17 / 24
14.新たなギルド生活
しおりを挟む「私、思うんだけど羊のタトゥーの人……長いから羊男って呼ぶわね。羊男を探すのってかなり途方もないことだと思うのよ」
「ん、そうか?」
俺たちは、街のレストランでパスタを食べながら話をしていた。
やっぱ人の作った料理は美味しいなぁ。
ここ数年は山菜や木の実しか食べてなかったから、余計に美味しく感じる。
ユナは白い髪を後ろにくくってパスタを食べていた。
ポニーテールのユナはいつもよりも活発な印象を与える。
一言で言うと超可愛い。
「だってこの世界には何億人もの人間がいるのよ? その中で一人の人間を見つけるなんて無理よ」
「じゃあどうするってんだよ?」
そう言うぐらいだからユナにも何か考えがあるのだろう。
俺はパスタを頬張りながらユナの言葉を待った。
「私たちがやつを探すんじゃなく、やつが私たちの方に来るようにすればいいのよ」
「……うん?」
「つまり、私たちのギルドを有名にすればいいのよ。私たちが有名になれば必ず奴は接触してくると思うの。やつは……大きな権力とか有名なギルドとかに取り入ってくるから」
「……そうなのか?俺は羊男のことが全くわからんから何とも言えないけど」
「羊男は大きなギルドなんかを巻き込んで何かをやろうと企んでいる。だから私たちが有名なギルドになれば必ずやつは現れる」
ユナはそう言って、パスタを上品に口に運んだ。
そしてパスタを飲み込み終えると、さらに言葉を紡ぐ。
「今ならマゼルダ族の差別を気にせず、普通にギルド活動をして名前を上げていけるしね」
「そっか。つまりこれからは普通に魔物を倒したりして、とにかく俺たちギルドの名を売っていけばいいってわけだな!」
「まあ、そういうこと」
いいじゃないか。
それこそ俺が求めていたギルド生活だ!
仲間と一緒に魔物と戦って、苦難を乗り越え、どんどんギルドの名を上げていく。
しかも俺にはユナという可愛くて心強い仲間がいる。
そんなの絶対楽しいに決まってる。
俺は、これからのギルド生活に期待を膨らませてついついにやけてしまう。
そして俺はハッと気づいた。
そういえば気になってたことがあるんだった。
「俺たちのギルドってまだ名前なくね?」
と俺はユナに言った。
ずっと気になっていたのだ。
やはりギルドにはかっこいい名前が必須だからな。
「そうね。差別のせいでギルド活動はほぼ諦めてたからギルドに名前はつけてなかったわ」
「じゃあ、今名前つけようぜ俺たちのギルドに!」
「……実はひとつ名前を考えてあるんだけど」
ユナは少し照れながらそう言った。
「おっ、どんな名前?」
「えっとね…………、『夜の騎士団』っていう名前なんだけど。
私はいずれこのギルドを世界三大ギルドの雪、月、花の騎士団に並ぶくらい有名なギルドにするつもりよ。だから雪月花みたいに風物から名前を取って『夜の騎士団』。私の黒魔法やあんたの黒髪も『夜』に関連してるしね」
おお……、なるほど。
『夜の騎士団』か。
かっこいい……。
うん。
気に入った。
「いい! それにしよう! 『夜の騎士団』!」
こうして俺とユナのギルドの名前が決まった。
***
それから数日後。
俺とユナは、ギルド生活の準備を着々と進めていた。
まず街中の空き家を借りてそこを新たなギルドの拠点とすることにした。
あんな町はずれの建物のままじゃ誰も依頼に来てくれないしな。
空き家を借りるお金はユナが出してくれた。
ユナは、これまで強い魔物を何体も倒してその素材を売ってきたので、お金は割と貯まっていると言っていた。
けどもうこれで貯金はなくなるので、あとはギルドで稼がないといけないとのことだ。
申し訳ねえ……。
このギルドで稼いでお金いつかは必ず返そう。
俺たちが借りた建物は、大きくはないが、しっかりとした造りで見ていて安心できるような気がする建物だ。
そんなこんなで俺は今、大きな木の板にペンキで文字を書いているところだった。
新しいギルドの看板を作っているのだ。
「…………これでよしと。できたぞユナ!」
看板には黒い文字で大きく『夜の騎士団』と書いてある。
手作り感は否めないが、しかし我ながら綺麗に書けたと思う。
俺は出来上がった看板をユナに見せた。
室内の内装をレイアウトしている最中だったユナは、俺の作った看板をみて、
「いい感じじゃない! さっそく建物の入り口に掲げましょ」
と俺の作った看板を褒めてくれた。
俺は、目につきやすい建物の高いところに看板を釘でうちつけた。
「これでだいぶギルドっぽくなったわね」
看板を眺めながら、ユナはどこか満足げにそう言った。
「ああ。今はまだ手作りの看板だけど、いつかは業者にもっとでかい看板を作ってもらえるくらいのギルドにしようぜ」
「ふふ、そうね」
心なしかユナもいつもより機嫌がいいように見える。
やはり新たなギルド生活にワクワクしているのだろう。
俺も楽しみで仕方ない。
さて、あとはギルドの内装をレイアウトするユナの手伝いをするか。
こうして俺たちのギルド生活は始まったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
外れスキル【畑耕し】で辺境追放された俺、チート能力だったと判明し、スローライフを送っていたら、いつの間にか最強国家の食糧事情を掌握していた件
☆ほしい
ファンタジー
勇者パーティーで「役立たず」と蔑まれ、役立たずスキル【畑耕し】と共に辺境の地へ追放された農夫のアルス。
しかし、そのスキルは一度種をまけば無限に作物が収穫でき、しかも極上の品質になるという規格外のチート能力だった!
辺境でひっそりと自給自足のスローライフを始めたアルスだったが、彼の作る作物はあまりにも美味しく、栄養価も高いため、あっという間に噂が広まってしまう。
飢饉に苦しむ隣国、貴重な薬草を求める冒険者、そしてアルスを追放した勇者パーティーまでもが、彼の元を訪れるように。
「もう誰にも迷惑はかけない」と静かに暮らしたいアルスだったが、彼の作る作物は国家間のバランスをも揺るがし始め、いつしか世界情勢の中心に…!?
元・役立たず農夫の、無自覚な成り上がり譚、開幕!
あなたはダンジョン出禁ですからッ! と言われた最強冒険者 おこちゃまに戻ってシェルパから出直します
サカナタシト
ファンタジー
ダンジョン専門に、魔物を狩って生計を立てる古参のソロ冒険者ジーン。本人はロートルの二流の冒険者だと思っているが、実はダンジョン最強と評価される凄腕だ。だがジーンはある日、同業の若手冒険者から妬まれ、その恋人のギルド受付嬢から嫌がらせを受けダンジョンを出入り禁止にされてしまう。路頭に迷うジーンだったが、そこに現れた魔女に「1年間、別人の姿に変身する薬」をもらう。だが、実際には「1歳の姿に変身する薬」だった。子供の姿になったジーンは仕方なくシェルパとなってダンジョンに潜り込むのだが、そんな時ダンジョンい異変が起こり始めた。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!
ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。
ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!?
「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」
理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。
これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる