元殺し屋の私が異世界憑依したら溺愛ルートが待っていた~醜い辺境伯と身代わり夜伽妻~

五嶋樒榴

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ジョージの真相

「実は僕は、前国王の息子なんだ」

 え?

 ええッ?

 いきなり爆弾発言かよッ!

 高貴な貴族だとは思っていたが、いきなりぶっ飛んだな。

 クロードは黙ったまま体勢も変えない。
 ジョージが自分の秘密を私に話すのが気に入らないのか?

「それなりの貴族だとは思ってましたけど。でもそんな身分の方が、なぜ辺境伯家にいそうろ……住んでいるんですか?」

 言い直したところで、もうほとんど居候と言ってしまったけどね。

「それは、僕の出自に関係があるんだ」

 クロードは益々機嫌が悪くなっている気がする。

「あのぉ、無理に話さなくていいですよ?」

 別にジョージに興味ないし。

「いや、聞いてくれ!フィリシアに知って欲しいんだ!」

 ズイッとジョージは私に近付いてきたので、私は反射的に後ろに下がった。

 な、なんなんだ?
 どうして私に知って欲しいんだ?
 分からぬ。

「私が邪魔なら出て行くが」

 不機嫌なクロードは、私とジョージを置いて行こうとするので、私は咄嗟にクロードの腕を握った。

「クロード様もここにいてください!」

「……ああ」

 なんか口元がニヤけた?

 もしかして、ジョージが私に秘密を話すことへの嫉妬か?
 ったく、どんだけ私を好きなんだよ!

 コホンと、ジョージが咳払いをした。

「続けていいか?あまり遅くなると夕方になってしまう」

「それは困ります!早目でお願いします!」

 ただでさえ、仕事をサボってここにいて後で怒られるだろうし、洗濯物を取り込まなくてはならないんだから!

「なんか、深刻な話をしようと思ったんだけど拍子抜けだな。まあ、良いけど」

 ジョージは、自分が思い描いていたシチュエーションと違うらしく、拗ねる様に髪を掻いた。

「続けるよ」

 私は早く終われと思いながら仕方なく頷いた。

「僕がこの辺境伯家に来たのは、僕の母が下級の侍女だったからだ。下級の侍女は下働きが主な仕事のため、王族の目に触れる機会は少ない。それなのに、僕を身籠ってしまったから」

「下級?」

「ああ。妃以外で国王のお手付きになるのは、上級の侍女と決まっている。侍女と言っても上級となれば、伯爵家以上の令嬢たちばかりだからね」

 あー。
 そこが上級と下級の違いか。

「僕の母親は、どこかで国王の目に触れて、お手付きとなった。そして僕を出産したことで命を失った」

「何故?殺されたのか?あ、殺されてしまったのですか?」

 ついウォーレンになっちまう。
 クロードは、私が言い直すとクスッと笑った。

「産後の肥立ちが悪かったと聞く。母が僕を出産したのは15だったし」

 若い。
 この時代じゃ医療も発達してないし、出産で命を落としても不思議はないのか。

「母は僕を妊娠した時から、国王を誑かしたと言われ続けていた様だ」

 一国の王が、15の女に簡単に誑かされるほど若い年だったのか?

「前国王はその当時何歳だったんですか?」

「38だった」

 おいおいおいッ!

 まだ14、5の娘が、成人した国王を誑かせるわけがない。
 そもそも親子ほど歳が離れてるじゃないかッ!
 逆に手籠にされた可能性だってある。

「僕も産まれるまで、国王の子ではないと言われていた様だけど、生まれた時に僕を見て、誰もが国王の子と認めざるを得なかった」

 どう言うことだ?
 そんなに前国王に似ていたのか?

「僕の瞳をよく見て」

 瞳?

 あれ?
 瞳の色が、茶色というよりオレンジ色に近い。
 こんな色の瞳、初めて見た。

「王族の瞳の色さ。王族の男子は皆、その瞳を持つ」

 クロードが答えてくれた。
 そう言うことか。
 それが王族の証なのか。

「それでも周りは認めたくなかったんだろう。僕は邪魔な存在だった。だから僕は産まれてすぐ、この辺境伯家に助けてもらった」

「その当時、私の父が国王に進言したんだ。ジョージをそのまま王室で育てるより、王都から離れたこの辺境ならば、ジョージを守れると」

 前国王としても、息子を守るための決断だったのかな。

「それでも4年前までは、年に一度は王都の父の生誕祭に、息子として出ない訳には行かなかった」

 行ったところで、良い思い出は無いのだろうな。

「行けば必ず、現国王や腹違いの兄弟以外の、その母親達や取り巻きの貴族達に、母が国王を誑かしたと言われ続けた」

 そうか。
 前国王が死んだのは4年前か。
 でも、現国王や兄弟は、まだ親身になってくれたみたいじゃない。

「なんとなく事情は分かりました」

 しかし、自分だって母親が悪く言われて嫌だったくせに、私に対してそう思うか?
 普通、夜伽相手となった私に、同情する立場じゃないのか?

「でもご自身だって、お母様があらぬ疑いを掛けられて嫌な思いをしたのに、どうして私がクロード様を誑かしたと思ったんですか?」

「それは、お前があまりにも太々しかったから」

 ちょッ!
 確かに私は太々しいかも知んないけどさ!

「お前は母と年も一つしか違わない。もしかして僕の母も、本当は周りが言う様に、国王を誑かしたのかと思ったら」

 それで私と自分の母親を重ねたのか。

 まあ、ジョージに同情の余地はあるけどね。
 夜伽相手と婚約者が揉めている所を見たら、勘違いしても仕方ないけどさ。

「でも、フィリシアを知って、僕は母の事も信じられる気持ちになったんだ!どこかで周りの言う事に流されそうになったけど、フィリシアがクロードに対して、尊敬の気持ちしかないと知って!」

「私はずっと、母君の悪い噂を信じるなと言い続けてきたんだけどね」

 拗ねた口調でクロードはジョージに抗議する。

「すまない。僕は母を知らないし、前国王からも母の話を聞いたことがなかったから」

 ジョージも両親の愛情を知らずに育ったのか。

 まるでフィリシアと私の様だな。

「僕の話はこれで全てだ。本当にフィリシアには悪い事をした。すまない」

 もう何度目かの、頭を深々と下げての謝罪に、私ももうジョージに腹を立てる理由も無くなった。

「頭を上げてください。理由は良く分かりました」

「じゃあ、僕ともクロードの様に仲良くしてくれる?」

 ジョージはキラキラした目で私を見る。
 この美しい顔面に、普通の女子なら問答無用で惚れるな。

 しかしコイツ、確かクロードより2歳下と言っていたから、23ぐらいだったよな?
 なんだか、幼稚と言うか、子供が大人になったと言うか。

「僕はフィリシアと仲良くなりたい!」

 別に仲良くしたいとは思わんが、仲良くしたいと思う相手を拒否するつもりもない。

「私に対しての、わだかまりが無くなったのであれば」

 その代わり、もう面倒くさい事を言うなよ。

「もちろんだよ!」

 ジョージが私の手を握ろうと手を伸ばしてきたが、私はスッとそれを避けた。
 同時にクロードも、ジョージの手を私から防ごうと出していたので、クロードの手をジョージが握ってしまった。

「……」
「……」

「さ、さあ、話も終わった事だし、私はお洗濯物を取り込まないと!お先に失礼します」

 無言でバツの悪そうな2人を置いて、私は屋敷へと走った。

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