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……罪な人
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美紅達は裕介と別れシェアハウスに戻った。
美紅と裕介の関係が拗れなかったことに沙優も安堵した。
龍彦は、裕介がいずれ沙優と付き合う事になるかもと思うと、千秋と美奈子の関係を知っていながら、いつまでも美奈子の存在を美紅に黙っておくわけにはいかないと改めて思った。
もう全て美紅に告白すると決めたのだからグズグズ悩む事はない。
龍彦は意を決して美紅に声をかけた。
「美紅、ちょっと良いかな」
「ん?どうしたの?」
龍彦の真剣な顔に、龍彦の部屋に入った美紅は何かとドキドキする。
「嘘みたいな信じられない話だけど聞いてくれる?」
龍彦はもう一気に切り出すしかないと思った。
「前に駅で見かけた取引先の女性、実は、川瀬美奈子なんだ」
「え?」
美紅は聞き間違えかと顔が曇る。
どう言うことなのか理解出来ず頭の中が真っ白になった。
「志田さんの前の奥さん。つまり、西川さんの不倫相手。志田さんの元妻だとは今日まで知らなかったけど、西川さんの不倫相手だと言うのは知ってた」
「嘘……そんなことって」
龍彦の衝撃的な告白に、聞き間違えじゃなかったんだと美紅は体が震える。ゾクゾクとして鳥肌が立って来た。
「……ごめん。ずっと内緒にしてて」
龍彦は苦悶の表情で美紅の顔を見る。
美紅は信じられない気持ちで龍彦の両腕を掴んだ。
「嘘!……どうして?なんで隠してたの?もうお互いに、嘘も秘密も無しにしようって決めたじゃん!なんで川瀬美奈子のこと、もっと早くに言ってくれなかったの?」
美紅が怒るのも当たり前だと龍彦は俯く。
千秋から聞いた時から、もうだいぶ時間は経っているのだ。
本当なら、打ち明ける方法をちゃんと考える時間もあった。
「ごめん。どうしても美紅を傷つけたくなかった。西川さんの不倫相手と俺が仕事で関わってるって美紅に言えなかった。しかも、好意を持たれてるなんて」
信じられないと美紅は思った。
どうして自分が好きになる相手に、また美奈子が関わるのか。
「たっ君のこと、本当に好きだってこと?」
否定できないと龍彦は頷く。
「川瀬さんには、ちゃんと俺には恋人がいるって言っている。気をもたせるようなことも態度も取っていない。それなのに何故か分からない」
龍彦の言っていることは、もちろん本当だろうと美紅は信じる。
それよりも、恋人がいると分かってて、何故美奈子は龍彦に好意を寄せるのかが美紅は理解出来ない。
「駅で見かけたあの夜、その時にはもう千秋さんの不倫相手だって知ってたの?」
龍彦は目を瞑って頷いた。
「ごめん。どう説明すれば美紅が傷つかないか考えた。でも、どう考えても答えが見つからなかった。だから俺が川瀬さんを拒否し続けて諦めさせれば、関わりあうこともなくなると思っていた」
だからこそまさか、裕介の元妻だとは思ってもみなかった。
「……私のために、たっ君辛かったよね。ごめんなさい」
美紅は、自分の事を思って龍彦が言い出せなかったのだと理解したが、龍彦は美紅の涙を見て、結局傷つけてしまったと、自分の不甲斐なさに腹が立った。
美紅と裕介の関係が拗れなかったことに沙優も安堵した。
龍彦は、裕介がいずれ沙優と付き合う事になるかもと思うと、千秋と美奈子の関係を知っていながら、いつまでも美奈子の存在を美紅に黙っておくわけにはいかないと改めて思った。
もう全て美紅に告白すると決めたのだからグズグズ悩む事はない。
龍彦は意を決して美紅に声をかけた。
「美紅、ちょっと良いかな」
「ん?どうしたの?」
龍彦の真剣な顔に、龍彦の部屋に入った美紅は何かとドキドキする。
「嘘みたいな信じられない話だけど聞いてくれる?」
龍彦はもう一気に切り出すしかないと思った。
「前に駅で見かけた取引先の女性、実は、川瀬美奈子なんだ」
「え?」
美紅は聞き間違えかと顔が曇る。
どう言うことなのか理解出来ず頭の中が真っ白になった。
「志田さんの前の奥さん。つまり、西川さんの不倫相手。志田さんの元妻だとは今日まで知らなかったけど、西川さんの不倫相手だと言うのは知ってた」
「嘘……そんなことって」
龍彦の衝撃的な告白に、聞き間違えじゃなかったんだと美紅は体が震える。ゾクゾクとして鳥肌が立って来た。
「……ごめん。ずっと内緒にしてて」
龍彦は苦悶の表情で美紅の顔を見る。
美紅は信じられない気持ちで龍彦の両腕を掴んだ。
「嘘!……どうして?なんで隠してたの?もうお互いに、嘘も秘密も無しにしようって決めたじゃん!なんで川瀬美奈子のこと、もっと早くに言ってくれなかったの?」
美紅が怒るのも当たり前だと龍彦は俯く。
千秋から聞いた時から、もうだいぶ時間は経っているのだ。
本当なら、打ち明ける方法をちゃんと考える時間もあった。
「ごめん。どうしても美紅を傷つけたくなかった。西川さんの不倫相手と俺が仕事で関わってるって美紅に言えなかった。しかも、好意を持たれてるなんて」
信じられないと美紅は思った。
どうして自分が好きになる相手に、また美奈子が関わるのか。
「たっ君のこと、本当に好きだってこと?」
否定できないと龍彦は頷く。
「川瀬さんには、ちゃんと俺には恋人がいるって言っている。気をもたせるようなことも態度も取っていない。それなのに何故か分からない」
龍彦の言っていることは、もちろん本当だろうと美紅は信じる。
それよりも、恋人がいると分かってて、何故美奈子は龍彦に好意を寄せるのかが美紅は理解出来ない。
「駅で見かけたあの夜、その時にはもう千秋さんの不倫相手だって知ってたの?」
龍彦は目を瞑って頷いた。
「ごめん。どう説明すれば美紅が傷つかないか考えた。でも、どう考えても答えが見つからなかった。だから俺が川瀬さんを拒否し続けて諦めさせれば、関わりあうこともなくなると思っていた」
だからこそまさか、裕介の元妻だとは思ってもみなかった。
「……私のために、たっ君辛かったよね。ごめんなさい」
美紅は、自分の事を思って龍彦が言い出せなかったのだと理解したが、龍彦は美紅の涙を見て、結局傷つけてしまったと、自分の不甲斐なさに腹が立った。
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