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第二章
第1話 後始末
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アルトバイゼン王国、謁見の間では国王とフランが向き合っていた。
国王であるクライスは眉間に皺を寄せ何やら考える素振りでフランの言葉を聞く。
「というわけで無名君にはエルフの森で命の尊さを学んでもらう事にしたよ」
「……後から聞かされる余はどんな反応をすればいいのか」
無名の力は他を圧倒していると聞いているクライスだったが、問題を起こす頻度も他の勇者とは比較にならなかった。
扱いに困る勇者というのは如何なものなのかとも思うクライスだが、魔国との戦いでは必須の人材でもあった。
「命の尊さを学ばなければならない勇者など前代未聞だぞ……」
「まあ別の世界から来てるし価値観が違うのかもよ?とりあえずあの子の価値観がこの世界に順応するまではエルフの森に居てもらったらいいと思うよ」
「その間に魔国が攻めて来なければ良いが……それに帝国も最近浮足立っているらしい。……ものは相談なのだがフラン殿――」
「ああダメダメ。ボクは国に仕えない、出会った時にも言ったでしょ?」
クライスとしてはフランが王国の戦力として手を貸してくれればそれでいいのだが、そう簡単にはいかぬようでフランは即座に首を振った。
無名への指南を受け持ってくれたのも奇跡みたいなものだ。
仕方ないとクライスは立ち上がると近衛兵に合図を送った。
フランの力を借りられないのであれば自国の戦力で何とかするしかない。
すぐに帝国への対処、各国への同盟関係強化に向けて話し合う必要があるだろう。
近衛兵への合図は王国の重鎮達へと召集をかけることであった。
その頃黒峰含む四人の勇者はある一室に集められていた。
無名が見せつけた勇者の人外じみた力。
兵士や民からの勇者に対する感情は畏怖。
英雄のように称えられる事はなく、人を殺す事に躊躇いをもたない怪物とまで噂される始末であった。
「はぁ……無名もなかなか面倒な事をしてくれたな」
「ホントですよ!アイツマジでムカつく!ぶん殴ってやろうと思ったらまたどっか行ってるし!」
茜は怒りが収まらず近くにあったクッションをソファに投げつけて怒りを発散させていた。
「結局神無月さんが殺した人の数ってどれくらいだったんでしょう」
「話によると今回の戦争で法国が失った命は三十万人ぶんだそうだ」
桁違いの死者を出してよく平気でいられるなと莉奈も少し引いていた。
「まあでも敵ですしいいんじゃないっすか?」
大輝だけは事の重大さをいまいち理解できていないのか、無名に味方するような発言をこぼした。
当然その言葉に耳聡く反応を示したのは茜だった。
「大輝!敵でも同じ人間じゃん!三十万人殺してんだよ!?日本じゃ死刑でも足らないくらいじゃん!」
「え、ああはい、すんません……」
茜の勢いに押され大輝は謝罪し口を閉ざした。
「まあまあ落ち着け茜ちゃん。アイツだって王国を守る為に戦ったんだ。よってたかって悪く言うのはよくないよ」
「黒峰さん!いくら戦争中といっても慈悲は必要なんじゃないですか!?あんなのただの殺人鬼じゃないですか!アイツのせいでアタシ達まで肩身の狭い思いをしなきゃならないんですよ!?」
茜の怒りが頂点に達するタイミングでドアノブが回る音がして全員口を閉ざして一斉に扉の方へと視線を移した。
「随分と荒れているじゃないか」
入って来たのはランスロットとフリアーレ、ガイラだった。
四人の先生であり、良き理解者でもある三人は荒れていた茜を一目見て苦笑いを浮かべた。
「まず最初に言う事がある。どうやら無名は悠久の魔女に何処かへと飛ばされたらしい」
「何処かは分からないんですか?」
黒峰が問い掛けると今度はフリアーレが答える。
「エルフの森よ。理由はまあ……あれしかないわよね」
「エルフの森……」
聞いたことのない場所に四人は顔を見合わせる。
ファンタジーの代表とも言えるエルフという単語に四人とも興味が湧いた。
「気になるけど、それよりその理由というのはなんですか?」
「エルフはそもそも数が少ないの。それに繁殖力も人間より遥かに劣るわ。だから一人一人の命はワタクシ達よりも重く考えているフシがあってね、命の尊さを学ばせる為かと思うわ」
「道徳の授業っすかね……?」
フリアーレが教えてくれたが、この世界では常識である。
エルフは長命種だが繁殖力が極端に少なく、数も少ない。
故に奴隷商などに捕まると高値で取引される事もあるのだ。
「貴方達の世界では命は軽く扱われるものだったのかしら?」
「いいえ、私達の世界でも人を殺せばそれなりの報いを受ける事になります」
莉奈が言う報いとは死刑や無期懲役の事だ。
この世界でも殺人は重罪であるが、戦争時となれば罪に問われはしない。
無名が行った大量虐殺も戦争であったから許されただけだった。
「王国の為に戦ってくれたのは嬉しいけれど、あれはやり過ぎだったと思うわ」
「俺でも流石にあそこまでは暴れねぇからな」
ガイラも気性が荒いがそれでも無名ほどの虐殺行為には難色を示した。
「とにかく、当分無名と会うことはないだろう。それまでに君達は対帝国の為に強くなって貰うぞ」
「帝国?それってレブスフィア帝国の事ですよね?」
「ああ、実はあの戦争後から帝国が浮足立っているそうだ」
あれだけの規模の法国軍をたった一人で退けた力は、目に見えて脅威だった。
帝国はいずれ自国に牙を剥くのではと諜報員を何人も王国へと送り込んでいる。
既に数人は捕らえたがそれでも全体数から言えば氷山の一角に過ぎないだろうと国王は危惧していた。
勇者が育てばそれだけで抑止力になる。
今の黒峰達はせいぜいレベル4の冒険者と同等程度。
脅威足り得ない彼らでは到底抑止力にはなれないのだ。
「明日からの訓練は苛烈を極める。今のうちによく身体を休めておくように。ああ、大輝はまだ病み上がりだからリハビリを続けるんだ」
「はい!」
大輝の片腕は回復できず失ったままだったが、義手を装着し今まで通りに動かせるようリハビリ中だった。
唯一黒峰はもうじきレベル5に手が届きそうなくらいには育ってきているが剣聖ランスロットからすればまだまだと言わざるを得ない。
現状他国への牽制ができる勇者は無名のみ。
ただ、帝国で召喚された勇者二名は最強に名を連ねるのではないかと噂されており、今頃国王や重鎮らが協議を重ねている事だろうとランスロットは目を瞑る。
「法国はこれからが大変だろうな……」
三十万もの兵士が失われれば国を守る事も厳しくなる。
当然敵対国家が攻めてくるだろう。
罪なき民が殺されるのかと思うと敵国といえど胸が痛くなった。
それは莉奈も同じだったようで、ランスロットと同じように悲痛な面持ちで俯く。
「でも俺はスッキリしたけどな。やり過ぎだって言うのも理解はできるぜ。でも戦いの火蓋を切ったのはあっち側だ。自業自得といやぁそこまでだな」
「ガイラ、もう少しこの子達に気を遣いなさいよ」
「あん?気にしすぎても後がしんどいだけだから今のうちにほぐしといてやろうっていう優しさじゃねぇか」
「不器用なのよ貴方は……」
ガイラとフリアーレはそんな事を言い合いながら部屋を出ていく。
ランスロットも二人に続き部屋を出ていった。
ガイラの言っていた事も理解は出来ていた。
しかし頭では理解していても心が受け入れないのだ。
茜はどうしても無名の無神経に人を殺していく様が許せなかった。
勇者と戦い殺してしまったのは理解できる。
女王の首を取るのも戦争なのだからまあ許容できた。
しかしその後の行いが良くなかった。
三十万の兵士にも家族がいただろう。
友達がいただろう。
そんな事も考えずに皆殺しにしたのかと問いたかったが、今この場にいない無名には何も伝える事ができない。
茜はそれがもどかしく、次に会った時は一発ぶん殴ってやると誓った。
国王であるクライスは眉間に皺を寄せ何やら考える素振りでフランの言葉を聞く。
「というわけで無名君にはエルフの森で命の尊さを学んでもらう事にしたよ」
「……後から聞かされる余はどんな反応をすればいいのか」
無名の力は他を圧倒していると聞いているクライスだったが、問題を起こす頻度も他の勇者とは比較にならなかった。
扱いに困る勇者というのは如何なものなのかとも思うクライスだが、魔国との戦いでは必須の人材でもあった。
「命の尊さを学ばなければならない勇者など前代未聞だぞ……」
「まあ別の世界から来てるし価値観が違うのかもよ?とりあえずあの子の価値観がこの世界に順応するまではエルフの森に居てもらったらいいと思うよ」
「その間に魔国が攻めて来なければ良いが……それに帝国も最近浮足立っているらしい。……ものは相談なのだがフラン殿――」
「ああダメダメ。ボクは国に仕えない、出会った時にも言ったでしょ?」
クライスとしてはフランが王国の戦力として手を貸してくれればそれでいいのだが、そう簡単にはいかぬようでフランは即座に首を振った。
無名への指南を受け持ってくれたのも奇跡みたいなものだ。
仕方ないとクライスは立ち上がると近衛兵に合図を送った。
フランの力を借りられないのであれば自国の戦力で何とかするしかない。
すぐに帝国への対処、各国への同盟関係強化に向けて話し合う必要があるだろう。
近衛兵への合図は王国の重鎮達へと召集をかけることであった。
その頃黒峰含む四人の勇者はある一室に集められていた。
無名が見せつけた勇者の人外じみた力。
兵士や民からの勇者に対する感情は畏怖。
英雄のように称えられる事はなく、人を殺す事に躊躇いをもたない怪物とまで噂される始末であった。
「はぁ……無名もなかなか面倒な事をしてくれたな」
「ホントですよ!アイツマジでムカつく!ぶん殴ってやろうと思ったらまたどっか行ってるし!」
茜は怒りが収まらず近くにあったクッションをソファに投げつけて怒りを発散させていた。
「結局神無月さんが殺した人の数ってどれくらいだったんでしょう」
「話によると今回の戦争で法国が失った命は三十万人ぶんだそうだ」
桁違いの死者を出してよく平気でいられるなと莉奈も少し引いていた。
「まあでも敵ですしいいんじゃないっすか?」
大輝だけは事の重大さをいまいち理解できていないのか、無名に味方するような発言をこぼした。
当然その言葉に耳聡く反応を示したのは茜だった。
「大輝!敵でも同じ人間じゃん!三十万人殺してんだよ!?日本じゃ死刑でも足らないくらいじゃん!」
「え、ああはい、すんません……」
茜の勢いに押され大輝は謝罪し口を閉ざした。
「まあまあ落ち着け茜ちゃん。アイツだって王国を守る為に戦ったんだ。よってたかって悪く言うのはよくないよ」
「黒峰さん!いくら戦争中といっても慈悲は必要なんじゃないですか!?あんなのただの殺人鬼じゃないですか!アイツのせいでアタシ達まで肩身の狭い思いをしなきゃならないんですよ!?」
茜の怒りが頂点に達するタイミングでドアノブが回る音がして全員口を閉ざして一斉に扉の方へと視線を移した。
「随分と荒れているじゃないか」
入って来たのはランスロットとフリアーレ、ガイラだった。
四人の先生であり、良き理解者でもある三人は荒れていた茜を一目見て苦笑いを浮かべた。
「まず最初に言う事がある。どうやら無名は悠久の魔女に何処かへと飛ばされたらしい」
「何処かは分からないんですか?」
黒峰が問い掛けると今度はフリアーレが答える。
「エルフの森よ。理由はまあ……あれしかないわよね」
「エルフの森……」
聞いたことのない場所に四人は顔を見合わせる。
ファンタジーの代表とも言えるエルフという単語に四人とも興味が湧いた。
「気になるけど、それよりその理由というのはなんですか?」
「エルフはそもそも数が少ないの。それに繁殖力も人間より遥かに劣るわ。だから一人一人の命はワタクシ達よりも重く考えているフシがあってね、命の尊さを学ばせる為かと思うわ」
「道徳の授業っすかね……?」
フリアーレが教えてくれたが、この世界では常識である。
エルフは長命種だが繁殖力が極端に少なく、数も少ない。
故に奴隷商などに捕まると高値で取引される事もあるのだ。
「貴方達の世界では命は軽く扱われるものだったのかしら?」
「いいえ、私達の世界でも人を殺せばそれなりの報いを受ける事になります」
莉奈が言う報いとは死刑や無期懲役の事だ。
この世界でも殺人は重罪であるが、戦争時となれば罪に問われはしない。
無名が行った大量虐殺も戦争であったから許されただけだった。
「王国の為に戦ってくれたのは嬉しいけれど、あれはやり過ぎだったと思うわ」
「俺でも流石にあそこまでは暴れねぇからな」
ガイラも気性が荒いがそれでも無名ほどの虐殺行為には難色を示した。
「とにかく、当分無名と会うことはないだろう。それまでに君達は対帝国の為に強くなって貰うぞ」
「帝国?それってレブスフィア帝国の事ですよね?」
「ああ、実はあの戦争後から帝国が浮足立っているそうだ」
あれだけの規模の法国軍をたった一人で退けた力は、目に見えて脅威だった。
帝国はいずれ自国に牙を剥くのではと諜報員を何人も王国へと送り込んでいる。
既に数人は捕らえたがそれでも全体数から言えば氷山の一角に過ぎないだろうと国王は危惧していた。
勇者が育てばそれだけで抑止力になる。
今の黒峰達はせいぜいレベル4の冒険者と同等程度。
脅威足り得ない彼らでは到底抑止力にはなれないのだ。
「明日からの訓練は苛烈を極める。今のうちによく身体を休めておくように。ああ、大輝はまだ病み上がりだからリハビリを続けるんだ」
「はい!」
大輝の片腕は回復できず失ったままだったが、義手を装着し今まで通りに動かせるようリハビリ中だった。
唯一黒峰はもうじきレベル5に手が届きそうなくらいには育ってきているが剣聖ランスロットからすればまだまだと言わざるを得ない。
現状他国への牽制ができる勇者は無名のみ。
ただ、帝国で召喚された勇者二名は最強に名を連ねるのではないかと噂されており、今頃国王や重鎮らが協議を重ねている事だろうとランスロットは目を瞑る。
「法国はこれからが大変だろうな……」
三十万もの兵士が失われれば国を守る事も厳しくなる。
当然敵対国家が攻めてくるだろう。
罪なき民が殺されるのかと思うと敵国といえど胸が痛くなった。
それは莉奈も同じだったようで、ランスロットと同じように悲痛な面持ちで俯く。
「でも俺はスッキリしたけどな。やり過ぎだって言うのも理解はできるぜ。でも戦いの火蓋を切ったのはあっち側だ。自業自得といやぁそこまでだな」
「ガイラ、もう少しこの子達に気を遣いなさいよ」
「あん?気にしすぎても後がしんどいだけだから今のうちにほぐしといてやろうっていう優しさじゃねぇか」
「不器用なのよ貴方は……」
ガイラとフリアーレはそんな事を言い合いながら部屋を出ていく。
ランスロットも二人に続き部屋を出ていった。
ガイラの言っていた事も理解は出来ていた。
しかし頭では理解していても心が受け入れないのだ。
茜はどうしても無名の無神経に人を殺していく様が許せなかった。
勇者と戦い殺してしまったのは理解できる。
女王の首を取るのも戦争なのだからまあ許容できた。
しかしその後の行いが良くなかった。
三十万の兵士にも家族がいただろう。
友達がいただろう。
そんな事も考えずに皆殺しにしたのかと問いたかったが、今この場にいない無名には何も伝える事ができない。
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※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
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