千里の道も一歩から

もちた企画

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第一章 伯爵の策略と子爵の苦悩

2話 育成という名の叩き上げ

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「ぇ!なになに?!」

渡された木の棒を握りしめて向かってくる生き物とメイちゃんさんを交互に見る。

「兄ちゃん様、ゴブリンです」

ずいっと顔を近づけるメイちゃんさん。

「頑張って」

真っ直ぐ言われたが?!

こちらへゴブリンが手を上に挙げて走ってくる。
明確な敵意に驚くがこの木の棒で倒せばいいのかな?と意外と冷静な自分がいた。

「よっ」

右に反転してゴブリンの後頭部に一撃を入れて倒す。なんて事はない、転んだだけだ。

すぐに起き上がり腕を掴まれ噛みつかれそうになる。

「こんにゃろ」

掴まれた腕をそのままゴブリンの首に回して締めていく。すぐに力が抜けてきたので顔を覗き込むと泡を吹いていた。

<グゥゥ…>

「うぇ」

「兄ちゃん様、あちらを」

声をかけられメイちゃんさんは少しずつ後退する。

「まだまだいっぱい来ますので体力が持つ限り頑張ってくださいね」

ぴょこんとスライムが現れる。
さっき倒したゴブリンも一緒にだ。
ん?最初のゴブリンは消えていたが次の敵ということか。

自分で変に納得しながら木の棒を構える。
本当は森で遊んでるはずだったのに…そうだ全然聞いてなかったけどココどこなんだろう?

<ギャギャッ>

考えてると目の前までゴブリンが迫っていた。
スカンッと頭にヒットしたゴブリンは痛がっていたがスライムは?

ピトッ

「うぁ!離れろぉ」

ぬぉぉ!なんだこいつ!離れん…
左足に絡まってくるスライムをブンブン足で振り回してようやく剥がれるとスライムはスッと消えていった。

残りはゴブリンだけ。

「腕掴まれなきゃこわくないから、ね」

ゴブリンを中心にして回りながら木の棒で頭を叩いていくとそのゴブリンもスッと消えていった。

そこからセットのような魔物の登場に驚きつつ全然折れない木の棒を振り回して倒していった。

「次はスケルトンとゴブリンです」
「武器をこちらに変えてみましょう」
「連続でいきますね」
「次はウィンドウルフです」
「こちらを噛んでください」
「もう少し大きい武器に変えてみましょう」
「イイですね、次はどうでしょうか」
「まだまだ来ますよ、構えてください」

…メイちゃんさんの言葉が反響してどんどん増える魔物に汗が滲んでいく。
息が上がり武器を持つ右腕は何度も噛まれて痛いのなんのってもう…なんで戦ってるんだっけ?と自問自答しながら倒すと消える魔物たちを相手にしていた。
ビックワームという大きなミミズを最後に渡された両手剣で真っ二つにして倒した後は何も姿を現さなかった。

白いこの空間も静かになりメイちゃんさんが何故か喜んでいた。

「素晴らしいです、兄ちゃん様!マスターからは戦闘は初めてだと伺っていたものですから驚きました」

丁寧にお辞儀をして賞賛するメイちゃんさん。

「ぜ、全然、よゆう、です、、」

肩で息をしながら座り込むボクは喉が渇いたなと考えていた。

「少し休憩しましょう、こちらへ」

椅子と机があってそこに座るよう促される。
薄緑色の液体を渡されて飲んでみると甘い飲み物で一気に飲んでしまった。

「んま~、これなに??」

「回復ポーションですね、これで傷も治って次も動けると思います」

「あとこちらもどうぞ」

渡された硬く四角いお菓子はお皿に山積みにされていて回復ポーションと一緒に食べると元気が出てくるようだった。

「マスターから兄ちゃん様の稽古を頼まれまして、こちらの空間であの両手剣が扱えるようにシゴ…んん、鍛錬を続けてほしいとのことです」

「あ、そうなんですね」

……今シゴくって言った?
言ったよね。ちょっと沈黙。



「この空間でって事はさっきまでいた部屋じゃないって事ですよね?ジェイク…弟が森でボクを連れてきたやり方と同じだったから」

「はい、他の場所へ…という意味では同じですね。こちらへは転移で来られたのでしょう。私は四次元空間にある固定された居住空間の扉を開けて兄ちゃん様と一緒に入っただけですので」

「固定された?」

「はい、以前マスターは王様の望みである不老不死を達成する為に研究をしていたんですがエルフのような長命種は肉体の変化を嫌って王には向かず複製をしようとしたら王様の意思は引き継ぐが命は引き継げないので却下されてしまい…」

とんでも話だな??

「時間を止めれば良いんじゃないかと考えて時間停止したこの空間を作り上げたのです」

楽しそうに経緯を話すメイちゃんさんだがこの空間を作ったと言ったのに今は何もないから多分失敗したんだろう。

「ただどんなにこの空間で時間が過ぎたように感じても出てくると移動したその時から全く時が経っていないという本末転倒っぷりでした」

「つまりこの空間なら不老不死だ。ということ?」

「はい、現実世界と根絶したこの空間のことを四次元空間と言って時間の影響を受けない代わりにあちらへ戻るといつも通り時が流れます」

「ボクがさっきまで戦っていたのは?」

「生み出したのです。この空間の管理者である私にはデータベースにある魔物と呼ぶ生物を実体化して行動パターンを与えて操作いたしました」

ガタッ

生み出した?!だからメイちゃんさんは色々言ってたけど慌ててなかったのか~。ビビって損した。
平静を装いつつ会話を続ける。

「急に魔物を嗾けて申し訳ありませんでした」

「いえいえ、そうだったんですね。ちなみに話しを戻しますがその王様は不老不死になれたのですか?」

「いいえ、ですが満足はしておられました。忙しい時期や戦争で張り詰めた時などは休暇用具一式と共によくご利用されてましたよ」

あぁ、確かにお休みが時間かからず成立する画期的な方法だったんだろうなぁ。ボクも畑仕事終わったらしばらく昼寝してたいもんね。

「すごく便利ですけど問題の先送りのような気もします」

「その通りです、仮初の時間に何もしないなんて非生産にもほどがあります」

「それに比べたら、兄ちゃん様はもう両手剣を扱えるようになっておりますよ」

にっこり。

表情は変わらないがそんな間があった。
地面に落ちているボクがさっきまで使っていた両手剣を二人で見る。
流石に木の棒だと倒すのに時間がかかってたからありがたいんだが農家の子供が畑を任される前に剣士になるとは思わなかった。
腕の痛みも痺れも無くなってるし、修行を終えた気もする。

「この休憩が終わったら霊気エーテルの発動と維持を頑張りましょう」

にっこり。

いや、分からないけどそう見えるのよね。
「ぁ、はい」スクっと立ち上がり両手剣を手に持つボク。

「メイちゃんさん」

「はい」

「ボクの名前はマークって言うんだ」

「はい、マーク様」

「うん、ありがとう」

「いえいえ、それでは」と空間が震えて白い空間から水が流れる平地に変わった。

また尻餅をついた地面には確かに草がありやわらかい。爽やかな風が吹き抜ける心地良いところになった。深呼吸をしてメイちゃんさんを見る。




霊気エーテルの発動へ移ります」








☆☆☆☆☆
★★★★★


時短より経験じゃ??
そんなことを思ってももう遅い。
スパルタ教官メイちゃんの育成カリキュラムはこっから!

待て、次号!

皆々様からの好評価が生きる糧となります!これから応援よろしくお願いしますm(_ _)m


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