歩きスマホしてたら異世界に迷い込んじゃったけど世界って救う必要ある?

るき

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Chapter1

13 火事場泥棒ダメ絶対

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 はあ……テンション下がった……コンビニはもういいや……。

 撤収する前に、出入り口の近くにあったプリペイドカードにふと目が留まった。
 元の世界に帰るつもりで水道橋まで戻ってきたけど、もしかしたら帰れない可能性もあるんだよな。そしたらこの世界で暮らすわけでしょ? だったらリアルマネーがあった方が課金できて便利なのでは?

 いやでもまだ帰れないと決まったわけじゃないし、勝手に使うとか普通に泥棒だし……でもちょっと試すだけならいっか! そう、試すだけ!
 犯罪者の心理に近づきつつ、ポケットからスマホを取り出す。プリペイドカードのコードを……入力しようがねえなぁ……トリファンしかアプリ入ってねえから……。

 まごまごしてたらスマホが俺の手からぴょんと飛び降りて、カウンターの上に着地した。どうしたのかと思ったら、レジを見ている。目があんのかって話だけど、画面をレジの方に向けて、じっと見つめている感じがする。

 そういえばプリペイドカードってレジで何かしないと使えないんだっけ……レジを操作すれば使えるようになるって言いたいのか?

 カウンターの内側に回りこんで、レジの押せそうなボタンを片っ端から押してみる。うーん。電気が使えないんだから無理か。そもそも電気が使えてもレジの操作方法がわからない。

「ニーナ、いかがなさいましたか」

 リュカが後ろから俺の手元をひょいと覗き込む。

「うん、ちょっと……これ動かせないかなって思ったんだけど」
「もしよろしければ、私にやらせていただけませんか?」
「ん? じゃあお願いしようかな」

 いくら神の使徒でめたくそ強くてもレジは動かせないでしょ、と思いはしたけど、素直に場所を入れ替わる。別に少し触ってみるぐらい問題ないだろうし、俺の世界の物に興味を持ってもらえて嬉しいような気もするしね。

 そんなことを考えつつ見ていたら、リュカはレジをぐっと掴んで軽々と持ち上げた。

「んんん!? なにしてんの!?!?!?」
「はい、動かしてみたのですが」
「動かして……!? あっ、そういう!? 動かすって移動させるって意味じゃなくてですね!」

 確かに「起動」も「移動」も「動かす」って意味だもんな! 一休さんかよ!

「とりあえず下に置いて!」

 持ち上げた時に固定してた金具みたいなのが弾け飛んでメキャって音がしたんですけど! 本体まで壊したらヤバい! 多分そういう業務用の機械はすごくお高い! 壊したら弁償できない!
 俺が半分パニックになってる様子を見て、リュカも慌ててしまったらしい。リュカは急いでレジを戻したけれど置いた位置が悪く、バランスを失ったレジは傾いてカウンターの外側に落下した。

「あああああああ!!!!」

 メキャどころの話じゃない、メキャガイアーって感じの音がした。
 カウンターから出て落ちたレジを確認すると、いくつかのパーツに分解されて完全に大破していた。釣銭が入っていた場所も衝撃で開いたらしく、現金が散らばっていた。

「ああ……! 申し訳ございません! 私は、なんという取り返しのつかないことを……!」

 惨状を見たリュカが深々と頭を下げた。

「いや……全然……仕方ないよほぉ……俺の言い方が悪かったし……」
「いいえ、ニーナは悪くありません! 全ては私の失態。どうか厳罰を!」

 いやいや厳罰て。そもそも俺が悪事をたくらんで、何も知らないリュカに片棒を担がせようとしたんだから俺の責任なんだよ。やばいよく考えたら極悪人ムーブじゃん。でも「俺が悪い」じゃリュカは納得してくれなさそうなんだよな。

「えええ……じゃあ罰として俺のことを全力で守ってください」

 出会った時からずっと俺を守っててくれてるので今更なんだけど。
 俺の言葉にリュカはようやく顔を上げ、輝かしく微笑んだ。

「おおニーナ、なんと寛大な……! どうかお任せください!」

 俺たちのやり取りを見守っていたアルシュとハオシェンも、リュカが大した罰を受けなかったことにほっとしたような顔をしていた。みんな仲間思いでなにより。

 気を取り直して。
 今度こそコンビニを出て、俺が最初にこの世界に来た場所に行こうと思ったら。俺らがなんやかや言ってる足元で、スマホが床に散らばった現金を吸い込んでいた。

「おおおおお前! なにしてんの!?!?!?」

 紙幣も小銭も、画面の中にするするっと吸引されていく。なにこれどういう仕組み!?

「お前! コラ! 吐け! 吐きなさい!!!!」

 お前はなんでも口に入れちゃう年頃のお子様か!? 俺もさっきチョココロニーを食べてオエッってなったけども!
 スマホを掴みあげて背面を叩いたら、吸収されたお金ではなく光の操作パネルが出てきた。そこには《チャージ完了! ¥381,067》と表示されていた。

「ホアッ!!!!!!!!!!?」

 やばい現金盗んじゃったじゃん!? ダメじゃん! 泥棒! いや俺もさっきまでプリペイドカードを勝手に使おうとしてたな!? そういえばチョココロニーも万引きしちゃったな!? もしかして俺がしてるのはただの火事場泥棒なのでは!?!?!?

「へえ、そのコインみたいなのとおふだみたいなやつを集めてんの? これも同じ物みたいだけど」

 ハオシェンが手にしたのはカウンターの上に置かれた募金箱だった。反応してぴょんと飛び上がったスマホを空中でキャッチしてポケットにねじ込む。

「だめですぅううう! 募金に手をつけるのは余計にダメですぅううううう!!!!」

 お金を盗むのは当然ダメだけど、募金とかお賽銭に手を出すやつは真性のクズじゃん!?

「そうなん? でもダンジョンにある物は拾ったやつのものじゃねえの?」

 ハオシェンに言われてはっとする。
 そうか。ここはゲームの世界で。ゲームの世界だったらダンジョンでお宝をゲットするのは当然なのでは?
 でもここは水道橋だから? いや本当に水道橋なのか?
 うーん?

「……まあいっか!」

 今は特殊な状況なので! あとでちゃんと考えよ!!
 でもやっぱり募金には手をつけたらダメな気がするので、ポケットから飛び出して募金箱に飛びつこうとするスマホをぎむゅっと抑えた。
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