4 / 5
壱 水元公園の姉妹プレイ
わたしの部屋と、ID
しおりを挟む
靴を脱ぎ廊下を歩く。
ドアを開け、リビングに入る。既に覚悟はできていたので、大きなおどろきはなかった。社会人2年目はこうだったね、という家具の配置とカーテンの色に、わたしは懐かしさを覚える。
机の上にあるのは、記憶にある通りのオンボロちゃん。研究室への配属が始まった大学2年の秋に、安いけどおすすめと先輩に言われて買ったマウサーのノートPC。何にせよ、このPCで、今いるこの世界のことを知ることができるはず。
卒論を書いた時にお世話になったPCを開き、恐る恐るレジュームボタンを押すと、懐かしのちょっとポンコツなネズミのアイコンが表示される。
数秒して、HONOKANというIDが画面に表示された。かつてのように指紋認証センサーにスッと指を通す。認証が終わり、PCの画面が表示される。
ブラウザを表示させ、躊躇しつつも、右端のお気に入りリンクをクリックする。三井ハイケミカル株式会社のトップページが表示された。24歳の時までの、わたしの勤務先の会社名だ。
わたしは通勤バッグを開き黒のIDカードを取り出した。
登録済の左手の中指を黒のカードの左端に触れさせる。IDカードには、株式会社四葉蛋白質工業という表記と会社ロゴ、そして、凪沙野穂香と、わたしの名が今朝までと変わらずに浮かび上がる。
わたしが新卒で就職したのは、物産の子会社であった三井ハイケミカル株式会社。けれども、わたしが24歳の時、物産は四葉グループにハイケミカルを売却した。今でも物産は少数株主であり、四葉グループは、蛋白質工業の製品の海外販売を物産に任せているのだけれども。
会社のPR担当をしているわたしは、物産の名刺も持っているので、今も三井系の企業に勤めている気分も少しある。けれども、三井ハイケミカル株式会社のウェブアドレスは、株式会社四葉蛋白質工業のウェブサイトへの単なるリダイレクトとなっていたはず。それが、三井ハイケミカル株式会社のサイトが健在であった。新着リストに社名変更の告知が表示されていることもない。
わたしは、三井ハイケミカルのページを閉じて、ニュースサイトへと画面を遷移させた。見ると、今日は3月2日らしい・・・外が割と暖かったので3月の初旬とは思っていなかったな。
つまりは、明日がわたしの誕生日。つい先月に31歳の誕生日を迎えたばかりだと言うのに。
取り出したままのIDカードに再び触れる。変わらず、四葉蛋白質工業の表記が浮かんでくる。このIDカードで、三井ハイケミカル株式会社に出勤することはできない。
IDカードを通勤バックに戻し、代わりに先程外したブラを取り出した。形を整えると、ブラの膨らみに確認するように手を添わせつつ、わたしは目を瞑った。
ドアを開け、リビングに入る。既に覚悟はできていたので、大きなおどろきはなかった。社会人2年目はこうだったね、という家具の配置とカーテンの色に、わたしは懐かしさを覚える。
机の上にあるのは、記憶にある通りのオンボロちゃん。研究室への配属が始まった大学2年の秋に、安いけどおすすめと先輩に言われて買ったマウサーのノートPC。何にせよ、このPCで、今いるこの世界のことを知ることができるはず。
卒論を書いた時にお世話になったPCを開き、恐る恐るレジュームボタンを押すと、懐かしのちょっとポンコツなネズミのアイコンが表示される。
数秒して、HONOKANというIDが画面に表示された。かつてのように指紋認証センサーにスッと指を通す。認証が終わり、PCの画面が表示される。
ブラウザを表示させ、躊躇しつつも、右端のお気に入りリンクをクリックする。三井ハイケミカル株式会社のトップページが表示された。24歳の時までの、わたしの勤務先の会社名だ。
わたしは通勤バッグを開き黒のIDカードを取り出した。
登録済の左手の中指を黒のカードの左端に触れさせる。IDカードには、株式会社四葉蛋白質工業という表記と会社ロゴ、そして、凪沙野穂香と、わたしの名が今朝までと変わらずに浮かび上がる。
わたしが新卒で就職したのは、物産の子会社であった三井ハイケミカル株式会社。けれども、わたしが24歳の時、物産は四葉グループにハイケミカルを売却した。今でも物産は少数株主であり、四葉グループは、蛋白質工業の製品の海外販売を物産に任せているのだけれども。
会社のPR担当をしているわたしは、物産の名刺も持っているので、今も三井系の企業に勤めている気分も少しある。けれども、三井ハイケミカル株式会社のウェブアドレスは、株式会社四葉蛋白質工業のウェブサイトへの単なるリダイレクトとなっていたはず。それが、三井ハイケミカル株式会社のサイトが健在であった。新着リストに社名変更の告知が表示されていることもない。
わたしは、三井ハイケミカルのページを閉じて、ニュースサイトへと画面を遷移させた。見ると、今日は3月2日らしい・・・外が割と暖かったので3月の初旬とは思っていなかったな。
つまりは、明日がわたしの誕生日。つい先月に31歳の誕生日を迎えたばかりだと言うのに。
取り出したままのIDカードに再び触れる。変わらず、四葉蛋白質工業の表記が浮かんでくる。このIDカードで、三井ハイケミカル株式会社に出勤することはできない。
IDカードを通勤バックに戻し、代わりに先程外したブラを取り出した。形を整えると、ブラの膨らみに確認するように手を添わせつつ、わたしは目を瞑った。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた
今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。
レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。
不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。
レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。
それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し……
※短め
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる