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13.おっちゃん再訪
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「つまり、ユナはその髪色のせいで色々と障害が発生してるんだな?」
「そうね。この髪色さえなければもっと伸び伸びと羊のタトゥーの人探しができるんだけど。
けど、そんなの今さらどうしようもないことだから、仕方ないわよ」
と、ユナは特に顔色一つ変えずに言った。
「ふっふっふ」
と俺は意味ありげに笑って見せる。
「何よ急に笑い出して……気持ち悪いわね」
とユナはドン引きしながら、虫けらでも見るような目で俺を見た。
そこまで引かれるとさすがにちょっと傷つく……。
まあいいや。とにかく俺の考えをユナに話そう。
「じゃあその髪色を変えられるとしたら……?」
「……はぁ? 髪色なんて変えられるわけないじゃない」
ユナは「この虫けらは何を言ってるんだ」とでも言わんばかりの表情だ。
まぁ、ユナの反応も無理はない。俺だって髪色を変える技術や魔法なんて聞いたことが無かった。
しかし俺は、どういうわけか髪色を変えることができる人物をひとり知っている。
そう。
俺の髪色を金色から黒色に変えたあの床屋のおっちゃんだ。
「つい最近まで俺はありふれた金髪だったんだ。けどこの街である人に髪色を黒に変えてもらった」
「……! 確かに黒髪なんて珍しいと思ってはいたけど…………。その話本当なの?」
「ああ、本当だ」
ユナは顎に手を当てて何かを考えこむような仕草を見せた。
「その話が本当なら……、私は大きく前に進めることになるわ」
「……まあ、本当にユナの髪色を変えられるかどうかは、実際にその人に聞いてみないとわからないけどな」
「でも、少しでも可能性があるなら、それに賭けてみたいわ」
というわけで、俺とユナは例の床屋に行ってみることにした。
***
俺とユナは、床屋へ向かって街を歩いている。
その道中、俺はマゼルダ族への差別のひどさを実感していた。
さっきから街の人たちが、ユナに対して嫌悪の目を向けながらあからさまにユナを避けていくのだ。
たまにユナに小石が飛んでくることもあった。
ユナはその小石を見もせず、避けている。
いやユナがさらっとすごい。どうやって見ないで石よけてんだ……。
まあいいや。
ユナの身体は心配ないとして、心配なのは心の方だ。
「なあユナ。フードとかで髪の毛隠した方がいいんじゃないか……?」
「大丈夫よ。差別なんかする薄っぺらいやつらのことなんて一切気にしてないから」
そう言うユナの表情は、強がっているような表情ではなく、本当に周りを気にしていない表情だった。
さすがユナさん……。その堂々とした立ち振る舞いはさながら女王の風格……。
そうこうしているうちに、例の床屋に到着した。
「こんにちは」
そう言って俺は床屋へと入っていく。
ユナも俺に続いて店に入ってきた。
相変わらず、無口そうなおっちゃんが暇そうに椅子に座っている。
「先日は髪を切っていただきありがとうございます。この髪型とても気に入っています」
と俺がおっちゃんに言うがおっちゃんは特になにも返事をしない。
相変わらず無口な人だ。
何を考えてるか全然わからん。
まあいい。
早速本題に入ろう。
「今日はこの子の髪を紫から別の色に変えてほしいんですけど、できます?」
俺がおっちゃんにそう尋ねてみる。
おっちゃんはユナを見ると、特に顔色を変えず、短く返事をした。
「あいよ」
そう言うと、おっちゃんはユナを鏡の前の席まで案内し始める。
おお……!
どうやら髪色を変えてくれるようだ。
おっちゃんがマゼルダ族に対して差別的思想をもってたらどうしようかと思ったが、どうやら杞憂だったようだ。
さすがおっちゃん。
おっちゃんの後ろ姿がやたらかっこよく見えた。
おっちゃんは、椅子に座ったユナの髪に何やら白い泡を塗り始める。
突然怪しげなものを頭に塗られたせいか、ユナは動揺して身をびくつかせている。
「ひゃっ! ちょっと何よこれ、大丈夫なの?」
ユナがおっかなびっくりしながら、おっちゃんに文句を言っているが、まあ大丈夫だろう。
なんか初めてお風呂に入れられた猫みたいで可愛い。
俺はユナの可愛らしい姿を見つつ、しばらく待つことにした。
***
おっちゃんが、シャワーでユナの髪の泡を流し、タオルで水気を拭いていく。
「終わったぞ」
おっちゃんがそう呟く。
「……!?」
ユナは鏡を見て、目を丸くした。
「本当に色が変わってる…………」
ユナの髪色は綺麗な白色になっていた。
すごい。
もともと美人だったユナがさらにとんでもない美人になっている。
紫色の瞳に白い髪色がよくマッチしており、なんだか幻想的な雰囲気すら感じる。
ユナの顔がいいというのもあるが、透明感のある白い髪がそれをより引き立てていた。
まじで綺麗だ……。
おっちゃんは俺の髪を切った時も良く似合う色にしてくれたが、今回も最もユナに合う色に髪色を変えてくれた。
このおっちゃん何者だよ。床屋としての才能も素晴らしすぎる……。
「一体どうやって髪色を変えたのよ……!?」
ユナは自分の髪色の変化にとても驚いているようだ。
「あんたに一番似合う色だ」
おっちゃんはいつしか俺に言った言葉と似たような言葉を口にした。
ユナはじっと自分の髪の毛を見つめている。
そして。
ユナはおっちゃんの方を向き、深く頭を下げた。
「ありがとうございます。あなたは恩人です。
マゼルダ族の末裔にとってこの髪色は本当に忌まわしき呪縛でした。しかしあなたのおかげでその呪縛から解放されました」
とユナが丁寧な口調でそう言った。
おお……、こんなに礼儀正しくしてるユナを初めて見た……。
まあ、ユナにしてみればずっと苦しめられてきた髪色を変えてくれたんだもんな。おっちゃんのおかげで人生変わったみたいなもんだ。
そりゃあ、感謝の念も尽きないだろう。
おっちゃんは特に返事をしない。
相変わらずの無口具合だ。
「髪は女性の命だ。呪縛なんかじゃねえ」
おっちゃんは呟くようにそう言った。
かっけえ……!?
なんだよそのセリフかっこいいじゃねえか……。
ユナもその言葉を聞いて、なんか泣きそうになってるし。
一体なんなんだよこのおっちゃんは。
当たり前のように髪の色を変えて見せるし、無口だし、かっこいいし……。
謎多きおっちゃんだ……。
まあ、とにかく。
無口なおっちゃんのおかげでユナの髪色は白色になった。
これで差別を気にすることなくギルド活動ができるはずだ。
「そうね。この髪色さえなければもっと伸び伸びと羊のタトゥーの人探しができるんだけど。
けど、そんなの今さらどうしようもないことだから、仕方ないわよ」
と、ユナは特に顔色一つ変えずに言った。
「ふっふっふ」
と俺は意味ありげに笑って見せる。
「何よ急に笑い出して……気持ち悪いわね」
とユナはドン引きしながら、虫けらでも見るような目で俺を見た。
そこまで引かれるとさすがにちょっと傷つく……。
まあいいや。とにかく俺の考えをユナに話そう。
「じゃあその髪色を変えられるとしたら……?」
「……はぁ? 髪色なんて変えられるわけないじゃない」
ユナは「この虫けらは何を言ってるんだ」とでも言わんばかりの表情だ。
まぁ、ユナの反応も無理はない。俺だって髪色を変える技術や魔法なんて聞いたことが無かった。
しかし俺は、どういうわけか髪色を変えることができる人物をひとり知っている。
そう。
俺の髪色を金色から黒色に変えたあの床屋のおっちゃんだ。
「つい最近まで俺はありふれた金髪だったんだ。けどこの街である人に髪色を黒に変えてもらった」
「……! 確かに黒髪なんて珍しいと思ってはいたけど…………。その話本当なの?」
「ああ、本当だ」
ユナは顎に手を当てて何かを考えこむような仕草を見せた。
「その話が本当なら……、私は大きく前に進めることになるわ」
「……まあ、本当にユナの髪色を変えられるかどうかは、実際にその人に聞いてみないとわからないけどな」
「でも、少しでも可能性があるなら、それに賭けてみたいわ」
というわけで、俺とユナは例の床屋に行ってみることにした。
***
俺とユナは、床屋へ向かって街を歩いている。
その道中、俺はマゼルダ族への差別のひどさを実感していた。
さっきから街の人たちが、ユナに対して嫌悪の目を向けながらあからさまにユナを避けていくのだ。
たまにユナに小石が飛んでくることもあった。
ユナはその小石を見もせず、避けている。
いやユナがさらっとすごい。どうやって見ないで石よけてんだ……。
まあいいや。
ユナの身体は心配ないとして、心配なのは心の方だ。
「なあユナ。フードとかで髪の毛隠した方がいいんじゃないか……?」
「大丈夫よ。差別なんかする薄っぺらいやつらのことなんて一切気にしてないから」
そう言うユナの表情は、強がっているような表情ではなく、本当に周りを気にしていない表情だった。
さすがユナさん……。その堂々とした立ち振る舞いはさながら女王の風格……。
そうこうしているうちに、例の床屋に到着した。
「こんにちは」
そう言って俺は床屋へと入っていく。
ユナも俺に続いて店に入ってきた。
相変わらず、無口そうなおっちゃんが暇そうに椅子に座っている。
「先日は髪を切っていただきありがとうございます。この髪型とても気に入っています」
と俺がおっちゃんに言うがおっちゃんは特になにも返事をしない。
相変わらず無口な人だ。
何を考えてるか全然わからん。
まあいい。
早速本題に入ろう。
「今日はこの子の髪を紫から別の色に変えてほしいんですけど、できます?」
俺がおっちゃんにそう尋ねてみる。
おっちゃんはユナを見ると、特に顔色を変えず、短く返事をした。
「あいよ」
そう言うと、おっちゃんはユナを鏡の前の席まで案内し始める。
おお……!
どうやら髪色を変えてくれるようだ。
おっちゃんがマゼルダ族に対して差別的思想をもってたらどうしようかと思ったが、どうやら杞憂だったようだ。
さすがおっちゃん。
おっちゃんの後ろ姿がやたらかっこよく見えた。
おっちゃんは、椅子に座ったユナの髪に何やら白い泡を塗り始める。
突然怪しげなものを頭に塗られたせいか、ユナは動揺して身をびくつかせている。
「ひゃっ! ちょっと何よこれ、大丈夫なの?」
ユナがおっかなびっくりしながら、おっちゃんに文句を言っているが、まあ大丈夫だろう。
なんか初めてお風呂に入れられた猫みたいで可愛い。
俺はユナの可愛らしい姿を見つつ、しばらく待つことにした。
***
おっちゃんが、シャワーでユナの髪の泡を流し、タオルで水気を拭いていく。
「終わったぞ」
おっちゃんがそう呟く。
「……!?」
ユナは鏡を見て、目を丸くした。
「本当に色が変わってる…………」
ユナの髪色は綺麗な白色になっていた。
すごい。
もともと美人だったユナがさらにとんでもない美人になっている。
紫色の瞳に白い髪色がよくマッチしており、なんだか幻想的な雰囲気すら感じる。
ユナの顔がいいというのもあるが、透明感のある白い髪がそれをより引き立てていた。
まじで綺麗だ……。
おっちゃんは俺の髪を切った時も良く似合う色にしてくれたが、今回も最もユナに合う色に髪色を変えてくれた。
このおっちゃん何者だよ。床屋としての才能も素晴らしすぎる……。
「一体どうやって髪色を変えたのよ……!?」
ユナは自分の髪色の変化にとても驚いているようだ。
「あんたに一番似合う色だ」
おっちゃんはいつしか俺に言った言葉と似たような言葉を口にした。
ユナはじっと自分の髪の毛を見つめている。
そして。
ユナはおっちゃんの方を向き、深く頭を下げた。
「ありがとうございます。あなたは恩人です。
マゼルダ族の末裔にとってこの髪色は本当に忌まわしき呪縛でした。しかしあなたのおかげでその呪縛から解放されました」
とユナが丁寧な口調でそう言った。
おお……、こんなに礼儀正しくしてるユナを初めて見た……。
まあ、ユナにしてみればずっと苦しめられてきた髪色を変えてくれたんだもんな。おっちゃんのおかげで人生変わったみたいなもんだ。
そりゃあ、感謝の念も尽きないだろう。
おっちゃんは特に返事をしない。
相変わらずの無口具合だ。
「髪は女性の命だ。呪縛なんかじゃねえ」
おっちゃんは呟くようにそう言った。
かっけえ……!?
なんだよそのセリフかっこいいじゃねえか……。
ユナもその言葉を聞いて、なんか泣きそうになってるし。
一体なんなんだよこのおっちゃんは。
当たり前のように髪の色を変えて見せるし、無口だし、かっこいいし……。
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