歩きスマホしてたら異世界に迷い込んじゃったけど世界って救う必要ある?

るき

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Chapter1

11 ダンジョン攻略

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 はぁ~……シーツがサラッとしててお布団がフカフカで気持ちいぃ~……でもまぶしい……昨日カーテン閉め忘れたかな……。
 夢見心地で寝返りを打ったら、枕元に足の生えたスマホが落ちているのが目に入った。

「うっお……!」

 驚いてがばりと跳ね起きる。いつもの俺の部屋――じゃない。
 ベッドがあるだけの簡素な部屋。窓の向こうは緑いっぱいの庭。お隣の建物はゴージャスな教会。

 ――ここはトリファンの世界。

 やっぱり夢じゃなかったんだな、と思いながらもう一度スマホに目を落とす。スマホは仰向けになって、鼻提灯をぷうぷういわせて寝ていた。なんなんだこいつは。鼻あんの?
 鼻提灯を指でつついて割ると、暗かった画面がぱっと明るくなった。立ち上がってぐっと伸びのような仕草をして、ぶるぶるっと胴震いをした。……そんな犬みたいな動きをしてもかわいくないからな。

 スマホは俺の方に液晶を向け、画面にぱっと時間を表示させた。9:27。――もう九時過ぎかよ! 寝すぎた!!

 制服を着込んで部屋を出ると、共用スペースにみんな揃っていた。

「おはようございます、ニーナ。よく眠れましたか?」

 リュカが立ち上がって俺を迎える。

「おはようございます! よく眠れ過ぎました!」

 明らかに俺を待ってた様子で申し訳ない。目覚ましセットしとくんだった。っていうかあのスマホにアラームの設定はできるのだろうか。振り向くと、スマホは床の上をてくてく歩いて俺の後を追いかけてきていた。自動追尾機能とかすごいけども。なんなの。

 朝の洗面だのを済ませて、準備してもらっていた朝飯を食って、食後にアルシュが淹れてくれたお茶を飲む。至れり尽くせりでありがたい。

「そういえば、あの台みたいなのってなに?」

 昨日はバタバタしてたからスルーしてたけど、部屋の入り口から見て正面の壁際に、真っ白な布を敷いた小さな台が置かれているのが気になった。上にはラグビーボールぐらいの大きさの、宝石の原石みたいなやつが三つ乗っている。それぞれ色と形が違う。

「あちらはニーナからのご神託をいただく為の祭壇です」

 リュカに明るく答えられて戸惑う。

「……俺からのご神託スか」
「はい。世界に平和をもたらす為、人々に仇なす悪しき者共を退治せよと、ニーナは私たちにご神託をくださいましたね」

 俺そんなこと言ったっけ……っていうか、今まで俺がやってたのはゲームのトリファンだからつまり……?

「あ! そっか、チュートリアルの後でメインクエストを何個か進めてたから……村の近くに住み着いたマシュロマを退治してくれた? あとあの蜘蛛みたいな……なんとかスパイダーっていうモンスターもやっつけた」
「はい」

 なるほど。俺がゲーム画面を操作すると、リュカたちには「神託」という形で俺の指示が伝わるってことか。昨日部屋のインテリアを変えたり、みんなに武器を装備してもらった時みたいな感じで連動してるんだな。

「ちょっとどんな感じになるかやってみたいけど……今はメインクエストを進めてる場合じゃないんだよなぁ……」

 水道橋に行って、帰る方法を探さないといけない。
 ――でもちょっとだけならいっかな? まだ昼前だし。

 いつの間にかテーブルの上に乗ってちょろちょろ歩き回っていたスマホをつつく。すると昨日と同じく光の操作パネルが俺の目の前に現れた。

 操作パネルにはトリファンのアイコンだけが表示されている。もはやスマホっていうかトリファン専用機って感じだな、と思いつつアイコンをタップする。

「あっ、なんか光ってるな……」

 トリファンのホーム画面の右端に三つ、「編成」「メインクエスト」「同盟」のボタンが並んでいる。そのうちの「同盟」ボタンにキラッと光る演出が加えられていた。

 同盟をタップすると、一番目立つ場所に「ダンジョンに挑む」というボタンが追加されていた。残り時間がカウントされている。終了まであと四時間。その下には「ダンジョンの発見者:チョココロニー」と表示されている。

「んん? 俺?」

 ダンジョンを発見? つまり、水道橋がダンジョン化してて、それを俺が発見したってことになってるのか?
 そういえば昨日、神社に隠れてた時に《ダンジョン発見!》っていう通知が来ていた。

「ねえリュカ、俺と最初に出会った場所のことを『ダンジョン』って言ってたよね?」
「はい。ニーナは『すいどうばし』とおっしゃっていましたね」
「――ダンジョンってなに?」

 尋ねてみると、リュカは少しだけ思案顔になってから説明してくれた。

「簡潔にご説明差し上げると、悪しき者共を封印した地下牢、ですね。多くは迷宮のような構造になっており、悪しき者共の力が活性化した時に封印が弱まります」
「それを俺らがぶん殴ってもう一回封印すんの」

 ハオシェンが合いの手を入れるみたいに補足する。

「なるほど、そういうそういう設定なのか……」

 理由は全然わからないけれど、水道橋がトリファン内でダンジョン化してて、それを俺が発見したことになってて……それなら同盟のメンバーも、リリア姐さんも、今水道橋を攻略してるってことなのだろうか。

 そういえば昨日、同盟のチャットに書き込みをしたんだけど、途中でスマホが使えなくなってそれっきりだったな。もしかしたら心配させてるかもしれない。
 またリリア姐さんに話しかけてみようかと思ってチャットを覗いてみたけど、ユーザーレベル200以上のガチ勢が白熱した攻略会議を繰り広げていた。うーん……初心者がうかつに口を挟んだらしばかれる空気……。

 チャットは後回しにして、試しに「ダンジョンに挑む」というボタンをタップしてみる。すると祭壇の前の床に、光で描かれた魔法陣が浮かび上がった。

「わーすげえ、なんかわかんないけどかっこいい!」

 もういかにもって感じの、円形と四角を組み合わせた図形に文字みたいな模様がちりばめられている。めっちゃファンタジーじゃんテンション上がる!

「おっ、出陣すんの?」

 魔法陣の周りではしゃぐ俺の横に、ハオシェンが並ぶ。

「ダンジョン攻略ですね。お任せください」

 リュカとアルシュも続く。

「この上に乗るとダンジョンに行けるの?」
「はい」

 おおお。転送されるのか。めっちゃ楽しそう。
 メインクエストも進めてみたいけど、制限時間もあるみたいだし、ダンジョン攻略に挑んでみよう!

「よーし! じゃあちょっと待ってて40秒で支度するから!」

 朝飯食って散らかしっぱなしだし。皿とか片付けないと。あと案外すんなり帰れるかもしれないから一応俺の荷物も持っていかないとね。つっても俺の荷物って通学に使ってるリュックだけだけど。
 あとスマホ……元の世界に帰ったらこいつも元に戻るだろうか。戻らなかったら……スマホに足が生えた場合、修理保障とか利くのかな……。
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