元殺し屋の私が異世界憑依したら溺愛ルートが待っていた~醜い辺境伯と身代わり夜伽妻~

五嶋樒榴

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おねだり

 ここに来た1番最初の仕事は、ジョージの部屋へ紅茶を運ぶことだった。

「フィリシアです」

 ジョージの部屋のドアをノックして、私は部屋の中に声を掛けた。

「どうぞ」

 ジョージの声が聞こえて、私はジョージの部屋へ入った。

「紅茶をお持ちしました」

「ありがとう」

 ジョージの部屋は、この館で1番広い部屋で、陽当たりもとても良かった。

「思っていたより、クロードのいる屋敷より遠かっただろ?」

「はい。ジョージ様が、クロード様の館に馬で来ると聞いていたので、遠いとは思っていましたが」

「ここなら、エリーズもやって来る事はないから、揉める事はないだろう?」

 自分の機転で、私を救ったと思っているのかな?

 エリーズの事はどうでも良いけど。あんな奴、眼中にもないし。

「エリーズ様の事より、こちらの使用人の皆さんもとても良い方達ばかりな様なので、それだけでもここに来たのは良かったと思ってます」

「そうか。何か必要な物があれば、何でも言ってくれ」

「それなら、クロード様の仮面を作る布は定期的に支給して欲しいです。洗濯して傷むこともあるので、何枚も作りたいので」

 ここ数日バタバタして、クロードの仮面はまだ3枚しかない。
 ベルベットは厚みがあるし、毎日洗濯して乾ききれない時が有ると困る。
 5枚は常時ある様にしたい。

「クロードの仮面の件は了承した。トゥーリスに手配させよう」

「ありがとうございます。それでは私はこれで」

 私はジョージの部屋を出ようとドアを開けた。

「フィリシア!」

 ジョージに呼び止められて、私は振り返った。

「あ、その……」

 ん?
 何だ?

「僕にも、何か、その、作ってくれないか?」

「何かとは?」

「何でも良いんだよ!シャツでもズボンでも!」

 おいおい。
 簡単に言ってくれんじゃないの。

「ダメ、かな?」

 シュンとしちゃって。
 最初会った時の、あの威勢は何処へやらね。

 でも、ここで恩を売っておけば、私の乗馬服も一緒に作れちゃうんじゃない?
 取引の価値は有りね。

「乗馬服、なんてどうですか?」

「乗馬服?そんな物まで作れるのか?」

 キラキラと目を輝かせちゃって。

 もっとも私じゃなく、フィリシアの記憶から作るだけなんだけどね。
 フィリシアはドレスも作れたみたいだし。

「はい。それで、私の乗馬服も一緒に作って良いですか?」

「え?フィリシアの?」

 怪訝そうな顔になった。
 流石に、生地もタダじゃないし無理か?

「もしかして、それは僕とお揃いということか?」

「違います!もちろん、全くデザインも柄も違います!決してお揃いでは有りません!」

 お揃いなんてこっちが願い下げだわ。

「そうか。違うのか」

 なんでそうガッカリする?
 って、作って良いの?ダメなの?どっちなの?

「ダメですか?」

 ジョージはしばらく考える。

「……どうしてフィリシアに乗馬服が必要なんだ?」

「えーと、前にクロード様にお許しをいただいたんですけど。乗馬が出来るようになりたいと」

 ジョージは再び考えこむ。

「そうか。クロードが許しているのか」

 私はコクコクと頷いた。

 いつかフォンダート家を出て行く時に、馬に乗れる方が良いからねー。
 その約束を前にしてるんだよねー。

「分かった。僕も馬には良く乗るし、新しい乗馬服も欲しいとは思っていたし」

 欲しかった?
 本当かよ。

 でもこの流れなら、私の分もオッケーよね?ね?

「分かったよ。僕の分とフィリシアの分を、生地を用意させよう。ただし」

 ただし?

「作るのは僕の分からだよ」

「それはもちろん、心得ております」

 時間は掛かるかもしれないけど、これでようやく乗馬服を作る事が出来るわ。

「デザインの参考に、今、お持ちの乗馬服を見せてもらって良いですか?」

 いくらフィリシアの裁縫の経験の記憶があると言っても、デザインや細かいところは、型紙を作る私がちゃんと把握しておかないと。

「ああ。じゃあ着替えてこようか?」

「いえ、そのままの状態でよく見たいんです!出来れば作る間参考にしたいので、あまり着てない物があればそれを貸してください!」

「あ、ああ。分かった」

 コイツ、これ素でやってんだから、マジモンの天然だな。

 何だろう。
 クロードと違って、絡むとどっと疲れる。

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