ありがとう貴方。カロのその後

瑠渡

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「あら、今日はとても気持ちの良い風が入ってくるわね」

カロが窓を開けていってくれてたのね

「愛しの奥様、目が覚めたのかい?どう、調子は?」

「ありがとう、貴方。今日の目覚めは最高よ。いつもありがとう」


「そう思うなら、ちゃんと食べて欲しいな。今日は、リナの好きなスープもあるよ。」

「嬉しいわ、頂くわ。でも、少しよ、苦しくなったら嫌だもの」


「ねぇ、私達の想い出、話しませんこと?」


私とカロが知り合ったのは、貴族学園に入学した時ね。私はとても緊張してたの。
それなのに貴方ったら、在学生代表挨拶の素晴らしいことったら。皆の、注目だったわね、それに、その容姿でしょ?もう見惚れてたわよね。
もちろん私もよ。フフッ。
カロは、あっ、あの時挨拶してる時、私は目が合ったような気がしたの。まさかね、あんなに大勢だから違うだろうけどね」

「いや、目があったんだよ。
遠くからでも、あんな大勢でも、リナがわかったのさ。」

「そうなの?ありがとう貴方。
それでね、貴方と初めて話したのは?何だったかしら?
思い出したわ!廊下で、私が迷っていた時よね?図書館を探してた時、
貴方「邪魔」って言ったのよ!!
顔見たら睨んでるし、とても怖かったわ。
でも、あの在校生挨拶してた方よね?こんな人なの!って、ガッカリしたわ。
「ごめんよ。」

私は図書館へ通ったわ。そしたら、いつも貴方に会うじゃない!怖かったわ。また「邪魔」っていわれるのかなぁ?って。
貴方ったら、いつも私の前に座って何も言わないの。毎日私も図書館へ行くけど、貴方まで(笑)
どのくらい経ってからだっけ?
「何を読んでる?」って話しかけられたのは?
私ね、本当はいつも盗み見してたのよ。カッコいいなぁって。
やっと話しかけてくれたって、嬉しかったわ。
それからよね?いつもお互いを意識しながら座って本を読んで。




アンナさんには…………悪いことをしてしまったわ。
「君は悪くないよ。俺が悪かったんだ」
アンナさんから、貴方を奪ってしまった。だから、バチが当たったのね。


アンナさんは、カロの婚約者だった。
小さい時からの取り決めで、政略だった。でも、アンナさんはカロを好きだった。
私達はお互いを意識しすぎていたから、彼女の苦しみをわかってやれず、カロの婚約破棄で終わらせてしまった。
私達の幸せは、彼女の苦しみの上にあるんだと、その時から意識しながら生きてきた。





………………………………………………………

リナ視点


今、私は、病気に犯されている。
もう、きっと長くない。
なんだか、急にガックリしたように、身体が枯渇している。
なぜだかろう?不明だ。

息子は自立したし、もう大丈夫!とわかるけど、カロは?
私が逝ってしまったら、ひとりぼっち。
カロにナイショでアンナさんに連絡した。彼女、今も独身でいる。
それは、アンナさんが、カロを今でも愛しているから。

私は十分、カロに尽くしてもらった。
だから、返そうと思う。


ある日、身体の調子が良くて、「今日は歩けるわ!」って誇らしげにカロにナイショで執務室まで行ったら…………話し声が聞こえたの。それも女の人。そぉーっ覗いた、アンナさんでビックリしたわ。
いつから?まさか?ずっと会ってたの?
離れられなかったのかもしれないわ。

カロの話し声が聞こえてきたの。
「アンナ、愛してるよ」って。
フッ、ビックリだったわよ。
私が動けないと思って、邸まで来てたみたい。カロと執務室逢瀬ってやつよね。


いよいよかな?って思った時、私からアンナさんに連絡したの。
もう少しで私は死ぬわ。
だから、カロをお願いって。

息子にも連絡してあったのよ。
ナイショでね。

私が連絡したら、アンナさんが直ぐに駆けつけてくれたわよね?
カロはアンナさんが来たから相当驚いてたけどね。
私の部屋からカロとアンナさんが出て行ったから、息子がそぉーっとついていったの。
執務室で抱き合って「後少しだ。アンナ」って、言ってたらしいわ。
ほんとっ、裏切りだわね。

いや、最初から私を狙ってたのかしら?
不思議で調べたのよ。カロのこと。
そしたら、わかったことがあった。

私の両親は遠縁から小さな男の子の両親になるよう、決められた。
子供のいない両親は、それは可愛がった。
でも、2年経った時、私が産まれた。
両親は急に男の子を可愛がれなくて、私だけを可愛がった。
そして両親は、男の子を遠縁に戻した。
それから、カロがどうなったか?
足取りがわからなくなっていたが、たらい回しにされていたことがわかった。
カロは、ほんとはダミアンと言う。
最後の養父、養母の家で改名されたらしい。
両親はもう亡くなってこの世にいないから、残ってた私への復讐だったようだ。

息子には、もう私はダメだからカロの思うようにしてやってくれと伝えた。
ここ伯爵家をカロにそのままいさせて、全うして欲しいと。
カロの側に、いや、ダミアンの愛するアンナさんと住んでくれたら良いと思う。
私が一人娘で、家を継がないといけなかったから、カロに残せるわね。
息子には残せないから、いっぱい謝った。

私はね、懺悔の気持ちなのよ。
カロに、ほんとに両親が悪いことしたわ。







私は、カロに手紙を残して逝きます。




………………………………………


リナリア、マートン 45歳

カロと息子に看取られて、この世を去った。
去る、まだ目が見える時、泣いてるカロが見えた。いっぱい泣いてるけど、口元が嬉しそう。

息子よ、母、強かったよね。
父様(カロ)に負けなかったよ。
だから息子よ、貴方も負けないで!
私が死んだら、父様の側には行かないでね。
その方が良いと思うわ。
だって、アンナさんとナイショの子供までいたんだもんね。







………カロ(ダミアン)視点……………

やっと、やっとだ。妻、リナが死んだ。

これで、アンナと一緒になれる
この時を、学園にいた時からだから、相当耐えた。
アンナは俺の昔からの友達。
昔からアンナには話してあった。
学園に、あの女が入ってきたら計画してたように、結婚すると。
うまくいった。
そして、少しずつエネルギーが無くなるように、枯渇薬を料理にいれていた。 長かった!ほんとに、長い年月をリナといた。苦しかった。
愛するアンナと離れて、好きでもない憎らしいリナといて。


これからだ。これから、アンナとアンナと俺の息子で、ここの邸で幸せに暮らすんだ。 だから、早く…リナ、早く逝け!



今日は、リナの葬式だった。
俺とリナの息子と、身内だけの静かな葬式。
身内には、よく看病してくれたとほめられた。


そして、リナの息子は、

「父さん、俺はこれで邸には帰ってこない。父さん、一人で大丈夫?」

「あぁ、父さんは大丈夫だ!お前は一人で頑張れよ。家がないと思って、頑張って生きてくれ」と伝えた。(来られても困るし)



今日から、アンナと暮らす。
ご馳走で旨いワインで乾杯した。



……………………………………………


アンナを迎えた次の日、手紙が届いた。

「えっ?リナ?」うわっ

俺はビックリしながら読んだ




カロ、この手紙、私が死んでから送ってもらうことになってたの。
今まで、私の看病ありがとう。

そうね、学園の時からだから、29年かしら?長いこと、ほんとに、ありがとうございました。
私はね、幸せでした。
好きになった人と知り合えて、なぜか?カロから私の側に来てくれて、好きな人と全うできました。

貴方は?貴方はどうでしたか?
私は貴方を苦しめたかしらね。

カロの思いを、この数ヶ月で知りました。
悲しさを通り越して、笑えたわ。


どうか、貴方は最期まで幸せでいてね。

長いこと、ご苦労様でした。

もう堂々とアンナさんといられますね。


 カロ、いえ、ダミアンさんへ

       リナリアより。






「えっ?知って…たのか?」

リナリアは、知ってて逝ってくれたのか。
そう思った瞬間、走馬灯のように、リナとの29年がよみがえってきた。

「カロ」「貴方」「いつもありがとう」「愛してるわ」


リナは俺に何をしたのかな?
なぜ、こんなにも、憎んだのだろうか?

ふっ?俺が決めて俺が仕組んだことだ。もう終わったことだ。

リナ、俺を好きになったこと後悔してるだろうな。
俺はこれから、幸せになるよ。
ありがとう、リナ。






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