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第二章
第16話 レッドカラー討伐依頼
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カイルからの指示で、エルフの森から出た無名は気配を消しながら対象の冒険者達に近づく。
自分の意志で人を殺すのは初めての経験だった無名は心臓の鼓動を抑えながらゆっくりと近づいて行った。
カイルの指示はレッドカラーとして認定された冒険者の討伐。
レッドカラーとは犯罪行為に手を染めてしまった冒険者の通称である。
人権は剥奪され、魔物と同等の価値としてしか認識されないのがレッドカラーだ。
数は四人。
レベル3が三人とレベル4が一人。
特に危険視されているリーダーがレベル4であり、討伐にはそれなりの戦力が必要となる。
無名が木の陰から彼らを見つめ、隙を伺う。
「チッ……エルフの森ってどこからいけんだよ」
リーダーの男が舌打ちをする。
彼らの目的はエルフの集落に入り、エルフを攫って売り払う事だ。
エルフは希少な種族であり、どこであろうとその価値は高い。
「さぁねぇ……ま、でも近いと思うよ~?だって魔力をほんのりと感じるからさ」
女の一人がいやらしそうな眼付きで辺りを見回す。
エルフを一人攫うだけで相当な金が手に入るのだ。
これからの生活がとても楽になると嬉しそうにニヤつく。
「おい、真剣にやれ。ここらは凶悪な魔物だって現れるんだぞ」
「アンタは真面目過ぎ。もっと気楽にやろうよ」
大楯を持った寡黙な男が難色を示すともう一人の女がそれを窘める。
四人パーティーで冒険者稼業を何年もやってきた彼らだったが、ある依頼に失敗し信頼を無くしそこからは犯罪に手を染めるようになってしまったよくあるパターンだった。
「で?リーダーどうする?どっちに進むか決めてくれないと」
彼らが足を止め雑談に花を咲かせていたのも未だリーダーの男がどの方角を目指すか方針を決めかねているからであった。
そんな彼らに気配を消して近づく男が一人。
無名は片手に剣を持ち、木の陰から様子を伺う。
四対一の状況であればかなり不利だ。
その為隙を伺っているのだが、なかなか隙を見せないのか彼らが様々な修羅場を超えてきた元冒険者である事が理由であった。
とはいえずっと見ているだけではカイルからの課題をクリアできない。
意を決して、無名は一人に狙いをつけた。
大楯持ちの男と一緒にいる女の冒険者。
彼女の武器は弓のようで、手にはナイフ一本が握られている。
反撃されても大して脅威ではないと判断し、大楯持ちの男と距離が離れる瞬間を待つことにした。
待つこと数分。
ターゲットとなる女が離れた瞬間。
無名は木の陰から飛び出し一気に剣を首目掛けて突いた。
「ッッッ――」
女は声にならない叫びを上げ、仰向けに倒れてく。
鮮血が舞い少し離れた大楯持ちの男の方にまで降りかかると、目を見開き背中に担いだ剣を取ろうと手を頭上に持っていく。
「雷光一矢」
男が剣の柄を握るや否や、無名の魔法が盾を直撃した。
「うおっ!?」
態勢を崩された男は上手く剣を抜けず盾を取り落とす。
その隙を狙い、無名が駆け剣を一文字に振りぬいた。
「ガハッ――」
またも首を狙った致死性の一撃。
確実に殺すには首を斬るのが早いとカイルから学んでいた無名は執拗に首を狙っていく。
これで十秒かからず二人を始末した。
しかしここからが本当の闘いである。
他の二人が気づかないわけがなく、無名を完全に敵とみなし武器を構え怒声を上げる。
「てめぇ!俺らの仲間を!」
「お前ぜってぇ殺す……」
殺意が嫌というほど伝わってくる無名だったが、スンとした表情でとても冷静だった。
その様子が気に障ったのか、女の方が勢いよく飛び込んできて剣を振り回す。
「くそがッ!死ね!死ね!死ね!」
怒りで我を忘れているのかその剣は一度たりとも無名に当たらない。
やがて息切れしてきたのか振り回す剣の勢いが弱まってくる。
「炎上する斬撃」
「ギィヤァァァァァッ!!」
無名が火を纏わせた剣で首を斬りつけると、あまりの激痛に女は剣を手放し断末魔を上げた。
リーダーである男はそんな無名に隙を見せない構えで距離を取っていた。
「てめぇ……何者か知らねぇがそれなりにやるみたいだな」
リーダーの男はレベル3とはいえ三人の元冒険者を瞬殺した無名を最大限警戒していた。
剣の技量も魔法の技術も高い無名を、リーダーは見たことがなかった。
裏の世界の住人かと思えるくらいには警戒している。
「お前、どこに雇われた殺し屋だ?」
「……どこにも雇われていませんよ」
「じゃあお前の意思ってわけか?いや、待てよ?賞金首になってる可能性だってあるか。ってぇなるとお前さん、俺らを殺して金稼ぎするつもりか!」
無名は黙って聞き続ける。
いよいよリーダーもそんな無名を不気味に思えてきたのか、口を閉ざし剣を無名へと向けた。
「まあいい、俺はそいつらみたいに簡単にはやられはしないぜ?」
言葉通りリーダーの男は唯一のレベル4。
冒険者はレベルが一つ違うだけでもかなりの差が出るのだ。
当然無名も一番警戒する相手は目の前の男だと認識していた。
「求む力は火の如く!」
最初に動いたのはリーダーの男だった。
自身にバフをかけると地面を蹴り剣を突き出す。
「稲妻よりも疾く」
そんな攻撃など当たるはずもなく無名は音もなくその場から掻き消えた。
「どこだ!」
「ここですよ」
背後に移動していた無名が言葉を放つと共に剣を横薙ぎに払った。
狙うは首元。
リーダーの男は咄嗟に片腕でカバーしたが、流れ落ちる血が地面を染めていく。
「クソッ……」
片腕は使い物にならなくなった彼は、やぶれかぶれの攻撃へと出た。
下から上から左右から。
剣を振り回し無名に攻撃のタイミングを掴ませない攻勢。
無名はそれを一つずつ丁寧に捌いていく。
やがて体力が尽きてきたのか男の動きが鈍くなっていった。
「ハァ……ハァ……クソッ!なんで当たらねぇ!」
カイルと訓練を始めてから体力をついて身体能力も上がってきている無名からすれば、レベル4の冒険者など歯牙にもかけない程度には強くなっていた。
「烈風の弾丸」
「イッ――」
痛い、そう言いたかったのだろうが最後まで言葉を紡ぐことはできなかった。
無名の魔法は男の心臓を貫いていたのだ。
苦しそうな表情のまま、男は地面へと倒れ込む。
「依頼完遂、四人の冒険者はこれで終わりですね」
一人呟く無名は辺りに転がるレッドカラーの遺体を眺める。
意思を持って人を殺したというのに実感が沸かないのは、ここが日本ではないからだろうかと無名は頭を捻る。
異世界というワードは現実的な言葉ではない。
ここも実際には現実なのだが、どうしてもゲームやアニメの世界と混同してしまう自分がいた。
何とも言えない感情のまま、無名はその場を後にした。
無名がカイルの下に戻り報告すると、満足そうに彼は頷く。
「どうだった?初の殺人は」
「まああまり実感は湧きませんでしたね」
「そうかぁ、まだこの世界に順応できてないのかもしれないね。それよりも無名君、私は初の殺人と言ったが違和感を覚えなかったのかい?」
なんの事だと無名が首を捻ると、カイルはそのまま言葉を続ける。
「君は既に意思を持って人を殺しているよ。ほら、ルオール法国の女王と勇者さ」
カイルに言われようやく思い出した無名は、居心地の悪いような表情を浮かべた。
「どうやら法国との戦いはやっぱり殺意を持って殺した訳では無いみたいだね。それもどうかと思うけど。まあいいや、とにかくおめでとう。これからもレッドカラーを見かけたら積極的に殺していこうか!」
カイルは笑顔でそう言うが、本当にこれが成長に繋がるのかと無名は疑問を抱く。
命の重さを学べとフランは言っていた。
しかし今はどうだろうか。
確かに無名はレイオールの死に目を見て悲しいという感情を覚えたが、それだけだ。
カイルの指示により今では自分の手で同じ人間を殺す始末。
マリアの言っていた言葉が思い出され、無名は身の振り方を考える事にした。
自分の意志で人を殺すのは初めての経験だった無名は心臓の鼓動を抑えながらゆっくりと近づいて行った。
カイルの指示はレッドカラーとして認定された冒険者の討伐。
レッドカラーとは犯罪行為に手を染めてしまった冒険者の通称である。
人権は剥奪され、魔物と同等の価値としてしか認識されないのがレッドカラーだ。
数は四人。
レベル3が三人とレベル4が一人。
特に危険視されているリーダーがレベル4であり、討伐にはそれなりの戦力が必要となる。
無名が木の陰から彼らを見つめ、隙を伺う。
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「さぁねぇ……ま、でも近いと思うよ~?だって魔力をほんのりと感じるからさ」
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エルフを一人攫うだけで相当な金が手に入るのだ。
これからの生活がとても楽になると嬉しそうにニヤつく。
「おい、真剣にやれ。ここらは凶悪な魔物だって現れるんだぞ」
「アンタは真面目過ぎ。もっと気楽にやろうよ」
大楯を持った寡黙な男が難色を示すともう一人の女がそれを窘める。
四人パーティーで冒険者稼業を何年もやってきた彼らだったが、ある依頼に失敗し信頼を無くしそこからは犯罪に手を染めるようになってしまったよくあるパターンだった。
「で?リーダーどうする?どっちに進むか決めてくれないと」
彼らが足を止め雑談に花を咲かせていたのも未だリーダーの男がどの方角を目指すか方針を決めかねているからであった。
そんな彼らに気配を消して近づく男が一人。
無名は片手に剣を持ち、木の陰から様子を伺う。
四対一の状況であればかなり不利だ。
その為隙を伺っているのだが、なかなか隙を見せないのか彼らが様々な修羅場を超えてきた元冒険者である事が理由であった。
とはいえずっと見ているだけではカイルからの課題をクリアできない。
意を決して、無名は一人に狙いをつけた。
大楯持ちの男と一緒にいる女の冒険者。
彼女の武器は弓のようで、手にはナイフ一本が握られている。
反撃されても大して脅威ではないと判断し、大楯持ちの男と距離が離れる瞬間を待つことにした。
待つこと数分。
ターゲットとなる女が離れた瞬間。
無名は木の陰から飛び出し一気に剣を首目掛けて突いた。
「ッッッ――」
女は声にならない叫びを上げ、仰向けに倒れてく。
鮮血が舞い少し離れた大楯持ちの男の方にまで降りかかると、目を見開き背中に担いだ剣を取ろうと手を頭上に持っていく。
「雷光一矢」
男が剣の柄を握るや否や、無名の魔法が盾を直撃した。
「うおっ!?」
態勢を崩された男は上手く剣を抜けず盾を取り落とす。
その隙を狙い、無名が駆け剣を一文字に振りぬいた。
「ガハッ――」
またも首を狙った致死性の一撃。
確実に殺すには首を斬るのが早いとカイルから学んでいた無名は執拗に首を狙っていく。
これで十秒かからず二人を始末した。
しかしここからが本当の闘いである。
他の二人が気づかないわけがなく、無名を完全に敵とみなし武器を構え怒声を上げる。
「てめぇ!俺らの仲間を!」
「お前ぜってぇ殺す……」
殺意が嫌というほど伝わってくる無名だったが、スンとした表情でとても冷静だった。
その様子が気に障ったのか、女の方が勢いよく飛び込んできて剣を振り回す。
「くそがッ!死ね!死ね!死ね!」
怒りで我を忘れているのかその剣は一度たりとも無名に当たらない。
やがて息切れしてきたのか振り回す剣の勢いが弱まってくる。
「炎上する斬撃」
「ギィヤァァァァァッ!!」
無名が火を纏わせた剣で首を斬りつけると、あまりの激痛に女は剣を手放し断末魔を上げた。
リーダーである男はそんな無名に隙を見せない構えで距離を取っていた。
「てめぇ……何者か知らねぇがそれなりにやるみたいだな」
リーダーの男はレベル3とはいえ三人の元冒険者を瞬殺した無名を最大限警戒していた。
剣の技量も魔法の技術も高い無名を、リーダーは見たことがなかった。
裏の世界の住人かと思えるくらいには警戒している。
「お前、どこに雇われた殺し屋だ?」
「……どこにも雇われていませんよ」
「じゃあお前の意思ってわけか?いや、待てよ?賞金首になってる可能性だってあるか。ってぇなるとお前さん、俺らを殺して金稼ぎするつもりか!」
無名は黙って聞き続ける。
いよいよリーダーもそんな無名を不気味に思えてきたのか、口を閉ざし剣を無名へと向けた。
「まあいい、俺はそいつらみたいに簡単にはやられはしないぜ?」
言葉通りリーダーの男は唯一のレベル4。
冒険者はレベルが一つ違うだけでもかなりの差が出るのだ。
当然無名も一番警戒する相手は目の前の男だと認識していた。
「求む力は火の如く!」
最初に動いたのはリーダーの男だった。
自身にバフをかけると地面を蹴り剣を突き出す。
「稲妻よりも疾く」
そんな攻撃など当たるはずもなく無名は音もなくその場から掻き消えた。
「どこだ!」
「ここですよ」
背後に移動していた無名が言葉を放つと共に剣を横薙ぎに払った。
狙うは首元。
リーダーの男は咄嗟に片腕でカバーしたが、流れ落ちる血が地面を染めていく。
「クソッ……」
片腕は使い物にならなくなった彼は、やぶれかぶれの攻撃へと出た。
下から上から左右から。
剣を振り回し無名に攻撃のタイミングを掴ませない攻勢。
無名はそれを一つずつ丁寧に捌いていく。
やがて体力が尽きてきたのか男の動きが鈍くなっていった。
「ハァ……ハァ……クソッ!なんで当たらねぇ!」
カイルと訓練を始めてから体力をついて身体能力も上がってきている無名からすれば、レベル4の冒険者など歯牙にもかけない程度には強くなっていた。
「烈風の弾丸」
「イッ――」
痛い、そう言いたかったのだろうが最後まで言葉を紡ぐことはできなかった。
無名の魔法は男の心臓を貫いていたのだ。
苦しそうな表情のまま、男は地面へと倒れ込む。
「依頼完遂、四人の冒険者はこれで終わりですね」
一人呟く無名は辺りに転がるレッドカラーの遺体を眺める。
意思を持って人を殺したというのに実感が沸かないのは、ここが日本ではないからだろうかと無名は頭を捻る。
異世界というワードは現実的な言葉ではない。
ここも実際には現実なのだが、どうしてもゲームやアニメの世界と混同してしまう自分がいた。
何とも言えない感情のまま、無名はその場を後にした。
無名がカイルの下に戻り報告すると、満足そうに彼は頷く。
「どうだった?初の殺人は」
「まああまり実感は湧きませんでしたね」
「そうかぁ、まだこの世界に順応できてないのかもしれないね。それよりも無名君、私は初の殺人と言ったが違和感を覚えなかったのかい?」
なんの事だと無名が首を捻ると、カイルはそのまま言葉を続ける。
「君は既に意思を持って人を殺しているよ。ほら、ルオール法国の女王と勇者さ」
カイルに言われようやく思い出した無名は、居心地の悪いような表情を浮かべた。
「どうやら法国との戦いはやっぱり殺意を持って殺した訳では無いみたいだね。それもどうかと思うけど。まあいいや、とにかくおめでとう。これからもレッドカラーを見かけたら積極的に殺していこうか!」
カイルは笑顔でそう言うが、本当にこれが成長に繋がるのかと無名は疑問を抱く。
命の重さを学べとフランは言っていた。
しかし今はどうだろうか。
確かに無名はレイオールの死に目を見て悲しいという感情を覚えたが、それだけだ。
カイルの指示により今では自分の手で同じ人間を殺す始末。
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※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
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