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捨て子の真実
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「お前が産まれる前に、マークスの故郷にある疫病が蔓延してね」
疫病?
「疱瘡ですね」
クロードに顔を向けたミュルゲール男爵が頷いた。
「疱瘡?」
私はどんな病気かわからずクロードに尋ねた。
「ああ。一部の領地で、突如疱瘡が流行って、命を落とした者が多く出たんだ」
歴史的に有名な天然痘ウイルスだろうか?
確か、高熱を出した後に、疱瘡が体中に出てくる病気だったような。
でもこの世界では、また違う病気かもしれない。
「お前が産まれる前にマークスも発症して、その時、始めてジュリアから助けて欲しいと手紙が来た。自分も疱瘡を患ったら、お腹の子供にまで何か影響があるのではと心配したそうだ」
本当は頼りたくはなかったんだろう。
でも追い詰められて、ギリギリだったんだろうな。
「私は急いで駆けつけたが、マークスはその数日前に亡くなっていた」
間に合わなかったのね。
「お前の誕生日は、拾った日だと勝手に決めていたが、本当は5月12日なんだ」
フィリシアの記憶から、夏に16歳になったんだと思っていたけど、本当はもうとっくに16歳になっていたのね。
「ファブルス公爵に相談して、ジュリアをすぐに病院に隔離して、お前が産まれるまで見守っていたんだが、出産した後にジュリアは高熱を出し、肺炎を起こして亡くなったんだ」
それは、やはり疱瘡の影響だったんだろうか?
「父と母は別々に埋葬されたという事ですよね?」
「ああ。マークスは故郷の教会に、ジュリアは病院の近くの教会に別々に埋葬した」
せめて、同じ場所で眠れたら良かったのに。
「いつか、父と母の眠る場所に行きたいです」
「ああ。その時は私が案内するよ」
ミュルゲール男爵が、そっと私の肩に手で触れた。
「お前の生い立ちを、ずっと黙っていて悪かった」
「……正直、出来ればもう少し早く教えて欲しかったです」
そうすれば、フィリシア自身が生きている間に、両親の眠る場所に花を手向けられただろうに。
捨て子じゃなかったと、直接聞けただろうに。
「実はジュリアが亡くなる前、お前が産まれてすぐにジュリアと約束をしたんだ」
約束?
「自分にも何かあったら、フィリシアを守って欲しいと。ただその存在を、絶対に母には知らせないでくれと。自分の時の様に、利用されたくないと」
ジュリアと母親の確執は深かったんだろうな。
「私の結婚も、母は妻の持参金目当てだったので、ジュリアが心配する気持ちはよく分かっていた。だから、ジュリアが亡くなった後にお前の健康状態を診てもらってから引き取り、皆んなには、家の前に捨てられていた事にしたんだ」
ミュルゲール男爵も、母親に無理矢理結婚させられたのね。
色々大変だったろうけど、フィリシアはジュリアに愛されていた。
マークスもきっと、フィリシアが産まれるのを楽しみにしていただろう。
「フィリシア。お前の名前も、ジュリアとマークスが2人で考えていたそうだ。女の子だったら、フィリシアにしようと」
ドクン!
まただ。
フィリシアの鼓動を強く感じる。
この名前は、父と母からの、フィリシアへの最初で最後のプレゼントだったのね。
「フィリシア」
クロードが私の名を呼び、膝の上に置いていた私の手を優しく握った。
私の意思とは別の力で、私の目から涙が溢れていた。
「母が亡くなるまでは、お前の存在を知られたくなかったせいで、お前を侍女として家に引き取る形になってすまなかった。しかも、妻やエリーズに虐げられていたとは。本当に、お前ばかり、辛い思いをさせてすまなかった!」
ミュルゲール男爵は再び深々と頭を下げた。
フィリシアを取り巻く事情はよく分かった。
確かにミュルゲール男爵夫人やエリーズには憎しみしか無いだろうが、ミュルゲール男爵の事は恨んではいない。
フィリシアの、ミュルゲール男爵に対しての思い出が良いことばかりしかなかったのは、ミュルゲール男爵の愛情を感じていたんだろう。
「お顔を上げてください。男爵様を恨んだ事は一度もありません」
この言葉は、フィリシアが言っている?
「ここまで私を育ててくれて、ありがとうございました」
私は自然にミュルゲール男爵にお辞儀をしていた。
私の中のフィリシアが動いていたんだろう。
段々と心の中が軽くなる。
フィリシアが真実を知って、とても喜んでいるのを感じる。
「ありがとう、フィリシア!今までの分も、これからは償いをさせてくれ。フィリシアが望む生活をさせたい」
私が望む生活。
それは、ミュルゲール家と縁を切ってこの地に留まること。
「私は、ミュルゲール家とは縁を切りたいと思います。母の遺言通り、祖母と会うこともしません」
私がはっきり告げると、ミュルゲール男爵は少しだけ寂しそうな顔になった。
「そうだね。不甲斐ない私の顔も見たくは無いだろう」
私は首を振った。
「いいえ!フィリシアは……私は、ミュルゲール男爵の事が大好きです!きっと、ずっと何か縁を感じていたんだと思います!」
それは嘘では無い。
「ただ、私がミュルゲール家の人間だと分かったら、絶対にお祖母様は干渉してきますよね?それに男爵夫人とエリーズ様とは、本当に二度と会いたく無いんです」
私の強い意志に、ミュルゲール男爵は仕方ないと言った顔になる。
「フィリシア、大好きと言ってくれてありがと。その言葉だけで救われるよ」
「これからは、ミュルゲール家とは別に、伯父と姪としてだけ繋がりが持てればと思います」
私の言葉に、ミュルゲール男爵は目を見開き驚いた。
「フィリシア!ありがとう!お前まで失わなくて、本当に良かった!」
ミュルゲール男爵は跪くと、私の両手を優しく包む様に握った。
ミュルゲール男爵の温もりが、ドクドクと私の中に流れ込んでくる。
これで良いんだよね?フィリシア。
疫病?
「疱瘡ですね」
クロードに顔を向けたミュルゲール男爵が頷いた。
「疱瘡?」
私はどんな病気かわからずクロードに尋ねた。
「ああ。一部の領地で、突如疱瘡が流行って、命を落とした者が多く出たんだ」
歴史的に有名な天然痘ウイルスだろうか?
確か、高熱を出した後に、疱瘡が体中に出てくる病気だったような。
でもこの世界では、また違う病気かもしれない。
「お前が産まれる前にマークスも発症して、その時、始めてジュリアから助けて欲しいと手紙が来た。自分も疱瘡を患ったら、お腹の子供にまで何か影響があるのではと心配したそうだ」
本当は頼りたくはなかったんだろう。
でも追い詰められて、ギリギリだったんだろうな。
「私は急いで駆けつけたが、マークスはその数日前に亡くなっていた」
間に合わなかったのね。
「お前の誕生日は、拾った日だと勝手に決めていたが、本当は5月12日なんだ」
フィリシアの記憶から、夏に16歳になったんだと思っていたけど、本当はもうとっくに16歳になっていたのね。
「ファブルス公爵に相談して、ジュリアをすぐに病院に隔離して、お前が産まれるまで見守っていたんだが、出産した後にジュリアは高熱を出し、肺炎を起こして亡くなったんだ」
それは、やはり疱瘡の影響だったんだろうか?
「父と母は別々に埋葬されたという事ですよね?」
「ああ。マークスは故郷の教会に、ジュリアは病院の近くの教会に別々に埋葬した」
せめて、同じ場所で眠れたら良かったのに。
「いつか、父と母の眠る場所に行きたいです」
「ああ。その時は私が案内するよ」
ミュルゲール男爵が、そっと私の肩に手で触れた。
「お前の生い立ちを、ずっと黙っていて悪かった」
「……正直、出来ればもう少し早く教えて欲しかったです」
そうすれば、フィリシア自身が生きている間に、両親の眠る場所に花を手向けられただろうに。
捨て子じゃなかったと、直接聞けただろうに。
「実はジュリアが亡くなる前、お前が産まれてすぐにジュリアと約束をしたんだ」
約束?
「自分にも何かあったら、フィリシアを守って欲しいと。ただその存在を、絶対に母には知らせないでくれと。自分の時の様に、利用されたくないと」
ジュリアと母親の確執は深かったんだろうな。
「私の結婚も、母は妻の持参金目当てだったので、ジュリアが心配する気持ちはよく分かっていた。だから、ジュリアが亡くなった後にお前の健康状態を診てもらってから引き取り、皆んなには、家の前に捨てられていた事にしたんだ」
ミュルゲール男爵も、母親に無理矢理結婚させられたのね。
色々大変だったろうけど、フィリシアはジュリアに愛されていた。
マークスもきっと、フィリシアが産まれるのを楽しみにしていただろう。
「フィリシア。お前の名前も、ジュリアとマークスが2人で考えていたそうだ。女の子だったら、フィリシアにしようと」
ドクン!
まただ。
フィリシアの鼓動を強く感じる。
この名前は、父と母からの、フィリシアへの最初で最後のプレゼントだったのね。
「フィリシア」
クロードが私の名を呼び、膝の上に置いていた私の手を優しく握った。
私の意思とは別の力で、私の目から涙が溢れていた。
「母が亡くなるまでは、お前の存在を知られたくなかったせいで、お前を侍女として家に引き取る形になってすまなかった。しかも、妻やエリーズに虐げられていたとは。本当に、お前ばかり、辛い思いをさせてすまなかった!」
ミュルゲール男爵は再び深々と頭を下げた。
フィリシアを取り巻く事情はよく分かった。
確かにミュルゲール男爵夫人やエリーズには憎しみしか無いだろうが、ミュルゲール男爵の事は恨んではいない。
フィリシアの、ミュルゲール男爵に対しての思い出が良いことばかりしかなかったのは、ミュルゲール男爵の愛情を感じていたんだろう。
「お顔を上げてください。男爵様を恨んだ事は一度もありません」
この言葉は、フィリシアが言っている?
「ここまで私を育ててくれて、ありがとうございました」
私は自然にミュルゲール男爵にお辞儀をしていた。
私の中のフィリシアが動いていたんだろう。
段々と心の中が軽くなる。
フィリシアが真実を知って、とても喜んでいるのを感じる。
「ありがとう、フィリシア!今までの分も、これからは償いをさせてくれ。フィリシアが望む生活をさせたい」
私が望む生活。
それは、ミュルゲール家と縁を切ってこの地に留まること。
「私は、ミュルゲール家とは縁を切りたいと思います。母の遺言通り、祖母と会うこともしません」
私がはっきり告げると、ミュルゲール男爵は少しだけ寂しそうな顔になった。
「そうだね。不甲斐ない私の顔も見たくは無いだろう」
私は首を振った。
「いいえ!フィリシアは……私は、ミュルゲール男爵の事が大好きです!きっと、ずっと何か縁を感じていたんだと思います!」
それは嘘では無い。
「ただ、私がミュルゲール家の人間だと分かったら、絶対にお祖母様は干渉してきますよね?それに男爵夫人とエリーズ様とは、本当に二度と会いたく無いんです」
私の強い意志に、ミュルゲール男爵は仕方ないと言った顔になる。
「フィリシア、大好きと言ってくれてありがと。その言葉だけで救われるよ」
「これからは、ミュルゲール家とは別に、伯父と姪としてだけ繋がりが持てればと思います」
私の言葉に、ミュルゲール男爵は目を見開き驚いた。
「フィリシア!ありがとう!お前まで失わなくて、本当に良かった!」
ミュルゲール男爵は跪くと、私の両手を優しく包む様に握った。
ミュルゲール男爵の温もりが、ドクドクと私の中に流れ込んでくる。
これで良いんだよね?フィリシア。
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