッシュを見かけて、教えてもらった所だったんだ!
 トイレに走り込む時、ちょっと元の世界が恋しくなった。そのトイレは、あまり変わらないトイレで気持ちが良かった。
 
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