優しいあなたは罪な人

五嶋樒榴

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新しい時が流れる

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「我が弟ながら、あの美紅ちゃんへの甘え様はきしょいわ」

沙優は隆和とりほと三人でビールを飲んでいた。

「それ僕も思った。龍彦ってもっと女の子にドライだと思ってたし」

「ねー」

隆和にりほも同意する。

「今回はマジのマジなんだろうね。多分奴が初めて本気で好きになった相手だよ。子供の頃からモテてたから、別に自分から行かなくても女の子に不自由してなかったんだよね。美紅ちゃんのことも、初めはタカくくってたんだろうな。そのうち自分に惚れるんじゃないかって」

「言い方」

隆和がクスリと笑う。

「いや、マジで、マジで。それが気がついたらヒョイって掻っ攫われて焦ったと思うよ。美紅ちゃんが元旦那と付き合い出した時、結構荒れてたでしょ?」
 
「あー、そうだったかもー。毎晩帰りも遅かったしねー。あれってヤケ起こしてた感じ?」

その当時のことをりほも思い出していた。

「だから、今度こそは美紅ちゃんを失いたくないんだろうね」

「でもさ、美紅ちゃんも愛されるのは良いんじゃない?それだけ龍彦が一途な訳だし」

りほが龍彦をフォローする。
沙優も龍彦の気持ちも分かるが、あまりにも今の龍彦は重いなーと、美紅が負担に思わないか気になる。

「ま、沙優も弟バカってことでしょ?なんだかんだ言って龍彦が可愛いんじゃん」

一番年下の隆和に言われて沙優はムッとする。

「バカな子ほど可愛いからね。隆和と一緒で」

「なんだよー。子供扱いしやがって」

言い返されて隆和もムッとする。

「っとに、あんた達って仲良いよねー」

りほはクスクス笑う。

「まだ飲んでたのか」

崇人もリビングにやって来た。

「お疲れー。仕事終わった?」

りほが労う。

「ああ。まだ水曜日だってのにかったるい」

崇人も冷蔵庫からビールを出して来た。

「しっかし、龍彦も美紅ちゃん溺愛しすぎでしょ。何言ってるかよく聞こえないけどあいつの声が漏れてくる」

クスクス笑いながら崇人がみんなと乾杯する。

「その話を今してて盛り上がってたところ」

沙優が言うとみんなは顔を見合わせる。

「……なんかさ、僕たちって気がつけば寂しいもの同士の集まりになってない?」

「……そう言えば、私、ずいぶん彼氏いないかも」

りほはハッとする。

「……あれ?私、彼氏もう2年いないかも?」

沙優も気がつく。

「……まぁ、俺はぼちぼち?」

涼しい顔で崇人が言うと、紳士な顔してやる事はやってんな。とみんなが崇人を見る。

「あー!龍彦と美紅ちゃんの心配してる場合じゃないじゃん!」

沙優が頭を抱える。

「そうだね。私もそろそろ落ち着こうかな」

りほも同調する。

「僕はあいつを飲みに誘うかなー」

隆和にはそう言う相手がいるんだと、沙優とりほはますます焦る。

「よし、合コンか?婚活か?」

いきなりその気になる沙優。

「崇人ー!合コンしようよー」

りほが崇人に泣きつく。

「セッティングしても良いけど、お前たち少しは猫かぶれよ」

ニヤニヤして崇人が言うと隆和は笑う。

「えー。崇人さん、それ無理じゃね?直ぐ素がバレるでしょ」

「うー。頑張る。脱2年」

「私も」
  
28歳という年齢に、流石に今までみたいに好き放題は無理だと二人は自覚する。
崇人は笑いながら、沙優とりほが気にいる男を探す方が大変だと思った。
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