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喫茶店《シェリ・ランコントル》
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「サンドイッチセットお二つ。アイスコーヒーとカフェオレが1つずつで間違いありませんか?それでは少々お待ちください。」
注文をとると、パタパタと厨房へ向かいます。厨房では店長さんと奥さんがてんてこ舞いでした。何せ休日の昼時、この店が週で最も混むこの時間は次々とお客さんがご来店されます。もちろん嬉しいことなのですが、今日はベテランの先輩店員さんが病欠で、私と店長夫妻、バイトの子のたった4人でお店を回さないといけません。
カラン、コロン
お店のドアに付いたベルが新たな来客を知らせます。
首を伸ばして店内を見回すと、バイトの子は料理を運んでいる最中です。視線で「対応お願いします。」と訴えてきます。よし、任されました。
私は店長に追加の注文を告げると、ますます大わらわになった厨房を後にします。背後の2人が大丈夫か心配になりますが、どちらも笑みを浮かべていたし大丈夫でしょう。
私は入り口に駆け寄って、キョロキョロとしているカップルらしき二人組に声をかけます。
「いらっしゃいませ、喫茶店《シェリ・ランコントル》へ。」
心からの歓迎を言葉と、笑みにのせて。
* * * * * * * * * * * * * * * * * *
「今日も美味しかったよ、また来るね。」
常連の彼がそう言葉を残してドアを開けます。
カラン、コロン
ドアのベルが本日最後のお客様のお帰りを告げます。あのベルが鳴った回数は、今日はゆうに3桁に達している気がします。
今日も笑顔で接客できました。もちろん時々傍迷惑なお客様もいらっしゃって、フェイクスマイルを浮かべる時もあるけれど、今日は問題ありませんでした。店長さんも1日中厨房でオーダーを作り続け、疲れているけれどそれでもやはり笑顔です。奥さんは逆にとても元気で、今さっき閉店したばかりなのにもう明日の下準備を始めています。
時計を見ると門限が30分後に迫っています。乙女は門限を守らないと親からいらぬ詮索が入ってしまいます。
「今日はいつも以上に多かったですね。それじゃあ、店長さん、私はこれで。後片付け手伝えずごめんなさい。」
「いやいや、ありがとうね、鷹華ちゃん。今日なんて彼女がお休みだったから大変だったでしょ。それじゃあまた明日もよろしくね。」
彼女、とは今日お休みだったベテランの先輩店員です。私が子供の頃からここで働いていました。
私が「はい。」と答えようとすると、横から男の子の声がとんできました。
「すみません、これ、最後のお客さんが置いて行ってしまったようで。どうしますか。」
バイトの彼は今年で高校三年生です。受験があるだろうに律儀に毎週きてくれます。昨年度からバイトをしていて接客ももうお手の物。姿が見えないと思っていましたが、店内を確認してくれていたようです。
彼が手に持つマフラーがその忘れ物でしょう。この時期に…とは思わなくもないですが、きっと似合うのでよしとします。
「あの、私彼の家と近いので帰りに届けます。」
彼とは仕事が休みの日に近所で偶然出会いそれを機に仲良くなりました。時折仕事の合間におしゃべりしたりもします。
「そうか、悪いね。じゃあ、今度こそまた明日。」
「はい、また明日。」
そして私は喫茶店《シェリ・ランコントル》を後にします。
家は歩いて10分少々、常連の彼の家を経由すると20分くらいかかるかな。
私は陽が落ちきる前の夕焼けの中を歩きながら、ふとこのお店で働こうと思ったきっかけを回想しました。
それは私が小学生になりたての頃まで遡ります。
注文をとると、パタパタと厨房へ向かいます。厨房では店長さんと奥さんがてんてこ舞いでした。何せ休日の昼時、この店が週で最も混むこの時間は次々とお客さんがご来店されます。もちろん嬉しいことなのですが、今日はベテランの先輩店員さんが病欠で、私と店長夫妻、バイトの子のたった4人でお店を回さないといけません。
カラン、コロン
お店のドアに付いたベルが新たな来客を知らせます。
首を伸ばして店内を見回すと、バイトの子は料理を運んでいる最中です。視線で「対応お願いします。」と訴えてきます。よし、任されました。
私は店長に追加の注文を告げると、ますます大わらわになった厨房を後にします。背後の2人が大丈夫か心配になりますが、どちらも笑みを浮かべていたし大丈夫でしょう。
私は入り口に駆け寄って、キョロキョロとしているカップルらしき二人組に声をかけます。
「いらっしゃいませ、喫茶店《シェリ・ランコントル》へ。」
心からの歓迎を言葉と、笑みにのせて。
* * * * * * * * * * * * * * * * * *
「今日も美味しかったよ、また来るね。」
常連の彼がそう言葉を残してドアを開けます。
カラン、コロン
ドアのベルが本日最後のお客様のお帰りを告げます。あのベルが鳴った回数は、今日はゆうに3桁に達している気がします。
今日も笑顔で接客できました。もちろん時々傍迷惑なお客様もいらっしゃって、フェイクスマイルを浮かべる時もあるけれど、今日は問題ありませんでした。店長さんも1日中厨房でオーダーを作り続け、疲れているけれどそれでもやはり笑顔です。奥さんは逆にとても元気で、今さっき閉店したばかりなのにもう明日の下準備を始めています。
時計を見ると門限が30分後に迫っています。乙女は門限を守らないと親からいらぬ詮索が入ってしまいます。
「今日はいつも以上に多かったですね。それじゃあ、店長さん、私はこれで。後片付け手伝えずごめんなさい。」
「いやいや、ありがとうね、鷹華ちゃん。今日なんて彼女がお休みだったから大変だったでしょ。それじゃあまた明日もよろしくね。」
彼女、とは今日お休みだったベテランの先輩店員です。私が子供の頃からここで働いていました。
私が「はい。」と答えようとすると、横から男の子の声がとんできました。
「すみません、これ、最後のお客さんが置いて行ってしまったようで。どうしますか。」
バイトの彼は今年で高校三年生です。受験があるだろうに律儀に毎週きてくれます。昨年度からバイトをしていて接客ももうお手の物。姿が見えないと思っていましたが、店内を確認してくれていたようです。
彼が手に持つマフラーがその忘れ物でしょう。この時期に…とは思わなくもないですが、きっと似合うのでよしとします。
「あの、私彼の家と近いので帰りに届けます。」
彼とは仕事が休みの日に近所で偶然出会いそれを機に仲良くなりました。時折仕事の合間におしゃべりしたりもします。
「そうか、悪いね。じゃあ、今度こそまた明日。」
「はい、また明日。」
そして私は喫茶店《シェリ・ランコントル》を後にします。
家は歩いて10分少々、常連の彼の家を経由すると20分くらいかかるかな。
私は陽が落ちきる前の夕焼けの中を歩きながら、ふとこのお店で働こうと思ったきっかけを回想しました。
それは私が小学生になりたての頃まで遡ります。
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