セカンド・ガイア

xyre(サイル)

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序章 起きてはじまる

スラム街の朝

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 どんなに寝ていても朝は来る。
たとえ真っ暗な夜でも、寂しい夜であっても、ずっと前、遠い昔から等しく朝はくる。
未来もきっと同じく朝は来るのだろう。

 夜が明けた。サヨナキドリがガラクタが落ちている街に朝を知らせる。
街に人はいない。まだ淋しく静けさを保っている。日が昇るにつれて街は息をする。
 
 日が昇ると共に街は灯りが消える。かわりに街に生気がみなぎっている。それでも街は汚れていた。
風が吹けば、砂ぼこりが舞う。しかも生臭い匂いを届けてくる。
ここの住人から言わせてみれば、日常茶飯事なのだろう。

 午前9時を過ぎたころだろうか、このスラム街には似つかわしくない美少女がスラム街の中央部にある大市場に
向かって足を早めていた。

その美少女は髪が非常に美しかった。艶のある薄紫色の髪で、一目見れば忘れられないくらい印象に残る。
顔も整っていてどこか幼く見える。双眸は原石を思わせるような魅惑的な紫色である。
こうして見ると、この少女がどこかミステリアスな子供に見えてしまうが、実際は元気で明るい聡明な子なのである。むしろ無鉄砲な部分がある元気すぎる少女なのだ。そういったギャップがあるのでスラム街の人々から気に入られている。彼女が来ると皆まで元気になる。

「おはよう!エンナちゃん!」
と八百屋の店長が少女、
 『エンナ・ジーク』に声をかけた
「あ、おはようございます八百屋の店長!」
とエンナは挨拶を返した。
「朝からいそがしそうだね?彼氏のところに行くのかな?」
と八百屋の店長がからかってきた。
「!そんなんじゃないよ店長!確かにあいつのとこに行くんだけど!」
とエンナは少し頬を膨らませた。怒ってはいたがその動作が可愛らしく思える。
「ごめんねからかっちゃって。お詫びにリンゴあげるから許してくれよぉ。」
ほいっと言って商品の中からきれいなリンゴをとってエンナに投げた。
「おっとっと、リンゴありがとう店長!」
とエンナはお辞儀で頭を軽く下げた。
「いいよいいよからかった僕が悪いから。あげた代わりと言っちゃなんだけど、今日の特売セールがリンゴだからリンゴの宣伝してくれないかな?彼のとこに行くなら、宣伝広場通るでしょ?」
と八百屋の店長は見透かしたようにたずねる。
「うん行くよ。あれ?私の行動ってわかりやすいかな?まぁいいやみんなにススメるね!それじゃ行くね」
とエンナは頼みを承諾して走り出した。
「あ、ちょっと待って!彼の分のリンゴ渡すよ!ほら!」
とリンゴが放物線を描いてエンナのほうへ向かった。
パシっとエンナはリンゴをキャッチした。
「ありがとう店長ー!」
と元気にお礼をした。
「どういたしまして!あ、そういえば今日珍しいチラシあるってみんな言ってたよぉ!
 って走って行っちゃった......。今日も張り切りますかっ」
と店長は走っているエンナを見送った。

風が吹いた。少し温かみのある風に感じた。
今日は何だかいつもとは違う日になりそうだ。
そんな日でも変わらないのは、風が吹いた後にくる少しの生臭い匂いだけ。


2

エンナの住むスラム街は、大陸の中でも最大の規模である貧民街である。
場所は、ゼイファ帝国とジュミンデルド自由民主国の国境の間に位置する。
国境の狭間に位置し、その国から逃れる者や凶悪な罪人たちが流れ着く場所としても知られている。
 
(ガレスト地方と呼ばれているが、世間一般では【国なしの国】や【大廃街】などと言われている。)

軽い犯罪は日常茶飯事ではあるが、食生活に関しては珍味が美味い名所でもある

他にはこの街が存在する大きな理由として、国境線の間に位置することから、国と国の渡橋として貴重な場所でもある。

国を渡るには特別な許可証(パスポート)もしくは、大金が必要である。
このガレスト地方の人にとっては、とても払えるような収入が基本的にない。そのためガレスト地方から国を出る人は限りなく少ないのである。

ガレスト地方は主に5つの地区に分かれている。とくにこうと言った名称が無いが、
ここに住んでいる人々は{北区・東区・中央区・南区・西区}と区別することが多い。
 中央区は他の区とは違い、活気に溢れていて経済的な面でも安定している。地域内では最大規模の大市場の存在があり、他にも『団』と呼ばれる集団が集まっている。そういったことでは自然に人が集まりやすい。また、中央区に住んでいる者は裕福な生活を送りやすい。
エンナはそんな中央区出身である。




エンナは東区に住んでいる昔からの友人の家に向かっていた。幼い頃からの知り合いということもあり、数ある友人の中でも特に仲が良い。いわゆる大親友といえる友達である。異性同士であるが、似ているところがありよく一緒にいることが多い。そいうことで知人や街の人達におしどり夫婦やぞっこんの二人とからかわれることがある。


 中央区の宣伝広場を通ると人々が何だかいつもより集まっていた。
 宣伝広場は、名前の通り多くの宣伝や広告がある広場である。主に仕事の求人募集や店舗の特売のチラシなどを閲覧できる。
そんな広場だが、いつもより人が多い。エンナは何の広告があるのか気になり、集まっている方へと行ってみた。

「おい、そのチラシよこせ!」
「なんだこの内容⁉すごい条件だ‼」
あちらこちらから驚愕の声が聞こえる。
そう言われると余計に気になる。
エンナは人をかき分けながらチラシがあるほうに向かった。
「すいませーん、通してください!アタシもチラシ欲しいです!ください!」
と大声で言った。人の波に揉まれながらチラシが配られている場所にたどり着いた。
「ハァ、ハァ……。あの、チラシください……。ハァ、ハァ……。」
と疲れながらチラシを配っている係員に言った。
「どうぞ。こちら求人募集のチラシになります。」
と丁寧な口調で係員は紙を渡した。係員はここらでは見かけないきっちりとした服装をしていた。
大きな会社か団の人なのかな?とエンナは思った。もらったチラシに目を向けた。
「どれどれ……。⁉」
エンナは驚いて声が出なかった。
 チラシには、【ゼイファ帝国直属団 ロギア団】と書かれていた。つまり、このチラシは帝国直属の団からの求人募集の手紙なのである。前代未聞の出来事だ。
 誰もこんなでかいだけのスラム街に大きすぎるチャンスが来るとはいもっていなかった。このすごいチラシに人が集まるわけである。

「これ、あいつに伝えなくちゃ!ふふ、あいつどんな顔するんだろう」
とエンナは急いで東区の方へ向かった。
八百屋の店長から頼まれたことを忘れてしまうほど、チラシの求人募集の件に頭の中が夢中になっていた。
「あれ?なんか忘れてるような気がする。まぁいいやそんなことより急がなきゃ!」
とエンナは走っていった。

これから起こることに心が躍った。いつもより足どりが軽やかなだった。

少女から鼻歌が聞こえた。そのメロディーは明るく、美しい音であった。
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